141. 腕相撲の行方
「勝負始め!」
レオ王子とドラが、机の上に肘を起き、右手を組む。リックさんの開始の合図で2人の腕に力がこもった。机は2人の力を支える為にミシミシと音が鳴っている。
「ドラとやら、そこそこ強いな」
「レオ王子こそ、カンより少し強いぐらいだな」
「私はまだ100%の力を出していない」
「俺もまだ全力を出していないぞ」
開始の合図から1分が経とうとしていたが、2人は組んだ位置から全く動かない。
「そろそろ本気を出そうと思うのだが」
「へへ、俺も思っていた所だ」
さらに1分が経とうとしていた。
「疲れてきたんじゃないか?」
「まだまだやれるぜ」
「私だって、まだまだやれる」
「俺は後3分は大丈夫だ」
「3分?私は5分だ」
「いやいや、もう腕がプルプルしてるじゃないか」
「そなたこそ、額から汗が滝のように流れているぞ」
さらに時間が経とうとしていたが、周りがざわざわしてきた。
「おい、何かおかしくないか?」
「いや、俺もおかしいと思うぞ」
「なんか、さっきから2人とも動かないぞ」
「どうなってるんだ」
「リック、レフェリーストップだ」
「そうですねバダト様。レオ様、ドラ君1度止めてもらってもいいでしょうか?」
リックさんが2人に止めるように言うが、2人とも動かない。
「レオ様?ドラ君?」
「2人ともどうしたの?」
「「動かねぇ……」」
「あぁ……そういうことですか」
リックさんがそう言うと、2人の組んでいた手の指を開いていく。
「何かの呪いか?」
「なんだこれ?」
「2人の力が拮抗していた為に起きた。体の硬直ですね。つまり引き分けです」
「リック……まさか?」
「未来に暗雲が……」
「母ちゃん?」
リックさんが引き分けを宣言すると、周りの人達が絶望的な表情をしていく。そして僕の方を皆が見てくる。
「え~、引き分けと言うことで今回の賭けは、この場で唯一賭けていなかったカン君の独り勝ちです。皆さん、カン君に賭けたお金を渡してくださいね」
「そりゃねーぜ」
「目の前が真っ暗に……」
「母ちゃん……」
皆が僕にお金を渡しに来る。人によっては、生活が心配になるぐらいの金額を渡してくる人もいる。その中で1番の金額は笑顔で渡してくるリックさんだった。次は、眉がへの字になっているバダトさんだ。渡してくる人達の表情を見て、大人になっても賭け事なんてしないと心に誓った。




