2日目 いなくなる。6
そういえば室内で過ごす様子も撮りたいって言ってたっけ中田くん。そう思いながら女子用のトイレ・風呂場の前を通り両側がガラス張りの廊下を歩く。
とはいえ、リビング内側のカーテンは閉められているので丸見えということはない。隙間からちょっとみんなの様子を伺ってみる。
中田くんの言っていた通り全員ソファー席でモニターに釘付けになっている。さっきは流れでみんなと一緒に見るハメになってしまったが、自分は正直あぁいう系のドラマが苦手だ。
結婚どころか恋人すらいない自分には縁のない話だから感情移入ができない。それでも浮気や不倫をテーマにした作品というのは、テレビ・漫画・映画・ゲームなどの媒体を問わず定期的にヒットする。やはり世間の興味関心は高いのだろう。
みんなの邪魔をしないように足音を忍ばせて歩く。というよりフローリングの廊下であり自分は靴下を履いているので、わざと足に力を入れたりしない限り大丈夫なのだが。
なにごともなく中田くんの部屋の前に着き、ドアノブを回すとたしかに鍵はかかっておらずドアが開いた。
カメラは…と部屋を見回すまでもなく見つかった、なにせベッドと簡単なテーブルとクローゼット程度しかない個室だ。
テーブルの上に開かれたままになっているノートパソコンの横にカメラが置いてある。海で使っていたものだ、これを持っていけばいいだろう。
自分がカメラに手を伸ばすと、おもむろにノートパソコンの画面の電源が入った。無意識の内に視線が吸い込まれてしまう。
???
これ、テレビ電話…?
「そうだよ。久しぶりだね、吉川一也くん。」
誰ですか?久しぶり?
カメラの向こうの人物は首から下しか映っていない。首から下も黒いTシャツのような格好の首元しか見えておらず、このままでは性別すら分からない。だが首の細さから、痩せ型であることは分かる。
「さすがに大人っぽくなったね、でも小学校の時の面影が残ってる。ますます凛々しくなったんだね…。5年生のとき以来だね。」
!!!!
バカなッ!まさか、加藤くん?
(いや、そんなはずはない…誰かの悪ふざけか?ありえない…だって彼は…。)
(イジメで追い詰められて、自分から死を選んだはずだッ。)
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俺が吉川くんに頼んだのは、ただカメラを取ってくるだけのことだ。普通ならもう席に戻っている頃だろう。
だが俺がトイレを済ませ手を洗ってリビングに戻っても彼の姿はない。
さすがだよアイツの計画は…俺も下手なことはできない、するべきではない。
俺の心臓がドクドクと激しく脈打っているのが分かる。そしてこれは大きなスクリーンに映し出されているドラマのせいではないのだ。
ついに始まってしまった。
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




