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第六話 ノードノーク

ここは書くのに結構苦しむと思ったんですが

(実際に最初は苦しんでました)

予定外の1週間の入院で、あまりに暇だったんで

書いてたら、書き上げれてしまいました…

エスカはノードノーク星系への潜入調査を開始し

民間人に扮してテクアルコアツ星系から、

ナーメン星系、ランドロノア星系と

1恒星跳躍ゲートを使ってノードノークに近づき

遂にランドロノア星系からノードノーク星系の

スターゲートにゲートアウトして

ゲート近くにあるスペースポートへ

汎用輸送船で移動していた。


一般人……はたして今のエスカの『設定』が

一般人と呼んでいいのかは甚だ疑問ではあるが…

ともかく一般人に紛れての汎用輸送船での

星系入国であったので

煩雑であったが他の民間人と一緒に入国管理等の手続きに

ノードノーク星系のスペースポートに

一端、向かわねばならないのだった。


そのエスカが乗っていた旅客船型の汎用輸送船は

観光のために天蓋をガラス張り…の様な気分にさせる

天空ディスプレイが張り巡らされており、

閉鎖空間ではなく外の光景を見える様にされていた。

そしてそこからノードノーク星系の外の様子を

天空ディスプレイ越しではあるが眺める事が出来た。


その天空ディスプレイからエスカは眺める。

巨大恒星『ノードノーク』の姿を…。


恒星間恒星間航行技術『スターゲート』は

原理に恒星の重力を使う事から、安定にゲートアウトするには

『質量』が大きな恒星であればあるほど良い。

その様な基本的な理屈がある。


だからこそ、ノードノーク星系の中心たる

『恒星ノードノーク』

学術用語ではO型主系列星恒星と呼ばれる

青白い光を放つ恒星は

スターゲートを敷設する場所としては

条件の非常に良いワープの航路の恒星であった。


この大銀河…


この大銀河の中には、

恒星と呼べる星が2000億個あると言われている。

そんな2000億個の恒星の中でも稀少存在であり

およそ2万個程度しか存在しないといわれる超重力恒星。

それがO型主系列恒星であった。


その重力は基本単位である1SUNに対して

15~90SUM以上の質量と15倍以上の質量

あるいは重力を持ち

太陽風の放射エネルギーは3万~100万SUNと

標準恒星G型主系列1SUNに比べて遙かに苛烈だ。


恒星ノードノークは20万SUNの

太陽風放射エネルギーを放射している青色巨星であり、

テクアルコアツの5万SUN放射のO型主系列恒星の4倍。

正にインペリアルゲートが置かれるに相応しい恒星であった。


あった。


そう過去形だ。



古都『ノードノーク』


汎銀河帝国の時代には、六大帝都門の一角として

帝国副首都の座にあったその星系都市は

今では宇宙冒険家がたむろする

廃墟の様な都市にまで落ちぶれていた。


誰が今のこのノードノーク星系の

自由で気ままで一攫千金を狙う馬鹿の集まりしか居ない有様が

過去には汎銀河帝国の帝都を守る六大帝門として

城砦都市、帝門都市と、帝国上級民しか暮らしていなかった

雅な都市であった等と思うだろうか…


それを思ってエスカは小さく溜息をつく。


自分達の赤色帝国も『アリッソ宙域』にある

古都『ロルグベア』星系を持つが故に

それとほとんど同じ光景の『ノードノーク』に

複雑な気持ちになるしかない。


そしてエスカはスターゲートから

スペースポートに移動する間に見る事の出来る

大帝国の副帝都がその地位から転落した

最大の原因を見つめた。


宇宙に浮かぶ、その巨大な建造物…。


小天体…

いや、最早、「天体」と言っていいのではないかと

思える程の巨大な建造物の残骸。



『インペリアルゲート』



そのインペリアルゲートの破壊された残骸をエスカは見つめた。



皮肉な事に、ワープ航路に最適なO型主系列星では、

G型主系列星の様に気軽に星系移民は出来ない。


それは放射エネルギー20万SUN以上という

苛烈な太陽風がO型主系列から放射されているせいだった。


この時代においては、G2Ⅴ型主星系なら1天文単位・・・

AU表記で1AUの付近に惑星が回っていれば、

基準1Gの惑星であれば入植惑星として惑星改造をするのは

簡単な部類に入る宇宙土木工事である。


だがO型主星系の20万倍の放射エネルギーとなると

入植する惑星の軌道も計算上440倍だ。


つまり440AU。

(冥王星までの距離が40AU)


そこら辺は、入植惑星の惑星改造のバランスと

太陽風放射スペクトルの兼ね合いで

軌道がどこら辺であれば適当かの微変動もあるのだが

O型主星系などという巨大恒星で

G型と同じ思想で1AU程度の距離に入植惑星を構えようモノなら

たちまちそんな場所は灼熱地獄で、燃え尽きてしまう事だろう。


放射密度がG型主星系と丁度同じになるには

放射源のパワーが万倍なら

万倍平方根のAU倍数距離を離れる必要が有る。


それが逆2条の法則というモノだった。


しかし440AUの軌道ともなれば

恒星を公転する惑星と惑星間を宇宙船で移動する場合

もはや亜光速輸送船ですら数ヶ月単位になる。


となるとO型主星系での

入植スタイルはどうなるかというと…


1つは、超巨大スターゲート

『インペリゲート』近傍に入植惑星を構える


というスタイル


あるいは、インペリアルゲートの周辺に

スペースコロニーの小天体を多数衛星化させるか…


そんな2種類の方法論が考えられるのだった。


その2種類の入植スタイルのどちらかを選択すれば

インペリアルゲート付近にある入植天体を基準に、

その近距離に隣接星系への1恒星移動用の

スターゲートを設置するという恒星内構造になっていく。


その様に

全ての銀河の道、1000光年以上を跳躍する帝国道

『インペリアルゲート』を持つ恒星系は

ワープ跳躍の為に存在している様なモノで

故にゲートを中心に星系都市の構造が出来てしまうのだった。


それが『インペリアルゲート』を恒星内に持つ者達の、

どこの銀河でも往々とした生活スタイルでもあった。


だからこそ『ノードノーク』は、

そのスタイルと1000年前の戦争のせいで廃都になった。


銀河中心に繋がるハズの最も重要な『インペリアルゲート』

その名を特に『皇帝道(エンペラン)』と呼ぶらしい。


それを持つ大都市であり、

帝国帝門都市であった『ノードノーク』は

1000年前の革命戦争で『皇帝道(エンペラン)』を失った。


その為、ノードノークは本来の帝国帝門であり副首都である

星系都市の存在意義も1000年前に失ったのであった。


銀河中枢へと1跳躍で移動するという

汎銀河帝国の帝国門と主要道路としての役割。

その手段である『皇帝道』を失ったのだから当然の事であった。


エスカはその歴史の残り火である猛然たる姿

徹底的に破壊された『皇帝道』の残骸

ノードノークに1000年前には存在して機能していたハズの

『インペリアルゲート』の残骸を見て

苦そうに、また溜息をつくしかなかった。





この銀河には六色帝国の各色帝の全軍事力を以てさえ

破壊する事の出来ない3種類の建造物が存在する。



1つは、思考天体。

ガメットと呼ばれる色帝国を管理する天体コンピューターであった。


ガメットは自身の戦闘力は、その内部に居住している者さえ

未だに全貌を把握できない不可思議な天体であるが

自身の戦闘力が如何ほどであれ、それはさほど問題ではない。

思考天体は、その気になれば、帝国全土の管理登録されている

S級複素結晶搭載の戦闘戦艦を、全て支配下に置ける能力がある。

つまり、事実上の色連邦帝国の全戦力そのものであった。


故にガメットを破壊するには

同じだけの敵性色帝国の全戦力が必要という計算になる。

ガメットが破壊不能とはそういう意味だった。



2つは、機動天体要塞。

この銀河に、ガメットと同じく

6つしか存在しない天体要塞である。

これは文字通り、思考天体と同じく、

天体レベルまで巨大化させた宇宙要塞であった。


ただし『機動』という言葉が示す様に

通常時は恒星の軌道を回っている要塞自身が

戦闘時には軌道を逸脱して敵戦力相手に防衛戦闘を行うという

超攻撃的な移動型の戦闘要塞である。


細かく言えば、移動型要塞というモノのは程度はどうあれ

小天体でも『機動化』させる事そのものは難しい話ではない。

むしろ機動要塞という思考は軍事的には普通の思想ともいえる。

天体規模のそれを移動させるというのは壮大ではあるが、

エネルギーの節約を考えなければ

色帝での現行技術でも似たようなモノが作れない事はない。


問題は中身だった。


思考天体が、今の能力が弱って不安定になった状態ではなく

1000年前の能力が全盛の時代に

その演算能力を余すことなく攻撃型複素結晶制作に使い

古代技術戦力をそのまま内部に凝縮させた状態で

建造された天体要塞。


それが機動天体要塞である。


その質の悪さを簡単に言ってしまえば

クラーリンと全く同じ技術で作られた天体要塞であった。


太陽炉を持ち自律活動で自己管理をしている要塞で

他者の指令は思考天体ガメットの指令しか受け付けない。

よって単純な戦力で測れば色帝国内で最強の軍事兵器である。



その機動天体要塞は色帝の全てが

同じ連符帝国星系構成位置に配置されており

赤色帝国で例えれば、『帝国門前領アリッソ宙域』から

『インペリアルゲート』を通って

赤色帝国本土に入ろうとした時、

門前領からその次の宙域『帝国玄関領』と呼ばれる

本土宙域の前に位置する宙域に存在していた。


本土を家の中とすれば、

それに入るための玄関部分に相当する宇宙宙域

それが『玄関領』と呼ばれている宙域であり

その宙域に、ついでに番犬的に配置されているのが

機動天体要塞である。


赤帝においては『帝国玄関領ルクセア宙域』

その宙域に配置されている

『赤色連邦帝国・機動天体要塞・ザグバルツ』

それが赤色帝国の機動天体要塞であり本土防衛の要であった。


そして他の色帝も、『帝国玄関領』と呼ばれる宙域に

同様に『機動天体要塞』が配置されているのだ。

このヴァーチェ宙域からすれば、

ヴァーチェ宙域から『インペリアルゲート』で移動した先の

『緑帝玄関領アルタイト宙域』

そこに緑帝の機動天体要塞『ノルビスエア』が配置されている。


その機動天体要塞は、もう1つの特徴を持っており、

1000年前の古代技術を使って建造された戦艦

-古代戦艦と呼ばれるのだが-

それらが大破した時、それを修理する事が出来る

大量の修理工房を持っていた。


現行の色帝の技術で作れる戦闘艦は、

各々の連邦国のドック技術で建造なり修理なりは出来るので

ある程度の工房レベルを持った小天体要塞ならば

修理、あるいは造船さえも可能ではあるのだが

1000年前からの生き残りの古代戦艦か

あるいは思考天体と祭儀巫女との共鳴で

瞬間的には1000年前の思考天体と同じだけの

演算能力を取り戻したガメットが新規設計する

古代戦艦と同等の複素結晶を持つ新造艦だけは

思考天体内部の修理工房か、機動天体要塞の修理工房でしか

修理することができないという問題があった。


1方の思考天体は、色帝国の本土奥深く

帝国議会首都星系と呼ばれている所に置かれているので

修理工房として利用するには

非常に遠い場所としか言いようが無く

それ故、銀河中央派遣艦隊に所属する艦隊にとっては

門前領の隣の宙域である玄関領にある機動天体要塞こそが

最前線における戦闘艦修理の要でもあった。


それらの戦闘及び艦隊支援の殆どが行える

他の宇宙要塞とは隔絶した戦闘力を持つ機動天体要塞が

玄関領に進入すれば全ての敵性色帝の侵攻艦隊を阻むのである。


仮に色帝国全艦隊が機動天体要塞と戦ったと仮定して

その戦闘を試算したとき

はたして全艦隊の攻撃力を以てしても勝てるかどうか…

というのが思考単体が概算した機動天体要塞の戦力である。


つまりは陥落不能の宇宙要塞。


もし門前領から進入し玄関領を突破して

敵帝国本土を狙おう等と馬鹿馬鹿しい事を考えようモノなら

玄関領で機動天体要塞との必然の戦闘が発生し

進駐した色帝国艦隊は機動天体要塞に攻撃されて

何の成果も出せずに全損を覚悟しなければならない。


その色帝国が他の色帝国を陥落させる事を不可能にする

キチガイ要塞が玄関領に存在して

色帝の本土防衛をしているが故に、

色帝国の中央派遣艦隊は

出来て門前領までしか星系制圧できないのだった。


そういった理由で、

中央派遣艦隊は門前領までを星系制圧し

本土から機動天体要塞を中継して

玄関領から出撃してくる敵性色帝国の艦隊を

門前領で迎え撃つというスタイル、

それがこの6色帝国時代の「宇宙覇権」の姿であった。


宇宙覇権を謳う、連邦帝国議会にとっては

ただ『機動天体要塞』という1つの要塞があるだけで、

敵性勢力を制圧することさえ出来ないという現実があり

それ故『覇権』という言葉が、何処か空々しく聞こえる

頭の痛い存在でもあった。


本土を絶対に攻撃されないという

帝国民全員に安眠を約束してくれる

有り難い存在でもあったのだが。




では3つめは?


それが最大の問題だ。


それは色帝国の存在制度の根幹関わる事であるから

他の2つの破壊不能建造物はむしろ可愛くさえ思えてくる。


それこそが

『インペリアルゲート』


1000年前の汎銀河帝国の時代に

汎銀河帝国が1000年以上もかけて銀河中に敷設した

1000光年程度を跳躍する為の帝国街道である。


それは小天体規模の巨大すぎるスターゲート。

インペリアルゲート専用の大量の太陽路を恒星内に配置して

自給自足で自律活動をし、自己運営をゲートが直接している

他のスターゲートとは全くカラーの違うスターゲートであった。


そのスターゲートは

汎銀河帝国のスターゲートという意味の揶揄で

『インペリアルゲート』と呼ばれていた。


何故ならインペリアルゲートの最大の特徴として

全てのゲートが『完全中立』だからであった。


インペリアルゲートは全色帝国の重要な航路、

つまり航路として重要視されるO型主系列恒星には、

ほぼ殆ど敷設されている。

にも関わらずインペリアルゲートは全て

各色帝国の思考天体ガメットの支配下に入らない。

全ての色帝あるいは銀河民に完全中立な大道。

それが最大の特徴であった。


移動に必要な規定のエネルギーをゲートに拠出しさえすれば

ゲート内でゲートインとアウトを望む物体を

区別することなく接続されている

互いの恒星に送ってくれるワープ航路。


それがインペリアルゲートの性質である。


これは一見、誰にでもありがたい道の様に思えるが

銀河覇権を謳う色帝国からすれば

これほど厄介な道も無かった。


インペリアルゲートは完全中立であるため

敵性色連邦帝国の艦隊であろうとも容易に跳躍を許す。


敵性の支配宙域勢力下であろうと

インペリアルゲートのある星系に向かって

のらりくらりと大回りでスターゲートを伝って移動すれば

それでインペリアルゲートが置かれている宙域に辿り着いて

インペリアルゲートにゲートインしたとき

その物体をチェックも入れずにゲートは

1000光年近くの距離を跳躍させてしまうのだ。


この様な性質は

敵性艦隊という、まとまった船団での移動物体ならば

流石にインペリアルゲートからインペリアルゲートまでの

中継移動の星系宙域で検問の網を張っておけば捕捉もできるので、

検問方法の工夫で対処もできるのだが

例えば、レディンの様な単艦で尚かつ空間隠蔽技術の高い船なら、

そのままズルズルと宙域移動を許してしまうという問題があった。


貿易目的の交易船団であったら、

それらを遮断する事がより難しくなるのは自明である。


つまり、スパイなどの諜報活動においては

インペリアルゲートという重要な道では

諜報部隊防止の検問が色帝はできないのであった。


色皇帝暗殺等という荒唐無稽な事を考えた場合でも

いざS級人類の皇帝本人に対峙して

対象を暗殺できるかどうかはともかく

インペリアルゲートを使ってその付近まで行こうとする事は

その中立性から考えて不可能ではない。


インペリアルゲートとインペリアルゲートを繋ぐ

中継宙域に検問所を普通は設置するので

現実的にはまとまった数の武装集団の進入は難しいのだが

一番大事な道でのシャットアウトが出来ないのだから

諜報組織にとっては、やり様は幾らでもあった。


スターゲートやバイパスゲート等が

勢力下での管理登録をすればゲートインアウトの行動中に

敵性因子を報告して移動の阻止が出来るのに対して

インペリアルゲートではそれができない。


その特徴こそが、国土防衛と要人警護の観点からすれば

自分の領土内に管理不能の道が存在して、

敵性諜報部隊の跳梁跋扈を容易に許しているという

色帝国のどこの国でも悩んでいる大問題だったのである。


この恒常的な問題を生み出す『道』の問題を思えば

他の破壊不能な12個の天体など、やはり可愛く思えてしまう。



ではインペリアルゲートの管理登録

あるいはゲートの破壊による移動の阻止をすれば?



と、支配下に置けない道ならば

その様な極端な対処は当然考えられる。


しかし…。


それが出来ない。



それこそがインペリアルゲートが

インペリアルゲートたる由縁だった。



インペリアルゲートは自律行動で動いているので

自己を防衛するための

『インペリアルゲート防衛艦隊』が存在している。


それはクラーリンであった。


この防衛艦隊を厳密にクラーリンと呼んでいいのかは

今だに学者達の中で見解が割れるのだが

簡単に言えば、インペリアルゲートは

クラーリン艦隊が守っているのだった。


宇宙深淵のクラーリン達と違うのは

インペリアルゲートのクラーリン達は

『専守防衛』行動しか取らないことであり、

ゲート利用をする者が

インペリアルゲート中枢の支配制圧、

あるいは破壊行動などをゲート内で行わなければ

ゲート内部に駐留しているだけの監視艦隊であった。


積極的に銀河中枢防衛をしてくるクラーリンとは

そこが根本的に異なる。


ただし同じ古代汎銀河帝国の技術で作られている無人戦艦である。

戦闘能力はクラーリンと全く同じ。

一度、敵に回せば、銀河深淵のモノと同じように

敵対姿勢を見せた物体に

徹底的なまでの殲滅攻撃を行うのであった。


いや専守防衛戦闘に限っては銀河深淵のクラーリンよりも

インペリアルゲート防衛艦隊の方が強いかもしれない。

何分、銀河深淵のクラーリンは

何故か雷撃戦を待ちかまえて積極的に受けてくれるという

戦闘のやりやすさがあるのだ。

それに対してインペリアルゲートのクラーリンはそうではない。

雷撃戦など何処吹く風で、徹底的なまでに打撃戦を敢行し

しかし近接すれば、待ちかまえるのではなく

向こうから積極的に突撃して雷撃戦を仕掛けてくるのだ。


だから識者の中にはクラーリンの本当の実力は

インペリアルゲート駐留艦隊の方であり

銀河深淵のクラーリンは

何らかの理由で手加減をしてくれているのではないか?

と考える者達も少なくはなかった。


派生議論で、いざ戦闘になった場合において

銀河深淵のクラーリンとインペリアルゲート防衛艦隊は

どっちの方が強いのかは

興味は尽きないが、永遠に結論の出ない議論内容でもあった。

(その2者が直接出会うことは無いので)


インペリアルゲートでの検問が出来ないのもそれに由来する。

インペリルゲートの周囲付近で誰かが私的な武力姿勢を見せれば

どんな判断基準で判定されているのか

それは今だに不明ではあるのだが、

インペリアルゲートから出撃してくる

駐留クラーリンに実力排除されるのだった。


それ故、インペリアルゲートのゲート内においては

そこに居合わせた複数の者達が互いに敵性国家群であっても

とにかく非戦に徹しなければならないという

暗黙の了解事項が生まれているのだった。


また銀河中枢クラーリンには見受けられない

『工作型クラーリン』もインペリアルゲートには存在し

インペリアルゲートが攻撃されて損傷した場合

それらを太陽からエネルギーを収集して

修復し始める特徴があった。


故に、ちょっとやそっとの攻撃で陥落できるような

安易な存在ではなく

ワープ用ゲートとは言いながらも、

一方で『戦闘要塞』でもあった。


それがインペリアルゲート。


この銀河で色帝国が破壊することが出来ない

建造物の3種のうち、

最も多く、最も帝国全土に広がっている

非常に厄介な存在であった。



また別の問題として

インペリアルゲートの再建造は

今の色帝国達では不可能であった。


不思議な封印がかかっている思考天体ガメット達が

1000年前と同じに

常時100%の思考演算を行うことができれば

もしかしたら、その再設計が出来るのかもしれないが

今の巫女の祭儀を伴った特別起動の瞬間にだけ、

過去の能力と同じ演算が出来るという状況の、

思考天体の能力では

インペリアルゲートと同じ能力を持つ

自己勢力下のゲートを作る事は不可能なのであった。


故に、インペリアルゲートを壊す等という発想そのものが

貴重な1000光年を跳躍するゲートを自ら失うという

ナンセンスな話であり、現実的な行動ではない。


しかし、そのナンセンスさはひとまず置いておいて

仮にインペリアルゲートを破壊する為に

色帝国の艦隊でゲートに突撃した場合にはどうなるのかと

過去に思考天体を用いて試算した時

その試算結果では、1つのインペリアルゲートを陥落させるのに

色帝国の全艦隊の損耗と引き替えになるだろう…

という答えが得られている。



つまり機動天体要塞と戦うのと同じだと言う事だった。



再建造できない重要な航路が

破壊するのに色帝国の全艦隊が必要となれば

誰がそれと戦う等と考えるだろう?


故に色帝国の議員重鎮は苦々しく思いながらも

このインペリアルゲートに支配される

『宇宙路』という道の性質を

好むと好まざると受け入れざるおえないのであった。




そう…

そうなのだ…


色帝国の全戦力では、インペリアルゲートは陥落不能。


それがこの宇宙の『常識』だった。


インペリアルゲートこそ、最も破壊できない

この宇宙の真の支配者、と言っても過言ではない存在だった。



そのハズだ…。


そのハズだった。


だが…

その破壊不能なインペリアルゲートが

色帝の全戦力では破壊不能のインペリアルゲートが

ここノードノークでは…

いや、白色帝国領域と呼ばれる6宙域に

全て存在していた銀河中枢に繋がっていた、

最も貴重なインペリアルゲート

『皇帝道』の全てが…


1000年前の昔…

機能回復不能な程に徹底的に破壊された。


現代の軍事力では破壊不能のインペリアルゲートは

1000年の昔には

もっとも強力であっただろう最強の道

『皇帝道』が7本とも全て破壊されたのであった。



誰に?



それこそがこの六色帝国戦争が起きてしまった最大の原因


1000年前の汎銀河帝国の末代皇帝

『流血の女皇帝』と呼ばれる暴君によってであった。


1000年前の革命戦争の時、六色帝国の連合艦隊は、

汎銀河帝国帝都にあった『流血の女皇帝』を

大激戦の末に打ち破ったとされている。


しかし帝国崩壊のおり、流血の女皇帝は最後の奇策として

汎銀河帝国の首都に繋がる7本の道、『皇帝道』を

報復に全て破壊し、銀河深淵へ至る道を全遮断したのであった。


流血の女皇帝が操ったと言われる

謎のクラーリンの力によって…。


そして銀河深淵、

白色帝都『ガイアポリス』に直接至る道は失われ、

六色帝国は各々が自国の門前領から

宇宙冒険家等を用いて、スターゲートによる航路の再敷設を

行わざる得なくなり、1000年の時間をかけて

クラーリンと戦いながら、未だに宇宙開拓を行っている。


またその泥縄式的な流れで、

互いが互いの宇宙開拓の進捗状況を邪魔するべく

六色帝国戦争という不定形な戦争を、

白色帝国宙域である

『アリッソ宙域』『ニルクルヴァ宙域』『ヴァーチェ宙域』

『サファナム宙域』『フェスタス宙域』『トルディス宙域』

『メタフ宙域』

という1000年前には『皇帝道』が存在していた七宙域で

各々で環状に続けているのであった。


挿絵(By みてみん)


そう、この六色帝国戦争とは

『流血の女皇帝』が1000年前に行った

7つの『皇帝道』の破壊

その行為によって引き起こされている環状戦争であり

原因の根本を掘り下げれば

全てが『流血の女皇帝』のせいであった。



故に汎銀河帝国の末代皇帝…

ガメットの焚書により女帝であったとしか記録されていないが

その暴君が行った7本の『皇帝道』の破壊

そしてそれによって起きた航路の大混乱による

壊滅的な被害と六色帝国戦争の勃発により

その末代皇帝を

『流血の女皇帝』と呼ぶようになったのである。



その歴史を思いエスカは

移動船の中から眺める事のできる

インペリアルゲートの残骸

『流血の女皇帝』に破壊されたノードノークの『皇帝道』

その古代の革命戦争の傷跡を見ては

深いため息をつくしかなかった。


エスカ:

「正直…

 あんな化け物ゲートを倒せるようなクラーリンなんか存在したら

 色帝国の全てが、そのクラーリンに勝ち目は無いんだがな…」


そう言って、1000年前のあやふやな伝承を思い出して

エスカは頬を引きつらせるしかないのだった。




その時、天空ディスプレイに緊急報道のサインが点灯した。




エスカ:

「緊急報道?」


そのあまりに重々しいサインに眉をひそめるエスカ。

すると次にはディスプレイにレポーターが映り放送が始まった。


ファン:

「こんにちわ!何時もニコニコ、元気で人気

 銀河のアイドル、ファン・メイです!」


そこには先日の『銀河deファイト』で司会をやっていた

あの頭の悪そうな自称銀河アイドルが映っていたのであった。

それに思わずズッコけるエスカ。


ファン:

「ノードノークの皆さんには緊急の報道です!

 なんと!

 ななんと!!

 あの赤帝が、

 先日のエスカ提督と我らがノードノークの希望の星、

 レディン・ルーク氏との戦いに関して

 遂に公式声明を発表するとの事です!!

 赤帝の宇宙公式放送での発信だそうですので

 その内容を中継で放送したいと思います!」


そんなズッコケたエスカに対して

銀河アイドルはニコニコしながら元気に報道する。


エスカ:

「赤帝が宇宙公共放送を使って公式声明?

 放送までするとは、随分大仰な広報をするんだな…」


席に戻って報道内容を理解すると、

その赤帝らしくない演出過多な広報の仕方に

首をかしげるエスカ。


すると赤帝の放送が中継で繋がりそれがスクリーンに映った。

そこに映ったのは…


アルシオン:

「それではこれより、

 赤色連邦帝国の緊急広報放送を始めたいと思います。

 ノードノーク星系の皆様、始めまして…

 私は赤色連邦帝国連邦議会議長兼赤色連邦帝国主皇帝、

 アルシオン・オーラクルムと申す者です」


そこで映ったのは驚くべき事に赤色連邦帝国のトップ

アルシオン・オーラクルム皇帝陛下であった。


エスカ:

「へ、陛下!?」


突然の超ビックな人物の登場に目が点になるエスカ。

しかし目が点になったのはエスカだけではなかった。


周囲客員:

「アルシオンだ…

 アルシオン・オーラクルムが映っている!!」


周囲客員:

「炎の皇帝、自ら広報に出てくるだと!?

 それも俺たちに向けて?

 俺たちノードノークの星系民にか!?」


周囲客員:

「すげぇ、本当に赤色連邦帝国皇帝様だ…

 なんか背中からオーラが出てないか!?」


とエスカと同じか、それ以上に殿上人であるハズの

赤色連邦帝国皇帝の登場に興奮している様であった。

エスカが、冷や汗、滝汗を瞬時に流し始めたのだから

一般銀河民の反応はさもありなんである。

だがそんな人民の気持ちなどまるで意に介せず

アルシオンは放送を淡々と続けるのだった。


アルシオン:

「先日、我が赤色連邦帝国中央派遣第17艦隊

 エスカ・ロックフォード中将が

 貴星系の英雄レディン・ルーク氏に襲撃され

 雷撃戦で交戦をしたという事件が起きました。

 また、その戦闘内容が貴星系にて宇宙放送され

 その内容はヴァーチェ宙域どころか

 超重大事件として、白色帝国宙域全土、

 あるいは全ての六色帝国の本土中枢まで

 情報が響き渡っているという報告を聞いております」


そう言ってアルシオンは恭しく言葉を紡ぐ。


エスカ:

「あ、あの頭の悪い番組が

 銀河全土に拡散している…だと…」


そんな自分の預かり知らぬ所での

今の現在の銀河情勢に愕然とするエスカ。

むしろあのノー天気な番組が銀河に拡散されているとなると

目眩さえ覚えるほどの醜態であろうか?


だが、冷静に考えれば赤帝の提督が

雷撃戦で単艦襲撃されるなどそれだけの大事件である。

ならばそれは当然の事だと納得しても良い事案ではあった。

にも関わらずこう狼狽える所が、当事者ゆえの回避できない

納得の出来なさと鈍感性というモノであろうか。


アルシオン:

「我々、赤色帝国としても

 この案件に関して公式回答を遅らせるのは

 情報の拡散具合を見るに得策ではないと判断し

 ノードノーク星系民の皆様が待ち望まれる

 赤色帝国の公式見解を

 ここで発表させていただきたいと思います」


アルシオンは淡々と緊急報道の会見内容を口にした。

それに、おおおお、と周囲から歓声の声が上がる。


周囲客員:

「皇帝自らが雷撃戦の公式見解を出すだと!?

 流石はアルシオン・オーラクルム…

 他の色帝の皇帝とは器が違うな!!」


周囲客員:

「六菱の真性皇帝らしいからな…

 やはりモノの見え方が他の色帝とは違うのだ…

 そら恐ろしいな…炎の皇帝は…」


と、報道官を使わず自らが報道を行おうとする姿勢に

ノードノークの星系民達は興奮状態になって

それぞれが声を上げる。


エスカ:

「人心掌握の術は、流石、皇帝陛下といった所か…

 中立のノードノーク星系民にも、えらい人気だな陛下は…」


言って自陣の陛下の人気がまずまずなのを見て

妙に得意な気持ちになるエスカ。

エスカの最愛の姫メリシアが

若くしてその才を見抜いた大帝である。

そこはやはり不思議な誇らしさがあった。


アルシオン:

「さて軽い談話も無く、早々とした報告で申し訳ありませんが

 このエスカ提督とレディン氏の雷撃戦の勝負に関して

 赤色連邦帝国の公式見解を発表させていただきます。

 我々の見解と致しましては

 宇宙放送でレディン氏が仰られていた

 『引き分け』という判定…

 それに同意したいと思います…

 エスカ提督とレディン氏の雷撃戦勝負は『引き分け』

 これが赤色連邦帝国の公式見解でございます」


そう言って一礼するアルシオン。

その言葉に周囲の客員が震えた。


周囲客員:

「おいおい…ウチの所の英雄レディンが…」


周囲客員:

「ああ、あのレディン・ルークが…」


周囲客員:

「赤帝のナンバー2と雷撃戦で引き分けた事を

 赤帝に公式に認めさせたぞ!!

 それもそれを口にしたのは皇帝陛下だ!!」


周囲客員:

「紅の雷光と公式に引き分け!!

 凄い!! 凄い話ですよこれは!!」


そのアルシオンの言葉に

周囲は爆発しそうな勢いで盛り上がる。

自分達の地元の英雄が

現在、銀河で最も驚異視されている『炎の皇帝』に

直接名指しされれば興奮するなという方が無理であった。

そんな盛り上がりの反面でエスカは驚いた。


エスカ:

「公式見解で引き分け…か…

 よくそれで赤帝の連邦帝国議会が納得したな…

 ここは面子の問題で強引に勝ちを報道するかとも思ったが…」


そう独りごちして

エスカは公式見解の内容にいささか首を捻る。

エスカ本人としては、引き分けというジャッジは納得なのだが

赤色連邦帝国は連邦星系国家の集まりの巨大組織だ。

なので面子というモノをとても大事にする集団である。

その面子第一主義の連邦帝国議会が

この案件を引き分けで良いとしたのは少々疑問が残った。

少なくとも映像でミージェを使って

レディンの腕を切り裂いた光景は放送しているのだ。

あの光景を以て、勝ち、の報道でも良かったはずだった。

そう不思議がっている所にアルシオンの言葉が続いた。


アルシオン:

「実の所、この判定を決めたのは私でして…

 私の一存に近い見解でもあり、その点も踏まえて

 私自身がノードノーク星系のみなさんに話をしなければ

 筋が立たないと思いまして

 赤色連邦帝国議会議長の立場もわきまえず

 公式見解を私自身が発表させていただいたのであります…

 この『引き分け』の判定は

 私の主観によって決めた事となります」


そうアルシオンは独白し始めた。


エスカ:

「陛下がお決めになった?」


アルシオンが突然そう切り出した事にエスカの眉が歪む。

と同時にその言葉で周囲の客員は

赤色皇帝の、物腰は低いが、

逆にそれが恐ろしいという不思議な尊厳に

気持ちが一気に飲み込まれてしまった。

そのまま画面を凝視して皇帝陛下の言葉を拝聴し始める。


アルシオン:

「私はこの事件に対して

 エスカ提督との雷撃戦の勝負そのものよりも

 その後の宇宙放送『銀河deファイト』での

 レディン氏の言葉に感銘を受けてしまいました…

 私がこの戦いを引き分けに判定したのも

 それが最も大きい事だと思います。

 いえ、二人の雷撃戦そのものも

 正に銀河最強の座をかけての、

 頂点を目指す者同士の魂と魂のぶつかり合いであったと

 私自身認める所ではありますが…」


そうアルシオンは言葉を繋げていく。

その言葉に更に眉をひそめるエスカ。


アルシオン:

「しかしそれでもなお

 その後の放送の言葉が私には衝撃でありました。

 レディン氏は放送の中で言った…

 雷撃戦で銀河最強を目指すのは

 銀河深淵…未だ我々が見ぬ、

 最強のクラーリンと戦うための自己鍛錬であると…

 その言葉を聞いたとき、私自身、ハッとさせられたのです」


そう言ってアルシオンはそっと己の目を瞑る。


アルシオン:

「ノードノークの皆さん

 いえ、銀河の皆さん

 1つ、つまらない質問をさせて下さい。

 我々が1000年も続けている、この六色帝国戦争。

 この戦争は、何故、行われているのでしょうか?

 私は、それを今一度、皆さんに問いかけたい。

 いえ、過去の歴史的な禍根は沢山あり、

 その積み重ねがこの戦いを続けさせているのは事実でしょう。

 1000年も続けた戦争です。

 どの色帝同士も忘れることの出来ない沢山の怨恨禍根があります。

 その怨嗟がこの戦争を続ける理由なのだとしても良いでしょう。

 しかし、他方、もっと根源的で、最も重要な理由は

 『銀河深淵に到達するため』

 それではありませんでしょうか?

 今一度、我々は起源を思い出すべきではないでしょうか?

 銀河のみなさん、六色帝国戦争とは本来

 銀河深淵へ至るという目的

 その為の流れで、現在も行われているのです。

 それを皆で、今一度、見つめ直してみてはどうでしょうか?

 ならば六色帝国戦争等という

 銀河の誰もが、終わらせたいと思っているこの戦争を

 終わらせるためにはどうすればよいのでしょうか?

 その答えは簡単です…

 誰かが、謎と神秘に溢れる銀河中枢深淵の古代都市

 『ガイアポリス』にたどり着き、

 この銀河の歴史の真実を知る事です。

 それこそが、

 この、何時から、そして何のためにしているのか

 原因さえ定かではない六色帝国戦争を

 唯一終わらせる手段だと私は考えています」


アルシオンは、そこで話の切り出しに

『この銀河』というモノを持ち出して

今一度、銀河の全ての人間に

最も不思議で根源的な事を問いかけ、

何のための六色帝国戦争

そして1000年前から続けている戦争の根本

『銀河深淵』というキーワードにそれを集約させた。


アルシオン:

「さて、先日のレディン氏が行った放送を拝見し

 『銀河深淵への到達』という

 この銀河で最も重要な事を成し遂げるために

 レディン・ルーク氏は最大限の努力をされておられる…

 という事が分かりました。

 全ては『深淵』の為の自己鍛錬なのであると…。

 その具体的な方法論は確かに褒められた方法ではありません…

 色帝の名だたる雷撃戦使いの提督を襲撃する等

 色帝全てが憤慨するような無法であるのは事実です。

 だがしかし…

 しかしです…

 銀河の皆さん、こうも考えられないでしょうか?

 人が何か重大な大事を成そうとするとき

 それに何の努力も犠牲も無く

 貴重な成果だけを得られる等という事があるでしょうか?と」


そう言った時、アルシオンは自分の立っている壇上を

軽くダンッと叩いた。

その音でハッとさせられる聴衆。


アルシオン:

「レディン氏は自他共に認める銀河最高の宇宙冒険家…

 つまり冒険の本質を最も理解しておられる方です。

 その冒険者の摂理に従い、

 払う犠牲に自らの命も差し出して

 銀河最強のクラーリンと戦う資格

 『銀河最強の雷撃手』の実力を求めていたのです。

 これは驚くべき事です。

 銀河の皆さん、考えても見てください…

 各色帝が威信をかけて送り出している精鋭の中央派遣艦隊に

 自身が高性能艦を所有しているとはいえ

 単艦突撃で提督に雷撃戦を挑む等

 皆様は出来ますでしょうか?

 それも、それがクラーリンと戦うための

 一種のトレーニングの為に…です…。

 つまり、レディン氏はトレーニングにおいてさえ

 命を代償にして最強の実力を鍛錬しているというのです。

 私はそれを知って驚きました。

 己の全てを投げ打ってでも

 目的の為に邁進するその鋼の精神に…

 そして、これには惜しみなき賞賛の声を上げるのが

 色連邦帝国という存在の名誉ある行動ではないのか?

 と、そう思ったのであります

 そして私は、その精神にこそ

 『引き分け』を判定するに値する価値があると

 愚考するのであります…」


そうアルシオンは演説を続けた。

その演説を聞いてその場の周囲客員は

アルシオンの声明の理路整然さと

度量の広さに飲み込まれてしまった。

エスカ自信もアルシオンの話術に乗せられて

一瞬でその気にさせられてしまった。

と同時に周囲を魅了し始めたこの状況が酷く快感でもあった。

人を武力だけでなく話術においても

いつの間にか平伏させてしまう器の広さ。

やはりこの方こそ、我々が戴く皇帝陛下なのだと。


アルシオン:

「『銀河最強』

 震える言葉です…

 この歳になって、その様な夢想の言葉を

 しかし、恥ずかし気もなくレディン氏から聞かされると

 不意に私も若返って

 少年の時のような気持ちにさせられます。

 それと同時に、私自身が私を思い起こされるのです。

 私は幼い頃には何を探していたのかを。

 今でこそ皇帝として、赤色連邦帝国の重責と

 多忙な毎日に忙殺されているこの身でありますが、

 赤色連邦帝国皇帝が目指すべき本当の仕事とは何か?

 それを思い起こせば、

 レディン氏の言葉が私自身を揺り動かします。

 赤色連邦皇帝とは何か?と…

 それを己に問いかけ始めたとき、

 その答えはもっと単純な事なのではないでしょうか?

 つまり、『銀河深淵への到達』

 レディン氏と同じように、

 銀河最強のクラーリンと戦い、それを突破し

 伝説の汎銀河帝国帝都『ガイアポリス』に

 再び人類が足を踏み入れる事…

 それを導く者こそが、赤色連邦帝国皇帝…」


そう言ってアルシオンは深い息をついた。

エスカはそのアルシオンの発言を聞いて息を飲む。

穏和な人柄の人物ではあるが、

反面、その意志は通り名の如く炎の様に熱い人でもある。

その陛下が『銀河深淵への到達』を遂に口にされた。

それは赤色連邦帝国の軍人としては

身が震える言葉であった。


いやそれは赤色連邦帝国の人間だけではなかったろう。

今、この旅客輸送船で同じように運ばれている周囲の客員も

『炎の皇帝』の意志をその言葉で感じ取ったに違いない。

皇帝が放った間違いない強い意志の圧力

その圧に皆が震えていた。


周囲客員:

「お、おいアルシオン陛下が…」


周囲客員:

「ああ、あの炎の皇帝が遂に…」


周囲客員:

「銀河深淵へ自ら赴く決意を表明したぞ!!」


周囲客員:

「公式放送の本命はこっちの方か!!

 赤色連邦帝国の本格的な中央進軍の宣言!!

 相変わらずやるときは大胆な事をやりやがる!!」


客員のそれぞれが、各々に感想を口にしながら

かねてより巨大視されていた皇帝が

遂に銀河中枢に動くという予感に

驚きと期待を込めた声色を上げていた。


アルシオン:

「かといって過去200年前のナストア帝の様に

 今の状況こそ、頃合いや良し等と信じ込んで

 これから無策に銀河深淵に突撃する等と

 性急な事をしよう等という気は私にはありません。

 何分、それで先帝は、長い間、国力回復に尽力され

 その半生を費やされたのですから…

 今の赤色連邦帝国は軽々に

 銀河深淵への進行を考えることはできないのです。

 現実とは中々、心で思うほどにはままならぬモノ。

 もし銀河深淵への突撃などと

 色帝全力の大博打を打つとしても

 もっと力を溜めてから、と私は考えております。

 そう言う意味では、

 レディン氏が放送の最後で語っていた言葉と同じ

 確実に銀河深淵にたどり着けるよう

 下準備を万全にしなければならない…

 と言った所であります」


その全赤色連邦帝国民が全体昂揚してしまいそうな言葉に

次にはしっかりと釘を刺すアルシオン。

何せ先帝はアルシオンの父親で、

200年前に軍事力が疲弊した赤帝を立て直すのに

尽力し続けた皇帝陛下であったのだ。

そんな親の背中を見て育ったのだから

アルシオンの行動には常に『用意周到』という要素が

付きまとわなければならないのだった。

その釘差しを聞いて、ふーと息を吐くエスカ。


そう『下準備を万全にする事』


それこそがエスカに与えられた任務。

ヴァーチェ宙域に楔を打つ事なのだ。

その現実を突きつけられて、

エスカの中には別の熱い闘志が沸いてくる。

その為のわざわざのノードノークへの視察だ。

全ての流れは間違っていない。

例え奇策の準備だとしても。


アルシオン:

「さてレディン氏の放送に当てられて

 少々、赤色皇帝の様な演説をしてしまいましたが

 基本的な見解広報としては最初に述べたとおりに、

 エスカ提督とレディン氏の雷撃戦勝負は

 赤帝の判断としては『引き分け』とさせていただきます。

 という内容で公式見解的な放送としては

 この広報を終わる事としますが…

 ある一種の私信として…

 レディン・ルーク氏に直接、

 私、アルシオン・オーラクルムが申し上げる」


そんな赤帝の広報活動と

予告としての銀河中央への進軍への宣言の後

アルシオンは不意に物言いの声色を変えてそう切り出した。


アルシオン:

「銀河深淵『ガイアポリス』を目指す以上

 私自身も最強のクラーリンとの戦いを覚悟しております。

 まだ遠い未来の事で、何時になるかも定かではありませんが

 我が剣の前に、最強のクラーリンを切って伏せさせる事は

 1000年をかけた赤色帝国全ての渇望であります。

 いや銀河全てと言っても過言では無いと思います。

 故に『銀河最強』を目指すその意気は、私も望む所。

 他方、赤帝の公式見解としては『引き分け』としますが

 エスカ提督にはヴァーチェ宙域での任務があり

 これ以上レディン氏に狙われる事は赤帝としては好ましくない。

 故に、エスカ提督の意見を無視して決めるのは僭越ですが

 私的には『エスカ提督の負け』でさえ良いと考えています。

 エスカ提督にこれを聞かれたら憤慨されてしまうでしょうが…

 しかし、その方が都合が良い場合には

 そうする事も赤帝の柔軟さであると信じます。

 エスカ提督が負けであるのならば

 レディン氏の銀河雷撃戦ランキングは繰り上がり

 エスカ提督は2度とレディン氏に

 狙われる事もないでしょうしね…

 そして、部下の負けという雪辱を晴らすのは

 その上司であると、この銀河では相場が決まっております。

 なので『銀河最強』という言葉をかけて

 己を試すのならば、次は私に挑戦して貰いたい…

 今は互いに、その時期ではないと考えますが

 同じく銀河深淵を目指す者同士。

 銀河最強のクラーリンと戦うことを覚悟した者なれば

 いずれの日にか直接対決としゃれ込むのは

 如何でありましょうか?」


挿絵(By みてみん)


最後の方に悪戯っぽい笑みを浮かべて

アルシオンはそう語った。

その言葉を聞いて心臓が止まりそうになるエスカ。


エスカ:

「へ、陛下?!」


そのアルシオンの言葉は

事実上のレディンへの決闘状の投げつけ宣言であった。

それにはこれ以上、エスカを狙われない為の

赤帝連邦軍の軍事的な狙いも入っていたのだが

それでもその囮として赤色皇帝自らが名乗りを上げて

決闘状を叩き付けたのである。

宇宙冒険家宛の決闘状を

皇帝自らが公式放送で送るなどと云う事は

銀河が仰天する程の前代未聞の行為であった。


周囲客員:

「おい、これって…」


周囲客員:

「ああ、そうだな…これって…」


周囲がアルシオンの言葉の意味を理解してざわめきだした。


周囲客員:

「つまり、あの『炎の皇帝』が

 ウチのレディン・ルークを銀河最強たる器と認めて

 決闘状を叩き付けたって事か?」


周囲客員:

「そう言う意味にしかなるまい!!

 時期は明言されなかったが、

 銀河深淵を目指そうとするその時に

 二人の銀河最強を自負する雷撃戦の使い手が

 どっちが最強なのかを決めるべく、決闘する…

 それを赤色連邦帝国皇帝の方が

 自ら宣言したって事だ!!

 これはどえらい事だぞ! おい!!」


周囲もそんな感じでアルシオンの衝撃的な言葉を理解し

一気に爆発する様な昂揚状態になった。

それが皇帝血族が持つ下々とは隔絶した人心扇動の技であった。

元々、アルシオンの気質はノードノーク民には

嫌われる系統ではないだろうと思っていたが

この演説による決闘状の叩き付けで、

いっきに『好感』の方向に傾いたであろう。

宇宙冒険家とその周辺などというモノは

策謀等というネチっこい手段よりも

直情的な決闘での白黒付け等を好むモノだ。

その様な相手に、最も好む弁舌を使った所が

扇動政治家としてのアルシオンの優秀さといった所か。

少なくともノードノーク民にも

これで確実にアルシオンのファンが出来てしまった事だろう。


そしてエスカは頭を抱えるしかなかった。

これからエスカがやろうと考えている事に対しては

今のアルシオンの演説は究極の援護射撃になっていたのだが

しかし赤帝の帝国軍人としてみれば

自陣の頭領が自ら出陣して白黒付けると言い切ったのである。

その宣言は連邦軍組織としては面子丸つぶれであり

連邦帝国議会は赤色帝国皇帝の勝手な決め事に

越権行為ではないかと議会が紛糾する事だろう。

何と言うことを公然の場でしてくれるのだろうか…。

思慮深い人柄なのに、

非常に重要な事は、事後承諾で決めてしまう所は

悪い意味での『苛烈に早い炎の皇帝』の揶揄でもあった。


アルシオン:

「以上で赤色連邦帝国の

 エスカ提督とレディン氏の雷撃戦に関しての

 公式見解の放送を終わらせて貰います。

 そして、いずれの日になるか分かりませんが

 銀河最強と目される宇宙冒険家との戦い

 心の底から楽しみに待ち望む事とさせて貰います」


そう結んで悪戯っぽくウィンクを最後に入れては

アルシオンは赤帝の公式報道を切ったのであった。

放送が終わった後に、当然客船内では

ウォォォォという雄叫び声が木霊したのは言うまでもない。

逆にエスカは項垂れていた。


炎で象徴される赤色帝国とはいえ

自分達の頭領は、やるとなれば何と情熱的で

炎の様なお方なのだろうか…と…。






想定外の放送が入り頭が白くはなったモノの

明確な時期を明言しない巧みな話術もあって

ともかく自分の仕事に集中しようと気を取り直すエスカ。


少なくとも皇帝陛下が自らの身を以て

エスカの安全を確保してくれたのである。

これであのインチキ宇宙冒険家に出会っても

いきなり出会い頭に切り伏せられるという

可能性は減ったといえる。


それは潜入調査をしようとしているエスカにとっては

非常にありがたい援護射撃であった。


故に気を取り直して

ノードノークの視察をエスカは開始した。



輸送船がスペースポートにドッキングして

エントランスゲートが開くと

流れのままに入国管理の手続きを行い

偽造の身分証と物理的に変化させた変装を用いて

エスカはノードノークの宙域内に潜入する。


とは言っても宇宙冒険家志望の一攫千金目当てか

自由な風土を求めての無政府主義者が集まってくる土地柄だ。


偽造の身分証も、

かなりいい加減な内容で入国できるし

もめ事は自分で対処する様にとの事で

とてもラフな注意が指示されている。


エスカは宇宙冒険家の建て前上の行政府が置いてある

惑星ノークホーツには向かわずに、

ノークホーツを中心に

重力干渉点で衛星化している小惑星コロニー

-大きな所で5拠点あるのだが-

その最も有名なコロニー『エドラン』に輸送船で向かい

そのスペースポートに到着した。

そして『エドラン』のポートで

コロニーへの入国管理手続きを済ませて

コロニー内部へと入っていく。


人類種にとっては、1G付近の重力がある

大地と大気層が球形の惑星型入植地は

精神衛生上は良いモノではあるのだが、

宇宙冒険家などという宇宙のあちこちに行くような輩には

惑星からの大気圏往復というのは面倒な移動であり

この様な小惑星コロニーでの、

宇宙に出るのに手早く、人工重力で居住性も悪くないという

交通アクセスの良い所が好まれるのだった。

だからこそ巨大コロニーの1つであり

全てのゲートに交通の便が良い『エドラン』は

宇宙冒険家が集まる有名なスポット地であった。


……

そうノードノークの案内パンフレットに書いてある。


エスカはノードノークの宇宙冒険家を見に来たのだから

それなりに自由気質の無政府的政府の中で

楽しく暮らしている入植民が居るノークホーツに行くよりも

冒険者でごった返しているエドランを視察する方が

目的内容としては意味があった。


なのでエスカの脳内に入っている

ノードノークのデーターベースを調べ

それを指針にエドラン視察を開始した。


この視察の内容如何で

これからの戦略の詳細が決まるのだ。

故に奇妙な気合いが入る。

エスカは睨む様な視線でエドランを見回した。


街を歩きながら、一癖もふた癖もありそうな

エドランの市街地を歩く住人を見て

どいつもこいつもが宇宙冒険家のロクデナシに見えて

エスカの頬が僅かにほころぶ。


この街の雰囲気の中の何処かに

赤帝の宇宙冒険家では出せない何かの味があるのだと思えば

どんなアウトローも貴重な観察対象に思える。



逆に言えば

それは赤帝の宇宙冒険開拓に対する焦燥感でもあった。



赤帝の門前領域アリッソ宙域でも、

古都ロルグベア星系は

今では冒険者の集まる冒険者拠点になっていた。


しかし、ノードノークの様なそこの星系民に

自治を全て投げている等という無政府状態ではなく

やんわりとした赤帝支配の下に

宇宙冒険家を赤帝が公的に雇っている機関と

ノードノークの様にあまり縛らずに

自由にさせている冒険者集団の2系列で

宇宙開拓を競わせているのだった。


その赤帝が指導している宇宙開拓体制は、

緑帝と華帝以外は何処も似たようなモノで

2つの性質の宇宙冒険家のやんわりとした競争で

それなりの成果は出せてはいた。


しかし緑帝と華帝の2帝国は

他の4帝国とは異なった宇宙開拓制度を取っていた。


華帝国の宇宙開拓そのものを放棄した事は

この際、無視するとして

色帝国の中でも最も驚く体制にしたのは緑帝だった。

緑帝はノードノークを支配星系として連邦編入せずに

星系民に自治を全面委任したのである。


その様な緑帝の行った、

ノードノークは宇宙冒険家集団に完全委任し

宇宙冒険家の持ち帰った財宝を

緑帝と通商貿易で貿易取引するという政策は

一見すると成果不安定になりそうであったが

逆に上手く働き、ノードノークは白色帝国領域の中で

現在は最も宇宙開拓が進んだ星系となっていた。


どの色帝も宇宙開拓には十分な力を入れているのだが

何か歯車の1つが噛み合わないのだろうか

ノードノークの様な、最早、1つの武装国家並になった

宇宙冒険家集団の自治組織が、積極的に統治活動し

自由気ままに開拓していく速度に追従できず

それぞれの色帝が雇っている宇宙開拓組織は

ノードノークに成果が水を空けられている

といった状況になってしまっていた。


つまり強権による締め付けは

宇宙冒険家にとっての天敵とでも言うのだろうか?


その様な状況もあって、赤帝の連邦帝国議会内でも

ロルグベアをノードノークの様な自治解放にしてはどうか?

という意見が、近年、強くなってきており

宇宙開拓に対する体制改革に関しては

帝国全体で近々の課題となっていた。


そんな連邦議会の審議案視察という点でも、

今のエスカが潜入調査する行動は無意味ではなかった。

ただし諜報組織に任せている仕事を、

提督自身が乗り出して行っているというのは

少々、越権行為であると言えなくもないが…。


それでもやはり該当人が直接その目で状況を見るというのは

他の代理人に任せるよりも情報の濃度…

あるいは狙っている事への情報の確度が違いすぎるものであり

このエスカの視察行動は、

むしろ作戦立案的には当たり前の事と言えただろう。


少なくとも周りの反対を押し切って

強行視察に踏み切ったエスカにとっては

自分のこの行動は最も合理的な行動と信じれた。


そんな思いでエスカは街を歩いていたのだが…


ゴチャゴチャした街並み…

整然とはしていないが、しかし機能美には溢れ

街の外観は美しいとはとても言えないが

行き交う人間の活気で人間美に溢れているコロニー

エドラン。


エスカが今歩いているエドランの街の様を見ていると

ロルグベアの宇宙冒険者都市もたいがい自由ではあったが

それを遙かに超えるフリーダムさを感じれた。


という風な良い言い方をしたが

つまるところ、更に自由度が上がっている分だけ

ガラも更に悪そうではあった。


しかし、このガラの悪さが、

逆に成果の差になるのだろうか?


とエスカは街を歩きながら少し悩んでしまう。


ガラは確かに悪いが、その分、生命力と活力もより溢れており。

どいつもこいつも、行き交う者みな宇宙冒険家に見えるのが

冒険者の星系としては栄華を極めていると言える。


そしてエスカは脳内パンフレットを閲覧しながら

宇宙冒険家になるためには、

まずここに行けとガイドされている

宇宙冒険家のギルドがある場所に向かった。


一応、公的パンフレットに載っているのだから

モグリの宇宙冒険家ギルドではない。


適正をちゃんと試験等で調べて採用を考える的な

半公的機関の分類の冒険者ギルドのハズである。


少なくともアリッソのロルグベアの基準では…だが…。


アリッソ宙域のロルグベアで赤帝が直接管理している

公的宇宙冒険家組織『炎の騎士団』に相当する

ノードノークでのメジャーな冒険者ギルドは…

という検索で、パンフレットを検索した結果が

『エドランの夢の酒場亭』という

有名なノードノークの宇宙冒険者ギルドであり

そこをエスカは訊ねたのだ…が…。


カーン:

「!? 本当に酒場なのかよ!」


案内されているパンフレットの地図を頼って

該当する場所に来てみれば、

とても大きな酒場がそこにあったのだった。


看板にも『エドランの夢の酒場亭』と書いてある。


カーン:

「こういうのは普通、気分的な文句じゃないのか!?

 半公的組織が本当に酒場経営かよ!

 どこまで砕けてるんだ、この土地民!!」


と、その様子に破顔するエスカ。


脳内データベースのパンフレットに

『宇宙冒険家になりたいのなら

 カウンターのバーのマスター

 ウルフェンに話しかけてみよう!』

とか書いてあるわけだが…


カーン:

「本当にこの案内通りでいいのか…」


とエスカは腐りながらパンフレットの指示に従って

バーのカウンターに向かう。

そこにはパンフの紹介に載っている

むさいハゲのオッサンのウルフェンなる人物が居り

酒場のマスターとしてグラスを磨いていた。


あまりにも「っぽい」その姿にまた頬が引きつり

本当にここがノードノークの

半公的機関の宇宙冒険者ギルドなのかと

パンフレットの内容を疑うエスカ。


しかし冒険者の酒場らしく、周囲で酒を飲んでいる奴らも

見事にロクデナシ系の冒険者の出で立ちをしており

ここが宇宙冒険家の集まる場所である事は

間違い無さそうだった。


カーン:

「ええいっ!ままよっ!」


そう言ってエスカは思い切って

そのマスターの前に歩み寄った。


ウルフェン:

「なんだい、黒髪のお嬢さん…

 俺に何か用か?

 って言っても俺への用は1つしかねーだろーが…

 お嬢さん、宇宙冒険家になりたいのか?」


とエスカが変装している黒髪の娘に

ウルフェンは話しかけてきた。


カーン:

「ああ、そうだ…

 宇宙冒険家の口を探しているんだ…

 私の名前は、カーン・シャ・シュネゴ」


そう言ってエスカは物理的に変装した変装擬態の自分、

紺の髪でロング、宇宙冒険家らしいラフな格好の

カーン・シャ・シュネゴなる人物として言葉を返した。

潜入調査ではよく使う『物理的な』変装の自分の姿の1つである。


ウルフェン:

「あんた、A級人類?」


そう言ってウルフェンはA級人類以上にしか関知できない

空間歪曲を作り出しては、エスカにそれを送ってきた。

それが軽い試験的な彼の挨拶なのだろう。


カーン:

「そうだ」


エスカはその空間歪曲を自分の空間歪みを作り出して緩和し、

歪みを中性化してその質問に言葉と実力で答えた。


ウルフェン:

「ふん…そうかい…

 A級人類なら仕事は幾らでもあるがね…

 さっき入った要望だと、キャプテン・ホークネルの船団で

 新規にA級人類の仲間募集が入ったからね…

 そこを面接したらどうだい?」


と、そのマスターはエスカが直ぐには理解できない

仕事の内容を斡旋をしてきた。

ウルフェンはエスカの脳内に

それらの情報データーベースを送りつけてくる。

エスカはその情報を受け付けて、プロトコル解析の後に

データ展開しながら読むのと同時に口頭でも尋ねた。

本当は封印しているS級人類の解析能力まで使えば

一瞬でデータベースの理解も出来たのだが

今の『設定』がA級人類なので、

そこら辺の解析にラグが出るのも

演出しなければならないのだった。


カーン:

「あ?キャ、キャプテン・ホークネル?

 誰だそれは?有名な奴なのか?」


当たり前の事とはいえ、

聞いたこともない人間の名前を口にされて、

そこの仕事を斡旋されたのだから

それは誰だと尋ねるのが人情であろう。

データベースを参照しながらも

口頭でそれを尋ね返したのだが…。


ゴウザ:

「あ?てめえウチの提督の名前を知らないとはモグリだな?」


と、エスカがマスターとそんなやり取りをしていた時に

近くに座っていたガタイの良い男が、

話に割って入ってきたのだった。


ウルフェン:

「ちょっとゴウザ…

 募集かけてきたのはお前ん所だろう?

 仕事の斡旋は俺の仕事なんだから割り込まないでくれんかの」


と話に割り込んできた男にマスターは睨みをきかせる。


ゴウザ:

「ウチの提督の事を知らねぇっての事は

 余所モンだろう?こいつは…

 でもいいぜ…女だろうが子供だろうが

 宇宙冒険家ってのは強ければいいんだからよ…

 キャプテン・ホークネルの所のナンバー3の

 この俺が直接試験すりゃ、それでいいんじゃねぇか?」


しかしゴウザと呼ばれた男は

そう言ってマスターの言葉を牽制する。


ウルフェン:

「ああん?俺の仕事を楽にしてくれようってのか?

 まったく、ホークネルの所の奴は、

 相変わらず、どいつもこいつも脳筋だな…

 ま、確かにどっかの体裁の良い企業の

 社員面接するわけじゃないんだ…

 実力あってナンボの宇宙冒険家…

 おい、お嬢ちゃんよ

 宇宙冒険家の募集出してる所の奴が

 直接実力を見たいって言ってるんだが、どうするよ?」


と、そうマスターは、言いがかりを付けてきた男の

言わんとすることをエスカに通訳する。


カーン:

「実力が見たいというのは、何をしろって言ってるんだ?」


なんとなく察しのついたエスカだったが

あえてそれを聞いてみる事にした。


ゴウザ:

「そんなモン雷撃戦の模擬戦に決まってるだろうが!

 宇宙冒険家は雷撃戦が出来てナンボだぞ!」


その問いかけにゴウザと呼ばれた男が叫びながら答えた。


(ああ、やっぱりそう…)


と予想通りの答えが返ってきて

エスカは妙な溜息をつくしかなかった。


ゴウザ:

「宇宙冒険家は、銀河で一番の雷撃使いの集まりだぞ!

 赤帝のエスカだかなんだ知らんが

 ノードノーク大将のレディンと良い勝負したから

 女でもやれるとか思ってるんだろうが

 世の中は、そうは甘くはねぇって事を教えてやるぜ!」


そうまくし立て鼻息を荒くするゴウザ。


カーン:

「あ?」


そんな子供じみたたわいのない売り言葉であったのだが、

エスカの何かにそれがカチンと来た。


カーン:

「ちょっと待て…

 性別と雷撃戦の腕なんざ

 A級人類以上だったら関係ないだろ?」


エスカはそう言って

ゴウザの偏見に満ちた言葉に訂正を求める。


ゴウザ:

「雷撃戦は、魂の勝負よ!!

 んでもって魂のここ一番の強さってのは

 男の方が上に決まってる!!」


そのエスカの言葉にゴウザも興奮して答え返す。

その返し言葉が致命的だった。


カーン:

「男の方が魂のここ一番の強さは上だぁ?

 なんつー短絡思考っ!!

 おーし、上等だっ!

 受けてやるよ雷撃戦!

 A級人類には、男も女も関係ない事を

 テメェに教えてやる!!」


言って即座にエスカは護身用のナイフを抜いた。

その光景を見て瞬時に周囲の野次馬から

無責任な喝采の声が上がる。


野次馬:

「何だ!?喧嘩か!?

 いいぞネェちゃんっ!

 宇宙冒険家わかってんじゃねーか!!」


野次馬:

「おいおい、相手はホークネルん所の

 ゴウザじゃねぇかっ!

 ゴウザ相手に良い度胸だな、ネェちゃんっ!!」


深い事情も知らないのに、手に持った酒を持ち上げて

勝手に盛り上がり出す周囲。

それが宇宙冒険家のいい加減でお祭り好きな気質なのだと

エスカによく理解させてくれた。

なるほど、宇宙冒険家とは、この様な短絡思考の動き方で

十分引きつけられるらしい。


(ロルグベアとそこは変わらんな…

 いや、むしろいい加減さは、遙かにここの方が上か…)


とゴウザの挑発に激高しながらも

片方で本題の視察も淡々と行うエスカ。


ゴウザ:

「その意気やよしっ!って所で

 威勢の方は合格だが、あとは腕の方だな!!」


言ってゴウザも背後からハンマーの様な物を取り出した。

その光景にまた野次馬達が興奮し出す。


野次馬:

「おいゴウザ、相手はべっぴんのネェちゃんなんだから

 跡が残るような傷は付けてやんなよ!!」


野次馬:

「いや、治療なら俺に任せとけ!!

 そういうの専門だぜ?俺は!!」


等々と無責任な歓声が更に広がる。


ゴウザ:

「どうもネェちゃんは余所者の様だから

 せめてもの情けで教えておいてやるが

 キャプテン・ホークネルの所の俺たちは

 クラーリンの中尉級を倒した猛者だぜ?

 ネェちゃんにそんな大物と戦った

 俺たちの相手ができっかなぁ!?」


そう挑発してくるゴウザ。

その言葉にまたカチンと来てしまったエスカ。


(あ?中尉級程度で粋がってるんか?コイツ…

 そんなのウチの提督達でも簡単に倒せるわボケが!!

 私達は大佐級艦隊に凹られて

 それでも大佐級討ち取ってきたんだよ!!

 中尉如きで粋がってるんじゃねぇよ!!)


と心の中で絶句したが、流石にそれは口に出せないエスカ。

ともかく、A級人類に擬態して

パワーリミットをかけまくっている今なので

そこそこの辛勝を演出しようと考えていたのだが

その言葉で気が変わった。

この脳筋をメタクソにしてやろうと

先ほどまでの予定を変更する。


こういう煽りに直ぐに釣られるのは悪い癖だなと

分かってはいるのだが、どーも気性的には

自分は宇宙冒険家とそこら辺は大差が無いらしい。


エスカは、そう納得して笑わざる終えなかった。


カーン:

「御託は良いよ、ええっと、

 キャプテン・ホーなんちゃらのゴウゾさんだっっけ?

 かかって来な…」


そう言ってエスカは人差し指を

ちょちょっと動かしてゴウザを挑発する。


ゴウザ:

「上等だ、ネェちゃんっ!

 泣いて謝っても、容赦しねぇからなぁぁ!!」


エスカの軽い挑発に簡単に乗るゴウザ。

ハンマーを持ったまま猛烈な勢いでエスカに飛び込んできた。


ゴウザが飛び込んだ瞬間に

二人の間に空間の歪みの様なモノが生まれた。

だが、それは一瞬生まれた後に、瞬時にかき消える。


ゴウザ:

「何っ!? 俺の結界空間が中和された!?」


ゴウザは飛び込みと同時に仕掛けた拘束の結界空間が

完全に中和されたのに驚くしかなかった。


カーン:

「3階の結界空間だが2重構造化して

 多段網にしていたのは悪くない作りだ…

 流石はノードノークの冒険家って事か?

 見た目はただの脳筋だが、工夫してんな…

 だが、生憎だな…

 そんなモノは私には効かんっ!

 結界拘束してもいいが、せめてもの礼儀だ。

 直接攻撃でしとめてやるよ!」


そう言ってエスカはその場から体を翻らせ

ゴウザのハンマーを寸前の所で交わした。

そして交わすのと同時にカウンターで

己のナイフを走らせゴウザの右腕を切りつける。


ゴウザ:

「グガッ!!」


ナイフから送り込まれる空間歪の攻撃に右腕が痺れ、

持っていたハンマーを落とすゴウザ。


カーン:

「複素結晶を破壊しては、

 お前の商売もあがったりだろうから

 神経経路に麻痺毒を送った…

 喧嘩を売ってきた相手には寛大すぎる処置と思ったが

 お前の所の、キャプテン・ホーなんだっけ?

 その名誉を傷つけたのは事実だしな…

 それについては謝罪しておく…

 それが結晶破壊しない誠意だと思って欲しい。

 ともかく、試験ならこれで終わりでいいか?」


腕を麻痺されて床にへたり込むゴウザを見下ろして

エスカはナイフを突きつけてそう淡々と語る。


ゴウザ:

「俺を一撃で切り伏せただと…

 ネェちゃん…お前は一体…」


ゴウザは見上げる女冒険家の底知れぬ強さに

畏怖の思いで声を上げるしかなかった。


ウルフェン:

「ふむ…腕はA級のα+って所か…

 これは中々、腕の立つのがやって来たな…」


ウルフェンはその戦いの様子を見ては

立体スクリーンを出してコップを磨きながらも

思念波でカーンなる人物の情報を記録していく。


野次馬:

「うぉいぉぉ!!あのネーちゃん

 ゴウザを一撃でしとめたぞ!!」


野次馬:

「すげぇ奴がやって来たっ!!」


野次馬:

「ネーちゃん俺らの船団に来なよ!!

 ネーちゃんなら即エースになれるぜ!!」


と勝負を面白がっていた野次馬達は

エスカの華麗な勝利に拍手喝采と歓声の声を上げる。

その周囲の様子を見てエスカは呆れるしかなかった。

なんという陽気な奴らなのだと…


カーン:

「あー、まー、行きがかり上で勝負する事になったが

 まだノードノークには不慣れでな…

 何処に入るにしても、もう少し色々見させてくれないか?」


いきなりの雷撃戦勝利で大人気になった自分に

隠密行動で来たハズなのが、とんだ目立ちになり

慌ててエスカは周囲をそう言ってなだめる。


ゴウザ:

「それだけの腕があれば文句は何もネェよ…

 推定でしかないがウチの船長とも互角かもしれん…

 女だと思って侮ったのは悪かった…

 それも1つの試験だったと笑って流してくれねぇか

 ネェちゃん…

 キャプテン・ホークウェルの船団は

 お前さんなら、心から歓迎するぜ!」


エスカに切り伏せられたというのに

逆に嬉しそうな顔になり、

動く逆の腕で握手を求めてくるゴウザ。


その様子を見てエスカは僅かに微笑むしかなかった。


なるほど、ノードノークの宇宙冒険家とは

この様に完全な実力至上主義なのだと…。

怨恨の後腐れなどよりも

まず実利主義であるという事がよく分かった。


その冒険者気質はノードノークも変わりなし…

というよりもノードノークが

この銀河で一番その気性の塊だったのかもしれない。


その時だった。

後ろからエスカに声をかけてくる男が居た。


エンデ:

「中々、強ぇなぁネェさん…

 その強さに敬意を表して、

 お近づきにあっちで俺と一杯やらねぇかい?」


と赤みの強い茶髪の好青年が

エスカに声をかけてきたのだった。


ウルフェン:

「なっ、お前、エンデ!?エンデか!!

 久しぶりだな!!

 最近は全然、店に顔を出してなかった癖に!!」


その青年の登場にマスターの歓声の声が響く。


野次馬:

「おい、エンデだぞ…

 撫で斬りのエンデがいやがる…」


野次馬:

「ネーちゃんと一杯やろうと思ってたのに

 あのエンデがお誘いかけてんのかよ…

 けーー、畜生っ!

 割り込んで撫で斬りされたら敵わねぇ…

 退散だ、退散…」


と、その青年がどんな感じの人間かが

何となく分かる声が上がり

エスカを取り囲もうとしていた野次馬の勢いはそこで削がれた。

だが、一番慌てたのはエスカの方だった。


そのエンデなる青年が近づいてきた一瞬に

エスカにだけ分かる様に思念圧を飛ばして来たからだった。

そしてそれは、最近出会ったばかりだが

『良く知れた』思念の空間圧だった。


カーン:

「なっ!何でお前がこんな所に居る!?」


擬態行動をしているのも忘れて

思わず大声を上げるエスカ。

しかしエスカは一瞬に垣間見えた空間圧の情報に

その男の正体を見切って慌てるしかなかった。


エンデ:

「あれぇ?貴方とは何処かで出会いましたっけ?

 おかしいなぁ…

 多分、初めて会ったハズなんですけれどーー」


と、そのエンデなる青年はやれやれとばかりに顔に手をやり、

無理矢理な、すっとぼけをする。

その言葉に『今の自分の設定』を思い出したエスカも

あっとばかりに迂闊な自分の言葉に

思わず周囲をキョロキョロとして押し黙った。


エンデ:

「まぁそんなわけで、

 ちょっとあっちの隅っこで二人で飲みませんか?

 今の華麗な勝負を祝福して…」


と酒を飲む場を促すエンデ。

それにエスカも猜疑の目を向けながらも

ここで暴れるのは得策ではないと考え

その言葉に甘んじることにした。


そして二人は酒場の隅っこで

互いに酒を飲んで語り合う流れになった。




エスカ:

(なんでお前がこんな所に居る!?)


思念波での声出しにおいてエスカはそう叫んだ。


レディン:

(それは俺の台詞だ!!

 何で赤帝派遣艦隊の提督様が、

 俺のホームグラウンドに遊びに来てるんだ!?

 まさかアルシオン陛下様の引き分け判定が不服で

 雷撃戦の本当の決着を付けに来たのか!?)


その言葉にエンデなる人物に物理的に変装していた

レディンは呆れた様に返した。


エスカ:

(そう言えば、

 ここはお前のホームグラウンドだったな!

 だから居ても不思議ではないが

 エドランの酒場なんてピンポイントな所に

 どうしてお前が居るんだ!!

 こっちは私の仕事の都合で来てるんだ!!

 お前とのリベンジマッチなんか最初から考えてないわ!!)


そう思念波で会話しながらも、黙々と二人は酒を飲む動作をする。

周囲の野次馬はそのピリピリとした謎の祝杯に、

遠目から眺めながら困惑するしかないのだった。

レディンが作った『設定』の撫で斬りのエンデなる者も

A級人類としては相当の実力者なわけで

突然現れた美女の凄腕冒険家という十分な腕持ちが、

何やらの知り合いの様な感じでもあり

それが沈黙しながら眉間に皺を寄せて酒を飲んでいるなど

気が気でない絵だったから、皆の注目が集まるのは当然だった。


しかしそれ以上に気が気でないのは当の本人達だった。


レディン:

(ああん?仕事ぉ?

 何のだよ? もしかしてアレか?

 公式放送でのアルシオン陛下と俺の対決の日取りは何時かとか

 そういうのの伝達に、わざわざアンタが来てくれたのか?)


エスカ:

(アホか!!

 陛下のあれはリップサービスに決まってるだろうが!!

 赤色連邦帝国の皇帝陛下が、本当に自分の意志と都合で

 宇宙冒険家風情に私闘なんぞ出来るわけねーだろ!!

 そんなの連邦帝国会議で通るわけもねーし

 皇帝越権行為で皇室典範のガメットからもペナルティ食らうわ!)


レディン:

(ちぇっ!

 相変わらず色連邦帝国ってのは糞めんどくせぇ

 がんじがらめの人達です事!!)


エスカ:

(お前等、宇宙冒険家がフリーダム過ぎるだけだ!!)


レディン:

(あっそっ!)


とお互いに罵声の様なマシンガントークを思念波で応酬する。


エスカ:

(それよりお前、

 何で私をこんなに簡単に発見できたんだ!

 ノードノークがホームグラウンドだからといっても

 この星系はこんなに広いんだぞ!

 そうそう簡単に出会えるもんでもあるまい!!)

 

レディン:

(はぁん?

 S級人類が、S級空間圧をバラ巻いてるのに

 それに気付かないS級の宇宙冒険家が居るか!!

 元々、ここのエドランのマスターとは

 レディン本体のレベルで知り合いだからな…

 長い遠征から帰ってきたんで、

 ちょっとエドランに寄ってみれば

 この酒場からS級人類の圧があると来た…

 だったら、そりゃ見に来ますわな!!

 んでもって居るのが紅の雷光様と来たモンだ!)


エスカ:

(馬鹿な!!圧中和の複素結晶を持ってきて

 完全に6階以上の空間圧は遮断しているハズだぞ!

 S級人類とは感知されないハズだが!!)


レディン:

(お前、それで空間圧中和してるつもりなの!?

 いやまぁ、そうかもしれんが…

 ここはノードノークだ!!

 赤帝の技術レベルで考えるのはダメなんじゃないか!?)


エスカ:

(このレベルでは、ここでは感知されるのか!?)


レディンの思念波の言葉に

思わずエスカはカーンの体の方を立ち上がらせ

その言葉の内容に激高する。


レディン:

(あーー、あかん…

 無意識で漏れる空間圧は、より分かるんだよ!

 激高すんなよ!

 って言っても無理だろうが!)


とレディンが脳内で語った時

カーンの起立に周囲がビクリとなり

その様子を恐る恐る伺っていた。

と同時に幾人かは何か慌てた様にひそひそと

話し出しているのをレディンは見逃さなかった。


レディン:

(いかんな…

 奴らが本格的に疑いだした…

 これはマズイ…

 かなりマズイ…)


そう言ってエスカも無視してざわめきだしている

周囲に神経質になるレディン


エスカ:

(奴ら?)


そんなレディンの意味不明な独白に首をひねり

エスカはカーンの体でエンデなるレディンの擬態を睨む。

しかしレディンはエスカの方を完全に無視して決断した。


レディン:

(もうこれは仕方ないな…

 イルスキュルト…

 トランスポート…

 横の赤帝のお方も一緒に…)


そう脳思念波でレディンが呟くと

その場に居た2人は、ヴァーユ・イルスキュルトが始めた

物質波輸送(トランスポート)作業で引きつけられ

近くに待機していたヴァーユに収納されていったのだった。


エスカ:

(なにぃぃぃっ!)


トランスポートの強烈な力に引っ張られて

エスカはその急展開に絶叫するしかなかった。



いやぁ、ようやく六色帝国戦争が何故起きているのかの背景と

『流血の女皇帝』が何をしたのかを説明できました…


とにかく、これを書かないと

全体的なこの宇宙のルールが出そろわないんで

何とかしたかったんですが、ようやくなんとか…


ただ…設定上、破壊不能にしとかないと

銀河移動そのものが出来なくなる道なんで

無茶苦茶強くしたインペリアルゲートなんですが

こんな道があったら、これを利用しての戦略も出てきそうで

色々悩みますね…


ワープ兼中立宇宙要塞なんて…

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