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第四話 地方豪族星系国家

ふむ、校正がまだ甘いんですが、

大筋が書けたのなら、こっちはバンバン出していきます。


このシリーズは元々

『星の大河』のサブサポートのクロスオーバーストーリです。

『星の大河』の方では「~~らしい」と、精密に描写しない世界感を

逆サイドの視点で精密描写して『星の大河』を援護射撃する為の作品ですので、

できれば再開するのなら急ぎたい。


こっちを書くのなら、星の大河の第一話は

当分、書けない事情もありますので

(星の大河の第一話が、この話の壮大なネタバレ話なので)

再開するなら、急ぎたいのです。

少なくとも、星の大河の第一話を全部書いてもいい

(というか、アップしてもいい)程度までは。


また、この第4話、実は2年ぶりに書いたという

時間を飛び越えた再開話。

(第三話までは、2年前に書いていた内容ですので)


まぁ、文章の方は停止してましたけれど、それは制作における

技術的課題の技術検証の為の検証期間だったので

検証終了に伴い、そろそろ再開しますか… といった所で


(2年も技術検証して、その技術が使い物にならん、という結論は

 些か、切ない結果ではありますが…。・゜・(ノД`)・゜・。 )


ともあれ、小説を書く上では、この二作『星の大河』と『戦場に咲く華』は

自分の本命中の本命なので、そろそろ、頃合いなんでやりますかいな、と。




エスカがオロードに回線接続の指示を出すや

会議室の宙空ディスプレイに壮年の男が映し出された。

映し出された男の風貌は凛然としているが

その表情には暗さも浮かんでいた。

その立体映像に映っていた男が、通信会談をエスカに求めた

このヴァーチェ宙域の銀河標準方向北西部にある

ジューダ共和国なる星系国家代表のマレット大統領であった。



マレット:

「赤色連邦帝国第17艦隊司令官

 エスカ・ロックフォード中将閣下であらせられましょうか?

 私、ジューダ共和国の首領、マレット・イグノブアと申します。

 閣下の着任の知らせを聞き、早々にご挨拶をと思い

 通信をさせて頂きました」


男は恭しい口調で、一見は小娘にすら見えるエスカに

礼節を以て敬礼をし、そう切り出す。


エスカ:

「ジューダ共和国、マレット大統領でありますな?

 仰せの通り。

 赤色連邦帝国第17艦隊総司令兼

 赤色連邦帝国要塞オスロ総督を拝命致しました、

 エスカ・ロックフォード中将であります」


その敬礼にエスカも綺麗な敬礼を以て応える。

しかし次の瞬間には表情を崩し

呆れた顔になってマレットを見返した。


エスカ:

「しかし 私がここに着任してから

 まだ1日も経たぬのに通信要請とは、

 大統領も仕事熱心でございますな…

 数日もすれば、こちらから通信をしましたものを…」


そう言ってエスカは隠す事無く呆れた気持ちを伝えるのだった。

エスカは立体映像に映る、その大統領を見つめ、

新しく赴任した総督とはどんな交渉になるのかと

気を揉んでいる人物の様子に破顔した。

それだけで、真摯な大統領なのだろうな、という印象を感じる。


マレット:

「いえ、私も少し時を置くのが筋かと思いましたが…

 なにせ、提督が宇宙冒険家レディンと勝負した等と

 緊急に伝わって来ますと…

 提督に御怪我でもなかったかと心配になりまして…」


そんなエスカの呆れた気持ちを鑑みる事なく

マレットはそう言って、まじましとエスカを観察し始めた。


エスカ:

「はっ!?

 何故、大統領がその事を御存知なのですか!?

 まだ正式な広報は赤色帝国から出てはないハズですよ!?」


エスカはマレットの言葉を耳にし

連邦帝国軍の内示だけで伝達していた件の事が

何故か外部に漏れている事を聞いて

素っ頓狂な声を上げるしかなかった。


マレット:

「え!?

 い、いえ…その…

 今日、放送予定の宇宙放送『銀河deファイト!』の特番に

 レディン氏がエスカ提督と戦った件の報告するとの

 緊急番組情報が入っておりまして…

 それの事実確認を急がねばと思い…」


エスカ:

「は?

 『銀河deファイト』?」


マレットのあまりに頓狂な台詞に、些か呆然とするエスカ。

エスカは思わず周囲を見回して

不明情報の説明を、顔の表情で求めてしまった。


トクマス:

「閣下…

 閣下がこちらに赴任してきたのは昨日の事ですので

 御存知ないとは思いますが…

 その…、この宇宙ローカル放送で

 このヴァーチェ宙域で放送されている番組に

 『銀河deファイト!』なる番組がございまして…

 かの宇宙冒険家の辻斬り業を面白がった放送局が

 レディン氏の戦闘紀行を

 インタビュー式に独占放送しているという

 なんとも、けしからん放送があるのです…」


エスカの情報提供に直ぐに気付き、

そう『この地方の話』を口にした後に

トクマスは自分の脳内領域にある

それらの情報資料をエスカの脳に転送した。


エスカ:

「なっ! 

 アイツ、自分の辻斬りを

 放送局に言いふらしてるのかよっ!!」


トクマスから送られてきた

それらの情報を瞬時に無意識理解し、

エスカはその事実に呆然と成る。


マレット:

「そうです…『銀河deファイト!』という番組が

 ノードノーク星系を発信源として、

 自由放送としてヴァーチェ宙域に放映されておりまして、

 我々の放送管理局もその報道を受けて騒然となり…

 特に閣下の安否の問題でもありますし、

 早々に事実確認をと思いまして……」


そう言ってマレットは、

何故、余りに急いで緊急会談の通信を要請したのかの、

今の流れを分かり易く説明した。


エスカ:

「……なんて事だ…」


エスカは、本土連邦帝国内でも、この件の広報をどうするかと

昨日から広報委員が悩み始めた案件を

あっさりと本人の口からリークされるという事態に

天を仰ぐしかなかった。


エスカ:

「つまり……

 その『銀河deファイト!』なる番組の予告で

 私がレディン・ルークと戦ったとの報道が入って、

 私が戦傷を受けたか、あるいは死亡したかの

 可能性を考えての緊急会談という事ですか…」


エスカはマレットの言葉と行動を理解して

更に目を細めるしかなかった。

僅かに眩暈がして思わず自分のこめかみを押さえる。


マレット:

「その通りでございます…」


そう返事を返し、

マレットも緊急事案が宇宙放送の番組広報からやってきて

事の事実確認を急がねばならないという自分達の都合を

申し訳なさそうな顔でエスカに伝えるしかなかった。

しかし、現実にあの気まぐれな宇宙冒険家の

闇討ちを食らってエスカが倒れていようものなら

この宙域の支配権は、また暗雲に飛び込む事になる。

それはマレットやジューダ共和国には

最大レベルの国家危機以外の何物でもなかった。

ならばこの事実確認は、正に星系国家代表としての

本文を余すことなく果たしている仕事であった。

その国家規模の最大懸念であったが、

しかし、少なくとも見た目は健在なエスカの姿で

ひとまずは振り払えたという所でもあり

心の中では安堵の息を漏らすマレット。

もしエスカが雷撃戦で、戦死でもしていようモノならなら

こんな通信会談さえ出来ないのだから

会談回線がエスカに繋がったというだけで

国家問題の安定がある程度確立されるというのが

互いの複雑な関係での笑い所でもあった。


エスカ:

「まぁ大統領の立場でしたら、そうするのは当然ですな…

 私が大統領の立場でも、そんな情報入ったらそうしますよ…

 しっかし、本当にあの男は、とんでもねー奴だな…」


そう言ってエスカは苦そうに頭をかくしかない。

人にはいろいろ都合というモノがあるというのに

あの宇宙冒険家達のなんと勝手気ままな事か。

それを思ってエスカは項垂れた。


マレット:

「ともかく閣下が御健在なのを確認できて安心致しました…

 『対決の結果は番組内にて!』と

 番組が煽っているものですから

 私達としては番組を見終えるよりも先に

 事実確認をしなければという所で…」


エスカ:

「でしょうな…」


大統領の一々の最もな言葉に、

エスカは不機嫌な声色で頷くしかなかった。

そして国家代表や赤色連邦帝国の都合もお構いなしに

周囲を振り回すあの男の所行に怒りを覚えるしかない。

この件の広報活動に関して

その仕方を緑帝連邦との軍略に使おうと考えていた

広報作戦部の広報作戦立案員達も、

その放送が放映されれば、

練っていた作戦案の全てが吹き飛んでしまう事だろう。

せっかくの面白そうな作戦材料だったというのにである。

ただ、事が起きてから日が進んでないので、

そんな作業指示に取りかかろうとした

という矢先なのだろうが…

エスカはそれを思い、頬を引きつらせて

大統領に一々と返事をしていくしかない。


エスカ:

「ま、見ての通り私はピンピンしていますよ…

 そして放送されるという以上、

 それを隠しても仕方在りませんな。

 その広報の通りです。

 かのレディン・ルーク氏と

 インペリアルゲート付近で雷撃戦に陥り交戦致しました。

 それは事実です。

 その具体的内容は話せませんが…

 何より赤色帝国の正式広報がどうするのか

 『まだ』な所もありますし…

 ただ、お互いに生き残っているこの状況ですので…

 まぁ、『引き分け』という解釈で理解していだけるなら

 そんな所かと…」


エスカは広報部の都合でこの件を

『大勝利!』的に宣伝する可能性もあったので

勝手に『引き分け』と言い切っていいのか迷ったが

現実、相手も自分も、己の陣営に帰って

温々としているという現実がある。

戦いでどちらも生き残っているのなら

『引き分け』とみるのが

中立視点での筋というものだろう。

そう考えて、ただそう言ってみた。

エスカにとってはその程度の認識だった

しかしそのエスカの言葉に

瞬時に眉をひそめるマレット。


マレット:

「引き分け…ですか……

 ほぉ…引き分け…

 …………

 ……引き分け?

 むぅ?

 ………

 しかし、それはなんとも…

 閣下の口から直接それが聞けると

 それはそれで凄まじい話ですな…

 それはつまり…

 あの宇宙冒険家の連戦連勝街道に

 ついに土がついたという事でしょう?

 むしろそれはそれで、銀河規模での

 大事件ではありませぬか? 閣下…

 それなら閣下が銀河随一の雷撃戦の使い手という噂は

 あの宇宙冒険家と引き分けた事で

 完全に証明されたという事でしょう?

 何故なら、かのレディン氏と引き分けたという事は

 今までレディン氏が手合わせした者より

 閣下の方が強かったという事なのですから……」


マレットはエスカのぞんざいな物言いに

しかし逆に驚きを覚え

その『一般的な地方豪族から見ての観点』での感想を

そこに添えたのだった。

その大統領の言を耳にし

その意味を考えて思わず息を飲むエスカ。


エスカ:

「……む

 ………

 …む?

 ……ほう…

 なるほど、そういう見方もありますか…

 ふむ…

 確かに、そう言われれば…

 あの男の連勝記録を私が止めたという事は

 あの男が倒してきた者達よりも

 私の実力が上だった…

 という事にもなりますな…」


言ってエスカはその客観的な感覚からの

物の見方に純粋に驚いた。

自分としては雷撃戦を挑むのも挑まれるのも

それが軍人の本文なので

仕方ないという感覚しなかったが

政治的な見地から見れば

それは純粋なパワーバランスの問題になる


そう思うと不意に、


『思っている以上に、たいした事をしたのかもしれない』


という気持ちにエスカはなった。


そう、少なくとも、

緑、青、黄の名だたる雷撃戦の猛将を

討ち取って来た男の連勝記録を、

ついにエスカと赤色帝国が止めたのだ。

それは赤色連邦帝国の大局から見れば

大事件であり、大勝利と言っても過言ではない。

その政治的意味と、それから生じる戦略性を

混濁とした無意識思案に入れてみるエスカ。

確かにそう捕らえ直すと、

その事実は状況に組み込む一考の価値があった。

だが、そんな半意識を生みながらも、

「今」という目の前の対処も同時に進めるエスカ。


エスカ:

「まー、しかし…

 その放送とやらで、

 あの男がこの戦いをどう報告するかによりけりですので

 私の私見が、この結論になるかは別ですがね…

 私達としては引き分けといった所ですが

 あの男がどういう吹聴をするかで話は変わりますので。

 今日にも放送があるというのなら、

 私もその内容を待つ事としましょうか…

 しかし、大統領の心配されているような

 私が重篤な戦傷を負って赤色帝国に緊急帰還する

 等という事はございませんので御安心下さい。

 これからもこのエスカ、要塞オスロの総督として、

 前線指揮を続ける所存…」


そう言って、社交辞令的な恭しい礼をしては

『これからの関係』という奴の安心感を作ろうとする。

そこで不意にエスカは「それならば…」と思いつき

いわゆる『白色帝国領域の作法』という奴を

この通信でついでに全部やってしまおうと思いついた。

向こう的には、こういう事は

立場上、儀典的にやりたいのだろうが、

エスカ側からしてみれば、

そんな事の為に遠い内軌道惑星に

宇宙船で体を輸送しに行くのも億劫な話である。

亜光速推進で移動出来るとはいえ、

この恒星最外縁部軌道から人類居住可能惑星のある

内軌道まで移動するのは、

それだけで随分と時間を奪われる話だ。

そんな些事の為の時間消費など

エスカ達には笑ってやれる事ではなかった。

エスカは政治をしに来ているわけではない。

緑色連邦帝国と戦争をしに来ているのだ。

ならば、煩雑な用事というのは、

通信で終わらせれるのなら

さっさと処理したいというのが本音だった。


エスカ:

「ああ、ついでです。

 大統領閣下の御懸念でありましょう

 今後の関係問題の案件も

 この通信で済ませておきましょう」


そう言って勢いよく切り出すエスカ。


マレット:

「閣下?」


そのエスカの淡々と

『ああ、事のついでだ、やっとけ』的に

口にし始めた事に、マレットは怪訝な顔をになった。

しかし、後日に改めて儀典的な正式通信とかされても

鬱陶しいだけのエスカら連邦帝国軍からすれば

大統領の確認したい事をさっさと口上して

『懸念の払拭』とやらをさっさと終わらせよう

という雑な気持ちにしかなれなかった。

それが、たいていの軍人気質という奴だった。

だからエスカは大統領の外交官的な気持ちも考えず

『定型解答』という奴を口上し始めた。


エスカ:

「私は政務官ではなく野戦司令官なので

 正式な条約調印等とか面倒な手続きは管轄外…

 また、本来それに関わってはならぬ身でございます。

 それは本来は連邦帝国外交部の仕事ですからな。

 更に言えば、このヴァーチェ宙域において

 我々赤色連邦帝国が恒久的支配権を確立できるか?

 に関しては、今の所、我々は保証しかねます。

 我々は、この宙域平定支配に来ているのではなく

 緑色連邦帝国と戦争をしに来てるのです…

 それを改めて認識して頂きたい。

 臨機応変な宙域一時支配は、戦争の状況の都合。

 故に正式な赤色連邦帝国政務官は派遣せず、

 野戦司令たる総督の判断に一任する

 というのが、赤色連邦帝国の基本姿勢でございます。

 で、その総督たる私の言葉になりますが…

 多分、前任総督のトール中将も

 同じ事を言ったと思いますが…

 それでも儀式的な復唱として…」


そう言ってエスカは1つ息を吐き

この白色帝国宙域において色帝連邦の何所もが

門前領にある星系国家相手に言い渡している、

大なり小なり同じ事の『定型解答』を口上し始めた。


エスカ:

「赤色連邦帝国:連邦憲章:第546条

 『白色帝国領域:特別条案』


 1つ、白色帝国領域なる不安定な地域においては

 赤色連邦帝国憲章の発動は、それに値しない事とする。

 よって、当地にある星系国家

 この場合は、ジューダ共和国を

 赤色連邦帝国の正式連邦加盟国とする加盟調印は、

 これを行わない事とする。


 1つ、加盟調印を行わない以上、

 貴国は赤色連邦帝国の保護対象国とならない。

 よって、貴国に及ぶ星間問題に関して、

 赤色連邦帝国は調停艦隊の派遣を行わない。

 貴国は独立国家である。

 貴国内の問題は、貴国で解決されたし。


 1つ、白色帝国領域特例として

 前文に関し、赤色連邦帝国が交戦中の他の色連邦帝国

 あるいは、それ以外の第3勢力によって

 貴国内の宇宙航路に重大な支障が起きたと判断された場合

 我が帝国軍は、貴国の事情確認を取らず

 実力を持ってこれを排除し宙域安定を行う事とする。

 その場合の貴国等の戦力支援は自由であるが

 相手が相手の場合、例えば色連邦帝国であった場合は

 支援派遣軍はむしろ足手まといなので

 自重する事を御願いしたい。

 我が赤色連邦艦隊は貴国艦隊との連携戦闘を前提としない。

 また、我が艦隊の作戦活動を

 妨害しない事を約束されたい。

 妨害があった場合は、これを実力排除する事とする。


 1つ、白色帝国領域における

 赤色連邦帝国の宙域支配下の星系国家は

 外交対象国として扱う事とする。

 また、宙域戦況が、『安定』と見なされる場合は、

 現地国家と現地艦隊は貿易交易を行っても良い。

 よって、物資の補給等々での

 交易協力が可能であるならば御願いしたい。

 その場合、簡易的な通商機関を設けて、

 そこを窓口とする事とする。


 1つ、赤色連邦帝国は

 貴国の内政に基本的には干渉しない。

 貴国を基本的には独立国家として我々は承認する。

 貴国等の国家運営は、議会、王政、その他、

 各国家の国家運営の文化様式で継続される事を希望する。

 ただし、敵性連邦帝国と内通し

 共謀を計っている事が明白になった場合

 赤色連邦帝国は貴国を軍事制圧する。

 これに関しては強く熟慮されたい。

 貴国へは、

 それらの共謀懸念に対する調査監視団の派遣を

 簡易外交部門と共に、我が軍は行う事とする。


 1つ、内政に関して基本的には不干渉ではあるが、

 あまりに貴国の国家運営側が国民を抑圧し

 それに伴い貴国国民からの政治開放要求が我々に殺到し、

 それらの要望が我々の戦況に重大な影響を及ぼすと

 我々が判断した場合

 赤色連邦帝国は貴国を軍事制圧し

 新政府を赤色連邦帝国の基準で創設する事とする。

 ただし、我等、赤色連邦帝国軍は

 これらの干渉を積極的に行いたいわけではない。

 貴国は、独立自治かつ安定国家である事が望ましい。

 ゆえに貴国が所属国民にとって

 健やかなる星系政体である事を我々は要望する。


 1つ、星系航路スターゲートに関しての権利は

 基本的に共同管理とする事にする。

 貴国が作り上げている

 航路システムの運営は、これを尊重する。

 ただし、他の色帝勢力と戦時となった場合、

 前線宙域でのスターゲートの優先権は

 我々が一切の支配下に置くものとする。

 通商ルートも戦時下になれば閉鎖するものとする。


 1つ、星系航路スターゲートでの貿易活動は、

 赤色連邦帝国はこれを完全制限下には置かないものとするが

 敵性連邦の工作員、あるいは密輸等の問題があるので、

 スターゲートにおける貿易情報の検問をさせて貰う。

 またその検閲の際、貴国の国家運営に関しての危機因子、

 いわゆるテロリズムやクーデター計画が発見された場合

 しかし、それ等が我々の戦況に

 影響を及ぼさないと判断された場合

 我々は、それらを貴国には基本的に報告しない事とする。

 それらの情報調査は貴国の責任ある仕事である。

 貴国の独立国たる尊厳を尊重する。

 ただし、貴国が共同検問を要望される場合においては、

 戦況の影響を考慮した上で、共同検問も可能とする。


 1つ、敵性連邦との戦闘において

 状況次第でスターゲートの破壊を我々は行う。

 戦時下のスターゲート破壊に関して御了承願いたい。

 また、スターゲートを破壊した後に

 戦況安定が見られた場合は

 スターゲートの再建造を

 赤色連邦帝国の威信を以て確約する。

 それらの必要経費は赤色連邦帝国の全面負担とする。

 ただし戦況不利に陥り、我が軍が緊急撤退し、

 敵性連邦帝国に宙域支配権が移った場合

 御足労ではあるが、

 敵性連邦帝国にスターゲートの再建造を要請されたい。


 1つ、恒星エネルギー取得権について、

 我々は赤色帝国本土からの補給エネルギーを用いるが、

 航路長さの問題もあり、現地調達も了承されたい。

 太陽エネルギー定数 1SUNに対し、

 各恒星比例数を書けた

 恒星固有SUN値において、

 立体角開き角1度の放射領域を

 我々は取得するものとする。


 …………

 基本的にはこんな所ですかな…

 まだ、細かい補助項目がありますが

 それは前任のトール提督が

 貴国に送った条文と同じですので

 宙域支配の条項は状況継続、という事で…

 こんな所で如何でしょうか?」


言ってエスカはその定型解答を終えた。

『白色帝国領域』、あるいは各色帝国の

『門前領域』と呼ばれる宇宙宙域において

赤色連邦帝国とその支配宙域にある星系国家との

お互いの関係はどういうモノであるのかを

エスカは口頭で述べたのであった。

要するに、


『他の色帝と戦争するために我々は来てるので

 お前等を支配する気は全くないから

 邪魔だけはしてくれるな。

 戦争の邪魔になったら実力排除するんで

 それ以外は、好きに生きててくれていいよ』


というぶっきらぼうな言い分を、

丁寧に言い直しているだけの事である。


どうしてこんな話になるかというと

一言で言えば、面倒くさいからであった。

こんな地方豪族と、銀河の6分の1支配する

色連邦帝国では所有する基礎技術力に差が有り過ぎる。

それは例えるなら、『象と蟻』であった。

しかし、だからといって技術差を念頭に

何でもかんでも子供の様に支配していけば

指数関数的に治安処理案件が発生し、

それ等への対応エネルギーを吸い取られる。

なので、そんな事をし続ければ、

本来の目的である戦争の為の

エネルギーリソースを奪われるのだった。


それが一番の問題だった。


その問題に対して

御伽話に出てくる様な、頭の狂った悪の帝国になり

支配宙域の人民は面倒なので、もう皆殺しだ!

とかいう様な、夢みたいな事を考えた時

そんな話ですら、超越技術による破壊兵器を使って

星系内人民全員を殲滅してしまう事も

やろうと思えば可能ではあった。

そんな、

いわゆる「御伽話に出てくる悪の帝国」の様に

大量殺戮の後に無人宙域の併呑も

やれない事はないのだが

そこはそれ


『六大帝国の面子』


という奴があり、

『地方で粋がっている豪族相手に、

 超帝国が本気になるのは大人げない』

という奇妙な矜持が六色帝国には皆あった。

そしてそんな「御伽話に出てくる悪の帝国」の様な

人民大虐殺でもしようモノなら

『貴連邦帝国は、地方豪族の星系人民を殲滅しなければ

 満足に戦う事も出来ない程、程度が低いのですか?』

等という、敵性連邦のプロパガンダに使われるのがオチだった。

更に、そのプロパガンダで連邦帝国内の連邦世論にも、

虐殺行動に対する大反動が起き

連邦議会での事案従事艦隊への問責問題に発展するだろう。

連邦内部が自身のエリート艦隊の存在感に対して

連邦帝国のプライド問題で、間違い無く内輪揉めになる。

こうして考えていけば、暴力による宙域支配など、

メリットよりもデメリットの方が遙かに多いのだ。

故に、人民全虐殺等という恥ずかしい事を行わずに

対等国家として扱おうという事に

どの連邦も慣例的になっているのだった。


その様な回りくどい事をせず、別案として、

そのまま宙域内国家を政治レベルまで含めて

軍事支配をするというのも、技術的には可能であった。

技術的にはである。

しかし宙域国家を軍事力で掌握したとして、

臨時に作った星系国家に属する星系民を

いちいち支配管理する、その手間はどうなる?

その支配システムを構築する莫大な労力は?

その宙域を防衛する為の防衛力は?

という問題が、直ぐに起きるのである。

敵性連邦に何時襲われるか分からない

戦力を維持できるかも怪しい不安定な地域でだ。


連邦帝国の本国たる

正式な主連邦加盟国でもないのに、

何故そこまで面倒な事を、

前線でしなければならないのか?

それは前線作戦指揮に対して、

あまりに莫大な負荷であった。


自分達の戦争の邪魔をせず、

自治で国家運営してくれるのなら

そっちの方がよっぽど有り難く楽なのである。

ならば現地自治政体との

緩やかなる関係が最も好ましい。

…と、そういう事だった。


もっといえば、

連邦本国も、連邦加盟国の宙域支配は

基本的には加盟国の

個々の星系国家自治に任せているのだ。



その政治体制が『連邦帝国制度』



星系国家の多くの集まりを、中枢国家群が

『連邦加盟制』にして連邦加盟を呼びかけ

巨大な『星系帝国』のまとまりとなる制度。

その『連邦帝国』は『連邦帝国議会』によって

加盟国全体との星系国家間連携で活動する。

あるいは連邦内での星系国家間の

軍事的問題発生には

連邦帝国軍による紛争調停も行う。


それが『議会制帝国民主主義』


帝国御三家と支柱12ヶ国、主加盟国120国の

多数の星系国家が『連邦』し、

『連邦帝国議会』に国家代表帝国議員を送り

その連邦帝国議会での議会議決で

全体が『帝国主義』的に動くのだ。

その制度に伴い、各国は『連邦帝国議会』に

一定の『税金』とされる、エネルギーや特産兵器を

拠出しなければならない。

また、連邦加盟国は自国の保有戦力や人員を

連邦議会の議決によって『連邦帝国軍』に派遣し

連邦帝国内の各国家間の調停、

あるいは他色連邦帝国との戦争に派遣する義務を持つ。


それが連邦加盟国への基本加盟条件であり

それ以外は星系国家の自国自治と、

連邦帝国議会の中央議決との折衝になる。

その一定の公的基準が『連邦帝国憲章』と呼ばれる

各星系国家の法律の最小公約数をまとめた法典だ。


つまり、連邦帝国本国でさえ

『連邦帝国議会』という、

中枢意志決定機関があるだけの、

自治星系国家の集まりなのである。


ならば他色帝国との境界最前線において

連邦帝国の連邦帝国主力艦隊で

宙域を政治的に直接支配する等、

それは本末転倒であった。

何の為に、本来の自国から戦力を切り離して

連邦帝国への派遣軍になっている軍隊が、

他所の土地を自国以上に守らねばならないのか?

派遣軍の本来の仕事は、敵性連邦帝国との

宙域支配率をかけた境界線戦争なのである。

その境界戦争は、星系最外殻軌道を使っていれば

内殻軌道にある地方星系国家の人民居住区など、

どうでもいい。

戦争の邪魔さえしてくれなければ

そこに人が居るか居ないか等は

色連邦帝国の立場からすれば

どうでもいい話だった。

この銀河での宙域支配率という奴は

どの星系の最外殻軌道にも設置されている

『スターゲート』と呼ばれる、

恒星間移動用のワープゲートを

確保する事なのだから。


その何処の色連邦帝国も抱えるジレンマによって

漫然とした支配関係が互いに成立するのである。


そして『よっぽど重要な所』でもなければ、

連邦への正式加盟もさせないのも特徴であった。

白色帝国領域内にある現地国から

色帝国連邦への正式な連邦加盟要請があったとしても

それは断る慣例になっていたのだった。

門前領の各色帝国の玄関口にある星系国家で

精々「準加盟国」扱いである。


それがこの白色帝国領域にある星系国家への

色帝達の不思議な現地国家との付き合い方であった。

そんな戦略的に重要な土地でありながら

『色帝は現地星系国家との付き合いはおざなり』

という形態が


『銀河中枢でありながら最辺境』


と白色帝国領域が言われる所以でもあった。



そんなエスカや、その前任者のトール中将も

同じ様に口上した定型解答に

何度も苦い顔をして頷く大統領。

他人事ではあるが

エスカも自分がこの大統領の立場だったら

さぞ胃が痛いだろうな、とは思う。

何せ、その星系の支配国家であると

国家所属の自国人民に言いながら

宙域支配の重要な所を

半分以上は色帝国軍に握られるのだ。

最も重要な星系間航路

『スターゲート』の所有権をである。

それで完全な独立国家であるという

自負を持つのは難しい。

挙げ句に、この宙域で星系国家間紛争で

各国が星間戦争を起こした場合には

色帝の駐在艦隊は、自分達に被害が出なければ

『どうぞご自由に』と高みの見物をするのである。

しかしその状況が、自分達に都合が悪くなれば、

介入してきて殲滅されるのだ。

この状況が完全に自立した独立国家だろうか?

そう尋ねられれば、それは普通に疑問であろう。

しかしそんなファンタジーが普通に成り立ってしまうのが

白色帝国領域と呼ばれる、この不思議な宙域だった。


その『この宙域宇宙の常識』を前にして

マレットはエスカの口上に溜息をつくしなかなった。


マレット:

「いや、その言葉を総督の口から直接頂きまして

 我が国家も一安心という所でありますな…」


言ってマレットは

一種の政治的皮肉を込めたジョークを口にした。

そんな軽い皮肉の返事にエスカも薄く苦笑するしかない。

二人はほんの僅かな時間だけ互いに小さく笑い合った。

そしてマレットは、続けてもっと深い溜息で

その複雑な心持ちを吐き出し、その思いを語りだす。


マレット;

「しかし、これも奇縁という奴でありましょうや?

 かつて、120年前と、1世代も前…

 私の祖父と父が、

 私と同じ様に政治系で活動していた時代ですかな…

 そんな古い昔に、この宙域を一時的にでも支配された

 伝説の赤帝の三将…

 その一人、

 ジルフィール・ロックフォード提督の御孫様が

 遙かな時を越えて、また我々の宙域支配に

 その要塞オスロ総督に着任されるとは…

 そして、その相手をこの私ができるとは、

 なんとも歴史的に考えて、感慨深いモノで…

 ここは緑帝の門前宙域とはいえ、

 伝説の英傑、ジルフィール中将の雷撃戦物語は

 古代歴史譚で未だにドラマ化される話でありますしなぁ…

 そしてジューダ共和国では、

 赤帝の将とはいえ、ジルフィール中将は

 子供が好きな歴史武将の一人に必ず入る方です…

 その方の直接血縁であられる閣下と、

 こうして話せていると思えば

 歴史浪漫と現実の結節点を感じて

 身が震える思いでありますよ…

 まるで私も歴史教書の中に吸い込まれたかの様な

 奇妙な感覚になりますな…」


マレットはそう言い、苦笑を浮かべて唸るしかなかった。

120年前の事を歴史の教科書で習っているだけのマレットは

そのジューダ共和国の歴史教書に載っている人物の孫娘が

またしても自国にやってきて総督として着任したという事が

くすぐったい様な感覚でしかなかった。

そしてその人物と、今、重要な国家運営の件で

自分は通信をしているという状況なのだ。

それにマレットは言語化しがたい

感動を覚えずにはいられなかった。


エスカ:

「ああ、そうか…

 120年前にはお爺さまが旧オスロの総督でしたっけ…」


不意に向こう側では教科書レベルの昔話を

話の種に出されて、エスカは面食らう。

そう、向こうからすれば

それは、そんな遙か昔の話であろう。

しかしエスカ側の赤色連邦帝国軍としては、

今でもピンピンして統合本部で

赤色連邦帝国軍の元帥をしている人の話である。

その現実を、そんな遙か昔の、

故人を思う様な言われ方をされても

当人に会える者達には、それは戸惑いでしかなかった。

それも伝説の英傑とか、そんな言い方でだ。


だから向こうの声色に

太古浪漫の様な音さえ乗っていた事に

エスカは些か頬を緩めたのだった。


そんな過去の立派だったらしい頃の元帥の話をされても

赤色帝国にとっては、未だに実在して

周囲に迷惑を振りまいているダメ老軍人である。

その意識ギャップには、流石に戸惑うしかない。

それはエスカだけでなく、その会議室に集められていた

全ての提督が心の中で同じ様に感じた事だった。

それも、このエスカのオスロ総督就任は、

その人物の差し金だという真相付きである。

相変わらずの無茶振り采配が光っている

今の現実を思えば、皇帝アルシオンの言葉ではないが、

『あの爺さんが昔は赤帝の三将と呼ばれてたのが

 今のあれを見てると、とても信じられん…』

であった。

その「とても信じられん」が、

場所を変えれば「伝説の英傑」と憧れられている。

そのギャップは呆れを越えて、新鮮でさえあった。


しかし、マレットに言われれば、確かにそうである。

ナストア帝時代の祖父が若かりし頃

祖父が預かった要塞オスロ派遣艦隊による

支配宙域が、同じくこのジューダ共和国だったのだ。

そして総督として当時のジューダ共和国と

折衝をしていたのは祖父達、

当時は「赤帝の三将」と呼ばれた、あの3人である。


その繋がりを思えばマレットの言葉である

『歴史浪漫と現実の結節点』というのは

正にそうであった。


歴史的繋がりと言えば、この要塞もそうだ。

今居るハリボテ要塞のオスロという名も、

そナストア帝時代に建設した

旧宇宙要塞オスロの名前を拝借した物である。

そんな名称継承の奇縁さえ、言われてみると感慨深い話。

旧オスロ要塞は旧オスロ要塞で、

赤色連邦帝国艦隊のやむを得ない

戦略撤退後に緑帝に接収されて、

当時に破壊した旧ガージ要塞の残骸と一緒に再構築されて、

現代の新ガージ要塞に再建造されていたわけで…

前任のトール提督は、120年ぶりにここにやってきて

昔、祖父達、赤色帝国軍が一生懸命建設した要塞の改造要塞を

必死になってブチ壊したという変な笑い話だったのである。


時間の隔たりが生む、その奇縁。


S級人類なら、平均寿命250歳であるので、

人生の半分くらいの昔の話という感覚の過去も

B級人類がこの銀河の99%の人口を占める宇宙では

そのB級人類の平均寿命が100歳程度であるから

120年前と言えば、1世代も2世代も昔の話である。

その教科書に載る程の昔話が、

人種寿命のギャップで縁を生む。

それは確かに不思議な感覚のする話であった。


と同時にエスカはその話を聞いて、

祖父が自分をこの地に指名派遣したのは

自分が、その当時に為し得なかった

『要塞オスロからその先までの侵攻』という

当時の展開中の軍事作戦に対しての執念…

その執念を再燃させて、それを自分の孫娘に

お鉢を回したのでは無いかとも思えて来た。


そう、あの当時の祖父達に下された

苦々しいまでの緊急撤退命令。


当時、このジューダ共和国のある宙域で

迎撃に出てきた緑帝艦隊相手に宙域防衛戦をしながらも

なんとか旧要塞オスロの建設を完了し

ヴァーチェ宙域に強力な橋頭堡を確立した事で、

ヴァーチェ侵攻体制がようやく整ったのであった。

そのバックグラウンドが充実した事で

さあ防衛戦ではなくヴァーチェ宙域で

緑帝艦隊相手に侵略戦を始めようかと

その序盤戦を開始して

赤帝の三将がいよいよ暴れ始めた、

正に『これから』という時だった。

その時、本国から突然『緊急撤退命令』が出た。

その時の衝撃は、未だに祖父達も忘れられずに

三人が三人とも熱く語り出す話だった。


その緊急撤退は、その時に起きた、

ナストア帝の突然の崩御が原因だった。


いや崩御とは言っているが、

実際にはナストア帝は戦死だった。


それは120年前も昔の事。

その当時も今と同じ様に白色宙域での支配状況が

ナストア帝の指揮の下で

赤色帝国の圧倒的有利になっていた。

今と同じで、ニルクルヴァ宙域どころか

このヴァーチェ宙域まで進駐して

赤帝の若き三将が、侵略戦で暴れ回ろうとしていた

それほど赤色連邦の状態は

行け行け状態だったのである。

その勢いに乗ってナストア帝と赤色帝国は

遂に最終目的である

白色中枢侵入艦隊を銀河中枢に派遣した。

宙域支配は所詮、他の色帝からの横槍を

完全に遮断する為の状況作りでしかない。

各色帝国の最終目的は、銀河中央にあると言われる

『秘宝』を手に入れる事なのだ。

なので状況有利を好機と見て

ナストア帝は、赤帝門前領『アリッソ宙域』から

自身と共に銀河中央に侵略艦隊を派遣した。

そしてナストア帝は

銀河中枢を守るクラーリン艦隊との

激しい戦闘を始めたのだった。


その銀河中枢への主力艦隊の直接侵攻は

各色連邦帝国の悲願そのものであった。


しかし、その銀河中枢での

クラーリン艦隊と赤色帝国の交戦は

想像を絶する大激戦となり

当時の精鋭部隊であり、

水色帝艦隊をニルクルヴァ宙域などで蹂躙した

赤色連邦主力派遣艦隊ですら

クラーリン艦隊との戦いによって大損害を被る事となった。

それでも、六菱額紋を持つ真性の色帝であるナストア帝は

その隔絶した戦闘能力で、より銀河中枢奥深くに進駐し

遂にクラーリン艦隊の大将級と

一騎打ちにまでもつれ込んだのだった。

今までそこまでの大物に辿り着いた色帝は

片手で数えれるほどだったのだから、

当時のナストア帝の戦闘力が

如何に卓越していたモノかはそれだけで証明されていた。

だがその戦闘で炎の女皇帝は敗戦。

相打ちとなりそこで戦死した。

ナストア帝は、銀河中枢でその息を引き取ったのだった。

そして赤色連邦の銀河中央突破艦隊は

互いの大将同士の討ち死ににより恐慌に陥った。

それ以降、中央派遣艦隊は銀河中枢のクラーリン艦隊から

脱兎の如く逃げ出さなければならなくなったのだ。

元々、被害甚大であった上に、

クラーリンの大将級を唯一斬れる戦闘力を持った

六菱額紋皇帝を消失したのである。

赤色帝国中央派遣艦隊は、銀河の中枢、

クラーリン中将級がゴロゴロしている

その深い中枢部から逃げの一手しか打てなかった。

そして赤色帝国は、

皇帝崩御により新しい皇帝の選出を余儀なくされ

急遽、他の色帝大攻勢を中止し、

派遣宙域から強制撤退せねばならなくなったのだった。


それが120年前の赤色連邦帝国の

クラーリン艦隊との忌まわしい敗戦の歴史だった。


だから若かりし頃に

自分の祖父が当時の赤帝の事情で

ヴァーチェ宙域侵略作戦の断念をしたのを

この時流に乗って世代を越えて

再び為そうと考えたのかもしれない。


不意にエスカはそう考えた。

いや、そう思っただけあるが、

それは祖父の性格を加味すれば

全くの大正解だと思えた。


そうだ、積年の


『ちっきしょー!!!

 あの時、あそこまでしかいけなかった!!

 今度大侵攻があったら、

 絶対にそれより奧に行ってやる!』


という無念の思いを、自分の孫にふっかけたのだ。

それを大統領の言葉から不意に感じて

エスカはまた眩暈がした。


なるほど、この宙域へのエスカの指名は

むしろ必然だったという事か…。

血の流れに定められていた因縁の宿命…


そう思ってエスカは破顔するしかなかった。

エスカは溜息を軽くし、そして言葉を紡ぎ始める。


エスカ:

「よもすれば、やおら縁という事でありましょうや?

 確かに言われると、私も感慨を感じますな。

 祖父から続く、この宿縁とも言いますか…

 緑帝とのこれからの戦いも、全ては必然であるとも…」


そう言ってエスカは笑うしかない。

運命という言葉は好きではなかったが

しかし、これは流れる血がむしろ望むところの

好ましい運命であった。

それに些かエスカは武者震いをする。


エスカ:

「しかし、私達は今を生きている者。

 過去の継承は大事なれど、

 最も大事なのは『今』でありましょう?

 なれば、今を大事にしましょうではありませんか…

 違いますか?」


エスカはそう言って、過去を見上げながらも

それでも今を思い出し、『今』という言葉を口にした。

そう、例えそれが宿縁であり、

赤色帝国のもう一つの悲願であろうとも

それを為すのは、エスカという『今』なのだ。

それをエスカは自分に言い聞かせる様に言ったのだった。


マレット:

「ふむ…言われてみればそうですな…

 私も年甲斐もなく歴史的なこの出会いに

 興奮してしまった様です…

 なんとも、お恥ずかしい話で…

 そう、大事なのは、今、ですな…

 今を生きる者にとっては…

 そう……

 閣下の仰られるとおりです…」


そのエスカの言葉に思わず息を飲むマレット。

見た目は小娘の様ではあるが、

なかなかに気骨のある武人の言葉を口にする。

そしてそれに実力が伴っているのも、また小癪であった。

(実の所、年齢はどちらも似た様な数字なのだが)

そうエスカに諭された言葉を思い

大事なのは、やはり今、とマレットは再認識する。

そのマレットの返事に、僅かに満足そうに微笑んで

うむ、と軽く首を縦に振るエスカ。


エスカ:

「という事で、

 貴国と我が帝国軍との関係の明示に関しては

 先ほどの口上で、大統領の最大の懸念も

 払拭されたと思いますが…

 いかがでありましょうや?」


エスカはそう言って、マレットが求めていた

『お互いの関係』の再確認の事を口にした。


マレット:

「ふむ…それは御意にございますな…

 我が国家にとって最大の大事は

 宙域支配される色帝との関係明示であり

 それに関しては、過大なるお言葉を頂いたと

 解釈いたします」


エスカ:

「御安心していただければ、なによりです」


マレット:

「しかし簡易でも、

 手続き書類、調印書の交換など致しませんと

 我々としても国家の体裁が立ちませぬ。

 後日、定型方式の書類のやり取りを

 軍務外交官の方と我が惑星駐留施設で

 再交付したいと思いますが…」


エスカ:

「それは現地軍務外交官の者と御随意に…

 当方としては、

 その者達に職務として一任して居ります故

 幾らでも顎で使って貰って構いませぬ…

 また現地派遣の外交員が赤色連邦帝国軍にあるまじき

 蛮行を行っていた場合には、気兼ねなく御一報下さい。

 我等は、名誉に全てを置いているわけではありませんが

 赤色連邦帝国の最低限の名誉というモノがあります。

 帝国軍人にあるまじき愚行を行う者は

 誰であろうと処断するのが、

 連邦加盟国300国以上を持つ

 連邦帝国の名誉感であり、世論でもあります。

 名誉ある規律を守らせるもの、総督たる私の仕事。

 ただし、外交官を通じての私の式典の出席要請などは

 遠慮していただきたい。

 御存知でしょうが、我々S級人類は

 S級複素結晶とシンクロできるからこそS級人類。

 数日とは言え、

 オロードを連れて貴惑星まで移動するなど

 完全な戦力分散であります。

 その様な事をすれば、

 建設途上のオスロ防衛にも差し障ります故

 それを常に御考慮頂きたいのです…

 式典などの行事は、代行としての派遣外交官に

 今まで通りお願い致します」


そう言ってエスカは煩雑な政治の仕事の

全ての辞退をその場で伝える。

めんどう事は初手で封じるのが

電撃戦を愛する者達の性癖であった。

しかし、例え本当にそんな要請をされたとしても、

今は要塞オスロの心臓部として回路がドッキングし

要塞工事等の基地管理サポートを始めたオロードである。

それをその時の気まぐれで止めて移動させること等、

現実に非効率であり、自分から行きたくなっても

最早、気軽には行けないという状況も

既にそこにあった。


マレット:

「了解いたしました。

 では、提督のこれからの武勇の御武運を

 まずはお祈りさせて貰います。

 それでは、緊急の通信でご迷惑であったかと思われますが

 この辺りで切り上げる事と致しましょう…

 何より『銀河deファイト!』の

 放送時間も近付いて参りましたし…

 あの、銀河で勇名を馳せる宇宙冒険家が

 どのような言葉で提督との武勇を語るのか…

 1星系国家の宰相でありながら

 それには少しばかり少年心をくすぐられていて

 今は仕方在りませぬゆえ…」


そう言ってその大統領はその瞬間だけ

子供の様な緩んだ顔になって微笑みを浮かべた。


エスカ:

「え? なんと!?

 もう放送は始まるのですか?」


その大統領の言葉に、唖然とした表情になるエスカ。

もっと先の時間に放送があるのかと勝手に思い込んでいたので

実はオンエア寸前の状態であった事に驚くしかなかった。


マレット:

「ええ、どうやらそのようで…

 緊急特番だそうですので…

 それでは、これで失礼致します。

 提督とは今後とも

 よしなによろしくお願い致します…」


そう更に微笑んで軽い会釈すると、

その地方豪族の星系国家の大統領は

そこで通信回線を遮断したのだった。


エスカ:

「……あ」


まるで子供がみんなと遊んでいた時に

見たい番組があるから、ちょっとそろそろ帰るわ…

と言うかの様な、そんな通信終了の慌ただしさに

流石に残されたエスカも、その通信遮断に呆然とする。

普通に考えれば、それはそれで外交通信として

失礼な事この上ない態度であった。

しかし、内容が内容であると、

それはそれで、彼の人物の立場からすれば

重要な外交情報の入手活動とも思える。

何よりエスカ自身も、その内容がこの後に直ぐにでも

放映されるというのなら、

それに興味が沸かないと言えば嘘であった。


エスカ:

「…………」


エスカは、その呆然感を伴って、

周囲の提督を見つめて、言葉で無く目で問いかけみた。

その見つめた周囲の提督達も、

同じ様に呆然とした表情が浮かんでいた。

しかし、その目の中にエスカが目で問うた内容の

返事の光が含まれていた。

だから次に言葉が出た。


エスカ:

「なんか、もの凄い放送あるみたいなんだけど…、

 会議停止状態のまま、

 その放送、ここに繋げていい?」


エスカは、ばつが悪そうにそう言って

是非を皆に上目遣いに尋ねる。


一同:

「閣下…多分、その放送

 我が赤色帝国軍にとっても

 重要な注視対象でありましょうから

 戦略議案参考資料として視聴した方がよろしいのでは?」


そんなエスカの提案に、純粋な興味が50%

理性的に自分達の立場からの必要性が50%の

なんとも言えない気持ちで、提督一同が賛同する。


エスカ:

「………だよね

 うん、そうだよね…

 だったら…

 ちょっと、その放送チャンネル、繋いで…

 オロード…」


オロード;

「了解シマシタ。マイマスター」


そうしてエスカは一同の了承を得て、

自分の従属複素結晶に

その怪しげな宇宙放送の接続を命令したのだった。



再開したのはいいんですけれども、

やっぱりまだ、科学考証において疑問がある所ばかりなんで

考証のツメが甘いのに再会していいのかナー というのもあるんです。

しかし、科学考証ばっかして、結局、書かなかったってのも寒いんで

先々で矛盾が生じたとしても、そこら辺は最後には妥協するしかないかなと。


そんな、腹をくくっての再開になります。


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