第三話 戦略会議
唐突に始まる、続き。
それは緑広がる野原だった。
長く美しい黒髪の少女を追いかけている自分が居た。
「エスカ~こっちこっち~」
「姫様~」
あれはいつの事だったろう…。
随分昔の事の様に思える。
何時の間にか花畑にいた。少女が誘ってそこに自分もいた。
そしてその黒髪の少女は花輪を作っていた。
目の前で手際よくお洒落な花飾りが出来ていった。
出来た花飾りの1つを自分の髪に飾ってくれ、
もう一つを彼女の髪の上に微笑みながら乗せて囁く。
「エスカも女の子なんだから、おめかししないとね」
彼女は無邪気にそう言って微笑んだ。
「私はロックフォード家の人間です…
おめかしなんていりません!」
「もう、せっかくの美人が台無しよ!
エスカは私の遠い親戚なんだから
二人でオルフェニウスの華と言われる様になりましょう」
そう言って彼女は優しく微笑む。
小さな頃の自分。
そんな女の子な自分から見ても彼女は可憐な姫だと思った。
「私は姫様の騎士です。
お爺さまにそうなれと言われてますし
私もそうなりたいと思っています。
姫様は華に、私はその華を守る剣に…
ずっと御守りしていきます姫様!」
そう、遠い親戚でもある可憐な姫の前で力強く言った自分。
「エスカ。
お姫様を守る騎士は、素敵な殿方じゃないと駄目なのよ?
エスカは守る騎士じゃなくて守られるお姫様にならないと」
そんな自分の言葉に、相変わらず無邪気に笑いながらそう返す彼女。
その言葉に頬を膨らせて自分は反論した。
「女でも騎士になれます!
エスカは姫様に出会ったその日から
姫様の騎士になると決めました!
だから私は守られる姫じゃなく
姫を守る騎士になります!
生涯、御守りいたします、姫様!」
高らかに腕を上げ、家宝の刀『ミージェ』に模した
木製の小太刀を天に掲げ、騎士の誓いを口にした自分。
そんな自分の言葉に「もう…」と困った様に笑う黒髪の少女。
その時に課した自分の彼女への約束、
生涯、守ると誓った約束。
それも遠い昔のような気がする。
あれからいったい、何年の月日が流れただろう…。
そう思ったとき、エスカは目覚めた。
「夢か…」
覚醒したてのぼんやりとした意識の中で
自分が夢を見ていたのだと分かるエスカ。
何故かその夢を見た事が幸せだった。
ギネス:
「閣下、お目覚めですか?」
その朦朧とした意識の中で自分を呼ぶ声がした。
エスカ:
「はて?気が揺るんだか…
ウトウトしていたらしいな…」
ギネスの声に現実に戻されたエスカは
自分が僅かな居眠りをしていた事を知る。
ギネスはそんなエスカに微笑んで、その側に寄る。
エスカは不意に気になってつまらぬ事を腹心に尋ねた。
エスカ:
「ギネス准将…
私は眠っている間に、何か言っていたか?」
さっきの夢見の事を思い出して
何か恥ずかしい寝言を口にしたのではと気を揉んでしまうエスカ。
その言葉にギネスはそっと笑って応えた。
ギネス:
「ジーンと来ました…特に
『姫様は華に、私はその華を守る剣に…』の下りで…」
意地の悪い微笑みを浮かべて、そう敬愛する上官に伝えるギネス。
そんなギネスの言葉にエスカはバツの悪そうな顔になるしかなかった。
エスカ:
「私は恥ずかしい寝言をベラベラと喋っていた様だな…」
先ほどの夢見は全部口にした様で、流石にそれは赤面するしかなかった。
しかしギネスは首を横に振ってエスカに返す。
ギネス:
「我等オルフェニウスの人間が、我が姫への思いを口にするのに
何を恥ずかしいと思う必要があるのです?
我等の心ともいえるメリシア姫へ心よりの愛を捧げる事に対し
それを笑うなど、それこそオルフェニウスの民全てに
蹴飛ばされる事でありましょうぞ…
特に閣下は姫様直属のインペリアルガードだったのですから
閣下の愛溢れる寝言、何一つ驚く事、ありません…」
そう言って用意していた飲み物を取りだしエスカに差し出すギネス。
エスカ:
「ふ、ありがとう。ギネス准将…。
そういう細やかな心使いをしてくれる者を部下に持てた事、
このエスカ、何よりの幸せに思うぞ…
そうだな…
メリシア姫を愛するは、
オルフェニウスの民なら当たり前の事よな…」
ギネスの言葉に先ほどの恥ずかしさも吹き飛んで
我が君主への愛を再確認するエスカ。
ギネスの出してくれた飲み物を手にとり、
物思いにふけった瞳をして、その冷たい物を口にした。
エスカ:
「しかしそれでもこの心にぽっかりと空いた穴は中々埋まらぬよ…
悔しいが、正直に言って嫉妬よな…
生涯守ると誓った人、自分への契約…
それは全て失ってしまった…
姫を守る騎士は素敵な殿方か…
姫はあの時から、今の事を予見なされていたのだろうか?
ふと、そう思ってしまう…」
そう言ってエスカは夢で見た子供の頃の姫とのやり取りが
不思議な程『今』を言い得ているので、苦く笑うしかない。
ギネス:
「アルシオン陛下が姫の騎士になってしまいますとなぁ…
銀河のどんな男女も役不足になってしまうのは仕方ないですなぁ。
赤帝最強、あるいは銀河最強の御方が
姫の生涯の騎士になられたのですから、
こればかりはどうにも…」
言ってギネスもエスカの言う『オルフェニウスの民の心の穴』を
自分自身で感じてその頭をかいてしまう。
護衛騎士だったエスカ程ではないにせよ、
オルフェニウスの民は大なり小なりエスカの口にした
『悔しいが、正直に言って嫉妬』を持っているのだ。
そんなギネスの言葉にオルフェニウス民全ての
モヤモヤした気持ちを感じ、それに微笑むエスカ。
エスカ:
「我等の敬愛する姫様が、
誰よりも幸せになるように我々は望んでいる。
そして姫は、考えられる中で最高の御方を得られた。
オルフェニウスの者としては、
最高の喜びで満ちあふれなければならんはずだ…
それでも愛すべき我が君が、
我等よりも遙か高みに登られてしまうと
取り残されてしまった様な寂しさも覚える。
難儀な話よ…
アルシオン陛下の元へ嫁いだだけではなく
姫様は、アストラスト等という、
赤色帝国を全て管理運営する者の
主巫女になられてしまわれたのだ…
メリシア姫はオルフェニウスの宝から
赤色帝国全ての国母へと変わられた。
陛下と姫、二人がそろってはじめて赤色連邦皇帝。
アストラストを支配する者。
この赤色連邦帝国の全ての支え…。
何よりもオルフェニウスの民はそれを誇りに思わねばならんのに
むしろ取り残された様な焦燥感が付きまとう…
きっとそれはオルフェニウスの人間以外から見れば
贅沢な悩みだと、滑稽な事に見えるのだろうな…」
そう言ってエスカは、
あまりにも馬鹿馬鹿しいわだかまりに肩を上下させるしかなかった。
そして不意にエスカは姫より貸与された、
姫を守るための皇帝護石『ナージェスタ』様をそっと触ってみる。
『もう私には必要の無い物だから、
私の最も大切な貴方を守る為、貴方にこれを渡します。
貴方もオルフェニウス家の姫といえば間違いはないのですから
ナージェスタは貴方にこそ相応しい…』
そう言って姫は、大切なオルフェニウスの秘宝石を貸与してくれた。
しかしそれは逆に言えば『ナージェスタ』様も
姫を守る皇帝護石としてのお役を御免となったという話。
『ナージェスタ』様でも、とても相手にならないような
銀河最強最悪の防護石『思考天体:レッドガメット:アストラスト』
その他を隔絶した複素結晶のメインマスターとなった今
何を他に必要とすればいいのだろう?
彼女が何かを望み、レッドガメット:アストラストが
それを連邦得益判断機構を通して「是」と言えば
赤色連邦帝国全ての軍を動かしてそれを手にする事ができるのだ。
言ってしまえば彼女が、今、銀河の6分の1を支配しているに等しい。
そしてその彼女の夫となったアルシオン陛下は
妻に「お願い」をして、妻のメリシア姫が「いいですよ」と許可をすれば
赤色連邦内での「どんな無茶だって」出来る。
ただし、そのお願いが、アストラストの皇室典範判断機構で
許容範囲の中に収まっていればであるが…。
という、この回転構造。
メリシア姫は皇族巫女系適合遺伝因子でアストラストを支配し、
アルシオン陛下は愛でメリシア姫を支配し、
アストラストは皇室典範でアルシオン陛下を支配する。
世にいう『銀河の支配の三竦み構造』という奴。
その銀河を支配する三竦み構造の中に姫は登っていかれ
アルシオン陛下とアストラストという
他を隔絶した存在の対等存在となった。
そしてエスカもナージェスタも、遙かなる高みから取り残されてしまった。
二人はやる事が無くなってしまったので、
仕方なくこんな銀河の真ん中でありながら究極のド辺境に、
その仕事先を見つけるしかなかったのだった。
エスカとナージェスタは『自分より遙かに上の者』に
守るべき人あるいは仕事を奪われたという点で
同類相哀れむという所であった。
しかし-、とエスカは不意に思う。
エスカ:
「S級人類として、B級人類、A級人類を常に圧倒していると
自分はもしかして人類ではないのではないか?と思う時もあるが…
不思議なモノだな…
そんな『人』から遙かに外れてしまった私も
『人』の様に夢を見てしまう…
B級人類から、人がその力を高めて行った先にあるが故に
人類らしい所を多々残しているのは当然の事だが…
むしろこういう部分があるからこそ、
自分もS級だとか階級分けされていても『人類』なのだと思ってしまう
それは何か不思議な事に思えないか?ギネス准将…」
ギネス:
「と、申されますと?」
エスカの不意の問いかけに首を傾げるギネス。
エスカは続けた。
エスカ:
「つまり人類というのは…私がS級として超絶な空間を操れようと
ギネス准将のA級として、B級を圧倒する空間操作ができようと
『そういう力』は人類としての重要な部分ではなく…
例えば『夢を見る』等という…、
S級やA級から見ればあまり意味のない…
B級人類の為に必要なだけの、ある一種の無駄なシステムを
それでもS級もA級も持ち続ける事に
その本質があるのではないか?とな…」
ギネス:
「!?」
エスカの思いがけない発言に思わずギネスはその目を見開く。
エスカ:
「戯言かもしれんが、『人類』とは、
S級やA級に分類される『存在の力の拡張』ではなく…
『そうではない何か』
それこそが人類というモノの本質ではないか?
そう思う事があるのだよ…
時にな…」
ギネス:
「ほぉ…それは啓蒙される様な思わぬ仮説ですな…
アストラストなら、その仮説になんと答えるのでしょうかな?」
エスカ:
「まぁ私も今、不意に思いついただけの事で
人類とは何かを考え続けている様な
思考天体内の研究室に閉じこもってる人類学者が聞けば、
どんな顔をするのかと思う事ではあるがな。
しかし、あんな懐かしい夢を見てしまうと…
『どうやら私も人類のらしいな』と、
なんだかよく分からない事を思ってしまうんだな…」
ギネス:
「哲学ですな…
それも、なかなかに興味深いテーマに思えます…」
エスカ:
「そうだな…哲学だ…
だが…」
ギネス:
「だが?」
エスカ:
「我々軍人に哲学に興じている暇はあってはならん
そんなのは人類学者の仕事さ…
その仕事が出来る様、たっぷりと予算と暇をあいつ等に渡してあるんだ…
彼等の仕事を我々が奪う様な真似をせず、
しっかりとその職務を奴等に遂行して貰わなければな…
そして、我々は我々の仕事をせんといかんよ。
それが職業分別というものだ…」
ギネス:
「なるほど…御意でございます」
エスカ:
「さて、アルシオン陛下との通信で張り詰めていた疲れも
姫との思い出の夢で癒された事だし、
そろそろ、オスロでのこれからの戦略会議を開かねば…
各分艦隊の司令官は、みんなもう揃っているか?」
ギネス:
「1時間ほど前に、最後の第14艦隊の残存分艦隊司令が
オスロに到着致しました…
到着したてで会議に出ろというのも酷かと思いますが
まぁ、そこは給料分、働いて貰いましょう…」
エスカ:
「うむ…、急ぐ必要は確かに無いが…
別の意味で急ぐ必要はある…
お疲れの所、申し訳ないが…
戦略会議を始めるとしよう…
皆に連絡を…」
ギネス:
「了解致しました、閣下…」
「一同敬礼」
そこは赤色連邦帝国がジェーダ共和国テクアルコアツ恒星系の
外縁軌道に設置した赤色帝国要塞オスロ内にある幕僚の為の作戦会議室。
エスカに招集され円卓の様なテーブルに艦隊の司令官達が集まり
エスカを上座にして回って座っていた。
その数は左右に5人で計10人。
作戦参謀の立ち位置であるギネスは席に座らず
エスカの側に起立した状態で付き添っていた。
その場にいる総勢12人で第17艦隊の作戦会議は始まる。
先ずはエスカの敬礼の号令で互いに敬礼をして
皆席についたのだった。
エスカ:
「第17艦隊の皆には、今更、改める必要はないが…
ドール提督旗下の第14艦隊の残存分艦隊の司令も居られる
一応、形式として…
第14艦隊の後任として、ヴァーチェ宙域制圧任務に着任した
第17艦隊総司令エスカ・ロックフォード中将である。
第14艦隊の方には以後お見知りおきを…」
旗下の司令官10人以外で初顔となる2人に向かって
エスカは腕を組んでそう切り出した。
その発言に言葉を受けた両提督がハッハッハと笑っては返事する。
トクマス:
「閣下を知らぬ間抜けな将官など赤色連邦軍にはおりますまい…
第14艦隊第3分艦隊司令トクマス・ノバ少将であります」
グール:
「同じく、第14艦隊第7分艦隊司令グール・スー准将であります」
二人はそう返事し改めて敬礼をした。
その返事にニヤリと微笑みを零し、うむ、とただ首を縦に振るエスカ。
エスカ:
「第14艦隊のバイパスゲート破壊任務で
艦隊戦力が維持できた唯一の2分艦隊だな…
かの激戦で半壊した第14艦隊…
なにより総司令官のトール中将が深い戦傷を負われた程の作戦で
艦隊主力を失ったままの分艦隊のみで
よくぞテクアルコアツ恒星系や、
ジェーダ共和国宙域の宙域支配権を維持してくれた。
赤色連邦軍の統合本部に代わり礼を言う。
よく我々が到着するまで頑張ってくれた、ありがとう…」
エスカはそう言って、S級戦艦が宙域に1隻も無い恐怖感の中で
増援を待って耐え忍んでくれた残存艦隊の二人に礼を述べる。
トクマス:
「何を何を、我々は連邦艦隊の軍人です。
職務を遂行したまでの事」
グール:
「同じく…」
二人は帝国内に轟く武闘派提督の
しかし意外な細やかな心配りの言葉を受け
驚いたかの様な表情を僅かに浮かべて礼に言葉を返す。
その返事に、うむ、と首をまた縦に振り
そして伝えなければならぬ次の伝令を口にし始めた。
エスカ:
「このまま、卿らの艦隊を本国に戻してやりたい所だが…
統合本部の命令では、第17艦隊は第14艦隊の残存戦力と合流し
ヴァーチェ制圧戦を継続せよとの事なので
ご苦労な事で申し訳ないが、
第14艦隊が再編成されるまで、卿ら二人は17艦隊預かりとさせて貰う
よろしいな?」
エスカは、作戦継続とは本当にご苦労な事だなと同情を禁じ得なかったが
しかし現実問題、有効戦闘艦の根本的な不足に
そうせざるおえない現状の命令を二人に伝えるしかなかった。
その伝令を耳にして、二人の司令はむしろ顔を明るくさせた。
グール:
「おおっ!猛将エスカ提督の下で働けるとなりますか!
これは腕が鳴りますな!」
トクマス:
「なんとなんと、紅の雷光の下で働ける様になるとは…
これは燃える御命令。
連邦帝国本部も中々粋な事をしてくれる…
聞きましたぞ…
インペリアルゲートへのゲートアウト直後に
あの銀河の不届き者、インチキ宇宙冒険家に襲われるも
得意の雷撃戦でついに宇宙冒険家に土を付けたとか…
色帝の名だたる名将が次々と病院送りにされている中
その辻斬りを撃退など、
初戦からして大勝利とは度肝を抜かされましたわっ!」
作戦継続という非常に辛い命令に対して
しかしその二人は、エスカ艦隊への編入という事に
むしろ嬉々としたようだった。
そして、オスロへの移動中の出来事が口にされる。
エスカ:
「耳が早いな…
まだ一日経ったばかりだというのに…」
エスカは、一応、通達はしたが隅々まで話が伝わるのは
もっと先だろうと思っていた「あの話題」が、
既に第14分艦隊にまで伝わっている事に驚きを禁じ得なかった。
グール:
「そんな大事件、伝わらぬ方がおかしいでありましょう…
我等残存14艦隊の皆もその報を聞き
下がっておった士気が、いっきにぶり返しましたわっ!」
そんなエスカの言葉に、いやいやいや、という顔をしながら
事のどれだけの大事であったかを強調する提督。
グール少将は艦隊の士気高揚を口にする。
エスカ:
「ふーん…、まぁ無傷とはいかなかったから
大勝利と言われても私は困るが…
それでこの遠い遠征軍の士気が回復したというなら
素直に喜んでおくか…
ともかく、卿らは打撃戦を得意とした第14艦隊…
我等、第17雷撃打撃艦隊でなら、
今までと違和感なく動けよう」
エスカは淡々とそう二人に言った。
そのエスカの発言に少しざわめき始める第17艦隊分艦隊司令達。
「おい、閣下から奇妙な言葉を聞いたぞ…
俺達、雷撃打撃艦隊だったっけ?」
「俺達、雷撃艦隊だよな…。打撃戦って、できたっけ?」
「いや待て待て、俺達分艦隊がやってるのは打撃戦だろ?」
「あ、そうか。俺達はそういや打撃戦してるんだったな…」
「エスカ提督が雷撃戦ですぐ決着を付けるから
打撃艦隊の様な時間戦にならないんで錯覚してるんだよ…」
「あーそうか、直ぐ終わるもんな…俺達の艦隊戦は…
だから打撃艦隊の様な長引くイメージが無いのか」
エスカの発言に違和感を覚えた旗下の分艦隊司令は
お互いに話しあいながら「その違和感」に
ようやく理由を見つけたようだった。
エスカは、その脳内次元振動波通信でなく、
実音声でヒソヒソ話をしていた司令官達の言葉を
ずっと聞いていて、少し頬を引きつらせる。
エスカ:
「こういう時に、我が旗下の分艦隊が
自分達を思い出してくれて、私は嬉しいよ…」
そうエスカは皮肉を言うしかなかった。
ギネス:
「閣下が雷撃戦で決着を付けすぎなんで、
皆が麻痺してるのです…
内からも外からも雷撃艦隊としか思われてません」
そんなエスカの言葉にギネスは冷淡に
客観的な第17艦隊の認識のされ方を口にしてみる。
エスカ:
「それなら、これからは雷撃戦は控えようかな…」
ギネスの言う『雷撃艦隊』というイメージの定着に腐って
思わず戯れ言を口にしてみるエスカ。
一同:
「それは止めて下さいっ!」
そのエスカの言葉に大慌てになって
皆がその席を立って叫んだ。
エスカ:
「皆に頼られて、私は嬉しい…」
その皆の素直な反応に、エスカはより引きつった笑みを
続けるしかないのであった。
気を取り直して、エスカは会議の進行を続けようとする。
エスカ:
「まぁともかくオスロでの総指揮を
第14艦隊より委譲されたので、顔合わせである。
我が第17艦隊、8分艦隊の提督達だ
ウースリ少将、ニナッツ少将、ミケール少将、ソニエル少将
ヤーコフ少将、オズバ准将、ヨッテイア准将、シリカ准将
第17艦隊の各分艦隊提督達だ。
トクマス提督とグール提督は、
後で皆とよく知り合って貰いたい。
第17艦隊と第14艦隊での艦隊運用の違いもあるからな…。
が、今は連携艦隊運動の訓練や親睦会を開くよりも、
先に最も重要な会議を始めたいと思う。
なにせ悪い知らせだ…」
一同:
「悪い知らせ?」
エスカが進める話の中で、不吉な単語が飛び出してきて
その眉をひそめる提督達。
エスカ:
「うむ。
すこしばかり最高軍事機密情報が発生し
緊急の事ゆえ陛下に直接会話ができたのだが…」
一同:
「陛下にっ!?」
エスカ:
「そうだ」
あまりに殿上人である『陛下』に対して
直接報告が発生した等と仰天する様な話が出てきて
分艦隊司令艦の一同は蒼白と成った。
皆がエスカの過去の経歴で陛下とは旧知の仲であるのを知っていたのと
S人類故のS級複素結晶適合故に可能であった、
アストラストとの超長距離通信の話であったが
それでも艦隊司令官ごときが統合本部も通さずに『陛下』に
直接会話が出来るなど、普通の提督レベルではあり得ない話である。
エスカがメリシア姫の護衛官として若かりし頃のアルシオン陛下とは
何度も何度も、顔合わせ、手合わせをしてきた事
あるいは連邦軍に入ってからは領土調停の内勤とはいえ
アルシオンやダンフォースの様な当時の皇家一族のつま弾き者と一緒に
赤帝領土内を調停活動していた等等
今から思えば赤色皇帝達と肩を並べてずっと歩いていたという
驚くべきエスカの特異な過去を十分理解した上でも
皆、その話に驚くのは仕方のない事であった。
エスカにとっては古い友人であっても
大半の連邦支柱12国家の出向提督達には、
筆頭御三家の皇族などそれ自身が殿上人なのである。
一同:
「陛下に直接具申せねばならぬほどの悪い知らせなのですか!?」
そのエスカですら分をわきまえて、
普段はするはずのないアクションを今回したという報告に
一同はよっぽどの事…、例えば緑帝の皇帝戦艦級が出てくる等という
『最悪の事態』を予想する提督達。
エスカ:
「ああ…、いや、陛下に伝えねばならぬ話は
そういう事ではなく、別の意味で悪い知らせでもあったが
全くの別件である。
そして、それに関しては陛下との会議の末、保留という形で終わった。
この会議には直接は関係ない話だ。
陛下との会議内容は、
陛下に伝えねばならん程の最高機密、
故に、卿らに語ってやる事もできぬが、それは了承していただきたい」
一同:
「ほう…」
そのエスカの返事に、僅かに落ち着きを取り戻す一同。
どうやら提督達が危惧した『最悪の事態』では無いようだった。
そもそも一同の予想した『最悪の事態』が当たっているなら
エスカがまだ涼しい顔をしているのもおかしい。
『陛下に直接具申しなければならない内容』に関しては
確かに引っかかる話であったが、『陛下に話す内容』等
戦局以外では『皇家関連の何らかの問題』しかあり得ないので
皆にも知られていたエスカの皇家との密接な関わりに
それ以上の言及は出来なかった。
一同:
「それは了解しておりますが…
ではこの戦略会議での「悪い知らせ」とは
陛下がお出ましになられる程の
赤帝が震撼する様な悪い知らせではないのですな?」
エスカ:
「うむ、そんな赤帝が全軍高揚する様な悪い知らせではない。
陛下に御伝えしなければならなかった内容の事ではないのだ。
悪い知らせとは、
その陛下との会議のおり、陛下に教えて頂いたちょっとした話だ。
しかし、その『ちょっとした話』は
我が第17艦隊にとっては、非常に悪い知らせである。
故に、お疲れの提督が居るのを承知で
緊急に戦略会議を開かせて貰ったのだ」
エスカはそう言って
切り出し方でマズイ言い方をしたなと自分に舌打ちする。
しかし、本来、知る事の出来ない情報を何故知ったのかという問題にもなる。
そこら辺の経緯だけは伝えてやるのが人情というものだった。
オズバ:
「なるほど。陛下がお出ましになる程の事では無いと…
で、閣下、陛下にお教え頂いた、
我が艦隊にとっての悪い知らせとは?」
オズバ准将が切り出してエスカに会議の起因を尋ねる。
エスカ:
「うん、
第17艦隊の皆には既に通知している事であるが、
我等、第17艦隊にヴァーチェ制圧が課せられたとき
統合本部からの命令内容は『楔を打て』であった」
シリカ:
「承知しております」
第17艦隊でエスカ以外の唯一の女提督であるシリカ准将が
第17艦隊出動時に発令を出された内容について同意する。
エスカ:
「これの発令者が誰か明らかになったのだ…」
ヤーコフ:
「陛下ではないのですか?」
ヤーコフ少将は、今更ながらに不思議な事を言い出すエスカに
眉をひそめて言い返す。
エスカ同様、皆、まだ赤色帝国連邦軍は
アルシオン陛下の作戦指揮下にあると思い込んでいたので
『別の発令者』なる不思議な単語に違和感を感じるしかなかった。
エスカ:
「私もそう思っていたんだが
ところが陛下ではなかったんだなー、これが…」
そのエスカも『そう』思っていた事が、
実はそうではなかった事に彼女は少しばかり涙ぐんだ。
いったい何時のあたりから、今の体制になっていたのだろう?
そう思い返せば、今まで誰も作戦指令に違和感を感じなかった事が
奇跡に思えてくる。
ソニエル:
「陛下でないとすると、どなたが?」
ソニエル少将は陛下以外の命令発令者についてその人物を尋ねる。
と同時に、エスカの言で陛下は今は軍の指揮から手を引き
連邦軍は別の指揮系統で動き始めているのでは?と考え始め
その状況を思案し始めた。
ソニエル少将だけでなく、その場の提督達がその状況を考え、
その場合の『該当者』を考えてみた。
一同:
「…………」
その僅かな思考の中で、皆の中に『!?』となる疑念が生まれる。
一同:
「え? まさか…」
一同は本来なら『異常体制』である陛下の直接指揮ではなく
定常時に戻った場合における連邦軍の軍最高権力者の事を思い出した。
そう、『陛下』が指揮を取るのは軍にとっては『定常』ではないのだ。
ならば…
エスカ:
「うむ、諸君等の賢明さには、このエスカ、安心を覚えるぞ
その『まさか』だ」
一同:
「まさか、ロックフォード元帥の命令だったのですかっ!」
「なにぃぃぃっ!!!!」
「ええぇぇぇっ!!!!!!」
一同が『その人』の事を思い出して、一斉に騒然となり絶叫が木霊した。
冷静に考えれば、その人の孫娘を前にしているのだから
それはあまりにもいろいろな意味で不敬な行為ではあったが、
彼等の脳内に全く無かった想定であったので
取り繕う事も出来ずに、皆の本音の所が声になっていた。
そしてその反応に反感を覚えるどころか
そうなるよねー的に同情の視線を伴って旗下の司令達を見つめるエスカ。
エスカ:
「陛下より、直接に御教授いただいた話である。
間違いがない…」
エスカは追い打ちの様にそう告げるしかなかった。
一同:
「待って下さい! それは大変ではないですか!」
そのエスカの言葉に、大慌てになって皆が腕を上下させる。
その無様な姿にエスカはジト目になって呟くしかない。
エスカ:
「だから言っただろう、悪い知らせだと…」
ギネス:
「悪すぎますな…」
そのギネスの駄目押しの言葉に一同は深く沈黙するしかないのであった。
立ち上がった勢いを殺され、各々が自分の席に座り
肩を落として沈黙するしかない。
歴戦の司令官達が、
しかしながらそこでガタガタと震えるしかないのであった。
エスカ:
「まぁ皆も、
我が敬愛する元帥閣下には大変な目に合わされてきたから
今更、説明するまでもない事だとも思うが
あえて状況整理として説明すると…」
エスカは自慢の旗下の艦隊司令が、一瞬で陥落したのを見て
半ば涙目になりながら、なれどただ同情するしかない心情を思い
ともかく、状況の整理をするしかないと言葉を口にする。
一同:
「ゴクリ…」
エスカのその発言に、本当に音がするほどに固唾を呑む提督達。
エスカ:
「もし陛下の命によっての『楔を打て』なれば
簡単な話であったわけだ…
遊撃、進撃、専守防衛、状況によっては撤退
とりえるオプションは臨機応変に
ニルクルヴァでの現在進行中の最終作戦に対して
ヴァーチェ宙域を攪乱する事によって
緑帝艦隊の水帝艦隊支援を妨害する
これだ。
そして、これは第14艦隊の艦隊壊滅までの奮闘と引き替えに
テクアルコアツにあった緑帝のバイパスゲートの破壊で
そのほとんどが達成されたわけで
我々17艦隊としては、この宙域で追加の遊撃を行い
緑帝の戦力分散とバイパスゲートの再建設妨害さえ出来れば
良かったわけだ。
それを遂行するだけで、ニルクルヴァの要塞制圧戦の支援に十分なった。
確かに、門前領宙域において1艦隊のみで陽動をやるには
不安の大きい任務であるが、そこは用兵次第という話。
むしろ艦隊司令官としては腕が鳴るという所だったのだが…」
一同:
「陛下の命だったら、そうですよねぇ…」
「陛下なら、柔軟な対応を良しとされるハズだ…」
そう皆が『流石は陛下、機を見るに敏』と、
少し大英断過ぎる今回の作戦指示に
いよいよにして赤帝の勝利を盤石にするための布石に出たのかと
柔軟なる作戦活動に胸を躍らせていたのだが…
エスカ:
「そう、私も陛下のメッセージとしての『楔を打て』なれば
1艦隊での運用力量と意気込んでいたのだが…」
一同:
「ロックフォード元帥じゃ…」
「ロックフォード元帥の下でのメッセージなら…」
「うううう………」
そこに別の人『ロックフォード元帥』なる別の人が出てくると
途端に話が変わってくるのは、もう滑稽を通り越して喜劇だった。
ギネス:
「クスコア恒星系
緑帝バイパスゲートセンターの制圧あるいは破壊…」
エスカ:
「……………」
ギネスは円卓の中央に宇宙図を表示させ、そのジューダ共和国から向こう
モーハン主義同盟の星系連合の中にある恒星系『クスコア』を表示した。
その恒星系に点線で接続されている緑帝のスターゲートのショートカット航路
『バイパスゲート』がアルタイト宙域とサファナム宙域に分岐していた。
クスコア恒星系は緑帝管理の『バイパスゲート』が
3方宙域に分岐するバイパスゲートのセンター。
第14艦隊がこのテクルコアツにある緑帝のバイパスゲートを破壊するまでは
テクルコアツにもクスコアからその線は接続されており、
緑帝本土からこの門前領域に艦隊を派遣するための超重要航路であった。
その3方向への接続中継点『クスコア恒星系』
この緑帝門前領域の要衝中の要衝である。
一同:
「だよなぁ…」
「元帥の命令じゃ『楔』の意味がそうだよな…」
「むしろ元帥の感覚じゃクスコア落とした余力で宙域全制圧だろ?」
「あーー、それもあるな…」
その場の提督達は、メッセージの『楔』の意味を再認識し
そして口々に『ロックフォード元帥なら~』という
発令者違いで目的さえ変わるそれに頭を抱えるしかなかった。
今まである程度想定していた作戦行動内容が
根本からちゃぶ台返しされたような気分になり
深い溜息しか出ない皆。
そして、その光景に深い溜息しか出ないエスカ。
エスカ:
「緊急会議を開いた理由、
これで諸君には分かって貰えたと思う」
一同:
「うーーーむ…」
「そりゃ確かに悪い知らせだ…」
「これは大変な事になったぞ…」
エスカの言に首を縦に振って、提督達各々がお互いの顔を見回って
『どうするよ?』といった顔の会話するしかない。
それほどまでに、作戦の目標の引き上げが深刻なのであった。
エスカ:
「さて、そこで我々としては早々に
方針を決めねばならんのだが…」
エスカは泣きそうな気分のままで、
それでも仕事は仕事、と気持ちを切り替えて
前向きな作戦の立案を始めようとした。
ヤーコフ:
「第17艦隊と2分艦隊で
まともに緑帝門前領域を制圧進軍できますかな?」
その作戦会議の本格開始にヤーコフ少将は、
初っ端から戦力不足の問題を口にするしかなかった。
その言を重々承知の上でヤーコフに目をやるエスカ。
エスカ:
「ではヤーコフ少将、卿ならどうするか?」
ある一種、意地悪かな?とも思いつつ、
旗下の司令官達の作戦立案を促してみるエスカ。
ヤーコフ:
「我が艦隊らしくはありませんが…
普通の考えをするなら、この要塞オスロの増築を進めて
緑帝のバイパスゲート再建設を阻止するという
防衛戦に徹するのが現在の戦力的には妥当な策かと…」
そう言ってヤーコフは教科書どおりの解答をした。
ど、同時にそれが妥当すぎて現場では意味がないのも痛感して
彼は頬を引きつらせる。
エスカ:
「ふむ…、確かにそれは手堅い作戦だな…
定石といえば定石だ…」
エスカは士官学校の模範解答の様なその返事に
感動するわけでもなく批判するわけでもなくただ感想を添える。
当然といえば当然の作戦だが、しかし、学校の模範解答が
現場の最適解答である等という事は無い。
それが戦争だった。
オズバ:
「しかし、ただ守って悪戯に時間を浪費していても
緑帝の艦隊再整備に時間をくれてやるようなもの。
ここは緑帝の門前領、定石だけで事を進めてはいられぬ!」
そのヤーコフ少将の言に、反論を口にしたオズバ准将。
エスカはその提督の発言に目をやり、静止する事もなく
目で「続けよ」と言ってオズバを促した。
オズバ:
「緑帝がその気になれば、緑帝領本土アルタイト宙域から
帝国内待機艦隊が出てくるかもしれぬのだ。
なにより、先の大戦で損耗した緑帝主力艦群は
アルタイト宙域にある
緑帝絶対防衛線機動天体要塞『ノルビスエア』の中で
修理中のハズなのだ。
駆動中枢管理機関の複素結晶に
あれだけのダメージを食らったのだから
早々簡単には修理できまいが、
それでもS級戦艦がゴロゴロと修理工房に並んでいる
普通で考えたらおぞましい光景。
それらが修理完了まで茶を飲んで待ってやれば
我々の常識では考えられない量のS級戦艦が押し寄せて
怒濤の大反攻を食らう事になるぞ…」
オズバ准将はそう『今の現実問題』というファクターを
皆の前に提示した。
エスカ:
「ふむ…それも正論だな…」
オズバの言うあまりにも『現場の状況という状況』に
目を細めるしかないエスカ。
最前線の向こうは敵国の本土。
それも緑帝本土入口宙域のアルタイト宙域には
赤帝連邦艦隊全てが押し寄せても陥落不能と思われるマジキチ天体要塞と
そこで修理されている白色帝国領域派遣用の機動艦隊が居るのである。
まぁ陛下が『Q』というインチキ戦艦でぶっ壊してくれたので
修理中の機動艦隊を戦力としてみなしていいかは疑問だが
無理をして半修理で出してくる状況もありうる。
それに、まさに陛下の危惧された
『連邦体制を傾かせても』という勢いで、
『本土内待機艦隊』、といえば聞こえはいいが
連邦制度を維持するための、エスカが過去にしていた
連邦加盟国家の紛争調停艦隊を白色宙域派遣艦隊に回して
戦力不足を補う可能性も有り得るのだ。
それこそ緑帝が崩壊しかねない話ではあるが。
その様な、教科書では考える例題に値しない状況が
この現在の第17艦隊が置かれている状況である。
『お茶を飲んで待っているわけにはいかない』
これだけはオズバの言うとおり絶対条件であった。
ヤーコフ:
「ではオズバ准将は、
フォメルノア、モルノメ、トルドメと進軍し
そのままクスコア恒星系に殴り込むという作戦でも
提案するのか?」
ヤーコフ少将は自分の口にした定石に対し
オズバの言う正論の衝突問題に頭を抱えながら
宇宙図を指し示して、性急な侵略ルートを図示してみた。
各提督達がヤーコフの示した最短でのクスコア恒星系侵略ルートを見つめる。
ヤーコフ:
「確かにこの作戦は
我が艦隊『らしい』と言えばらしいが、
クスコア恒星系は緑帝のバイパスゲートセンター。
そこを守る要塞ベルクドガは要衝中の要衝。
第14艦隊の奮戦で、テクルコアツの緑帝要塞ガージと
緑帝航路のバイパスゲートは運良く破壊できたが
ガージは元々、かつてナストア帝が大攻勢をかけたとき
赤帝の三将が攻略をかけて古代要塞としてのガージを破壊し
残骸でハリボテとして再建設されたボロ要塞だったのだ。
だから第14艦隊でも攻略できた」
そう言ってヤーコフはちらりと14艦隊の生き残りの提督達を見る。
残り物的な言い回しは彼等の心情を損ねるのでは?という懸念があった。
しかし14艦隊の提督達はそれに不快の表情をするまでもなく
至極最も、という風に首を縦に振っているだけだった。
その第14艦隊の同意を得た上でヤーコフは続けた。
ヤーコフ:
「だが、ナストア帝のあの時も、今と同じ様に
伸びきった補給線で進軍できたのはこのテクルコアツまで。
それ以上の侵略は出来ていない。
対してクスコア恒星系のベルクドガは
古代要塞のままクスコアに要衝として鎮座しておる。
アルタイトにある天体機動要塞などというふざけた要塞ではないにしも
ベルクドガも古代要塞。
S級要塞攻略艦がなければ簡単に攻略とはいかんぞ!」
ヤーコフは熱くなって思わず戦力的整合論だけで
状況を口走ってしまった。
その発言に、瞬時に青くなる第17艦隊の他の提督達。
ニナッツ:
「ヤーコフ少将、迂闊な発言だ!」
ニナッツ少将がヤーコフが熱くなって
配慮の足りない発言をした事に声を上げた。
ヤーコフ:
「あっ!」
そのニナッツの声に、ヤーコフも地雷を踏んだ事に気付く。
エスカの目がその瞬間にカッと見開かれた。
エスカ:
「ヤーコフ少将…
S級要塞攻略艦が無いと攻略できないとは、どういう意味か?」
とても涼やかな声でエスカはヤーコフの言を問うた。
そしてエスカはヤーコフを冷ややかな目で見つめる。
ヤーコフ:
「いえ!エスカ閣下っ!
私は客観的な戦力としての話をっ!」
ヤーコフは大慌てになってしどろもどろになり
純粋な戦力と作戦の話と弁明しようとした。
それに他の第17艦隊の司令は顔に手をやり
アチャーといった顔になって天を仰ぐしなかった。
そのやり取りが始まった意味不明さに
目を白黒させる第14艦隊の2提督。
エスカ:
「S級要塞攻略艦が必要という事は、
私に『あの男』の手を借りろという事か?」
すごんだ声で、エスカはヤーコフに問い詰める。
ヤーコフ:
「閣下、決してそういう意味では無くっ!!」
ヤーコフは、いきなり出てきた『あの男』問題に
笑い涙を流して弁明を続けるしかなかった。
他の司令官も、ハァ…という深い溜息をつくしかない。
(馬鹿が、核地雷を踏みおって…)という侮蔑の念と共に。
エスカ:
「この白色帝国領域で、
現在の派遣艦隊として配置されているS級要塞攻略艦など、
私の記憶では1隻しか無いと思うが?
先の戦いで、他のS級要塞攻略艦を使える提督は
戦傷で赤色帝国領内で治療中なんだからなぁ?」
顔に満面の笑みを浮かべて、しかし全く笑ってない目をしながら
エスカはその『現実』に念を押した。
ヤーコフ:
「閣下、御冷静になって下さいっ!
純粋な戦力と戦略の話であって!!」
エスカが無意識の怒りで、周囲の空間に歪みを生み出し
空間圧の亀裂音がビシビシっと聞こえる中、
各提督達はS級人類の腹の中にいるこの状況にただ戦慄するしかなかった。
エスカは自分自身でも、なんと幼稚な事で激高しているのかと
自制を行ったが、なかなか無意識の怒りというのは制御し難く
その腕がただわなわなと震えるだけだった。
エスカ:
「ま、ヤーコフ少将の言は
現在の赤色帝国では完全な妄言であり
ニルクルヴァの水帝門前要塞ヴィルグバレッゾの攻略で
あの男も、あのS級要塞攻略艦も手一杯、
ここに来るなど夢のまた夢だ…。
ただ、まぁその現実は横に置いておいて
そのヤーコフ少将の夢を、仮に可能にできたとして…
あの男の『手柄』になるような事を
みすみす、私に指をくわえて待っていろというのかね?
少将は……」
ヤーコフ:
「閣下ーーー!!!!」
どんどんエスカレートしていくエスカの怒りに
ヤーコフは涙目になって慈悲と自制を求めるしかなかった。
その会議室の空間圧力がきしみ始め、各A級人類の提督達の
体内複素結晶がその空間圧に無意識抵抗を始める。
事情を知らない14艦隊の提督2人は
突然S級人類の無意識空間圧抑制の発生に
自身の体が防衛活動を始めた事に、ただ驚き続けるしかなかった。
エスカは思わずその床を蹴った。
その衝撃が空間波となって皆の体内複素結晶に響く。
エスカ:
「私は『あの糞』よりも、先に連邦帝国軍元帥に上りつめて
『あの糞』を、この軍から追い出して、
ついでに『あの糞』との婚約も破談させねばならんのだっ!!
その『あの糞』との昇進レース中に、
『あの糞』の手柄になるような事、私が容認できると思うか!?」
罵倒の声だけの台詞であったが、
その台詞に無意識の怒りの空間圧が同時に飛んでいく。
ヤーコフ:
「閣下ーー!!!」
その圧に耐えながら、ヤーコフはただ押さえて下さいと
手を前に出すしかなかった。
エスカ:
「よしっ!第17艦隊だけでクスコアを陥落させるっ!
これは決めた!」
エスカはあまりの怒りに、拳をぐっと握ってそう高らかに宣言する。
一同:
「閣下ぁぁぁっっーーーー!!!!」
即断即決。
通り名の通りに雷の様にその基礎方針が決まった事に
その場の提督は、皆、絶叫を上げるしかなかった。
ギネスはこの話の流れを眺めながら、
『やっぱりエスカ提督はロックフォード元帥の孫娘だよな』
と見事なまでの遺伝を感じて心の中で笑う。
エスカはそう宣言した後に息を整え、
そして肩を上下させて一呼吸置いた。
エスカ:
「そう、思い詰めた顔になるな諸君…
クスコアの陥落を目標にするのを決めたというだけだ。
今から単艦隊特攻とか、夢の様な事は言わんよ」
そう言って皆が心配した『馬鹿げた可能性』の想像を遮断してやる。
一同:
「ふーふーふー」
『それじゃぁ今から第17艦隊出動!』とかいう妄言が
エスカの口から出なかった事に、なんとか安心を覚え
そして顔面蒼白な状況で荒い息を続ける提督達。
エスカ:
「どの道、元帥の命なのだ、
防衛戦のみでは納得して貰えまい…
ここで陣取って、お茶を濁していても
赤色帝国的には十分だが、元帥閣下が納得せんだろう?
クスコアの陥落を目標にするのは、最初からの大前提だ。
だが『あの糞』の手を借りねばならんという
現状のこの逆境に、その目標に腹をくくったという事だ」
一同:
「うううううう……」
エスカの『元帥命令』という言葉に暗い気持ちになり
そして、またいつもの『あの男問題』の地雷を踏んで
エスカがやる気満々になってしまったのを思い、
どうして自分達はこんなループ状態に陥るのだろう…と
運命の皮肉に苛立つしかなかった。
いや、結局『あの男』が要塞攻略のスペシャリストで
制圧作戦の戦略上、どうしても要塞攻略の必要性が生まれるから
このループは常に発生するしかないのだったが…。
それを思って各提督達は、
『あの男』に何時もの様に恨み節を持つしかないのだった。
『あの男』の事になると直ぐにマジギレするエスカに対して
上官だからという理由だけでなく本気で同情してしまうのも
何時も通りだった。
エスカ:
「さて、ちょっと冷静になってみて
オズバ少将の意見を吟味したいが…
オズバ少将の言うとおり、手をこまねくのは良くない。
防衛戦に徹するというのは、
結局、この制圧宙域を将来的に放棄するしか無くなる話だ。
しかし、ここは緑帝門前領、
補給線の長さがあっちとこっちでは違いすぎるのも事実。
ニルクルヴァにはようやく
赤帝専用のバイパスゲートが施設できたが、
ニルクルヴァでの弾の使用量を思えば
こっちへの補給が細くなるのもやむを得ん。
早急に緑帝に打撃を与え、緑帝水帝境界域での
緑帝からの水帝への援軍派遣も躊躇するような事態を作らねば、
ニルクルヴァ攻略戦の後方支援にもならん
守っては駄目だ。攻めるしかない。」
エスカは定石ではなく『現場の都合』のオズバ准将の方針を良しとし
その合理性を再検討し始めた。
ミケール:
「しかし、ヤーコフ提督の言う様に
3恒星系を何も考えず進軍していいものですかな?
クスコアの駐留艦隊が、メッソ、ジュリ、ナーメンと
我々と逆側のルートを取って
テクルコアツ再奪還艦隊を出してくれば
我々は、ニルクルヴァへの退路を塞がれますぞ…」
そこに老将だが戦績豊かなミケール少将が、
敵艦隊が取り得る侵略ルートを想定し宇宙図に示す。
ミケールは続けた。
ミケール:
「こんな急ごしらえのボロ要塞のオスロでは
S戦艦相手では、ひとたまりもない…
せめてオスロに要塞用の駆動管理複素結晶でも
本国から持って来ねば…」
エスカ:
「そこだよ提督、問題は…」
ミケールのこれまた定石的な発言に頭を抱えるエスカ。
エスカ:
「我が第17艦隊は遊撃戦闘をしてこそ価値がある。
が、遊撃というのは補給拠点の防衛が
完全にできてこそ意味のある戦術だ。
こんな補給とA級戦艦をメンテナンスしかできん
戦艦修理さえおぼつかないハリボテの要塞だとしても、
せっかく建設し始めたオスロを堕とされては話にならん。
ガワさえあれば、まともな要塞複素結晶さえ入れれば
それだけで持久戦の出来る戦闘要塞になるのだからな…
ここが本当の戦闘要塞になった時にこそ
我が艦隊の真価が発揮できるというわけさ…」
そう言ってエスカは、ただ建造物として作られてるだけの
小惑星を基地改造した要塞オスロの全像を見つめて溜息をついた。
地方豪族の国家の宇宙艦隊を相手にするなら
今でも十分難攻不落の要塞として構築されているオスロであったが
それは地方豪族の星間国家相手の話。
緑帝の派遣艦隊相手では、
ただ艦隊が駐留できる小惑星が浮いている程度のモノだった。
エスカ:
「が、悲しいかな赤色連邦は
ニルクルヴァでの要塞建設を優先しているので
オスロの為の要塞用の複素結晶など今の所、夢でしかない。
我が君、メリシア姫のその天才のおかげで
アストラストが近年稀に見る労働者になって
古代級の複素結晶を次から次へと生産してくれているが
全部が全部を白色領域に下さいというわけにはいかん。
そんな話は流石に連邦議会も通らん。
現状で、まだ現実的な話をするなら
もう1艦隊、防衛専門の艦隊を派遣して貰って
オスロを防衛して貰う事だが…、それすら難しい。
今の現状では、防衛艦隊さえ1艦隊も無く
我々は、オスロという補給基地を空にして
要塞攻略戦を仕掛けるなどと
とんでもない博打戦をする事になる。
非常にナンセンスだ…」
ミケール:
「守りながら進軍…矛盾ですな…」
エスカの非常に明哲な現状把握に賛同しながらも
同時に第17艦隊が抱える『難題』に矛盾という言葉しか
口にできない老提督。
沢山の戦歴を積んできた老提督といえど
門前領域というファンタジーが平気でまかり通る場所では
有効なプランを練れずにいた。
エスカ:
「ギネス准将、DSTEの輸送状況はどうなっているか?」
※※D-ST-E : ディメンション・シンクロトロン・イクイップペンメント
※※恒星間ワープ航路『スターゲート』を生成するゲート生成装置
ギネス:
「輸送願いを出していたDSTEですか?
HDSTEはまだニルクルヴァで稼働中ですので、
使わなくなったDSTEを解体して輸送に回しているとの事…
1週間もすればバラバラになった部品が到着するでしょう」
突然のエスカの確認に、
ギネスは自分の脳内にその情報関連をダウンロードし
それを円卓中央にディスプレイとして表示する。
ミケール:
「DSTEをヴァーチェに持ち込むのですか?」
ディスプレイに表示されたDSTEの全体像を見ながら
エスカに確認をするミケール。
エスカ:
「ニルクルヴァにはバイパスゲートまで施設できたのだ。
使わずに余っているDSTEならヴァーチェに持ってきても
良いだろうと思ってな」
ミケールの問いにエスカは簡素に答えた。
ミケール:
「ではDSTEを使って、テクアルコアツからモルノメに
スターゲートを開設するのですか?」
そのエスカに発言に、宇宙図を出して
今は無いテクルコアツーモルノメ間の
スターゲート航路の新規開設の方針を尋ねるミケール。
エスカ:
「それも手だ…
幸いスターゲートをリングから建設する必要は無いからな。
今あるスターゲートにDSTEで
時空共鳴パターンを覚えさせれば、
0から作るよりは圧倒的に早く出来る。
なら航路のショートカットに使わない手はない」
そのミケールの発言に、エスカは淡々と返事した。
ギネス:
「それでも時空共鳴の調整で、
2ヶ月はゆうにかかるとみてないと…
モルノメまでは光年距離がちょっとあります。
バイパスゲートまでは必要ないでしょうが
航路長さを考えると3ヶ月以上かかる事もあるかと」
ギネスはそんなエスカの言葉に、
現実に実行した場合の時間見積もりを口にした。
その時間的見積もりに、各々の提督が首を振る。
エスカ:
「それは仕方ない。
航路の新規開設で戦況を変えるのは
ある一種の奥の手だ…
それに緑帝だって、何の考えも無しに
テクアルコアツまで出てはこんだろう?
何も考えずにノコノコと要塞の穴蔵から出てきて
今あるスターゲートを3恒星ルートで
のっそりのっそりと進軍してくれれば
それこそ、我々としては願ったりかなったりだ。
普通にそんな馬鹿な戦略はありえんよ…」
シリカ:
「確かに…」
エスカの言に同意するシリカ准将。
制圧宙域の索敵哨戒に主に従事しているシリカであったので
3星系をスターゲートでゆっくりゆっくり移動してくれれば
索敵班としてはそれほどネギカモな相手は居ないという所だった。
エスカ:
「こっちが航路のショートカットを考える以上、
向こうがスターゲートを開いて
航路のショートカットをしてくる可能性もあるし
その戦法を取ってくれば、
我々としては、スターゲート破壊で跳躍そのものの妨害か
敵が跳躍した後に増援の遮断の為にゲートを破壊して
乗り込んで来た艦隊を包囲戦をする事を
オプションにせねばならん。
スターゲートの破壊後の再開設を考えれば
DSTEはあって困る事はない」
ミケール:
「ふーむ…」
エスカの一応は定石通りの采配に唸るミケール。
当然の采配と言えば当然の采配ではあるが、
まだ当たり前の事をしているだけで、第17艦隊の『らしさ』が無い。
そんな思いに駆られるミケールは、
随分自分もこの艦隊の『らしさ』に慣れてしまったモノだと
笑いが込み上げてくる所だった。
エスカ:
「まぁ、問題は敵戦力だ。
ヴェーチェ宙域に展開していると思われる
緑帝のS戦艦の数はどれくらいか?」
エスカはそう言ってギネスに報告を促す。
ギネス:
「モードス提督のS級戦艦バルゴ
ノイヤー提督のS級戦艦ミーリケ
ホーウレダ提督のS級戦艦ガドウィン
ヴァーチェ宙域防衛艦隊としての
昔からのレギュラーしか展開していないと予想されています。
3艦隊全てがクスコアに駐留しているのか…
1艦隊程度はその後ろまで下がっているのか…
現在、第14艦隊が手配していた
情報工作員達の諜報待ちといった所で…」
ギネスはダウンロードされる情報体をそのまま
ディスプレイに表示して同時に各提督の脳内に送信し
予想される配置パターン等等のケースを変えてみせていた。
エスカ:
「ふーん…
門前領域にS級戦艦が3隻しか居ないとは
別の意味で壮観だな…
それも全部が全部、
昔っからの防衛専門の要塞護衛艦隊…
皮肉な話だが、あの宇宙冒険家が、
緑帝のアーマン中将を闇討ちしてくれたおかげで
緑帝で名だたる雷撃戦の使い手が
遊撃作戦で出てくる事は無くなっているわけだ…
これは感謝しとかねばならんのかな?
私も闇討ちされたのに感謝とは奇妙だが…」
そんなエスカの感想に、みなが僅かにドッと笑った。
エスカ:
「そして、そんな防衛専の提督が
紅の雷光相手にテクアルコアツまでノコノコと
首を取られにやってくるなどもなかなか考えられん…
こちらの戦闘準備も考えて、
手をこまねいてぼーっとしてても
向こう3ヶ月は楽に睨み合いでいけるか…
ま、こっちは艦隊戦するにしても、
砲撃戦するなら『弾』が圧倒的に足りからな…
普通に3ヶ月、複素結晶光子魚雷の補充を
するしかないのもある。
要塞攻略なら隕石弾の用意も要る。
要塞攻略に準備万端にできる時間を丼勘定すれば
最速で動いても5ヶ月は必要か…
攻略準備だけで時間がかかりすぎるな。
この時間の猶予に、
要塞の中に籠もっている防衛専の腰抜け共を
何とか戦闘宙域引きずり出す妙案はないものか…
対艦隊雷撃戦に持ち込めば、
弾不足も問題にせんでいいのだが…」
一同:
「うーーーん」
そうエスカが現状の無い無い状況の問題点と
その状況を打破する様な妙案の必要性に
みなが頭を悩ませていた、その時だった。
ピコポーン、ピコポーンと
外部からの通信信号が会議室に鳴り響いた。
エスカ:
「ん?緊急通信要請? 誰からだ?」
基地の通信担当が緊急通信要請を出した事に首を傾げ
その状況を尋ねるエスカ。
ギネス:
「ふむ…通信班によりますと
通信要請をしているのは、
ジューダ共和国のマレット大統領の様ですな…」
ギネスは要塞オスロにドッキングし
基地内の管制処理の半分を受け持っている
シュルトワルゼのオロードを介して通信網の状況を表示する。
通信要請は外部から、テクルコアツ恒星系第三惑星
ジューダ共和国主星ガメッカの首都フォロビナ大統領府とある。
発信者はジューダ共和国のマレット大統領本人の署名であった。
それを見て眼を細めるエスカ。
エスカ:
「ああ、ジューダ共和国の…な…
私が着任してから1日程度だというのに
マメな事で…」
総督の到着を見計らっての通信に
エスカは相手の仕事熱心さに閉口するしかなかった。
ギネス:
「向こうからしてみれば、
新任の総督との会談は死活問題でありましょうからなぁ…」
そんなエスカの腐りに同じ様にギネスも皮肉として
相手の心労っぷりを揶揄するしかない。
各司令官達も笑いを堪えて下を向くしかなかった。
エスカ:
「まぁ、そうだな…
しかし…、ええいっ、いちいち会議を切られるのも面倒だ。
皆も聞いてるだけなら、どうでもよかろう?
どうせ何時もの定型解答の繰り返しにしかならんのだからな。
退席せずに、このまま視聴でもしといてくれ
ギネス、大統領をこの場に繋げ…」
そのエスカの言に各司令官達も、
またしょーもない政治ショーが見れるのか的に
苦笑いを浮かべて、ただ首を振るだけだった。
ギネス:
「了解しました」
その同意を得てギネスはそう言い
回線網を会議室に繋げるように
複素脳波命令信号をオロードに送った。
唐突に。




