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第一話 宇宙冒険家 レディン (Ⅰ)

この銀河の特徴的戦闘「雷撃戦」。ぶっちゃけブリッジ乗り込んでの白兵戦なんですが、そこに至るまでのプロセスが全てを「雷撃戦」と呼称してるのに対し、雷撃戦の最終段階をいきなり書いて、「S級人類」ってどんな奴等かの描写を試みてみました。


2016/10/23 大修正


この話を分割2話にし、前半分を掲載

今までイメージしてきた「雷撃戦」のイメージに対して

理論計算すると色々論外な数字が計算されたので

工学的に整合性がありそうな「場」を考えて、

設定の段階で「雷撃戦」と「空間戦闘」のイメージを変えました。

ヴェーチェ宙域テクルコアツ星系のインペリアルゲートにゲートアウトし

赤色帝国の拠点、要塞オスロを目指して数時間の宇宙巡航を続けていた第17艦隊。

その到着までの時間を持て余してしまっている合間に

エスカは自分の司令官席に座ったまま

オロードを介して艦内に生じている違和感にようやく気付いた。


「気のせいかと思ったが、やはり気のせいでは無かったか…

 これはこれは…

 やれやれ、ヴァーチェ宙域にようやく乗り込んでみれば

 初っ端から、とんでもないババを引いたようだな…」


そう言って深い溜息をつく。


「閣下? いかがされました?」


エスカの突然の言葉と深い溜息に、近くに座っていたギネス副官が

怪訝な顔をして、その言(げん)の真意を尋ねる。


「ギネス准将、雷撃戦準備」


そんなギネスの問いに対して、エスカはそう返した。


「は?」


突然のエスカの頓狂な言葉を受けて流石に歴戦の古豪も唖然と口を空ける。


「驚くのも無理は無いが、時間が無さそうだ…

 シュルトワルゼ、雷撃戦準備…」


エスカはそんな彼のもっともな反応に理解を示しながらも

続けて同じ指示を口にした。


「ら、雷撃戦ってっ、どうしたんですか閣下っ

 ここはまだテクルコアツ星系、我々、赤色帝国の支配宙域ですぞ!」


「だからババを引いたと言っただろう…

 とにかく急げ! ギネス准将」


エスカの頓狂な言葉に、ギネスは自分達の第17艦隊が、

ヴァーチェ宙域の橋頭堡であるテクルコアツ星系にあり

緑帝の艦隊などいるはずが無いという常識論を口にする。

しかし、そんな常識論は今のエスカには煩雑なだけであった。

こんな直ぐ側に居る事に気付けなかった…。

その事実だけがエスカの心境を複雑たらしめた。


「は、はぁ…閣下がそう仰るのなら…

 …で、雷撃戦目標艦は何所で御座いますか?」


「ここだ…」


「は?」


「雷撃戦は、我がシュルトワルゼ、ブリッジッ!

 私のこの提督席だよっ! ギネス准将!!」


ギネスの普通の問いかけにエスカは自分の座っている

ブリッジを指差して、雷撃戦が行われる場所を伝える。


「はっ!?敵に揚陸されてるのですかっ!!」


「それも直ぐそこだっ!

 何時始まるかもわからんほど直ぐそこにいる!

 巻き込まれて死んでも私は知らんぞっ!!」


エスカはギネスとのそんな会話のやり取りで

今に状況が如何に切迫しているのかを示した。

その言葉でエスカの言わんとする事の意味を理解して瞬時に青ざめるギネス。

普通の人間なら、それだけでパニックに陥り思考停止して

的確な行動ができなかっただろう。

だが、ギネスは流石に歴戦の古豪であり、少なくともその時

彼等がしなければならない事だけは、行動に移したのだった。


「う、うわぁっ!!

 総員っ!特殊戦闘態勢っ!!特殊戦闘態勢っ!!

 エスカ提督の指揮ブリッジに雷撃戦を仕掛けられたっ!!

 シュルトワルゼ、これよりエスカ提督が雷撃戦に入るっ!!

 総員、直ちに次元融解せよっ!!

 総員、直ちに次元融解せよっ!!

 エスカ提督の戦闘に巻き込まれて死んでも知らんぞっ!

 注水開始!!」


体内発振電波通信を用いてギネス准将は命令を発令し

第17艦隊旗艦『シュルトワルゼ』の

駆動中枢機関『核複素結晶』『オロード』を経由して、

艦内のクルーに電波伝令を伝える。

と同時にそのブリッジには大量の水の様なモノが注水されていき、

急速な物質波転送(トランスポート)も合わせて艦内の重要区間は水没していったのだった。


「では閣下、私も次元融解します…」


そう言うやギネスは、その場から注水されている水の中に肉体を融解させていき

肉体を液体のゲルの様なモノに変質させた。

その変質した液体ゲルの中には、無数の光る結晶の様なモノが残っていた。

しかし、その残った無数の光る結晶の様なモノも、暫く水の中に漂っていた後は

その場から流れてゆき、何処かに去って行ったのだった。


「うむ…私の戦いに巻き込まれて

 優秀な卿を失っては困るからな…」


そんなギネスの迅速な対応に微笑みで返すエスカ。


『しかし、我々の制圧宙域内で、我が艦に突然雷撃戦をしかけれる等

 私には理解が出来ません。どういう事なのですか?閣下』


肉体の物質を水の中に溶かして光の世界に次元融解したギネスは

安全防御区画まで自身本体の複素結晶群を逃がすと

複素空間越しからエスカにそう電波通信で語りかける。


「どうもこうも、だからこそ皆がこの白色帝国領域を欲しがるのだろう…

 私のオロードがこの距離になるまで接近も気付けないほど

 ふざけた古代技術の遺産が、宇宙冒険なんかしてたら発掘できるんだからな…

 艦内でこそこそしてないで、物質波輸送(トランスポート)して

 早くここに来いよ…有名な宇宙冒険家さんよぉ…」


言ってエスカは目の前の水に満たされた何も無い空間を睨み付ける。

そのエスカの言葉に、エスカが睨み付けた水域空間が僅かに揺らめいた。


「へぇ…炎帝国の紅の雷光様は、流石にこの距離でオレを感知できるのか…」


突然その空間に水伝搬の伝達音が響いたのと同時に、

その水空間に人間の男が析出するかの様に現れた。


『インジビリティ!? シュルトワルゼ艦内でも効果が及ぶ!?

 オロードが感知もできないとは…

 まさか…、この男が、今、銀河で噂の…』


「そのまさかだろうよ、ギネス准将。

 本当にふざけた話だよ…」


予想通りの相手に揚陸されているのを確認して

エスカはまた深い溜息をついた。

こんな事もあるかもしれない…とは思っていたが、

まさか、ヴァーチェ宙域に進駐した初っ端に出会ってしまうとは…

そんな頭痛が起きるこの状況を前に、エスカは目の前の男に問いかける。


「しっかし、最近の宇宙冒険家ってのは、暗殺業も請負始めたのか?

 突然の女の部屋への無断侵入は感心せんぞ…

 なぁ、レディン・ルーク…」


そう皮肉を混ぜてエスカは目の前に現れた屈強そうな男の名前を呼ぶ。


「ほうっ!紅の雷光様にオレの名前を知って貰えているとは

 それは光栄だなっ!」


エスカに自分の名前を口にされた事に、

その男は少々驚いて、返事をおどけて返した。

そんなわざとらしい態度を見て、エスカのこめかみに血管が浮かぶ。


「この銀河で…お前を知らん奴など居るのか?

 今の銀河で最も知られる男の名前を3人言えと言われたら

 我が帝国のアルシオン陛下か、宇宙冒険家のお前か

 華帝国のニア・ラルフ少将しかおらんだろう?」


そんなレディンの言葉にエスカは呆れて率直な意見を口にした。


「え?

 オレそんなに有名なの?

 銀河最強のアルシオン陛下と

 銀河を震撼させた華帝国の魔法使いと並べてもらえれる程…」


初対面のエスカにそう言われて素で驚くレディン。

そんなレディンの返事にエスカの表情は冷たい視線に変わった。


「黄色帝国のイルウリッヒ大将と青色帝国のブルーメン中将を

 お前が雷撃戦で討ち取った話を耳に入れてなければ

 私はとんだ無能提督と言われるだろうさ…

 色帝国軍直属の古代戦艦ではない、宇宙冒険で手に入れた発掘戦艦で

 ぶらり暗殺なんかしている宇宙冒険家なぞ

 名前が銀河に轟かない方がおかしい…

 そう…、轟く逸話というなら、

 私にも目視させてくれないか? お前の有名なアレを?」


言って首を緩く縦に振って、エスカはレディンに催促してみる。


「ほぉ、噂に違わぬ美人の女提督にそう言われたら

 見せないわけにはいかないなぁ、なぁガンマ…」


「そうですねマイマスター

 猛将エスカ提督の要請とあらば、

 ここは見せないわけにはいかないでしょう…」


レディンがそう言って手を振ると、

またしても目の前の水で満たされた空間から物体が出現してくる。

それは漆黒のアンドロイドであった。

そして出現しながら、ガンマはレディンに相槌を打つのだった。


「こいつがレディンを守る漆黒のガードロボ、ガンマか…

 こいつもウンザリするほど高階の複素結晶で構築されてるな…

 艦内潜入のジャミングが巧妙だと思ったが

 それは、コイツの仕業か…」


エスカは突然現れた漆黒のロボットを観察し、空間の歪みの量観察で

相手の体内にある複素結晶の性能を看破し、溜息を付いた。

S級複素結晶で構成されているアンドロイド。

友軍に居るだけで戦力が倍増しかねない、万能機械である。


「ま、そういう事だ…

 イルスキュルト、俺の自慢のヴェーユを見せてやれ…

 イマジナリダイブ、オープン」


『了解(コピー)』


次元音がその空間に鳴り響くと、その合図と同時にシュルトワルゼの真下に

その3倍にも近い巨大戦艦が突如姿を現したのだった。


『くっ…

 怪しい噂とは思っていたが本当にあったのか…

 次元潜宙艦『ヴァーユ』

 しかし…空間遮蔽技術は我々も持っているが

 こんな巨大な戦艦を次元潜宙させるなんて』


エスカの乗艦、シュルトワルゼの真下に現れた巨大な船をオロードが観察し、

その様子を艦内クルー全員に映像で見せる。

映った艦の様相にギネスは感嘆の声を上げるしかなかった。


「これが噂のヴェーユか…巨大だな…

 Q(ギュー)も巨大だったが、Q(ギュー)の半分くらいはありそうだ…」


そのオロードが見せる映像を前に、エスカも率直な感想を口にする。

船は大きければ強いという単純な等式は、今の銀河では成立しないが

同じ技術レベルで作られた船ならば、大きければ比例的に強いのは道理であった。

だからこそ、相手の持つ船の姿を見て頬が引きつるエスカ。


「しっかし、本当にふざけた宙域だな、この白色帝国領域ってのは…

 オロードは確かに1000年前の古代複素結晶ではないが、

 それでもアストラストが作った新世代の複素結晶だ…

 アストラストに作って貰ったが故に

 古代複素結晶と同じ技術…

 古代結晶とは性能も遜色は無いハズなのに

 そのオロードが雷撃戦距離になるまで気付く事も出来ないなんて…」


『モウシワケアリマセン、マイマスター』


「いや、いいよ、オロード。

 これは相手が悪い…

 この宇宙冒険家様は、とんでもない古代戦艦を発掘してるんだ…

 古代技術で作られた女皇帝戦にでも参戦したんだろうと思われる

 古代旗艦級の戦艦相手じゃ、お前でも流石に相手が悪い…

 この大きさを次元潜宙させるとか、

 1000年前の技術ってのは、いったいどんだけ狂ってたんだ?」


苦そうに言っては、エスカはレディンの乗艦の性能というよりも

失われた技術ばかりである『1000年前』という歪な歴史に思いを馳せる。


「いやいやいや、むしろ立派立派…

 1000年前の戦争よりも後に作られた新規の複素結晶が

 俺達をこの距離で発見したんだ…

 紅のエスカにオロードありとは、噂だけじゃないってこった…」


僅かにすねているエスカに対して、しかしレディンは賞賛の言葉を贈った。

それは社交辞令ではなく、エスカの乗艦シュルトワルゼの核、

中枢駆動管理機関である高階高次複素結晶『オロード』が持つ

高い空間操作能力への賞賛であった。


「お前に褒められても、ちっとも嬉しくないな…

 むしろ嫌味な謙遜にしか聞こえんよ…

 こんなゼロ距離まで次元潜宙されて接近されたんではな…

 で、宇宙冒険家さん…

 暗殺者にでも転職したのか?

 水色帝国か緑色帝国に雇われたか?

 わざわざ、自分の艦の自慢しに、私の艦に乗り込んだわけでもあるまい?」


そんなレディンの言葉に呆れながらも、

宇宙を股に掛ける、噂の辻斬りの背後関係を探ろうと

カマにもならない言葉で相手の懐を探ろうとするエスカ。


「いや?

 俺はクライアントは取らない主義なんでね…

 俺は宇宙冒険家だが、戦闘狂でもあるからな…

 雷撃戦の強い奴と闘いたい、それだけさ…

 冒険で強い武器を発掘したから、その発掘武器を使って己の強さを知りたい…

 そんな自由気ままな剣客なのさ…

 色帝間の戦争なんかに、興味は無いね…」


そんなエスカの探りに、裏表のない調子で明るく返すレディン。

その返事にエスカは呆れるしかなかった。


「キ○ガイに刃物とは良く言ったモンだ…

 色帝間の利害に関係なく、ただ戦いたいだけの戦闘狂とか…

 快楽殺人の辻斬りを胸を張って言えるのは、

 銀河中を探しても、お前ぐらいのモンだろうな…」


目の前の男の、堂々とした危険人物肯定発言にエスカはただ腐る。


「いやいや

 俺は強い奴にしか興味がないから、誰でも彼でも斬るなんてしないぜ?

 強い奴とだけ、正々堂々と雷撃勝負を挑むのさ…

 それが俺の主義ですよ…」


エスカの物言いに快楽殺人主義者とは違う事を親しげな調子で訴えるレディン。

その屁理屈がエスカにはあまりに滑稽だった。


「なるほど、だから雷撃の名手イルウリッヒ大将とブルーメン中将か…

 銀河に名の轟く雷撃戦の名手ばかりがお前の手にかかってるのも

 ただ、お前の剣士としての自己欲求を満たす為というわけだ…」


「人生、自分に正直に生きた方が、楽しいだろ?」


エスカのレディンという人間の人となりを探る話術に

何を隠すこともなく本音で返してくるレディン。

エスカはその言に手で目を覆った。


「……私は銀河で一番嫌いな男が1人いるが、

 お前はその次にランキングしそうな猛烈な勢いだよ…

 この初対面で…」


ただ本音だけで生きているのが正気で信じられそうな

目の前の男の裏表の無い言葉に、エスカは眩暈を覚えてそう腐る。


「嫌われれば全力で闘ってもらえそうだからな…

 それなら嫌われるのも悪くない…

 俺としては願ったりかなったりだな…」


「呆れるポジティブシンキングだな…」


「ネガに生きてたって、幸せにはなれんよ…」


「言ってる事だけなら、真っ当な意見だ…」


そう言い合っては、エスカは会話の中でレディンという人間の

性格を分析して人間像を構築しようとするのだが、

あまりに行動が言葉のままなので、

言葉のまま過ぎる事に、無駄な探りを入れても徒労かと悟り始める。

銀河をぶらり旅してる辻斬りに不運にも遭遇した。

この状況を、哀しいかなそう認識するしかなさそうだった。


こんなお気楽な男が、それでもノードノーク星系の英雄で

宇宙冒険でクラーリン少将級戦艦が守護していた宙域を制圧し

銀河中枢に一番近付いている等、この会話内容でどうして信じられようか?

いや、そんな銀河の耳目を集める業績を生み出せる人間は、往々にして、

話してみると気易い人間性であるという法則でもあるのだろうか?

そんな、雑念をエスカは脳裏に過ぎらせてみる。

自分の戴く皇帝陛下も、実際に側に居れば気易い人なのだから

荒唐無稽であっても、それは法則としては成り立つのかもしれなかった。

そんな要らない事を思わず考えた時に、レディンの方が言葉を切り出してきた。


「まぁそれに…」


「…それに?」


無駄な思考を巡らしているエスカに

レディンは不敵に笑ってご挨拶に来た理由を口にする。


「俺が戦って来た雷撃戦の名手は、確かに名の轟く猛者達だったが…

 1番と2番は『まだ』だったからな…」


言って、レディンはエスカに挑発的な視線を送った。


「…1番と2番?」


そのレディンの発言に、僅かにポカンとするエスカ。


「なんだ? 雷光の異名を貰ってる癖に自覚は無かったのか?

 銀河の雷撃戦評価ランキングじゃ

 紅の雷光さん、あんたがこの銀河での雷撃戦の使い手で

 2番目に強いって事になってるんだぜ?」


何所でそんなランキングが作られているのかも定かではない

しかし、何故かありそうな、そんな評価ランキングの話を持ち出して

レディンは自分がここにいる理由を簡単にそう説明した。


「…ん?私が2番? 1番は誰だ?」


「は?」


「私がそんな怪しげなランキングで2番って事は

 1番がいるんだろ? 1番は誰という評価なんだ?」


レディンの胡散臭いランキング話だったが、それに思わず食いついて

瞬時に思いつかない1番に首を傾げるエスカ。

そんなランキングがあるのは何故だ?という事の方を、

常識的には突っ込むべきだったのだが、哀しいかなエスカも雷撃戦馬鹿の一人である。

素で、きっとそんなランキング表がアングラでは作られているんだろうなぁと

納得してしまい、だからこそ1番は誰なのかが最も気になるのだった。


そこでエスカは、レディンが「1番は自分だ」というんじゃないかとも考えたが

『まだ』戦っていないという言葉ならレディンではおかしい。


そんな訝しがっているエスカの表情にレディンは呆れて返した。


「はぁ? 何言ってるんだあんた…

 1番はアルシオン・オーラクルムに決まってるだろ?

 銀河最強の男と言われてる、あんたらの皇帝陛下だよ…」


レディンはエスカの言葉に呆れてそう返す。

そう返されて、その人物の示唆に、思わず相づちを打つエスカ。


「おー、なるほどっ!

 こりゃ私もうっかりさんだ…

 これはとんでもない失念をしていた…

 雷撃戦で『今』の銀河最強は私だと自負していたんでな…

 そりゃ陛下と戦ったら勝てんわ…」


言って、とても恥ずかしそうに頭をかくエスカ。

その物言いに今度はレディンの方が閉口した。


「あんた、雷撃戦では銀河最強の自負を持ってたのかよ…

 アルシオン・オーラクルムをさしおいて…」


その呆れた物言いにレディンの方が腐ってみると

エスカは更に頭をかきながら返事を返した。


「陛下に弓引く事など、

 我々赤色連邦帝国の軍人には有り得ん事だからな…

 どうしても視野から外れるのさ…

 ま、それよりも陛下のルード・マルフィニアか

 よもすれば、まさかのQ(ギュー)・バルディオスとか

 あんなのには絶対に勝てんからな…

 根本的に、戦ってみたいという願望が生まれないな…」


そう言い返して、エスカは自分がこの銀河において

現役では雷撃戦術で最強だと思っていたが

『そういう次元ではないモノ』を見た事があると

次元の違うモノとの仮想戦闘は根本的に意味が無いと

完全に思考対象から外していた自分の思考に苦笑する。

二人の思い違いとは、その意識の齟齬であった。


「同じ組織にいると、皇帝陛下は別次元というわけか…」


「いやいや、それはそうだが

 陛下とは条件互角に設定して貰ってのレギュレーションマッチでは

 よく練習相手をして貰っていたし…

 条件互角でなら、負けっ放しというわけでもないんでね…

 『雷撃戦』の技量だけで見れば、

 武器制限された陛下となら五分に近いという実績もあるから…

 武器制限が無くなった陛下と戦うという発想が無かったわ…」


「そういや、公開されているレギュレーションマッチでの模擬訓練では、

 五分五分に近い戦績だったな…

 アンタとアルシオン陛下は…

 まぁ、だからアンタが2位という評価なんだけどな…

 武装状況次第では、アルシオン陛下にも勝つ可能性があるって事でな…」


そう言ってレディンは白色帝国領域においては戦績情報の少ないエスカが

にもかかわらず、前のアーツァマリッテ星域での参戦による戦績と

内地での調停艦隊活動での実践戦績、そして定期的に行われる

色帝軍部での総合軍事演習における訓練成績を総合評価して、

他の色帝の雷撃手達と比較しての2位評価の所以を指摘する。

誰が考えても最強でしかない六菱皇帝相手に

ハンデキャップを貰っているとしても五分五分の戦績を残しているのなら、

それ以上の評価は必要無いし、その下馬評はアーツァマリッテ星域での戦いで

エスカが水帝の雷撃手ホーネス・レンツァ中将を

雷撃戦で討ち取った戦果からも実証された事であった。


「実戦で武装状況が陛下より有利な状況になるなんて

 そっちの仮定の方が、どう考えても在り得ん事だがな…

 しかし宇宙冒険家さん、それは新鮮だったよ…」


「新鮮?」


「お前さんの様に、何所にも属さず自由気ままな

 宇宙海賊の様な生き方をしてると、

 何もかもが倒す対象に見えるんだからな…

 私の視野に入らないモノも、見据えているわけか…」


「そういうこった…

 2番と1番を倒せば、そしたら俺が宇宙最強だ…」


そう言ってレディンは自分の鼻をかいて微笑んだ。

その言葉と笑みを前して、不敵に微笑み返すエスカ。


「ほう…、なら私の次に狙うは、陛下の首か…

 そうなるとこの雷撃戦…負けられんな…」


レディンの言葉で彼の求めるモノを理解し、

同時にエスカは避けられぬ戦いに遭遇したことを悟る。

レディンの言葉をまともに受け止めれば

これは赤帝そのものに対する挑戦でもあった。

ならば、全身全霊を以て戦いに臨まなければならないな、と

エスカは覚悟を決めて2,3度頬を叩き、自分に活を入れる。

そして、楽しげな殺意を一杯に含んだ目でレディンを睨んだ。


「いい軍人の顔だ…。

 女だからと甘く見る気は無かったが…

 それでも、やっぱ俺は男だからな…

 女に剣を向けるのはちょーっと、と思っていたが…

 いやいや、いざ対峙してみると性別は問題ではないな」


言って、互いが注水された水空間の中で無意識に張っている

自分の液相結界空間の間合いの中、エスカの気合いの充実と共に

彼女の液相結界空間も戦意ある震動を立て始めたのを感じるレディン。

その光景に共鳴してレディンも己の戦意を高揚させていった。


「さて『今』の銀河最強の雷撃手と思われている

 紅の雷光エスカ殿… そろそろ手合わせ願えるかな?」


エスカの無意識の戦闘体制を見て、言葉でそう促してみるレディン。


「雷光のエスカから雷撃戦を取ったら、

 私には何も残らんからな…

 投げられた手袋は当然取るさ…

 なぁ、宇宙冒険家…

 いや?宇宙剣豪の方が正しいのかな?」


「呼び名は宇宙冒険家の方が好きだぜ?」


「そうか…

 では宇宙冒険家、レディン・ルーク…

 そろそろ楽しい会話も終わりにして

 始めるとしよう」


「そうだな、お茶でも飲みながら

 このまま会話しててもいいが、

 それじゃ何しに来たのかわからんからな…

 んじゃ、そろそろ、始めよう…

 ……しかし…液相雷撃戦にするのか?

 気相雷撃戦の方が、そっちには有利だろうに…

 これなら、俺も弱い力も強い力も使い放題なんだが?」


レディンは少し身構え、戦いの開始の合図をしようと思った。

しかし、不意に沸いた僅かな疑問をそこで口にする。

そのレディンの問いを受けて些か驚くエスカ。

エスカは司令官席に座したまま言葉を返した。


「液相にしたのは、私の艦のクルーをお前から護る為だ…

 クルーを人質にされてお前に殺されたら、

 我等オルフェニウス大公国としても人材の大損失だからな…

 お前ほどの手練れからクルーも守るには、

 多少不利でも液相にしないと防御は無理だと判断した…

 A級人類など、S級人類が相手では瞬殺されるのだし…」


そう答えたエスカは、レディンが1対1なら

雷撃戦の受け手側が空間を自分に有利にしない理由を聞いてきた事に、

奇妙な気分になる。

相手が好都合の場を用意してくれるのなら諸手を挙げて喜ぶ所のはずが

あえて、自分に不利な戦闘環境の存在を指摘してくるとは…。


「俺は弱い奴にゃ興味は無いし

 人質取って戦うなんて、無様な真似はしないぜ?

 って言葉で言っても信用無いってか?」


エスカの物言いに少し不機嫌になり、率直な思いを口にするレディン。


「まぁ、お前みたいな奴は、きっとそうなんだろうな…

 だから液相にしたのは、保険という意味でしかないが…

 まぁそれ以外には…、

 私が艦内に乗り込まれて『雷撃戦』を挑まれたんだ…

 なら、互いに全力が出せる『液相雷撃戦』じゃないと

 納得できないとは思わないか?

 同じ雷撃戦使い同士なら…な…」


言ってエスカはニヤリと笑った。


「はっ!

 そういう矜持かよ…

 やっぱり雷撃戦使い同士だな…気が合うぜ…

 俺も『液相雷撃戦』で全力で戦えないと

 雷撃戦をしたって気分になれないからな…」


「だろう?」


互いに言葉を交わし合い、そこに生まれた共感に

不思議な気持ちになり、不敵な笑みを浮かべ合う両者。

その確認で、心も含めて、全ての戦闘準備が整ったのだった。

そして、遂にエスカが戦闘開始の合図を口にする。


「では互いの信念にかけて

 いざ尋常に…

 雷撃戦…、勝負っ!!」


その声が轟くやいなやシュルトワルゼブリッジの

二人の間の水の流体空間に、その流体場を歪ませる『流れ』が生じた。


一瞬、エスカの眼前まで猛烈に歪んだ流体波動が押し寄せたが

その流体波動がエスカの目の前で突然停止し、

歪んだ流れ波動は瞬時に元の静水空間に戻る。


「おおっ!?

 この初撃が、完全に止められるかっ!

 こりゃどういうこった!?」


レディンは自身の肉体を動かしたわけではないが

己が放った流体波動攻撃が止められた事に驚嘆して声を上げた。


「戦いは始まったばかりだろう?

 理由を考えるのも雷撃戦の醍醐味ではないのかな?」


エスカは提督席に座したままで、

したり顔でレディンの驚く様を眺めて、悪戯っぽく笑みを返す。


「そりゃそうだが…

 『完全』となるとな……

 なんか、ヤバイ感じがするよぉ~」


呑気な調子で彼は言いながら、少し身構えたまま、

また『水空間を歪ませ』、その歪み流体波動をエスカに向けて放つ。

流体空間の歪みは、先ほどと同じ様にエスカに猛烈な勢いで忍び寄った。

しかしエスカはただ座したまま首を横に振っただけで

その歪んで忍び寄ってくる流体空間の波動攻撃を、

またしても『静止』させて静止水の水空間に戻したのだった。


「ふふん…

 2度もここまでイルスキュルトの流体空間操作を止められるとな…

 流石は雷光のエスカと言った所か、って思うが…」


エスカへの攻撃が完全に受け流された事に率直な感嘆の言葉を述べるものの、

同時に感じた違和感も含めレディンはエスカを凝視して、

その謎を空間観察して見切ろうとした。


「おだてても茶菓子は出さんぞ、宇宙冒険家」


そんなレディンの言葉のあやに軽口で返して、エスカもレディンを凝視する。

レディンというよりは、レディンの周囲に纏われている

流体場の『歪み量』であったが…

そんな互いの力量観察の中で、

レディンはまた不意に要らない事を思いつき、何気なくそれを尋ねてみる。


「まぁ、いや別に茶菓子はいいんだけどさ…

 ところで…あんたは戦闘儀礼服には替えないのかい?」


「あ?戦闘儀礼服だと?」


そんな思わぬレディンの指摘にエスカは瞬時に目を細め頬を引きつらせる。


「辻斬り相手に儀礼服を着てやる寛大さは私には無いぞ…

 そもそも女の部屋に無断で入って来る様な奴に

 儀礼を口にされるの事の方が遺憾だが…」


エスカはレディンの指摘にそう皮肉を返す。

その返事にレディンはやれやれと肩を上げた。


そんな互いのジェスチャーをしながらも、

二人は本格的に空間操作での牽制攻撃を始めていた。

自分達の周囲に展開している空間操作用の複素結晶群達に半自動で指示が飛び

流体内に微粒子的に溶けている『流動空間素子』を連結させて

複素結晶は『空間回路』を組み上げていく。それらは超高速に行われていた。

その高速回路形成動作は、互いに水の中に満たされた状態で、

エスカは提督席に座ったまま、レディンは現れた場所に立ったまま、

軽口を叩き合ったままで、であった。


この様が雷撃戦における『空間演算戦闘』のポピュラーな姿であった。


両者の水空間の間に振動した波動力場の様なモノが生まれ、

それらが互いの中間距離で流体歪みとして

右へ左へとうねっては、その場でのたうち回る。

高速で組み上げた空間回路が、力学的電磁気学的な両方の『力場』を生み

互いの攻撃波動力場を放っては、防御力場でそれを受けて

流体波動の動きを牽制し合う。

そんな流体力場の鬩ぎ合いの中、

二人はやはり、座ったまま立ち尽くしたまま会話も続けるのだった。


「いやいや、だいたいの雷撃戦の名手ってのは

 儀礼服を着たがる奴ばっかりだったからな…

 あんなの気分だとはいうが、

 その気分って奴は、雷撃戦には、結構、重要だろ?」


お互いの目の前で展開される歪んだ流体空間攻防を見据えながら、

そんな無駄口を叩くレディン。


「そんな事いうなら、お前だってそのボロいノースリーブの

 戦闘用シャツだけじゃないか…

 そんなラフな格好の奴に、儀礼服云々言われたくはないよ…」


二人の中間場でのたうち回っっていた流体空間の拮抗が崩れ、

一瞬、エスカの方に猛然と流体波動が迫って来た。

しかし、エスカはそれに目をやって、

その流体波動がエスカを脅かすのを『静水』させる。

外から見た様子では、眼力で流体波動がひるんだようにも見えた。


「俺の戦闘儀礼服は、『これ』なんだよ…

 何よりも自由で、誰よりも最強を目指す気持ちが

 この服さ…」


そんな攻防を続けながら、笑ってレディンはそう言った。

と同時に、目の前の流体空間場の歪みを

2転3転と視線を動かすことによって器用に操るのも怠らない。


「なるほど、装飾華美だけが儀礼服ではないという事か

 宇宙冒険家ならではのラフな思考だな…

 だが、そういう所は嫌いではないな…

 雷撃戦の為に、命をかけるのもいとわん所も

 不思議と好感が沸くよ…

 雷撃使い同士の嗜好の一致という奴かな?」


「お?愛の告白?

 銀河に名が轟いてる紅の雷光様から?」


「阿呆」


レディンの繰り出してくる猛烈な空間攻撃とは裏腹に、

軽薄すぎる軽口を耳にして閉口するエスカ。

レディンは変わらずの軽い調子で続けて言葉を投げた。


「あーでも、それなら儀礼服着て、それ言って欲しいなぁ…

 提督服スーツも悪くないが、女性用儀礼服は見ていて美しいしな…」


と、自分は装飾を否定するのに女性の着飾りは見たいとか

平然と我が儘な事を言うレディン。


「あいつに言われたら、虫酸が走るような台詞だが…

 何故かお前なら、嫌悪にはならんな…

 お前は裏表がなさ過ぎるからかな?」


レディンの物言いに呆れながらも、

言われて身の毛がよだつといった感も無く、そう感想を口にするエスカ。

互いにそんな無駄口を叩きながらも、二人の間の流体空間の歪みは、

右へ左へとその振幅量も振動数もどんどん大きく強くなっていった。


互いに自身の肉体は動かさないが、自分の周囲にある空間の『場』を使い

電磁力、弱い力、強い力、重力などの『力場』を鬩ぎ合わせて戦う事。

『空間使い』あるいは『空間攻撃』

それがA級人類以上の人類の戦闘方法であった。

そして、その『場』での戦いを最も効率良く実行できるのが、

『流動空間素子』とそれを総括する『複素結晶』が

大量に混ざっている水の中、『液相場』である。

この流体場を操って戦う様を『流体空間演算戦』とも言う。


挿絵(By みてみん)


二人は自身の肉体は動かさないモノの、そんな空間の力場を使った戦闘を

戦闘開始から激しく続けており、空間回路を互いに高速に組み上げては

相手の空間回路を破壊するという空間での攻防を繰り返していた。

その空間操作を高速に実行する為には莫大な運動演算が必要であり

その計算と計算結果からの空間回路の再結線を担うのが『複素結晶』と呼ばれる、

空間操作機能を付加された特殊なコンピューターであった。


エスカは、互いの攻防を見据えて相手の力量に感服し

そこで頬を緩めて口を開く。


「お前に…無礼で対したい訳ではないのだよ…

 ともすれば、本当にお前が銀河一の雷撃戦の使い手かもしれんからな…

 この小手調べの攻防で、それがよく分かったよ…

 なるほど…色帝の雷撃手達が次から次へと、お前に討ち取られるわけだ…

 それなら、その『強さ』にだけは『礼』を尽くすのが色帝軍人の矜持なんだがな

 だが、私は戦闘儀礼服なんてモノは

 もっと原理的であるべきだと思っているんでね…

 私が胸にこれを下げている…

 これが私の戦闘儀礼服というスタイルさ…

 むしろ、これが本来の儀礼服の意味だったろう?」


言ってエスカはその胸に飾っている

宝石の様なモノをレディンに見せつける。


「おおっ!?

 それって、まさかっ!

 それがオルフェニウスの秘宝石『ナージェスタ』!? 

 あんたが持っているって噂は本当だったのか!?」


エスカが指し出したその宝石に、識るべく所あるレディンは、

とんでもないお宝が目の前にある事を悟って高揚した声を上げる。


「いやはや、呆れるよ…まったく

 そして、我が大公姫には、本当に感謝しても、し足りない…

 『ナージェスタ』様を、姫から貸与されてなければ、

 さっきの初撃で死んでいたかもしれんからな…」


言いながらエスカは己の目に手を当てた。

油断していたつもりはないが、赤帝の帝国国宝を持っているという自信が

一種の慢心にもなっていたのも事実だった。

だからこそ、国宝が無ければ初撃で薙ぎ払われたであろう、

最初の手合わせに、エスカは渋い気持ちになるしかない。

そんなエスカの感傷は他所に、戦闘は互いが支配する複素結晶達の

半自動演算によって継続されており、

二人の間の水流の流体空間歪みは、より激しく右に左に乱流振動していた。


「いやーいやー、これは素晴らしい雷撃戦になったな…

 初撃を完全に防がれたのは初めてだが、

 『ナージェスタ』に守られてるとなると、納得もしたっ!

 なるほど、ナージェスタに守られて戦えるのか…

 そりゃ、どんな装飾華美な儀礼服よりも儀礼に溢れてる…

 あんたが銀河最強の雷撃手…、あながち間違いでもないかな?」


両腕を組んでそうコメントするレディン。


「お互い様じゃないか?

 お前の『イルスキュルト』の空間操作は冗談になってないぞ…

 『ナージェスタ』様じゃなきゃ防げない空間攻撃なんて

 洒落になってない…

 銀河中枢を発掘してたらイルスキュルトみたいな、

 とんでもねー、複素結晶が出てくるんなら

 我が帝国は是が非でも白色帝国領域を制圧して

 宇宙冒険家に銀河深淵発掘させんといかんな…」


『モウシワケアリマセン、マイマスター』


「謝らんでもいいよ、オロード。

 『ナージェスタ』様と互角の空間操作ができる『イルスキュルト』

 女皇帝親衛艦隊旗艦級の複素結晶だ…

 本当に、とんでもねー石、発掘しやがって…

 そして私は、とんでもねーババ引いたってわけだ…」


通信連結していた駆動機関の『オロード』そう言ってハァと溜息をつき、

ついにエスカは司令官席を立ち上がった。


「およ?

 小手調べは終わりって事か?」


戦闘開始から座したままだったエスカが

初めて本格的な戦闘態勢に入ったのを見て、

レディンは声をより陽気にさせる。


「いやいや、まだまだ…

 小手調べというなら、これからだよ…

 宇宙冒険家…、あんた、顔笑ってるからな。

 まだ他に別の複素結晶隠してるな?

 そろそろ体を動かさないと、『それ』を見切れなそうでね…」


レディンを睨んではそう言い、直感で感じていた違和感を

漠然とした言葉にしてみるエスカ。

空間演算戦では互角だというこの状況で、

侵入して来た相手の方が、笑っていられる事が何より気に入らなかった。


「空間演算は互角と見て、肉体を使っての近接戦…か…

 …まぁ、俺は好きだよ?」


水の中で動きだしたエスカを見て、

レディンも軽くジャンプをしては体をほぐす動作を始める。


「肉体を使っての近接戦が嫌いとは言わないけど…

 近接戦こそ、『雷撃』の言葉に相応しいと思わないか?」


レディンの準備運動を見ながら

そう言ってエスカは小太刀の様な刀を、その手に突然出現させた。


「これも私流の戦闘儀礼服さ…

 ロックフォード家の家宝『ミージェ』だ…」


言ってエスカは、独特の装飾が施されている小太刀を

レディンに自慢げに見せつけた。


今まで設定していた「空間戦闘」


力場を使っての力場同士での攻撃の応酬というイメージだったんですが

電場だ磁場だとか、そういうのが謎の装置「複素結晶」で

バンバン作れるという事にして「力場同士」の干渉で戦う、という

イメージだったんですが、ただの空気中で、磁場と電場オンリーで

拳銃の弾を止める為に必要なエネルギーを計算してみると

簡単な概算での計算ですが、エネルギー量で、1kg級の反物質を使った

質量エネルギーを解放したぐらいのエネルギー量が必要という

論外な計算結果が出てしまい、反物質爆弾を全員が所持しながら

ブラブラしてる物騒な世界… という事になってしまって

「なんて効率が悪い世界なんだ!」

と、計算結果から頭を抱えてしまいました。


磁場と電場だけで戦うのはともかく

拳銃の弾を止める方が逆に「空間戦闘」では至難である、あるいは

尋常ではないエネルギーが必要である…となって頭痛が痛い

実物理からの理論計算結果でした。


「装甲があれば止めれる程度のモノが、逆に変形性の高い『場』では

 相性が悪いという事なのか…

 それもこれも、空気の密度が薄いせいだ! 

 空気のガスを使う思想では質量密度が足りなさすぎるんだ!!

 しかし固体、つまり装甲服を着るんじゃ、

 現代兵器やファンタジーと同じだ…

 何より固体では変形性が悪いので、使い勝手が悪い…

 宇宙で使うモノは、変形性の高いモノでないと駄目だ…

 真空相手に対処できるほどの多様性が必要なんだ!

 固体並の質量密度があり、気体並に流動すれば、空間場を伝搬させるのに

 最も都合の良い媒質になるんだが…そんなモノって…

 ……え? じゃぁ『水』か?」


という、考察になり『液相空間場』という発想になって

それらについての妥当性を検討してました。


そのイメージが、この戦闘描写になります。


今までの設定に対する、大改変になります。



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