第4章*大人になったお前へ
「ーーレオンハルト、さ…」
ベッドに押し倒された衝撃で、優太の口から短い悲鳴が漏れた。
視界をふさぐのは天井ではなく、自分を見下ろすレオンハルトの狂おしいほどに歪んだ美貌だ。
いつも優しく、時に過保護なほどに優太を包み込んでくれたその瞳は…それが今は、見たこともないほどに昏く、底知れぬ独占欲と執着心に満ちている。
(ーー怖い…)
本能が警鐘を鳴らしていた。
目の前にいるのは…兄のように慕っていた“優しい恩人”ではない。
飢えた野獣のような、1人の“男”だった。
「ーー逃げるなど、絶対に許さない」
レオンハルトが低く、逃げ道をふさぐように囁いた。
優太は必死に身を捩って彼を押し返そうとした…けれど、騎士団長の圧倒的な筋力の前では、18歳になったばかりの青年の身体など羽虫のように無力だ。
万力のような力で両手首をベッドに縫いつけられて、身動きが取れない。
「ーー待って…レオンハルトさん、どうして…」
優太の声が恐怖で震える。
その瞬間、レオンハルトは容赦なく顔を近づけて優太の唇を強引にふさいだ。
「ーーんぅっ…!?」
それは、“口づけ”などと言う生温かいものではなかった。
唇を食み、蹂躙し…優太の息を根こそぎ奪い去るような、暴力的で激しいキスだった。
あまりの衝撃に、優太の頭の中は真っ白に染まった。
元の世界では…誰からも存在を気づかれなかった、誰からも触れられなかった。
それなのに…今、この異世界で最も強く、美しい男が自分を壊すほどの力で求めて貪っている。
ようやく唇が離された時、優太は酸素を求めて激しく喘いだ。
涙がこぼれて、視界が滲んだ。
「ーーレオンハルトさん…何で、こんな…」
「ーー勘違いするなと言ったはずだ」
レオンハルトは優太の涙を愛おしそうに指で拭うと、その指をそのまま、まだ熱を持っている優太の唇に這わせた。
「俺がこの数年、お前をただの“家政夫”として、弟として見てきたと思ってるのか?
ユウタ…お前が成人するのをどれほどの飢えを堪えて待っていたか、お前には想像もつかないだろう」
「えっ…?」
レオンハルトの口から告げられた言葉に、優太は呆然とする。
(成人を待っていたって…俺を…?)
「他の誰かと結婚?
バカバカしい…あんな見合い、お前が成人するまでの退屈しのぎに過ぎない」
レオンハルトは優太の首筋に顔を埋めて、痛いほどにその白い肌を噛んだ。
「ーーひあっ…!?」
痛みと今まで感じたことのない熱くて甘い痺れが優太の背筋を駆け抜けた。
「お前が大人になった翌日に逃げ出そうとするなんて…お仕置きが必要だな、ユウタ」
レオンハルトの瞳には…もう隠そうともしない、深く歪んだ愛欲がギラリと灯った。




