3.謝罪
「本当にごめんね」
ダンジョンの出口へ向かって走っていたとき、メルがか弱い声で言った。
「メルは謝る必要はない。謝らなければいけないのはあの三人だ」
「でも、私が弱いのは本当のこと--」
「メルが弱かったら大抵の探索者は弱いことになってしまう。あの三人が異常なだけだ」
メルの涙が俺の腕に滴る。
「足手まといになってたのも本当のことだし」
「メルのおかげで探索できたダンジョンがいくつあったことか。足手まといになってたのはパーティーを掻き乱したあの三人だ」
メルの涙は止まらない。
きっと、この三ヶ月間の苦しみが全て襲いかかっているのだろう。
「私を責めないなんて、ケルトは本当に優しいね」
「普通はメルのことは責めない。あの三人は異常だからメルを責めてたんだ。メルは一切悪くない。あの三人が全て悪い--」
俺はあることを思い出し、言葉が詰まってしまった。
「あの三人も悪かったけど、俺も悪かった。本当にごめん」
俺は走っていた足を止め、メルに謝罪した。
「私が悪いんだから謝らないで」
「いや、俺が悪い。一度出ていこうってメルが言ったのに止めたから」
メルはあの三人の態度が豹変してから一ヶ月半のとき、一緒にパーティーから出ようと俺に言った。
だが、そのときの俺はあの三人が元に戻ると信じており、メルが出ていくのを止めていた。
俺の頑固な性格のせいで、メルを苦しめてしまった。
「俺もあの三人と同じくらい悪かった。本当にごめん」
「ケルトは謝らないでよ……」
メルの涙が俺の腕に滴る。
本当に、ごめん。
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ダンジョンの入り口にたどり着いた。
この頃にはメルの涙は止まっていた。
しかし、苦しい気持ちは残ったままだろう。
「本当に申し訳ない」
ダンジョンから出た瞬間、俺は土下座をした。
「こんな場所でやめて。変な目で見られるよ」
「俺は悪い人間だ。辱めを受ける義務と謝罪する義務がある」
ホテルの一室で土下座するよりも、人目の多い場所で土下座する方がよい。
自分を辱めに追い込むことと、きちんと謝罪することができる。
「ケルトは悪くないんだから謝る必要はない--」
「俺は悪い。あの三人と同じくらい」
俺は頭をグリグリと地面にこする。
「そんなにしないで。もう謝らないで」
「俺は罪深い人間だから、もっと謝らせてくれ」
そう言いメルを見るために顔を上げると、目に涙が溜まっている姿が見られた。
「私にそんなに謝らないでよ」
小柄な可愛らしい手で涙を拭うメル。
「俺は罪深い人間だから謝らせてくれ」
深く謝罪しなければ罪を償うことができない。
メルの苦しみを感じ取ることができない。
「やめてよ。本当に」
「俺は謝罪しなきゃ--」
再び顔を上げたとき、今にもむせび泣きそうなメルの姿が見られた。
「私難しい人間だから。ごめんなさい」
俺はメルに謝罪してるのではなく、俺自身が心残りがなくなるように土下座をしていただけと気づいた。
「本当に、ごめん」
俺は立ち上がり、深く頭を下げた。
俺は人のことを考えられていない。
自分がこの苦しみ、もやもやから抜け出せればいいと思ったんだ。
もう一度、きちんとメルに謝罪をしなければいけない。
「本当にごめ--」
俺は深々と頭を下げたが、その間にメルの姿が見当たらなくなっていた。
「え、ど--」
俺は何者かに口と目を覆われた。
すぐさま腕と足が縄で縛られる感覚もした。
背後から気配は感じなかった。前には当然ながら誰もいなかった。
なんなんだ。なにが起きたんだ。
俺は混乱したまま何者かに引きずられる。
もちろん、抵抗するが、相手の方が力が強かった。
引きずられた先にはなにかに乗せられる感覚がした。
ガタンという音がしたので、きっと荷車だろう。
ここまでの状況を考えると、これは誘拐だろう。
しかし、なぜ俺が誘拐されるのか理解できない。
俺は18の男性だ。
女性なら色々と使い道があるため誘拐の対象になるだろうが、男性は使い道がない。
強いて言えばゲイの奴隷か。
いや、そうだとしても可愛くもイケメンでもないフツメンの俺を選ぶことはないだろう。
でも、意外とフツメンに需要があるとか--そんなことあるわけないだろ。
変なことを考えている場合ではない。
今は俺のことよりも、メルのことだ。
メルはどこにいるんだ。
この状況ならば、俺と同じで誘拐だと考えられる。
誘拐された女性はほとんどの確率で苦しい人生を歩むことになる。
意地でもメルを助けなければならない。
しかし、縛りが解けないため身動きが取れない。
縛りが解けないなら、声を上げるしかない。
しかし、いまだに口と目は覆われている。
くそっ、メルを助けなければいけないのにどうしようもない。
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