表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣にはアイドルが座っているけどハッカーな俺には関係なかった  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/27

侵入

 俺たちはようやく山を下り、ホテルの裏手に近づいた。

 高橋(かげむしゃ)は状況を確認すると言って、どこかに消えてしまった。

 山を下ると言っても、道があるわけではなかった。胸に病気がある俺には、過激な運動だったため、時間をとってもらったのだ。

 俺は森の中で座り込んでいた。

 そこから見えるホテルは、ドローンで撮った映像の通りの建物だった。

 山側の裏手には、草木がホテルを汚さないよう、ちょっとした道が出来ていて、払った小枝の束がいくつか置いてあった。

 表も同じようだとすると、道に面したところには車両用の鉄製の門があり、その内側に敷地を埋め尽くすように黒いビニールハウスがあるはずだ。そして三階建てのホテルがあり、下の街を見下ろせるようになっている。

 動悸が収まった頃、高橋がやってきた。

「いける?」

 俺は返事をすると、立ち上がった。

 裏口に近づくと、扉のテンキーロックが見えた。

 数値といくつかのボタンがついていて、それを押すと解錠できるものだ。

「これは俺でも開けれる」

 と言って近づこうとすると、腕を引っ張られる。

「ダメ」

 高橋が、何かを見つけたようだった。

「監視カメラ?」

「古いタイプのセンサーね。さっき見つけた」

 観光バブル時期に付けられた、古いタイプのセンサーだった。

 高橋はセンサーに近づくと受光部に細工し、俺たちはその間に通り過ぎた。

「開けて。中に入ったら、声は出さない」

 俺は頷く。中の様子がわからないが、開けていいのだろうか。

 ただ、確認している時間もない。俺は思い出しながら、テンキーロックを開けた。

 高橋の薄いグローブが、扉のレバーハンドルにかかる。

 ゆっくりと扉を開けると俺も続いた。

 入るとそこは厨房だった。

 今日は元ホテルのこの施設を使う者がおらず、その為厨房にも人がいないのだ、と思った。

 外の灯りが室内に差し込んで、ある程度様子はわかる。

 だが、足元までは見えなかった。

 俺は大きな鍋に足を当て、音と立ててしまった。

「!」

 気付かれた。

 厨房の外で声が聞こえた。

 コンビニで車を囲った連中の一人だ。

 高橋は無言で俺を台の下に押し込むと、何か袋から取り出している。

 俺は、押し込まれるまま、台の下の戸棚に入っていく。

 高さがなく、長さはあるので、寝袋に入るように体をまっすぐにした。

 しばらくして、高橋が、俺と同じ場所に入ってきた。

「!!」

 なんで俺に乗っかってくる? 変なところを刺激して、声が出てしまうじゃないか。

 高まる気持ちで、息が荒くなってくる。

 音でバレる事を恐れ、高橋は俺の口を手で押さえた。

 苦しい気持ちと、高橋の体を感じて高揚する気持ちとで、思考が回らない。

 その時、パッと外が明るくなった。

 連中の一人が来て、厨房の灯りを点けたのだろう。

「うわっ!」

 男は声をあげ、バタバタと音がした。

 さらに遠くから声がする。

「何があった!?」

「ネズミでした。今、追っ払いましたから」

 ネズミ? いたか? もしや、さっき高橋が袋から出したのは……

 連中の気配がなくなるまで、俺はとにかく動かず、我慢し続けた。

 しばらくして灯りは消え、扉が閉まる音がした。

 俺の口を塞いでいた高橋の手が外れる。

 高橋は台の下の戸棚から出ると、ごくごく小さい声で言った。

「(なんで仰向けに寝るのよ、常識的に(フツー)横向きでしょ?)」

「(狭いから、まさか一緒のところに入ってくるとは思わなかったんだよ)」

「(あんたが変態なのは知ってたけど、ここまでとは呆れるわ)」

「(そんな酷い言い方しなくったって……)」

 言っている途中で、高橋が俺の口を押さえてきた。

 ゆっくり、音を立てないように台の下に隠れる。

 扉が開けられ、男は首を傾げた。

「……」

「おい、ちょっとこっちに来い」

 と、奥から呼ばれると、厨房にいた男は灯りを消して、去っていった。

「(ふう)」

「(急ぎましょう)」

 厨房を抜けると、俺たちは監視カメラを避けながら、室内を探索した。

 フロアの中央付近に、小さな部屋を見つけた。

 その部屋では、コンビニで会った連中の一人が、監視カメラの映像を見ている。

 モノを懐に入れるような仕草をされ『ここの映像を盗め』と、高橋にジェスチャーで指示される。

 人がいるじゃないか、と俺はジェスチャーで返した。

 そいつを誘い出すから『やれ』という。

 俺は警戒しながら、待機する。

 高橋は別の部屋に移動し、わざと物音を立てる。

「おい、誰か……」

 監視カメラの前の男は、カメラ映像を見たり、周りを見渡したり落ち着かない。

「誰かいるのか?」

 その声に反応はない。

 俺は小部屋を覗き込み、監視カメラの映像を見る。

 サーチライトのような強い光でハレーションを起こしている画面があった。

 こいつ以外、全員外にいるようだ。

 高橋がもう一度、大きな音を立てる。

「誰だ!」

 監視カメラの前にいた男が、ようやく物音に対処する。

 スマフォを手にとって、男が小部屋を出ていく。

 俺はポケットに入れていた携帯電波妨害装置(ジャマー)を起動させる。

 男が外にいる連中に連絡出来ないようにする為だ。

 俺は小部屋に入ると、ストックしてある過去の映像記録メディアを胸ポケットに詰める。

 椅子などを元通りにすると、小部屋を出た。

 俺はジャマーをオフすると、高橋にジェスチャーで合図する。

 急いで厨房を抜けて、俺たちは外に出た。

 回ってくる車に合流するため、施設裏手の道を抜けた。

 その時だった。

 俺たちは、煌々と輝くサーチライトに照らされた。

 庭先にこんなサーチライトを設置しているなんて、よっぽどやましいことがあるに違いない、と俺は思った。

 光が強くて見えなかったが、ライトの横に人影がある。

 そいつが言った。

「高橋ひかりちゃんが、こんなことするなんてな」

 緑川の声だ。

 かなり早い段階で、侵入がバレていたに違いない。バレていた上で、泳がされていたのだ。

 緑川の姿がわかる位置まで出てくると、その手に拳銃が見えた。

「言っておくが、銃は一つじゃない。こっちは本気だ。逃げられないぞ」

 ゆっくりと近づいてくる。

「返すものを返して貰えば、殺しはしない。乱暴はするかもしれないがな」

 俺は胸の病気で、まともに走れない。

 どうしたらこの場から逃げられるだろう。

 いくら考えても解が浮かばない…… 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ