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隣にはアイドルが座っているけどハッカーな俺には関係なかった  作者: ゆずさくら


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松田の行動

 俺が取り出した警察の電子ファイルを調べていくと、細かいことがわかった。

 松田が自殺したとされる当日、松田が練炭や睡眠薬を買いに行っているわけではなく、ポケットに入っていたレシートから三ヶ月も前に購入したものだった。

 ただそのレシートの裏付けとして、練炭を買ったホームセンターの映像をハッキングしてみると、確かに本人が練炭を買っている映像が確認出来た。現場に睡眠薬のレシートはなかったが、買った薬局も特定されていて、その店でも松田の映像が確認されたらしい。その点については、調書に記載があった。

 三ヶ月も前に買った練炭と催眠薬。

 冷静に考えると、不自然な気がする。

 何ヶ月も前からこの日に死のうと計画したのだろうか。

 もしそうだとしたら、何か意味のある日付である気がする。

 この点は、角田(つのだ)に考えてもらおう、と俺は思った。

 もし、本当に松田に取って意味の無い日付だったら……

 俺たちが考えている通り、他殺の可能性もあるのでは無いのか。

 計画的な殺人なら、亡くなった時と異なる日付で練炭や催眠薬を買っていても不思議ではない。

 例えば犯人が依田で、自殺の証拠として本人が買ったレシートが欲しいとする。

 先生である立場を利用して、松田に練炭と睡眠薬を買ってこい、と指示したのだとしたらどうだろう。依頼され、松田が持って帰ってきた先は、学校、いや、もっと具体的には『白い塔』に持って帰ってきただろう。

 推測が正しければ、白い塔の映像データに映像が残っているかもしれない。

 白い塔に入った時に入手したデータファイルを見るが、三ヶ月前の映像ファイルはなかった。

 もしその仮説を確かめるには、もう一度、白い塔に侵入する必要がある。

 いや、そんな映像が残っていても、本人が自殺したくて買ったということなら意味はない。もっと具体的に、依田が松田に練炭を買えと言った場面が残っていれば……

 俺は、調書をもう一度読み直した。

 松田は当日、学校から睡眠薬と練炭をバッグに入れて家に帰る途中、駐車場にあった車のドアを開け、睡眠薬を飲み、時間を測って練炭を使って自殺したとなっている。

 ドアを開けるのに使ったものは鉄製のハンガーで、これも学校から持ってきたものだという。

 電車や駅の監視カメラ映像にも、大きなバッグを持った松田の映像が残っていた。

 つまり全ての道具は学校から、本人が持ってきた。

 親の証言から、当日、松田が学校に行くときは、バッグは大きく膨れていなかったと言うことだ。

 その日、松田は一度も家に戻らず、学校のどこかに隠していた自殺のための練炭をバッグに詰めると、駅近くの駐車場にあった、放置駐車している自動車に入って、自殺する。それだけ聞くと、やはり自殺とは考えにくい。非常に不自然だ。それを自殺と考える根拠は、松田が練炭を購入したと言うレシート、筆跡が一致する遺書のような紙、そして、依田の証言なのだ。

 例えば、レシートやハンガーに依田の指紋は残っていないのだろうか。

 いや、依田があらかじめ計画し『自殺に見せかけよう』としたのなら、絶対指紋を付けないだろう。

 もし依田が殺したのだとして、その時は、なぜ松田を殺そうと思ったかと言う『動機』も必要だ。

 生徒を殺そうとするほどの動機。

 不足している情報ばかりだ。

 ここまで考えて俺は、松田の死を『自殺』で処理するのも無理はない、と思ってしまった。松田が『自殺』したのだとしたら、説明は容易いからだ。それが自然、だとすら思えてしまう。

 そんなことを考えていると、スマフォが振動した。

『何かわかったか?』

 と、角田のメッセージが入っている。

 俺は打ち返す。

『練炭を買ったのは亡くなった日の三ヶ月ほど前のことだった。新しい事実は、それくらいだ』

『三ヶ月』

『何かわかるのか?』

 しばらく何もメッセージが来ない時間が続き、ようやく返事がきた。

『分からん』

『亡くなった日は、松田の記念日なのか?』

『何が言いたい?』

 俺は説明を入力する。

『当日使うものを買った、と言うわけじゃない。三ヶ月も前に買って、ずっと使わず、わざわざその日に死のうというなら、その日に特別な意味がある気がしたんだ』

『俺の知る限り何もない。家に行った時もそんな話にはならなかった。流石に、今から母親に聞き直すことも出来ない』

 大切な日であれば、親友の角田が気づいているとか、何かの機会に耳にしていてもおかしくないだろう。

 とすると、亡くなった日に意味はなかったと考えるべきだろう。

 もう一度白い塔に侵入し、決定的な証拠を集める。

『依田は白い塔に何か隠している』

『松田も何かを探していた』

『本当か?』

『いたずら書きのような内容しかないが、あの白い塔の中で、何かを求めていたのは確かだ』

 俺は決心した。

『白い塔に入る』

 俺がそう書くと、急に角田の反応が無くなった。

『どうした?』

 角田の答えを求めて、俺が書くと、ようやく返事がきた。

『すまん』

 その言葉に角田は続けた。

『停学明け、俺は学校側から大学の推薦をもらった』

 俺は返す言葉が出なかった。

 つまり角田は『もう停学するかもしれないリスクは取れない』ということだ。

『わかったよ』

 それだけ書いて、スマフォを消した。その後のやり取りを見たくないからだ。

 成績の良い角田の人生をめちゃくちゃにする必要はない。

 角田もそうだが、女優の高橋がこれ以上停学を喰らうのも問題だ。

 つまり、次は俺一人でやるしかない。

 なぜこの件をムキになって調べているのかは、俺自身、分からない。

 だが、これを成し遂げなければならない、そう思っていた。

 曖昧にして置けないのは、俺の精神に何か障害があるのかもしれない。

 俺は、もう一度白い塔の建築図面を見ながら、一人で侵入する計画を立てた。




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