アークライトとカイゼル(1)
【5年前】
国立勇者育成機関『エルディオン』の2年生棟に、勇者訓練試験の結果が張り出された。廊下に集まる生徒達の中で、炎のように輝く赤色の髪をした青年2人が、一際目立っていた。双子のようにそっくりな赤髪碧眼。スラリとした体格だが、体の軸がしっかりしていて、2人とも勇者に必要な『華』も持ち合わせている。とてもよく似た2人で、初めて見た人はまず間違いなく彼らをドッペルゲンガーか何かと思うだろう。
しかし、2人が口を開くとその性格の違いは一目瞭然であった。
「っ!!よっっしゃあぁぁ!ほら見たか?アークライト!!今回は僕が一位だ!!」
まるで弟のようにはつらつで天真爛漫なカイゼル。
「…ふっ。良かったな。まぁ今回のテストは、成績にあまり影響しないらしいからな。たまには1位を譲ってやろうかと思っていたんだ」
余裕の笑みを浮かべるアークライトは、冷静沈着で19歳とは思えない大人びた男であった。
真逆の性格ではあったが、他の生徒と一線を画している彼らにとっては、勇者になるためのライバルはお互いだけで、唯一の理解者と言える仲でもあった。
国立勇者育成機関『エルディオン』の生徒達は、18歳から4年間、一年に一回編成される、魔王を討伐しに行く勇者パーティーのメンバーになるために、昼夜惜しまず鍛錬を行う。勇者パーティーのメンバーになると、国民総出で盛大にパレードを挙げ、魔王討伐のために手厚くサポートを受けられるだけでなく、その家族、ひいてはその村全体にまで利益がもたらされるため、その努力も血の涙を流す程度のものではない。
勇者パーティーのメンバーが勇者、魔法使い、戦士、ヒーラーの4人で構成されるため、『エルディオン』の中にも4つの学科が存在する。そして、その中で最も入学競争率が高いのが勇者学科。
つまり、そのTOP1.2の座を決して譲ることのないカイゼルとアークライトは第666期勇者パーティーの2大筆頭候補であった。
テスト結果を見に来た生徒達は、順位表の一番上を真っ先に眺める2人を少し遠巻きにして、口を開く。
「あ~あ。やっぱりあの2人だ。俺なんて今回こそは300位より上に行こうと10徹して、訓練を続けてたってのに…」
「しょうがないですよ。彼らは別格…それに、2人のあの赤髪に空をそのまま持ってきたような青い目…。元から勇者になれる素質が違うんですよ」
「…?赤目碧眼に特別な意味があったけか?」
きょとんとする生徒に、話し相手含め周りに言いた生徒全員がため息と共に首を横にふる。
「…君って人は。冗談は顔だけにしてください。初代勇者…唯一魔王討伐から帰ってきて、この学園を創設した勇者を知らないとでも?」
「…あ…そういや。いたわ。」
「全く…君は本当に武の才能はありますが、知性がからっきしだ。…逆に言えば、兵隊にはとことん向いている」
この国は勇者の排出に力を入れるだけでなく、その過程で育てられた武力も有効活用した。勇者になれなかった生徒達は、国の騎士となって戦争へと駆り出されるのだ。ただし、この国の民にとっては勇者とまではいかないが、騎士になることも大変名誉なことであり、結局のところ『エルディオン』に入学できた時点でその人の人生は勝利が保障されたようなものなのだ。
しかし、カイゼルとアークライトが求めているのは安泰の将来ではない。
カイゼルがアークライトに鼻を鳴らして余裕そうな顔を見せつける。勝者の笑みといったところか。その態度を見てアークライトが不機嫌そうな顔を表す。
「これからもお前を負かせて、誰もが認める最高の勇者になるんだ!てか、その髪色と目僕と被るからやめろ!」
騎士らしい佇まいで、カリスマのオーラを漂わせるアークライトがこたえた。
「お前が勇者になったらパーティーの奴らすぐ死ぬぞ?ついでに言うとこの髪と目は天然物だ。やめれるわけないだろ。ボケ」
カイゼルとアークライトが互いに向けて、風を切るほどのスピードの拳を放つ。するとその威力を最も簡単に殺して、2人ともその拳を受け止めた。
「僕「俺が勇者になって、魔王を倒すんだ!!」」
互いの目を目を見て、口角を上げる。
試験結果発表が終わった後にいつもやってる掛け合いだ。周りの生徒達もまたやってるよ、あの人たちといった感じで眺めている。
勇者になって、魔王を倒す。そのために持ち前の才能を上回るほどの努力を重ねる。これが彼らの日常であった。




