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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第74話 桜子の豪邸プラン

 巨大な邸宅のリビング。

 俺はふかふかのソファに腰掛け、天井まで届きそうなシャンデリアを見上げながら、つい感慨深く呟いた。


「……こうして全員で暮らせるなんて、夢みたいだよな」


 すぐ隣にいた紗綾が、にこやかにティーカップを差し出す。

「でも、おじ様。ここが完成するまで、本当に大変でしたよね?」


 深雪も苦笑混じりに頷く。

「ええ。桜子があんなことを言い出さなければ、きっと今も普通のマンション暮らしでしたでしょうね」


 俺は思わず頭をかく。

「ああ……思い出すな。あれは数年前――桜子がとんでもない宣言をした日のことだ」


 ◇◇◇


 季節は春。


 奉龍院の本邸から呼び出された俺は、やけに豪奢な応接間に通された。


「おじ様、ようこそお越しくださいましたわ」

 紅茶を優雅に口にしながら、桜子がにっこりと笑う。だがその眼差しは、何やら決意に燃えている。


「今日は相談がありましてよ」

「相談?」

「ええ。おじ様の王国を作りますの!」


「……は?」


 あまりに堂々とした宣言に、俺はカップを落としそうになった。


「な、なんだって?」

「ですから! おじ様の、王国ですわ!」


 桜子はバンッとテーブルに設計図らしきものを広げた。

そこには――テーマパークか城かと見紛うほど巨大な敷地図と建築プランが、びっしり描かれている。


「うおおっ!? なんだこの規模!」

「おじ様と、そのご家族が不自由なく過ごせる邸宅を建設いたします。いえ、それだけではなく。奉龍院の威信を背負い、そして未来永劫の幸福を保証する“王国”を!」


 声高らかに言い放つ桜子。

 深雪がすかさず眉をひそめる。

「桜子、それはさすがに大げさでは……」

「いえ、お姉さま。これは必要なことなのですわ。おじ様が社長となり、我が奉龍院と水無月が合併して新たな勢力を築く以上、その象徴となる城がなければなりません!」


「象徴って……いやいやいや、待て桜子。俺そんな大層なもの求めてないぞ」

「おじ様は求めずとも、周りが求めますの! この時代に必要なのはビジョン。そして人を惹きつける物語! 豪邸はその象徴なのですわ!」


 なんだこの力説。

 しかも話を聞けば聞くほど――もう建設準備が始まっているらしい。


「……桜子。まさかとは思うが」

「はい。土地は既に購入済み。建築会社にも依頼しましたわ。工事開始は来月から!」


「えぇぇぇぇぇぇっ!?」


 俺は思わず立ち上がり、叫んでしまった。

 隣で紅茶を吹き出す紗綾。

 深雪は「やっぱりそうなったか……」と額を押さえている。


「おじ様の王国は必ず完成します。ですからどうか、ご安心くださいませ♡」

「いや、安心できるか!」


 こうして俺の知らないところで――「おじ様の王国建設計画」が始まってしまったのである。


 ◇◇◇


 俺はソファに深く座り込み、豪邸の天井を見上げながら苦笑した。


「……あの日から全部始まったんだよな」


 桜子は隣で胸を張る。

「当然ですわ! おじ様のための王国建設、あれは歴史的快挙ですもの!」


「いやまあ……結果的にこうして全員で幸せに暮らせてるんだから、間違いじゃなかったのかもしれないな」


 思わず口元がほころんだ。





◇◇◇




 ――桜子の豪邸プランが動き出してから間もなく。

 俺たちはまた別の、とんでもない話題に振り回されることになった。


 きっかけは、フィルだった。


「ロシア支社長、やる。フィルが適任」


 ある日突然そう言い放ち、さらりと本社役員会議をかっさらっていったのだ。


「ちょっ……フィル!? 支社長って、そんな簡単に決めるものじゃないんだぞ!」

「問題無い。フィルは遊ぶ。のんびりするのが仕事。でも支社長もする。だから大丈夫」


 いや、全然大丈夫じゃない。

 俺は頭を抱えたが、なぜか桜子と深雪は妙に納得していた。


「……彼女、妙に人を惹きつけるカリスマがありますからね」

「ええ。海外でならあの自由さがむしろ武器になるでしょう」


 そんなわけで――トントン拍子に決まってしまった。


 ◇◇◇


 そして迎えたロシア支社の就任会見。

 現地とオンラインを繋ぎ、全世界に生配信される大舞台だ。


「では、新支社長に一言お願いします」


 司会者の促しに、フィルがすっくと立ち上がる。

 会場のライトを浴びて、彼女は相変わらず小柄で可憐な姿だ。

 しかし――その口から出た言葉は、世界中のメディアを混乱させた。


「フィルは支社長。だけど仕事は遊ぶこと。仕事は遊び。遊びは仕事」


「……はい?」

 通訳が困惑して固まる。


 フィルは続ける。

「社員は遊べ。よく寝ろ。よく食べろ。楽しい人が強い。だからロシア支社は最強」


 その瞬間、会場にいた記者たちがざわついた。

「え、ええと……これはスローガンでしょうか?」

「革命的経営哲学?」

「いや、単なる変人発言……?」


 だが、ネットは違った。

 生配信を見ていた若者たちが大盛り上がりしたのだ。


《最高の支社長爆誕》

《遊ぶ=仕事、これ新時代の働き方じゃね?》

《天使みたいな見た目で言ってることがカオスすぎるw》


 気が付けば世界中のSNSでトレンド入り。

 ニュースサイトは「水無月ロシア支社長、天使のような美少女」とか「革命的マネジメント」とか、勝手に持ち上げて記事を乱発していた。


 会見の壇上でフィルは満足げににっこり。

「ふふ。これで完璧」


「……完璧なのか……?」

 俺は頭を抱えながらも、なぜかその場を支配する彼女のカリスマに圧倒されていた。


 ◇◇◇


 リビングにて回想を終える。

 俺は当時を思い出して深いため息をついた。


「結果として……ロシア支社は黒字を叩き出してるんだから、世の中わからないもんだよな」

「そうですわ。フィルさんの奇行は、逆に人を惹きつけるのですもの」

桜子が紅茶を口にしながら微笑む。


「フィルは遊ぶ。だから会社も遊ぶ。楽しい。完璧」

 当の本人は相変わらず俺の膝の上でのんびりと寛いでいる。


「……まったく。お前のおかげで世界が大騒ぎだったんだぞ」

「ん。おじ様も遊ぶ?」

「いや、今は遠慮しとく」


 こうして俺たちはまた一つ、忘れられない事件を経験したのだった。








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