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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第70話 桜子の告白と提案

「この身、おじ様に捧げます。どうか受け止めてくださいまし」


「篠宮さん、私も……同じ想いです」


 桜子と沙織。二人は頬を染め、俺の胸にそっと身を寄せてきた。


 龍神騒動から数ヶ月。春の桜が再び舞う頃、二人はもうすぐ高校三年生になる。


「……二人とも、本当に大人になったね」


 桜子が顔を上げ、潤んだ瞳で俺を見つめた。


「いえ。私たちはまだ未熟です。でも、だからこそ支えて欲しいんです」


 沙織もまた、控えめに頷きながら続ける。


「私も、篠宮さんの隣で強くなりたい。だから……」


 胸の奥が熱くなった。奉龍院で結ばれた“スピリットリンク”。あの瞬間から、俺と二人は確かに運命の糸で繋がっていた。


「大切にするよ。二人とも」


 俺は彼女たちを優しく抱き寄せた。窓の外を舞う桜色の花びらが、部屋の中まで忍び込んでくる。まるで祝福のように。


「篠宮さん……こうして抱きしめてもらうと、不思議と安心します」


 沙織の声が、かすかに震えていた。


「私も……胸の奥まで温かくなって……涙が出そうです」


 桜子の小さな肩を抱き、頭を撫でる。触れ合うだけで、心が直接伝わってくる。


「沙織ちゃんは、もっと自分に自信を持っていいんだよ」


「……はい。篠宮さんにそう言ってもらえると、強くなれる気がします」


「桜子ちゃんも、ずっと一人で背負ってきたものがあったね」


 桜子は静かに目を伏せ、それからゆっくりと顔を上げた。


「……ええ。でも、今は違います。おじ様がいる。沙織ちゃんもいる。だから私は、もう一人ではありません」


 その笑顔には、もう以前のような影はなかった。


「ねえ、おじ様」


「篠宮さん」


 二人の声が重なる。見上げてくる瞳は、不安も迷いもなく、ただ純粋な信頼と愛情に満ちていた。


「「ずっと一緒にいてください」」


 同じ言葉が、ぴたりと重なった。


 俺は笑みを浮かべ、力強く頷く。


「もちろんだ。俺も、君たちと一緒に生きていきたい」


 三人は抱き合った。


 ただそれだけのことなのに、胸の奥から溢れる温もりは、この上ない幸福だった。


 ◇◇◇


 数日後。奉龍院を再訪した俺たちは、桜子の新しい一歩を見守っていた。


「この度は……いろいろと迷惑をかけてしまいました」


 桜子が静かに頭を下げた。


「いいんだよ。やり直せるなら、何度だってやり直せばいい」


「……おじ様は、本当に……優しい方ですね」


 その顔には、もう悲壮な色はなく、未来への淡い光が宿っていた。


「桜子ちゃん、笑って」


「……はい。これからは、この笑顔を大切にして生きていきます」


 隣で沙織が柔らかく微笑む。


 二人の笑顔に囲まれて、俺は強く思った。


 ――この子たちを、絶対に守り抜こう。


 最後の夜、二人は小さな声で囁いた。


「篠宮さん……私、篠宮さんが大好きです」


「おじ様、私も……あなたのことが何より大切です」


 俺はそっと彼女たちを抱きしめ返した。


「ありがとう。俺も君たちが大好きだ。これからも、ずっと一緒にいよう」


 夜空に満開の桜が散り、静かな月が三人を照らしていた。


 ◇◇◇


 春の名残が漂う午後。奉龍院の離れは、磨かれた床板と白檀の香りが静かに混じり合っていた。


 俺の向かいに坐るのは、小柄な当主――奉龍院桜子。黒曜石のような瞳は、年齢に似合わぬ覚悟を湛えている。


「まずは、このたびの一件――龍神の騒擾を鎮めてくださったこと、深く感謝いたしますわ。おじ様」


 桜子が一礼する。呼び名に、隣の紗綾が肩を震わせ、深雪が小さく苦笑した。


「こちらこそ。君が戻ってきてくれて、ほっとしてる」


「礼だけでは済みませんの。――提案がございます」


 扇を畳み、桜子はまっすぐに俺を見据えた。


「奉龍院を、あなたに委ねたいのです」


 空気が一瞬、止まる。


 深雪の視線が静かにこちらへ流れ、紗綾が小さく息を呑んだ。


「待って。言葉の通りに受け取っていいの?」


 深雪の声が低く響く。


「ええ。腐れた龍神の影響を断ち切った今、わたくし達には新しい守護と秩序が要ります。その中心に――おじ様がふさわしい」


 桜子はわずかに頬を染めながらも、声は揺るがない。


「人ひとりの膝に帝国を載せるのは、重すぎる荷だよ」


 俺は穏やかに返す。


「君の努力でここまで維持してきたのに」


「維持では足りませんの。変革が要る。けれど、わたくしひとりでは、きっとどこかで独善になる。……だから手を取りたいのです」


 言葉の切実さに、俺は湯呑に口をつけ、少し間を取った。焙じ茶の香ばしい熱が舌を撫でる。


「仮に受けるとしても、“明け渡し”は違う。奉龍院の矜持も歴史も、君の手腕も、消してはならない。――対等に組むべきだ」


「対等……?」


「水無月と奉龍院、互いの強みを持ち寄って合併する。表向きは共同運営。実務のトップは俺が担う。ただし、意思決定は両輪で回す。君と俺で、だ」


 桜子の睫毛がわずかに震え、深雪が満足げに目を細める。紗綾は安堵の微笑みで、俺の袖をそっと摘まんだ。


「……面白い」


 桜子が小さく呟いた。


「責任も栄誉も、分かち合う。君は君の居場所を手放さなくていい」


 短い沈黙。庭の新緑を渡る風が、簾を小さく鳴らす。


「条件がございます」


 桜子が静かに続けた。


「まず、旧来のしがらみは切る。わたくしが責任を持って浄化します。次に、人事は“信頼に足る者”のみ。……あなたの“感応”で見極めて」


 神力による人心の見極め。重いが、避けられない。


「私からも条件を」


 深雪が身を乗り出す。


「合併の法務・資本政策は私が全面監修します。株主の説得とガバナンス設計は、時間がかかる。拙速は禁物」


「現場は私が回します」


 紗綾がメモを走らせながら言った。


「社内の不安を潰して、移行計画を作る。現場の声、全部拾って社長に届けるから」


 “社長”という言葉に、俺は思わず苦笑した。


「――決めましょう」


 桜子が小さな掌を差し出す。


「水無月と奉龍院は、対等に手を組む。新しい守りと、前に進む力のために」


 俺はその手を取った。驚くほど温かい。


「約束しよう。誰ひとり置いていかない。君の誇りも、仲間の未来も」


 桜子はわずかに目を潤ませながらも、微笑は凛としていた。


「おじ様――いえ、隆行さん。これより、どうぞよろしく」


「こちらこそ。桜子、頼りにしてる」


 脇から深雪が咳払いをする。


「では実務です。合併準備室を立ち上げます。法務・財務・人事・広報――各ユニットの責任者候補を今週中に提示。桜子様側のキーパーソン、開示を」


「すぐに名簿を出しますわ。古参の一部は“説得”が必要。蓮井に段取りさせます」


「社内説明のロードマップ、作ります。来週は管理職向けタウンホール、再来週に全社集会。噂の先回りが要です」


 流れが一気に現実の速度を帯びる。


 俺は掌を軽く打ち合わせ、席を立った。


「動こう。これは“誰かの帝国”じゃなく、“みんなの未来”の話だ」


 障子の向こうで陽が傾き、庭石の影が長く伸びている。


 これから山ほどの障害が待っている。利害、古い忖度、外からの冷ややかな目。


 それでも――手は、もう離さない。


 支配ではなく、伴走を。独善ではなく、合奏を。


 新しい季節が、本当に始まる。



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