表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/100

第51話 揺らぐ父の心

 夜更けのホテルの一室。

 豪奢な照明に照らされた部屋で、ゲオールグ=エレノフスクはグラスを傾けていた。

 彼の表情は、いつもの堂々としたものではない。娘を思う父親としての複雑な顔だった。


(フィルに続いて、マリーとサリーまで……。三人がそろって一人の男に惹かれるとは……)


 誠実な男だとは分かっている。

 篠宮隆行――紗彩の許嫁であり、フィルの恋人でもある青年。会って話してみれば、その人柄は一目で分かった。

 だが、それでも父親の心は揺れる。


「あなた、まだ悩んでいらっしゃるの?」


 背後から、妻アナスタシアが柔らかい声で問いかける。

 彼女は紅茶を盆に載せ、夫の隣に腰を下ろした。


「……娘を三人も、一人の男に託すのだぞ。父親として、簡単に頷けるものではない」

「ふふ、それでもあなた、会ったでしょう? あの子たちがあんなにも幸せそうに微笑む姿を」


 アナスタシアの瞳が静かに光る。

 母として、娘たちの幸福を第一に考えているからこそ、その言葉には重みがあった。


◇ ◇ ◇


 ゲオールグはワイングラスを置き、天井を仰ぐ。


「……隆行君は、確かに誠実だ。だがな……男というものは移ろいやすい。ましてや、彼の周りには既に多くの女性がいる。フィルだけではない、紗彩も深雪も……玲緒奈までもが彼を愛している」


「それの何が問題ですの? 誰か一人を粗末にしているわけではないでしょう?」

「だが……だがな、娘が“愛される一人”になるより、“唯一無二の存在”でいてほしいと思うのは、父親のエゴなのだろうか……」


 苦悩の吐露。

 豪胆な男として知られる彼の姿からは想像もつかない弱さだった。


◇ ◇ ◇


 アナスタシアは静かに笑みを浮かべ、夫の大きな手を両手で包んだ。


「あなた、あの子たちは“唯一”を求めていません。彼女たちが求めているのは、“共に歩んでくれる人”。そして、その未来を共に築ける仲間たちです」

「……」


「フィルも、マリーも、サリーも、みんな分かっているのです。彼の隣には他の女性もいることを。けれど、彼女たちはそれを“幸せのかたち”だと受け入れている。私たちが口を出すことではないでしょう?」


 ゲオールグの胸に、重い石が落ちたような沈黙が流れた。


(そうか……娘たちは、私よりもずっと大人なのかもしれないな)


 ようやく苦笑がこぼれる。

 そして立ち上がった彼は、グラスをテーブルに置き、力強く頷いた。


「よし……篠宮隆行。次に会ったときは、徹底的に試させてもらおう。それで本当に三人を任せられるかどうか、見極めてやる」


 アナスタシアはその言葉に安堵し、夫の腕に寄り添う。

 夜の帳が降りる中、二人の決意が静かに固まっていった。



◇ ◇ ◇


 翌日。

 フィルのマンションのリビングに集まった俺たちは、思いがけない訪問客を迎えることになった。

 ――フィルの父、ゲオールグ=エレノフスク。


 その堂々たる体躯は、まるで鎧をまとった戦士のよう。

 だが瞳には、父としての真剣な光が宿っていた。


「篠宮隆行君」

「は、はい」


 呼ばれた瞬間、背筋が自然と伸びた。

 ゲオールグ氏の声は重く、だが冷たくはない。


「君の誠実さは、娘たちから何度も聞いている。私も昨日、直接その目で見た。……だがな」


 一拍置いて、彼は言葉を続けた。


「父親として、簡単に三人の娘を任せることはできん。だからこそ――試練を課す」


◇ ◇ ◇


 リビングの空気が張り詰める。

 隣のフィルは小さく息を呑み、紗彩も深雪も緊張した面持ちで成り行きを見守っていた。


「試練……ですか?」

「ああ。君が本当に娘たちを守り、幸せにできる男なのかどうか。私が納得するだけの証を見せてもらう」


 彼の眼光は鋭く、しかし敵意ではなく“父としての想い”が宿っているのが分かる。


「……具体的には、どのような?」


 恐る恐る問うと、ゲオールグ氏は腕を組み、低く笑った。


「この春までに、君が役員の座を勝ち取ることだ」


 その場にいた全員が驚きの声をあげた。


「や、役員!?」

「そんな、急に……!」


 俺も思わず声を上げる。だが、ゲオールグ氏の表情は揺るがない。


「娘を託すのだ。凡庸な立場の男には任せられん。だが君ならできる。――いや、できなければならん。私の娘たちは、それほど価値のある存在だからな」


◇ ◇ ◇


 フィルが父に歩み寄り、小さな声で訴える。


「お父さん、隆行ならきっと出来る。でも……少し厳しすぎる」

「甘やかすな、フィル」


 その言葉に娘は言い返せず、唇を噛んだ。

 代わりに紗彩が一歩前に出る。


「私も同じ考えです。隆行さんは必ず役員になれる。だからこそ、これは“試練”ではなく“未来の約束”なんです」


 ゲオールグはしばし黙し、やがて満足げにうなずいた。


「……良い仲間を持ったな、隆行君」


 そして改めて俺の目を見据える。


「どうだ、君はこの約束を受けるか?」


◇ ◇ ◇


 心臓が激しく脈打つ。

 だが、不思議と恐怖はなかった。

 これまで俺を支えてくれた恋人たちが隣にいる。その想いが、背中を押してくれる。


「はい。必ずや、春までに役員の座を勝ち取り、三人の娘さんを正式に迎え入れることを誓います」


 力強く言い切った瞬間、ゲオールグ氏は大きな笑みを浮かべた。


「よし、それでいい! ――これが、試練の約束だ」


 こうして俺は、愛する者たちを守るために、新たな戦いへと挑む決意を固めた。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ