表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/100

第50話 対峙の行方

「うるさいッ!」

 加賀見は叫ぶと同時に、手にしたスタンガンを振りかざした。青白い火花が散り、狭い会議室に緊張が走る。


「俺は……俺はここまで来たんだ! 努力しても報われなかった。上司に媚びへつらうやつばかりが昇進して、真面目にやってきた俺は評価されない。だったら……自分で道を作るしかないだろ!」


 加賀見の言葉は、確かに胸に刺さる部分もあった。だが――それを理由に仲間を陥れることは絶対に許せない。


「加賀見。お前の悔しさは分かる。俺も、報われないと感じたことは何度もある。でもな――」

 俺は一歩踏み出し、彼をまっすぐに見据える。


「人を裏切ってまで得た地位に価値はない。お前が欲しかった“評価”は、そんな方法で手に入るものじゃない」


 加賀見の腕が小さく震えた。

「黙れ……! 理想論ばかり並べやがって……!」


「理想論じゃない!」

 横から声を張り上げたのは三条だった。

「俺だって不器用で、評価されなくて……何度も悔しかった! だが、それでも諦めずに踏ん張ってきたんだ。篠宮は、そんな俺を見ていてくれた。仲間は、見てくれていたんだ!」


「……っ」

 加賀見の手から力が抜け、スタンガンが床に落ちる。


 その音に、彼自身も我に返ったようだった。

「俺は……間違っていたのか……?」


 俺はゆっくりと近づき、彼の肩に手を置いた。

「まだやり直せる。俺たちは敵じゃない。同じ会社で働く仲間だ。お前の努力を知ってる人間は、必ずいる」


 長い沈黙のあと、加賀見は苦しげに目を閉じた。

「……すまない。俺は……」


 その場に崩れ落ちた彼を見て、紗彩が小さく息をついた。

「よかった……最悪の事態にはならなかったんですね」


「ええ。けど、ここからが大変ですよ」

 深雪が静かに言う。

「社内での処分は避けられないでしょう。ですが、彼の真意を伝えるのもまた、私たちの役目かもしれません」


 俺は深く頷いた。


――こうして裏切りの真相は明らかになった。

だが、戦いはまだ終わってはいない。役員昇格をめぐる動きは、これからますます激化していくのだろう。


 加賀見の件が落ち着いてから数日後。

 社内には一見いつも通りの空気が流れていたが、俺は妙な緊張感を覚えていた。


「篠宮君」

 社長室に呼び出され、扉を開けると、幸太郎社長が腕を組んで待っていた。

「今回の件、君の冷静な判断と行動には感謝しているよ。だが――役員昇格に進むには、もう一つ試練を乗り越えてもらわねばならん」


「試練……ですか」


 社長は重々しく頷く。

「来週、グループ各社の合同プロジェクト会議がある。そこで君が中心となって成果を示し、投資家たちに納得させなければならない。数字、計画、リスク管理……全てだ」


 投資家。重役たち。つまり会社の未来を左右する場だ。

「……相当なプレッシャーですね」


「そうだ。だが、避けては通れん」

 社長は俺の目をまっすぐに見据えた。

「これは単なる実務テストではない。『人を導く器を持っているか』を見られる場でもあるのだ」


 俺は深く息を吸い、答えた。

「分かりました。やらせてください」


◇ ◇ ◇


 マンションに戻ると、待っていた恋人たちが一斉に駆け寄ってきた。


「隆行さん、お疲れさま!」

 真っ先に声をかけたのは紗彩だ。心配そうな瞳で俺を見上げてくる。


「なにかあったんですか?」

 深雪が眼鏡を押し上げ、真剣な表情を浮かべる。


 俺は簡潔に説明した。次週、投資家を前に自分の力を証明しなければならないことを。


「つまり、大舞台ってことね」

 フィルはにやりと笑って言う。

「隆行、フィルたちがいる。だから絶対に大丈夫」


「そうですよ! ここまで頑張ってきた隆行さんなら、きっと成功します!」

 紗彩が握った拳を胸の前でぎゅっと握りしめる。


「ですが油断は禁物です」

 深雪は真面目な声で続ける。

「投資家相手となれば、ただの資料発表では足りません。論理、数字、そして“人を惹きつける力”が必要になります」


 俺は思わず苦笑する。

「まるで就活の面接みたいだな」


「違います」

 深雪は首を振った。

「今回は“会社の未来”がかかっているんです。ですが――」

 彼女は少し笑みを浮かべた。

「それを支えられるのは、私たちしかいません。ですから、全力で準備しましょう」


◇ ◇ ◇


 その夜。

 ホワイトボードに数字を書き出し、計画書を並べて、俺たちは即席の「家庭内作戦会議」を開いた。


「この数値をもっと分かりやすくグラフ化するといいかもしれません」

「フィルが図を描く。色も分けて直感的に理解できるようにする」

「じゃあ私は、投資家の質問を想定して模擬インタビューをします!」


 三人は真剣な眼差しで次々と案を出し合う。



 胸の奥から勇気が湧き上がる。

 来週の会議が、俺にとって“次の壁”となるのは間違いない。


 会議室の扉を開けた瞬間、空気が一変した。

 磨き上げられた長机の向こうには、ずらりと並ぶスーツ姿の重役と投資家たち。誰もが一流の目を持ち、数字と結果でしか判断しない冷徹な人々だ。


(深呼吸だ……落ち着け、隆行)


 背筋を伸ばし、俺は用意した資料を手に壇上へ立つ。

 後ろにはサポート役として深雪がノートPCを操作しており、紗彩とフィルが見守るように座っている。彼女たちの視線が心強い。


「本日のプレゼンを担当します、篠宮です」


 声がわずかに震えたが、すぐに立て直した。

 プロジェクターに映し出されたグラフが会議室を彩る。


「我々の新規事業は、現行のリスクを抑えながら成長を持続できるモデルです。こちらをご覧ください」


 深雪がタイミングを合わせてグラフを切り替える。数字の流れ、成長率、リスク管理。それらが視覚的にわかりやすく並べられた。


 ざわ……と投資家たちの表情が動く。悪くない反応だ。


◇◇◇


 しかし、質問タイムに入ると空気が変わる。


「数字は理想的だが、現実的な根拠が乏しいのでは?」

「競合が参入した場合、優位性をどう保つつもりだ?」

「仮に失敗した場合、損失補填の責任は誰が取る?」


 矢継ぎ早に飛んでくる質問。

 俺は冷や汗をかきながらも、一つずつ丁寧に答えていった。


 だが――ある投資家の言葉が、胸に突き刺さった。


「結局のところ、あなた個人に“人を惹きつける力”があるのか。それがなければ、数字がいくら良くても人は動かない」


 会議室に静寂が訪れる。

 鋭い眼差しが一斉に俺へ注がれた。


◇◇◇


(惹きつける力……か)


 思い出すのは、紗彩やフィル、深雪、玲緒奈、そして出会った仲間たち。

 俺に惹かれてくれたのは、数字や肩書きではなく、“一緒に未来を歩みたい”という想いだった。


 俺は大きく息を吸い込み、投資家たちを正面から見据える。


「おっしゃる通りです。数字だけで人は動きません。ですが――」

 声を張り上げる。

「私は、自分の周りの仲間に信じてもらえました。彼女たちが支えてくれるからこそ、私はここまで来られたんです。だから私は、この計画に命を懸けて挑む覚悟があります」


 静寂が続く。

 だが――数人の投資家が、僅かに口元を緩めた。


◇◇◇


 会議が終わったあと。

 廊下で待っていた紗彩たちが駆け寄ってくる。


「隆行さん、すっごく格好良かったです!」

 紗彩が両手を胸の前でぎゅっと握る。


「うん、声が震えたの最初だけ。あとは堂々としてた」

 フィルが頷く。


「私も誇らしかったです。数字も説明も完璧でした」

 深雪は眼鏡を押し上げ、少し笑った。


 俺は大きく息を吐き、彼女たちに微笑んだ。

「ありがとう。まだ結果は出てないけど……みんなのおかげで、やり切れたよ」


◇◇◇


 ――数日後。

 社長からの一本の電話が入る。


『篠宮君、投資家たちは君を高く評価したよ。次回の役員会議で正式に“昇格候補”として推薦するつもりだ』


 受話器を握りしめたまま、俺は言葉を失った。

 だが胸の奥は、確かな喜びで満たされていた。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ