表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/100

第49話 裏切り者の影

 翌朝。

 まだ陽が昇りきらない時間から、俺は社内の調査チームと共にサーバーログの解析に取り組んでいた。


「やはり、不正アクセスは内部アカウントから行われていますね」

 深雪が端末を指さす。

 そこには、通常勤務時間外に操作された履歴がはっきりと残っていた。


「使用されたアカウントは……三条か」

 表示された名前に、場が一瞬凍りついた。


 三条は営業部の古株で、成績も安定しており部下からの信頼も厚い人物だ。

 だが同時に、野心が強く、俺に対して敵意を隠さない男でもある。


「三条さんが……本当に?」

 紗彩が信じられないという顔をする。


「確証はまだない」

 俺は首を振る。

「ただ、これが偽装されたログの可能性もある。軽率に断定はできない」


 ◇◇◇◇◇◇◇


 会議室。

 全役員が集められた。空気は重く、全員が何かを疑っている。


「昨夜、不正アクセスがありました」

 俺が切り出すと、場の視線が一斉に集まった。


「幸い流出はありませんでしたが、内部アカウントが使用されています。そこで――」


 スクリーンに映し出したログを指し示す。

 そこに刻まれていたのは「SANJOU」の文字。


 ざわつきが広がる。

 三条は椅子をきしませ立ち上がった。


「待て! これは何かの間違いだ! 俺がそんなことをするはずがない!」


「落ち着いてください、三条さん」

 俺は冷静を装いながら言う。

「ただ、記録がある以上、調査を拒むことはできません」


「ぐっ……!」


 周囲の視線が一斉に彼へ突き刺さる。

 汗を拭いながら必死に弁明を試みる三条。


「俺が裏切り者だと? 馬鹿な! これは誰かが俺を陥れようとしているんだ!」


「その可能性も否定はしません」

 俺は彼を正面から見据える。

「だからこそ、徹底的に調べる必要があるんです」


 ◇◇◇◇◇◇◇


 会議が終わり、役員たちが去った後。

 俺は窓の外を見つめながら深く息を吐いた。


「隆行さん……」

 背後から紗彩が声をかける。


「分かってる。まだ決めつけるには早い」

 俺は答えた。

「だが、敵は必ず社内にいる。三条か、それとも別の誰かなのか……」


 フィルが一歩前に出て、真剣な眼差しで言った。

「隆行、気を付けて。これは罠。誰かが、わざと三条に疑いをかけてる」


「……やはりそうか」


 心の奥で小さな警鐘が鳴る。

 本当の裏切り者は、まだ影の中に潜んでいる――。



 翌日。

 社内は不穏な空気に包まれていた。

 三条が不正アクセスの疑いをかけられたという噂は、役員会からわずか数時間で全社に広まっていたのだ。


「……誰かが意図的に流しているな」

 俺は低くつぶやく。


 本来なら極秘扱いのはずの情報が、社員の耳に入るのはおかしい。

 まるで誰かが三条を追い詰めるように、意図してリークしているようだった。


「隆行さん、こちらをご覧ください」

 深雪が差し出したのは、監視カメラの映像だった。

 夜間、誰もいないはずのオフィスで、黒い帽子を目深にかぶった人影がサーバールームに入っていく。


「顔は……映ってないのね」

 紗彩が眉を寄せる。


「ああ。だが、問題はこれだ」

 俺は指で映像を止めた。

 人影が操作を始める直前、ポケットから社員証を取り出す――そこに刻まれていたのは確かに「SANJOU」の文字だった。


「完全に三条を陥れるための偽装ね」

 深雪が冷静に断言する。


「でも、どうして三条さんなんでしょう?」

 紗彩が首を傾げた。


「……三条は俺に反感を持っている。敵からすれば“疑われやすい人物”だからだ」

 俺は答える。

「つまりこれは――俺を揺さぶるための罠だ」


 ◇◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 俺は三条と二人きりで会うことにした。


「……お前か。俺に疑いをかけたのは」

 開口一番、三条は低い声で吐き捨てた。

 その目には怒りと、ほんのわずかな怯えが混ざっている。


「違う。むしろ俺は、お前がはめられたと思っている」

 そう告げると、三条は一瞬きょとんとした顔をした。


「……俺を、信じるのか?」


「信じるとは言っていない。だが、少なくとも“犯人に仕立てられている”のは確かだ」


 三条はしばらく黙り込み、やがて苦々しい声で吐き出した。

「……くそ。俺も馬鹿だな。お前のことを敵視してたせいで、こんな時に誰も俺を信じてくれねえ」


「だったら、潔白を証明するしかない」

 俺は手を差し伸べた。

「お前が本当にシロなら、一緒に犯人を暴こう」


 三条は俺の手を見つめ、そして小さく笑った。

「……皮肉だな。俺の嫌いな男に救われるとはな」


 その瞬間。

 背後の物陰で、わずかな物音が響いた。


 俺は即座に三条を庇い、声を張り上げる。

「そこにいるのは誰だ!」


 闇の中から現れたのは――見慣れたはずの社員の顔。

 だが、その目には確かに敵意が宿っていた。


 暗がりから現れたのは、営業部のエース――加賀見だった。

 普段は温厚で人当たりがよく、部下からの信頼も厚い。だが今、彼の顔に浮かんでいるのは、仕事中の笑顔とはまるで別人のような冷ややかな笑みだった。


「……まさか、気づかれるとは思わなかったよ」

 加賀見は肩をすくめ、軽い調子で言った。


「加賀見……お前が黒幕なのか」

 俺は低い声で問い詰める。


「黒幕だなんて大げさだな。ただちょっと――会社の流れを変えてみたくなっただけさ」


「そのために三条を陥れたのか?」

 三条が吠えるように問い詰める。


 しかし加賀見は怯むことなく、逆に愉快そうに笑った。

「三条先輩。あんたは昔から真面目すぎるんだ。真面目なやつは出世の道を邪魔する。それに……あんた、篠宮さんを敵視してただろ? なら利用しやすかった」


「……俺を、利用しただと?」

 三条の拳が震える。


「お前の社員証を複製して、監視カメラに残るよう仕組んだ。あとは噂を流せば勝手に人は信じる。簡単なことだ」

 加賀見はこともなげに言った。


 紗彩と深雪は黙って聞いていたが、その目は鋭く、相手の一挙手一投足を逃さない。

「でも、あなたは何のためにこんなことを?」と紗彩が問う。


「目的? 決まってるだろ。俺が“次の役員”に選ばれるためさ」


「……っ」

 俺は息を呑んだ。


 役員昇格をめぐる権力争い――そのためだけに、同僚を陥れ、会社全体を混乱させたというのか。


「くだらない……!」

 三条が怒鳴り声を上げ、加賀見に詰め寄ろうとした瞬間、加賀見の手がわずかに動いた。

 ポケットから取り出されたのは、小型のスタンガン。


「近づくな。あんたらに恨みはないが、俺の邪魔をするなら容赦しない」


 静まり返る空気。

 緊張が張り詰める中、俺は一歩前に出た。


「加賀見……お前は勘違いしてる」

「何を?」


「出世は、人を蹴落として得るものじゃない。人を信じ、支えてこそ、本当の力になるんだ」


 俺の声に、背後の三条も、紗彩も深雪も頷いた。

 その瞬間、加賀見の瞳にわずかな揺らぎが走った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ