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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第48話 影の妨害者

 海外支社での裏切り者摘発から数日後。

 社内はまだざわつきが残っていたが、誰もが「次に進まなければ」と思っていた。


「今日が勝負の日ですね」

 深雪は黒のスーツに身を包み、いつも以上に凛々しい表情をしていた。

「この契約を取れなければ、私たちの努力が水の泡になります」


 巨大財閥との商談。

 それは、この国での拠点を盤石にするために絶対必要なものだった。


「心配いらない。俺たちならやれる」

 俺は自分に言い聞かせるように言った。


「隆行さん、緊張してます?」

 紗彩が柔らかな笑みを浮かべる。

「大丈夫。私が隣にいますから」


 フィルは一歩前に出て、まっすぐ俺を見つめた。

「隆行。心配いらない。この契約、必ず成功させる。フィルが保証する」


 ◇◇◇◇◇◇


 会議室に入ると、重厚な空気が漂っていた。

 長テーブルの先に座っているのは、この国の有力財閥・リュオウグループの総帥。

 その隣には、鋭い眼光を放つ幹部たちがずらりと並ぶ。


「篠宮さん。あなた方がこの契約にどれほどの価値を見出しているか、見せてもらいましょう」


 総帥の声は低く、威圧感を持っていた。


「……覚悟のほどは?」


 挑発するような視線に、会議室の空気が張り詰める。


 だが――


「覚悟ならあります」


 俺ははっきりと声を出した。

「私たちは、この国と共に未来を作りたい。そのために、御社との協力は不可欠です」


 幹部たちは互いに視線を交わす。

 一人が口を開いた。


「だが、あなたたちの会社には不穏な噂もある。内部での不祥事、裏切り者……。本当に信頼してよいのか?」


「心配無用です」

 深雪がすかさず口を挟む。

「その不祥事も裏切り者も、すでに摘発済み。むしろ我々は、どの企業よりも透明性を重んじています」


「言葉だけなら誰にでも言える」

 別の幹部が冷笑した。


 そこで、紗彩が一歩前へ。

「では、証明いたしましょう。私たちの誠意を、実際に」


 彼女は準備していた資料を広げる。

 そこには数字だけでなく、現場社員の声、顧客からの評価、そして未来への具体的なプランが描かれていた。


「これは……」

 幹部たちの目がわずかに動いた。


 さらにフィルが、淡い光を放つ瞳で総帥を見つめる。

「この人たちは嘘をついていない。信じていい」


 短い言葉。しかし、その響きは力強かった。


 沈黙が数秒流れ――


「……いいだろう」

 総帥はゆっくりと頷いた。

「篠宮さん。契約を結ぼう」


 その瞬間、緊張していた空気が一気に解けた。


「やった……!」

 紗彩が嬉しそうに微笑む。

 深雪は小さく息を吐き、フィルは無言のまま拳を握っていた。


(これで、俺たちは一歩前に進んだ。だが――)


 心の奥に、不穏な気配がまだ残っていた。

 裏切り者は排除した。大きな契約も勝ち取った。

 けれど、これで全て終わったわけじゃない。


 むしろ――ここからが本当の戦いなのだ。


 巨大契約の調印から数日後。

 俺たちの社内は祝賀ムードに包まれていた。社員たちは口々に「これで未来が明るくなる」と喜び、現場も活気を取り戻していた。


 だが――


「……どうも、妙な気配がします」

 深雪が小声で告げる。

 彼女の瞳は鋭く、書類を持つ手は微かに震えていた。


「妙な気配?」

 俺が問い返すと、深雪はゆっくりと頷いた。

「社内の空気が少し重い。誰かが意図的に不安を煽っているような……そんな感じです」


「つまり、まだ敵が残ってるってことか」

 紗彩が腕を組む。

「契約成立で喜んでるのはいいけど、外からの妨害はこれから本格化するかもしれませんね」


 フィルは椅子に腰かけたまま、静かに目を閉じていた。

「隆行。フィルも感じる。遠くから、強い悪意が流れ込んでる。たぶん……狙われてる」


「狙われてる……俺たちが?」

「うん。契約に不満を持つ勢力。自分たちの利益を奪われた人間たち」


 嫌な予感が胸をよぎった。

 せっかくの成功を、誰かが水泡に帰そうとしている。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 社長室に戻った俺は、机の上に置かれていた一通の封筒を見つけた。

 差出人不明。赤いインクで「警告」とだけ書かれている。


「……物騒だな」


 中を開くと、そこには一枚の紙が入っていた。


――契約は無効になる。

――お前たちは間違いを犯した。

――次はない。


 たった三行。だが、その不気味さは十分だった。


「隆行さん、それ……」

 背後から声を掛けてきたのは紗彩だった。

 俺は無言で紙を渡す。


「……こんな脅迫文を」

 紗彩の表情が険しくなる。


「フィル、どう思う?」

「うーん……ただの脅しかもしれない。でも、油断は禁物」


 深雪は腕を組み、目を細めた。

「契約を潰したい勢力が動き出したのは間違いありません。これからは、こちらも備えを固めるべきです」


 俺は三人の顔を見渡した。

 心強い仲間たち。だが同時に、彼女たちを危険に巻き込みたくはない。


(それでも……俺は逃げられない。俺が先頭に立って守らなければならない)


「分かった。どんな妨害が来ても、必ず守り抜く。みんなを、そしてこの会社を」


 強く言い切ると、三人はそれぞれ頷いた。


「隆行さんの覚悟、信じます」

「私も。だって隆行さんは、絶対に私たちを裏切らない人だから」

「うん。フィルも信じる」


 ――嵐の前の静けさは、もう終わろうとしていた。




 翌日。

 社内はいつも通り業務に追われていた。契約が決まってからは忙しさも増し、社員たちの顔は疲れながらも明るい。


 しかしその裏で、確実に不穏な動きがあった。


 ◇◇◇◇◇◇◇


「隆行さん、大変です!」

 慌てた様子で深雪が駆け込んできた。手に持っていたのは分厚い資料ファイル。


「どうした?」

「契約内容の一部が、外部に漏洩している可能性があります」


「なに……!?」


 机に置かれた資料には、俺たちが締結したばかりの契約内容の要点が記されていた。

 社外秘、社長室と一部の役員しか知らないはずの情報だ。


「内部の誰かが……?」

 紗彩が苦い顔をする。

「外部に流すなんて、裏切り者がいるってことじゃないですか」


「でも、どこから漏れたのかが分からない」

 深雪は冷静に分析する。

「社長室のデータベースに不正アクセスの痕跡はありませんでした。つまり……」


「人の手で持ち出された」

 フィルがぽつりと呟く。


 ぞくりと背筋が冷えた。

 誰かが直接、書類をコピーして持ち出した。

 つまり、社内に敵が潜んでいる――そういうことだ。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 昼過ぎ。

 社長から呼び出され、俺は役員会に同席していた。


「篠宮君、どういうことだね?」

 社長の声は低く抑えられていたが、その眼差しは鋭い。

「契約情報の一部が外部に流れたと報告を受けている」


「確かに事実です。ですが、まだ流出経路は特定できていません」

 俺は冷静に答える。


 隣のゲオールグ氏が唸るように言った。

「内部に裏切り者……許せんな」


「誰が、何のために?」

 役員の一人が声を上げる。

「契約を潰したい勢力がいるのは確かだが……」


「相手は強大です」

 俺は視線を上げ、はっきりと言い切った。

「外部からの圧力も、社内からの妨害も、これからさらに強まるでしょう。ですが――必ず守り抜きます。この契約を、そして仲間を」


 社長はしばし黙って俺を見つめたのち、口角をわずかに上げた。

「……いい覚悟だ。ならば託そう。敵の動きを暴き、対処してくれ」


「承知しました」


 ◇◇◇◇◇◇◇


 その夜。

 フィルが俺の隣に座り、静かに囁いた。


「隆行、気をつけて。敵は、もうすぐ動く」


「……感じるのか?」

「うん。強い悪意が近づいてる。明日か、明後日か……きっと何か起こる」


 彼女の瞳は夜空のように深く、真剣だった。

 俺は彼女の手を握り返し、心に誓う。


(来るなら来い。絶対に負けない。俺には、仲間がいる)


 嵐は、すぐそこまで迫っていた。


 翌日――。

 その日は朝から妙な空気が漂っていた。


 普段なら和やかな笑顔を見せる社員たちが、どこか落ち着かない様子でパソコンを覗き込み、電話対応に追われている。


「どうしたんだ?」

 俺が声をかけると、部下の一人が振り返り、不安げな表情で答えた。


「サーバーにトラブルが出てまして……契約データの一部が消失した可能性があるんです」


「なんだと!?」


 胸の奥がざわついた。

 昨夜フィルが言っていた「敵が動く」という言葉が脳裏をよぎる。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 急いで確認に向かうと、サーバーの管理室は騒然としていた。

 警告音が鳴り響き、技術スタッフたちが慌ただしくキーボードを叩いている。


「状況は?」

 俺はリーダー格の社員に問いかける。


「篠宮さん! 今朝方、不正アクセスがありました。ログを調べたところ、外部からの侵入ではなく……内部アカウントが使用されていた形跡があります」


「内部……やはり」


 つまり、裏切り者が社内にいる。


「ただし不幸中の幸いで、完全な消去には至っていません。データの一部はバックアップで保全されています。ただ、このままだと契約相手に不安を与えかねません」


 唇を噛み締めた。

 契約先に知られれば、こちらへの信頼は一気に揺らぐ。敵の狙いはそこだ。


「篠宮さん、契約先から電話です!」

 深雪が駆け込んできた。


「……繋いでくれ」


 受話器を取ると、重い声が響いた。


『篠宮さん。我々のデータが流出したと聞いたが、本当か?』


 心臓が一瞬止まりそうになる。だが、すぐに落ち着きを取り戻した。


「ご安心ください。流出はありません。データの一部にアクセス障害が生じただけで、現在は完全復旧に向けて動いています。内容そのものに損傷はございません」


『……そうか。しかし、社内に不穏分子がいるのではないか?』


「確かに可能性はあります。ですが、必ず排除します。むしろ、これをきっかけに内部の浄化を進め、より盤石な体制を築くとお約束します」


 数秒の沈黙。

 やがて相手は低く笑った。


『……いいだろう。だが次はない。全て君に任せるぞ』


「承知しました」


 通話が切れると同時に、背中を汗がつたった。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 部屋を出ると、廊下で待っていた紗彩が心配そうに俺を見上げてきた。

「隆行さん、大丈夫でしたか?」


「ああ。何とか信用は繋ぎとめた。でも……これで決まったな」


「決まった……?」


「敵は本気だ。契約を潰すためなら、手段を選ばない」

 俺は拳を握りしめた。


「こちらも腹を括るしかない。裏切り者を突き止める。そして必ず、守り抜く」


 その言葉に、フィルが力強く頷いた。

「隆行、フィルも手伝う。絶対に負けない」


 仲間の眼差しに背を押され、俺は覚悟を新たにする。

 ――次に来る嵐は、もっと大きい。













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