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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第42話 父 ショックッ

「クぁ……はぁ……」


「おはよう、ゲオールグ君。君が会社であくびをするなんて珍しいな。随分と眠そうじゃないか?」


「おはようございます、社長。……いえ、少し夜更かしをしまして。久しぶりの日本に、どうやら浮かれてしまったようです」


「ははは。真面目な君らしくもないが、いい傾向じゃないか。たまには羽目を外すくらいでちょうどいい。ここには私たち以外、誰もいないんだからな」


 そんな和やかな会話が交わされているのは、水無月コーポレーションの社長室。

 社長・幸太郎と支社長・ゲオールグ。立場こそ上司と部下だが、学生時代からの友人であり、今も互いを最も信頼している間柄である。


「……もしかしてアナスタシア夫人とお楽しみだったのかな?」


「先輩はそういうところ、まったく変わりませんね。もう良い年なんですから、大声でそんなはしたないことを言わないでください」


「ふむ、否定はしないんだな。相変わらず真面目で堅いことだ」


「……」


 ゲオールグがわずかに視線を逸らすと、幸太郎はニヤリと笑みを浮かべた。


「まあいい。細かいことは抜きにして、今夜はどうだ?一杯付き合わんか。お互い“娘を取られた父親”同士として」


「……そうですね。妻に任せると口では言いましたが、気持ちが複雑なのは否定できません。ええ、付き合いましょう」


「ははは、頼もしい。しかも、三人同時にとはな。いやあ、気の毒に……あ、しまった。これはまだ内緒だった」


「……三人、だと?」


 瞬間、ゲオールグの目がカッと見開かれた。巨人のような手が幸太郎の肩を鷲づかみにする。


「いったいどういうことだ!? 娘三人とは、何を言っているのだ!?」


「いだだだっ!つ、潰れる!肩がもげる!わ、分かった言う!言うから離してくれぇ!」


 北欧の英雄を思わせる凛々しい顔が、今や炎の巨人スルトのごとき形相。

 幸太郎はたまらず、月夜から耳にした「フィルリーナ、マリー、サリーの件」を洗いざらい吐いてしまった。


 我に返ったゲオールグは「失礼した」とだけつぶやき、重い体をソファに沈める。


「なんてことだ……」


 額を押さえ、深くうなだれる。口では「娘を任せる」と言い切ったものの、やはり父親の心中は複雑だった。特に、長く日本に残ったフィルとの時間を埋めるようにマリーとサリーを可愛がってきただけに、その衝撃は大きい。


 そんな時、タイミングよく社長室のドアが開き、紅茶とコーヒーを運んで入ってきたのは月夜とアナスタシア。


「あなた?今の叫び声はいったい……?」

「ふふっ、社長は相変わらず賑やかですねぇ」


 この部屋はある意味で隔絶されたプライベート空間。だからこそ月夜も家族のようにフランクに言葉を交わす。普段の彼女なら、いくら夫と二人きりでも名前で呼ぶことはない。

 だが、アナスタシアとは二十代の頃からの友人であり、憧れの女性でもあった。気の置けない相手の前では、自然と羽目を外してしまうのだ。


「……さては社長、マリーとサリーのこと、しゃべってしまいましたね?」


 にこにこと問いかける月夜に、幸太郎は少しバツが悪そうに頬をかいた。


「いや、つい口が滑ってしまってな……」


「私からじっくり説明するつもりでしたのに。でもまあ、遅かれ早かれ今夜には知られること。いいのではありませんか?」


 アナスタシアのさらりとした言葉に、ゲオールグはがっくりとうなだれる。


「オー・マイ・ドーターァ……」


 ロシア人でありながら、英語で悲嘆に暮れる父の姿に、場の空気がなんとも言えず和らいだ。


「まだ春までの暫定ですよぉ」


 妻が慰めるように言葉を添える。


「そうそう、ゲオールグ君。まだ彼が出世できると決まったわけじゃない」


 ――と、誰よりもその出世を確信している本人が言う。


「でも篠宮さんなら、春までには社長の座くらいにはなってそうですけどねぇ。……あなたがさっさと引退すれば、ですが」


「か、母さん!?それはさすがに気が早すぎだろう!」


 月夜のにべもない一言に、ゲオールグの胸に追い打ちがかかる。ついでに社長も地味にダメージを受けていた。


「私に味方はいないのか……」


「大丈夫ですよ、あなた。私たちもそろそろ“子離れ”しなくては」


「しかし、まだあの子たちは高校に入るばかりの年頃だぞ」


「いいではありませんか。どこの馬の骨とも知れない男に奪われるよりは、ずっとましです」


「いや、それでもなあ……」


「あとで、私が存分に慰めてあげますから」


(やっぱりこの人、可愛いわねぇ)


 娘のこととなると、見た目のゴツさに似合わず繊細で弱気になる夫。その姿に、アナスタシアはくすりと笑い、そっと肩を撫でてやるのだった。


「まあまあ、気を落とすなゲオールグ君。今夜は飲もうじゃないか。私もとことん付き合うぞ」


「……ええ、では倒れるまで付き合っていただきましょう!」


 その日の夜、ゲオールグはいつにも増して酒をあおった。

 酒豪の彼が選んだのは、度数の高いロシアの蒸留酒。グラスを次々とストレートで空け、幸太郎と共に夜明けまで語り明かしたという。


 ――余談だが。ロシア本土に戻った後、アナスタシア夫人が三度目の妊娠を発覚させるのは、もう少し先の話である。

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