運命の一日(蒼太視点)
フードコートは、どこを見ても人で埋まっていた。
「……やっぱり無理そうだね」
白咲さんが、少し申し訳なさそうに言う。
「うん。でも、どこかで買って、空いてるところで食べよ」
そう提案すると、白咲さんは少し驚いた顔をしてから、うなずいた。
比較的並ばずに買えそうな店でテイクアウトして、二人でベンチを探す。 少し奥まった通路に、ちょうど空いている場所があった。
「ここ、座れそう」
「ほんとだ。助かった」
並んで腰を下ろし、包みを開ける。
人混みの喧騒は少し遠くなって、さっきより落ち着いた空気だった。
「……美味しい」
「うん」
特別な料理じゃない。 でも、こうして並んで食べているだけで、なぜか楽しい。
(……やっぱり、一緒にいるだけでいいんだな)
食べ終わったあと、軽く休憩してから、またモールを歩き始めた。
しばらくすると、白咲さんが足を止める。
「……あ、ここ」
指差した先は、服屋だった。
「ちょっと、見ていい?」
「うん」
店内に入ると、色とりどりの服が並んでいる。 白咲さんは楽しそうにハンガーを眺めていた。
その中で、ふと目に留まった一着があった。
「……白咲さん、こういうのも似合うと思う」
花柄で、少し可愛い系の服。
「え?」
白咲さんがこちらを見る。
「それって……着てほしいってこと?」
「い、いや、別にそういう意味じゃ……単純に、似合いそうだなって」
正直な気持ちだった。
「へぇ……」
白咲さんは少し考える素振りを見せてから、その服を手に取った。
「じゃあ、試着してみる」
そう言って、試着室に入っていく。
(……言っちゃったけど、大丈夫だったかな)
しばらくして、カーテンがゆっくり開いた。
「……どう、かな」
一瞬、言葉を失った。
普段より少し甘めの雰囲気。 でも――
「……すごく、似合ってる」
即答だった。
可愛すぎて、思わず視線を逸らす。
(……やっぱり、こういう服、似合う)
白咲さんは頬を赤くして、小さく笑った。
「……ありがとう。でも、そんなに直球で言われると……照れる」
結局、少し悩んだ末に、その服を買うことになった。
「水守くんも、何か買う?」
「いや、僕は大丈夫」
そう答えて、また二人でぶらぶら歩く。
次に向かったのは、ゲームセンターだった。
「ここ、行こっか」
「うん」
中に入ると、音と光に包まれる。 二人は自然とメダルゲームのコーナーへ向かった。
なぜか今日は、やたらと調子が良かった。
「……また当たった」
「え、すご……」
メダルがどんどん増えていく。
一方で、白咲さんは――
「……あ」
最後のメダルが、静かに消えた。
「……なくなっちゃった」
残念そうに笑う白咲さんを見て、すぐに言った。
「僕の、使う? 一緒に」
「え……」
一瞬迷った表情。
「見てるだけでもいいけど……」
そう言いながらも、少し考えてからうなずいた。
「……じゃあ、少しだけ」
「うん」
メダルを分けて、並んで画面を見る。
(……こういうのも、いいな)
勝ち負けよりも、 一緒に画面を見て、一喜一憂する時間が、やけに心地よかった。
この時間が続けばいい、なんて。
そんなことを考えてしまう自分に、少しだけ驚きながら―― 僕は、またメダルを投入した。




