運命の一日(灯視点)
フードコートの人の多さを見た瞬間、正直ちょっと気持ちが沈んだ。
(やっぱり……混んでるよね)
私の寝坊から始まって、どこに行っても人だらけ。 蒼太は疲れてるみたいだし、これって……やっぱり失敗デートなのかな、って。
そんな中で、
「どこかで買って、空いてるところで食べよ」
蒼太がそう言ってくれた。
その声は、落ち着いていて、無理してる感じもしなくて。 それだけで、少し救われた気がした。
テイクアウトしたごはんを持って、空いているベンチを見つけて並んで座る。 人混みから少し離れただけで、空気が変わる。
「……美味しいね」
「うん」
たわいない会話。 でも、向かい合って食べるより、並んで食べるこの感じが、なんだか心地よかった。
(……蒼太、楽しんでくれてるのかな)
表情はいつも通りで、分かりにくい。 でも、こうして一緒にいる時間を嫌がってはいない。 それだけで、少し胸が軽くなる。
食べ終わって、またモールを歩いていると、目に留まった服屋。
「……ちょっと見ていい?」
そう言って入ったものの、正直、半分は気分転換だった。
ハンガーを眺めていると、蒼太がぽつりと声をかけてくる。
「……白咲さん、こういうのも似合うと思う」
差し出されたのは、花柄の、ちょっと可愛い系の服。
「え……それって……着てほしいってこと?」
冗談半分で聞いたら、
「いや、別にそういう意味じゃないけど……単純に、似合いそうだなって」
真面目な声。
(……そういうところだよ)
意識してないのが、逆にずるい。
試着室に入って、服を着て、鏡を見る。 普段の自分とは全然違う。
(……似合ってるのかな)
正直、見せるのはすごく恥ずかしかった。 でも、蒼太が言ってくれたから。 その一言を、ちゃんと受け取りたくて、カーテンを開けた。
「……どう、かな」
一瞬、蒼太が固まった。
「……すごく、似合ってる」
即答。 しかも、視線を逸らしてる。
(……あ)
それだけで、全部伝わった気がして、胸がぎゅっとなった。
「……ありがとう。でも、そんなに真っ直ぐ言われると、照れる」
本音だった。 でも、嬉しさのほうがずっと大きくて、結局その服を買うことにした。
また二人で歩き出して、次はゲームセンター。
音と光に包まれる中、メダルゲームで遊ぶ。 蒼太はびっくりするくらい運が良くて、メダルがどんどん増えていく。
「……また当たった」
「すご……」
一方で、私のメダルは減る一方で――
「……あ」
最後の一枚が消えた。
「……なくなっちゃった」
ちょっと残念だけど、蒼太が楽しそうなら、それでいいかなって思っていた。
すると、
「僕の、使う? 一緒に」
自然な声で、そんなことを言う。
(……見てるだけでも、全然よかったのに)
でも、断るより、甘えたほうが自然な気がして。
「……じゃあ、少しだけ」
そう答えた。
並んで画面を見て、同じメダルを使って、一緒に一喜一憂する。
(……ああ)
デート、失敗なんかじゃない。
混んでても、予定通りじゃなくても、 こうして隣にいる時間が、ちゃんと楽しい。
それを、蒼太と同じ気持ちで感じられていたらいいな、と。
そんなことを思いながら、私はそっと画面を見つめていた。




