55.これでこのコロニーは終わりだ
4匹居たゴブリンジェネラルのうち3匹は『戦車騎士団』が引き付けていた。
前衛3人でそれぞれ1匹を相手取っているのは流石としか言いようがない。
イリアナは1匹取り残されているゴブリンジェネラルの元へと駆ける。
俺もその後を追う。
「レイラ!!予定通りゴブリンロードとゴブリンマジシャンの動きを警戒!!ゴブリンは近づいてくる奴だけ間引いてくれ!!【沈黙】【筋力低下】【硬度軟化】!!」
俺はゴブリンマジシャン2匹に【沈黙】をかけ、ゴブリンジェネラルに【筋力低下】と【硬度軟化】を放つ。
正直ゴブリンジェネラルが1匹になったのは助かった。
俺は援護が必要かと『戦車騎士団』のほうに一瞬視線を送る。
その視界に入ってきたのはゴブリンジェネラルの頭を切り飛ばすグレゴリオの姿だった。
どうやら問題ないらしい。
ギャギャギャ!!
「やぁあ!!」
視線を戻すとゴブリンジェネラルが突撃してくるイリアナに切りかかろうとしていた。
イリアナはゴブリンジェネラルが振り下ろす大剣の腹にショートソードを合わせ、その軌道を逸らすことで回避する。
そして払った剣をそのまま切り返し、ゴブリンジェネラルの腕を切り上げる。
ギャギャ!?
自分が何をされたか理解できていないゴブリンジェネラルと、宙を舞う右腕。
イリアナは見事ゴブリンジェネラルの右腕を切り飛ばしていた。
その光景を見て俺は驚き、目を見開いて固まってしまっていた。
あの剣捌きは俺の剣術そのものだ。
おそらくは魔物討伐依頼の最中や日々の鍛練の中で見よう見まねでトレースしたのだろう。
「っ!?イリアナ!!」
ゴブリンジェネラルが状況を理解できたのかは不明だが、無事な方の左手を握りこんでイリアナを殴りつけようとしていた。
イリアナはゴブリンジェネラルの腕を切り上げた状態で上体が伸びきっており、反撃も回避も出来そうにない。
だが、彼女は冷静だった。
「【石壁】!!」
瞬間、地面から岩壁がせり上がり、ゴブリンジェネラルの拳を受け止める。
【筋力低下】のかかった拳撃ではそれを破壊することは叶わない。
「もらったぁ!!」
今度はイリアナがショートソードをゴブリンジェネラルの頭に振り下ろす。
その剣は易々と頭蓋をたたき割る。
ゴブリンジェネラルが霧散し、後には魔石だけが残った。
「よし!!本命だっ!!」
イリアナはゴブリンジェネラルを倒したことに喜びを爆発させることなく、祭壇目掛けて駆ける。
イリアナの後を追って俺も走る。
そしてその後ろから、俺の頭上を矢が飛び超えて行く。
レイラの援護だ。
放たれた矢はゴブリンマジシャンに突き刺さる。
祭壇の上にはあたふたするゴブリンロード1匹しかいない。
何度も言うがゴブリンロード自体は大した戦闘能力を持たない。
祭壇を駆けあがったイリアナがゴブリンロードを切り伏せるのに問題は何もなかった。
コロンと転がる魔石。
振り返ってみれば『戦車騎士団』がゴブリンの残党を始末している所だった。
「オルカさん!!これでコロニー壊滅だよね!!もう大丈夫だよね!!」
俺の腕に抱き着いてくるイリアナ。
俺もふぅっと一息つく。
「ああ、ゴブリンロードは仕留めた。これでこのコロニーは終わりだ。」
俺が祭壇を下りると、レイラがそこで待っていてくれた。
少し機嫌が悪そうだ。
なぜ?
「……ズルい。」
そう一言呟くと、俺の空いている方の腕に抱き着いてくる。
いやいや、イリアナに離れなさいと言わなかった俺も悪いけど、ちょっと止めて?
この状態で急襲を受けたら身動きが取れない。
「イリアナ、レイラ。ちょっと離れて。」
俺が言うと2人は渋々と言ったように離れる。
俺も気分が悪いものではないので、命のやり取りを生き抜いた今位は甘えさせてやりたい気持ちもあるが、何と言ってもここは魔物の巣だ。
しかも『戦車騎士団』の目もある。
あ、ほら、ヴァネッサさんが凄い目でこっちを見ているぞ。
「はーっはっはっは!!!!我らにかかれば楽勝だったな!!これにて作戦完了だな!!」
最難敵のゴブリンジェネラル3体と相対していたグレゴリオは何でもない事のようにそう言って近づいてくる。
それに対し、俺は右拳を突き出す。
「さっきは助かった、正直人数の少ない俺達だけでゴブリンジェネラル4匹はキツかったよ。」
グレゴリオはそれには何も言わずに俺と同じように右拳を突き出し、俺の拳に当てた。
「ゴブリンロードはどこだ?」
背筋がゾッとするような殺気の籠った声だった。
瞬間的に『黎明の光』と『戦車騎士団』の全員が身構えて声のした方を注視する。
そこには広場に入ってきたばかりと言うように赤髪の男が立っていた。
右手にはだらりと長剣をさげているが、その剣は赤く染まり、ゆらゆらと炎を放っている。
俺はその男を知っていた。
いや、知ってはいたが、知っている男ではないと感じていた。
コイツは、トーラスなのか?
「トーラスか?ゴブリンロードは討伐した!!残党の処置と先ほどの火炎魔術の処理に向かおう!!」
グレゴリオが叫ぶ。
だが、何かがおかしいとは思っているのだろう。
戦闘態勢を解こうとはしていない。
「倒しただ?ゴブリンロードを?お前らが?……何してくれてんだぁ!!??」
トーラスが叫ぶのに呼応するように長剣から炎が噴き出す。
そしてトーラス自身の身体を黒い靄のようなものが包む。
「どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!!……寄こせ!!それは俺が討伐した魔石だ!!」
支離滅裂な言葉を叫ぶトーラス。
異常な状態であるのは明らかだ。
「……グレゴリオさん、オルカさん、私はあの状態に心当たりがあります。」
反射的に俺とグレゴリオが声の主を見る。
どこか怯えた様にも見えるバーンさんがそこには居た。
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