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54.共闘しようではないか!!

「何あの炎!?黒いんだけど!?っていうかなんか周りに炎が落ちてきてない!?」


膨大な魔力のうねりとともに現れた黒炎

その炎は竜巻のように旋回しながら上昇し、周囲に火炎の雨を降らせる。


間違いない。


「あれは【黒炎噴火(ボルケーノ)】。『紅蓮の剣』の攻撃魔術師、レティスが最も得意とする広範囲殲滅魔術だ。唯一短縮詠唱で発動できる魔術だったはずだ。」


俺は努めて冷静にその魔術を説明する。


「え、でも広範囲殲滅魔術を使うのは1回だけだよね?ひょっとして……何かアクシデント?」


「多分な。」


俺は短く返す。

そうとしか思えなかったからだ。


詠唱をしていられない状況に陥ったのだろう。

そうでなければこの魔術を選ぶ理由がない。


「これ……まずいですよね?火が……」


そうなのだ。

今もスフィカの森に火球が落ち続けている。

魔術の発動自体はコロニーの中でも、場所は森に近い場所だ。

火球の一部は森にも落ちるだろう。


……山火事に発展する可能性がある。


「……俺たちは消火に適した術や特技を持っていない。このままゴブリンロードを目指す。最善を尽くそう。」


俺は逡巡したのち方針を打ち出す。

イリアナもレイラもしっかりと理解し頷く。


俺たちはコロニーの中心へと向けて駆け出した。




そこは広場のようになっていた。

簡素な木製の建屋が並んでいたそれまでの風景と変わり、開けた場所。

その中央には祭壇のように見える1段高いステージのようなものがある。


ゲキャキャ


祭壇の上から耳障りな声が聞こえてくる。

ホブゴブリンと同じくらいの体躯ながら、周囲にゴブリンジェネラルを従え胸を張るその姿は間違いなくゴブリンロードだ。


俺は素早く周囲を確認する。

祭壇の上にゴブリンロードとゴブリンマジシャンが2匹。

祭壇下にゴブリンジェネラルが4匹とホブゴブリンが5匹、ゴブリンは十数匹。


まだゴブリンジェネラルが4匹もいるとは思っていなかった。

ゴブリンロードは戦闘能力が高いわけではないし、ゴブリンマジシャンは【沈黙(サイレス)】を使えば無力化できる。


実際に相対するのはゴブリンジェネラル、ホブゴブリン、ゴブリンだけなのだが……

流石に数が多い。

通常の能力低下(デバフ)では弱体化はできてもその手数を減らすのは難しい。

拘束系や行動阻害系の能力低下(デバフ)もばらまきながら立ち会う必要がある。


俺の処理能力にも不安があるが、やるしかない。


「イリアナ、ゴブリンジェネラルに注力だ。守備重視の立ち回りでいこう。ホブゴブリンは俺が処理する。ゴブリンはすべて行動阻害で動きを止める。レイラ、ゴブリンロードとゴブリンマジシャンの動きに警戒しながらゴブリンの数を減らしてくれ。」


「数が多いですが大丈夫ですか?」


レイラが若干心配そう顔でこちらを見ていた。


いかんな。

戦闘前に不安を持たせてしまうわけにはいかない。


「俺を信じろ。あの程度の数なら問題ない。」


俺は余裕たっぷりに笑う。

精一杯の虚勢を張った。


レイラは俺の言に驚いたようだが、少し微笑むと頷いた。




「はぁあああああああああああああ!!!!」


俺たちがいざ突撃せんとしたタイミングで新たな乱入者が現れた。

その広場にけたたましい雄叫びを上げながら突入してきたのは『戦車騎士団』だった。


「ふははははは!!ゴブリンロード見つけたり!!いざ尋常に勝負……ってそこにいるのはオルカではないか!!」


敵陣ど真ん中にいるのとは思えないようなテンションで勢いそのままに祭壇へと駆け出そうとしたグレゴリオだったが、こちらの存在に気付いたようだ。


「流石『黎明の光』!!まさか3人で先に到着していようとはな!!ではここは『黎明の光』と『戦車騎士団』で共闘しようではないか!!我らが力を合わせればゴブリンロードを逃がすようなこともなかろう!!」


相変わらずの声のでかさだ。

ゴブリンたちもいきなり表れて喋りまくるグレゴリオに興味を引かれている。


正直3人で相手をするのは少しキツイと思っていたし、『戦車騎士団』の参戦はありがたい。


「グレゴリオ!!6割持って行ってくれ!!後はこっちでやる!!」


俺はそう叫ぶ。

向こうは6人パーティで前衛3人だ。

本音7割持って行ってもらいたいところだが、無理を言うわけにはいかない。


その俺の言に対し、グレゴリオはにやりと笑う。


「8割だ!!ロードは頼むぞ!!」


言うなり『戦車騎士団』の前衛3人が並んで大盾を構える。


「【筋力上昇(パワーアップ)】!!」「【防護壁(プロテクション)】!!」


そこへバーンさんの防御魔術とヴァネッサさんの補助魔術が飛ぶ。


「【絶叫鼓舞(ウォークライ)】!!いくぞぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」


そして最後に前衛3人が戦技を発動し、3人同時にシールドチャージを繰り出す。

『戦車騎士団』の名前の由来にもなっているこのパーティの得意戦術【戦車(チャリオッツ)】だ。

言ってしまえばただ3人が盾を掲げて突っ込むだけなのだが、フルメイルの大男が【絶叫鼓舞(ウォークライ)】で強化して突っ込むのだ。

それはさながら壁が迫るがごとき迫力を生み出している。

威力の方も凄まじいものがあり、あの鉄巨兵(ゴリアテ)すら吹き飛ばすらしい。

しかも、バーンさんとヴァネッサさんの加入によりさらなる力を得たようだ。


『戦車騎士団』の【戦車(チャリオッツ)】はゴブリンの群れの中に突っ込む。

ゴブリンやホブゴブリン、それだけでなくゴブリンジェネラルまでをも弾き飛ばし、ゴブリンの群れを半壊させてようやく止まる。

ゴブリンジェネラルやホブゴブリンは流石にそれだけで倒せたりはしないが、ゴブリンなんかはこの突進を食らっただけで霧散する。


と思って見ていると、吹き飛ばされたホブゴブリンも少し時間を置いて霧散していく。


マジか。


予想以上の破壊力に俺は驚く。


そこからは陣形の崩れた相手に前衛の3人がそれぞれ圧倒的な力を見せつけている。


「私たちの相手が居なくなっちゃうよ!!」


我に返ったイリアナがまだ残っているゴブリンを指さして言う。

俺たちも慌てて参戦したのだった。

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