49.危なくなったら何とかしてくれ
ちょっとしたイレギュラーではあったが、俺の部屋に3人が集まったのでこれ幸いにと今日の予定について決めてしまうことにした。
取り急ぎはゴブリンのコロニー殲滅のレイドクエストに参加するか否か。
Bランクの冒険者パーティが5組もあればゴブリン300匹くらいなら何とかなるかな?くらいの感じだ。
とは言え、1パーティ60匹というノルマは決して楽な数字ではない。
その中にゴブリンの上位種がいて、ある程度統率もされているとなれば猶更だ。
奇襲の一撃で広範囲殲滅魔術でも放てれば戦況は大きく有利に傾くだろうが、俺の知る限りこの街でそれを使えるのは『紅蓮の剣』の攻撃魔術師、レティスくらいだ。
『紅蓮の剣』はこの作戦に参加するのだろうか……
まぁ広範囲殲滅魔術でなくとも奇襲を仕掛けて最初の当たりである程度の数を落とせば、その先が楽になるのは間違いない。
レイドクエストともなればしっかりとした指揮官もつくだろうし、勝率は決して低くはない。
要は、俺たちが参加しなくても問題ないだろうということだ。
「俺の体調は問題ない。2人の気持ちを聞かせてくれ。」
俺はそう言って2人の様子を伺う。
「私は……やっぱり参加したいです。あの冒険者の姿を思い出すと、やっぱり自分にできることはしたいと思ってしまいます。ですが、仲間を危険に晒すのは本意ではありません。オルカさんが実力的に私たちでは対応できないとお考えでしたら素直に他の冒険者に任せることにします。」
そう口を開いたのはレイラだ。
実際にあの数の魔物と対峙して恐怖も覚えただろう。
しかし、それを飲み込んで自分にできることをしたいと言える彼女の心の強さに驚く。
そして、今回の件でパーティを危険に晒したことへの整理もついたようだ。
「実力的には、そうだな。正直まだ早いだろう。だが、今回はイリアナとレイラのレベルアップが目的ではない。街の脅威になる魔物の駆逐が目的だから俺も積極的に戦闘参加する。大船に乗った気持でいればいい。」
俺がそう言ってにやりと笑ってやると、レイラは胸をなでおろす。
続いて俺はイリアナに視線を向ける。
「あたし?もちろん参加したいな!!だってレイドクエストってお金いっぱい出るんだよね!?狙わない手はないでしょ!!」
そう言って俺へ謎のサムズアップを決める。
その姿勢に俺は苦笑いを返す。
若干重苦しかった場の空気が軽くなったのを感じる。
全くこの子は。
天然なのだろうか?狙ってやっているとしたら大したものだ。
俺はもう一度2人の顔を見て頷く。
「よし。じゃあ俺たちもレイドクエストに参加しよう。Bランク以上に限定した募集だからまだ参加できると決まったわけではないが、発見者だし特例が出されるケースもある。許可が出るものと思って予定を組もう。」
「でも予定って、レイドクエストに参加するなら今日の昼までだよね?激しい訓練もできないし、何するの?」
俺の言葉にイリアナが疑問符の浮いた顔で聞いてくる。
確かにレイドクエストに参加するなら時間はそう潤沢にあるわけではない。
だが、さっきも言ったように、今回は俺が戦闘に積極的に参加する。
「2人ともこれまで俺が本気で参加しての戦闘はしてきてないだろ?補助魔術師で中衛ポジション。戦闘指揮に回復術も扱う俺みたいな特殊人員が入るんだ。簡単なフォーメーション確認から戦術確認、イレギュラー時のポジション調整等、確認しておくべきことは山ほどある。朝食後ギルドへ行ってレイドクエスト参加が正式に認められたら、昼まで勉強漬けだぞ?」
俺はにやりと笑って2人を見やる。
レイラは真剣な表情で頷き、イリアナは白目を剥いて気絶していた。
朝食後、3人でギルドへと移動する。
普段なら朝の早い冒険者はもう依頼を受けたり迷宮へと出発しているような時間なのだが、今日に限ってはギルド内に多くたむろしていた。
「人多っ!?なんで!?」
「レイドクエストが出たからだろうな。朝イリアナも言っていたが、レイドクエストはもれなく危険である代わりに実入りがいい。有力な冒険者が参加して危険度が低くなったと判断したところで参加表明するパーティもあるんだ。多分状況を見極めようとしているパーティが多いんだろうな。」
「ほほう。漁夫の利ってやつだね!!」
驚くイリアナに状況を説明してやると、まさかの諺で返される。
しかも第三者が益を得るって意味だから微妙に違う。
ここはスルースキルを発動だ。
俺は冒険者たちがたむろするギルド内でミリカさんを探す。
Eランクの俺たちは普通に受付でレイド参加申請をしても無理なので、ベンさんに直談判する必要がある。
そのために面会までこぎつける必要があるんだが……
「オルカ!!ちょっとこっち来い!!」
そんな俺を見つけて声をかけてきたのはまさかのベンさんだった。
状況が状況だけにギルドマスターも対応できるように現場サイドに来ていたんだろう。
とにかく俺たちにすればラッキーだった。
ベンさんに付いていき、応接室へ通される。
ベンさんは通路を通りかかったギルド職員に簡単に指示を出し、俺たちにはソファに座るよう促す。
とりあえず俺たちは言われるようにソファに腰掛ける。
「今日来た用件の確認だが、レイドクエスト参加で合ってるか?」
開口一番そんなことを聞いてくるベンさん。
何か様子がおかしい。
「ええ、そのつもりでしたが。何かあったんですか?」
ベンさんは俺の質問に対して頭をかく。
「実は今回のレイドクエスト、Aランクパーティの『紅蓮の剣』と『戦車騎士団』も参加表明があったんだがな。規約上『紅蓮の剣』のリーダー、トーラスが指揮官になっちまうんだ。お前が抜けた後のあいつらの評判も良くなくてな、ちょっと心配になったんで俺の方から『黎明の光』に参加要請を出すつもりだったんだ。」
ベンさんはため息交じりに実情を報告してくる。
だが、俺からすればそんなことを言われてもという感じだ。
何をしろと?
「コロニー発見パーティってことでレイド参加は道案内兼任で特例を出しとくから、危なくなったら何とかしてくれ。」
ベンさんは憑き物が落ちたような満面の笑顔でそんなことを言ってくる。
俺史上最大級の無茶ぶりだった。
一応言っておくとベンさんは組織管理的な面でも優秀です。
人員の力量評価をしっかり行い、任せられる仕事は任せる。
ほら、こう書くと優秀でしょう?
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