47.明日、彼女たちとちゃんと話します
俺達は街に戻るとそのままギルドへと直行する。
女性冒険者を担いだままなので、道行く人々に奇異の視線を向けられる。
だが、あまりにも堂々とした姿に人さらいとは思われていないようだ。
それは俺に付いてきているイリアナとレイラのおかげかもしれないが。
レイラはゴブリンのコロニーで腰を抜かしてしまったのか最初はイリアナの肩を借りるようにしていたが、街に戻る事には一人で歩けるようにはなっていた。
その間一言も発していないので精神的にまだ安定しているわけではないだろうが、フォローは後だ。
何せ俺にも余裕はない。
ギルドの門を開き中へ入る。
人を担いでギルドの中へ入ってきた俺の姿を見た冒険者が何事かと俺を見る。
俺はその視線をすべて無視して話の出来るギルド職員を探す。
なにせギルドマスターに直接話をしなければいけない案件だ。
俺が直接説明したいが、残された時間はそう多くない。
「オルカさん!!どうしたんですか!?その冒険者は……」
ギルド内の人間の視線が俺達に集中する中、ミリカさんが駆け寄ってくる。
彼女なら大丈夫だ。
俺は【魔法鞄】から【指針】の片割れを取り出し、端的に説明を行う。
「スフィカの森に300匹以上の規模のゴブリンのコロニーが出来ていたんです。レイドクエストを発動して複数パーティでの駆逐を行う必要があるかと。彼女はそのコロニーで救出しました。傷は治療してあります。意識が回復するまで休ませてやってもらえませんか。」
そう言いながら女性冒険者をミリカさんに続いて駆け寄ってきたギルド職員へと渡す。
ミリカさんは俺が冗談を言っているとは全く思っていないようで、しっかりと話を聞き頷く。
「ゴブリンロードですね。すぐにギルドマスターに掛け合います。……オルカさん、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
ミリカさんが心配そうな表情で俺の顔を覗き込んでくる。
ああ、そろそろ限界のようだ。
だが、ギルドに情報は伝えたし、細かな所はイリアナとレイラも居るから大丈夫だろう。
少し緊張の解けた俺の意識はそこで途絶えた。
目が覚めると天井が見えた。
同時に頭に走る鋭い痛みに顔をしかめる。
「おう、起きたか。」
声のする方を見るとベンさんが椅子に座っていた。
どうやら俺はベッドに寝かされていたようだ。
ふと見ると、そのベッドに突っ伏す様にイリアナとレイラが寝ている。
そしてその2人のそばにはミリカさんが座っている。
「話は聞いた。大分無茶したみたいだな。第八階位クラスの魔術を60匹ほどに同時行使したんだってな?」
「……俺はどれくらい寝ていましたか?」
ベンさんの言葉には応じず、現状の確認を優先させる。
そんな俺の態度にベンさんはため息をつく。
「4、5時間ってとこだ。何日も寝たりしてねえから安心しろ。」
「レイドクエストの発動はどうなりました?」
これにはミリカさんが口を開く。
「明日の昼に作戦開始で募集をかけています。Bランク以上のパーティに限定して5~6組集まるかといったところでしょうか。あと、スフィカの森は全面的に入場規制を行っています。」
妥当な所だ。
しかしBランク規制か。
「ミリカさん、俺達もそのレイドクエストに参加します。」
「ダメです。」
帰ってきたのはしっかりとした芯の強さを感じさせる明確な拒否の言葉だった。
ベンさんがまたため息をつく。
「お前らはFランクパーティだ。実力はもっと上だと認めてはやるが、パーティの中心であるお前が万全でないのに参加を認めるわけにはいかん。」
ベンさんの言う事は最もだ。
処理能力を超えた魔術の無理な行使で今も頭は割れそうに痛むし、明日までに回復するかもわからない。
だが、こっちにも参加しなければならない理由がある。
「ですが、約束したんです。レイドクエストに参加すると。」
「経緯はイリアナさんに聞きました。……ですが、彼女たちもとても戦える精神状態ではないですよ?」
そう言ってミリカさんは視線をレイラに移す。
「特にレイラさんは、オルカさんが倒れたことは自分のせいだと言って、泣いていました。」
そう言われて思わずレイラを見る。
確かにその目元は赤く腫れているように見える。
「……とりあえず今晩は休みます。そして明日、彼女たちとちゃんと話します。」
俺の言葉にミリカさんが頷く。
「私もそれが良いと思います。」
今回は色々あった。
その割にまともに話をする時間もなかったので、それぞれの想いについては聞けていないままだ。
『紅蓮の剣』の時はそれでもパーティが機能していればと話をすることを諦めてしまっていたが、今は『黎明の光』だ。ちゃんと対話をしよう。
そう思って彼女らの寝顔を見る。
と、パチッと瞼が開いたイリアナと目が合う。
「ふぁ?…あ、オルカさん起きてる!!」
イリアナの声でレイラも目を覚ます。
「オルカさん……良かった……私のせいで……」
目を覚ますなり再び瞳に涙を蓄え始めるレイラ。
「心配かけてすまん。ただの魔術の使い過ぎだから、もう大丈夫だ。」
俺は2人を安心させようと少し微笑むようにして無事をアピールする。
ベンさんは呆れたような表情を作った後、部屋を出て行った。
ミリカさんもそれに習う。
俺は2人が落ち着くのを待って一度『まぐまぐ亭』に帰ることにした。
一晩しっかり休み、翌朝話し合う約束を2人と交わして。
『まぐまぐ亭』に帰った俺に対し、女の子を泣かせるとは何事かとリンカさんの雷が落ちたのはまた別の話だ。
リンカさんはとてもいい人です。
他人を叱れる人は中々いません。
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