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45.今回はコロニーを確認するだけだ

「ゴブリンロード、ですか。」


レイラが神妙な面持ちで俺の言葉を反復する。

彼女は魔物の知識もある程度有しているようなので名前くらいは聞いたことがあるのだろう。


小鬼王(ゴブリンロード)

他のゴブリン種を従える特殊な能力を有したゴブリン。

個体の戦闘能力はゴブリンに毛の生えた程度でホブゴブリンにも及ばないが、その能力でとにかく多くのゴブリンを集めてしまう厄介な魔物だ。


俺は2人にこれらのゴブリンロードの説明をする。


「……加えて、これは未確認情報なんだが、ゴブリンロードには傘下に入ったゴブリン種の進化を行う力があるともされている。こいつの周りにはゴブリンジェネラルやゴブリンマジシャンみたいな特殊個体が居る場合が多くてな、それが自然発生したものを集めたにしては異常な数なんだ。」


「もしそのコロニーを見つけたとして、私達だけで殲滅できますか?」


レイラの問に対し、俺は首を横に振る。


「数にもよるが、難しいだろう。数が多いというのはそれだけで脅威だ。極端な話、端からちまちま数を削って行けば比較的安全に倒せるレベルの魔物ばかりだが、時間を掛けるとゴブリンロードは逃げ出す可能性が高い。そうなるとまた別の場所でコロニーを形成されてしまう。」


「じゃあ、最初にゴブリンロードを倒しちゃえば?」


イリアナらしい直球的な考え方だが、俺はこれにも首を横に振る。


「単純に魔物の群れの中心に飛び込むのは自殺行為だし、何とかゴブリンロードを討ちとれても問題が起こる。統率者を失ったゴブリンたちが自由行動に移り、それぞれがバラバラに行動しだす。こうなると俺達だけでは拡散していく魔物の群れに対処することはできない。そのまま魔物の一部が森を出て街へ向かう可能性も出てくる。」


「では、私達はどう動くべきなのでしょうか……」


レイラが悔しさをにじませた顔で聞いてくる。


「まずはコロニーの位置と、規模を確認する。その上で一旦退却してギルドにこの件を報告。共闘依頼(レイドクエスト)を発行してもらい、複数パーティで殲滅に当たるのがいいだろう。……勿論『黎明の光』もそれに参加する。あくまで一時的な撤退だからそんな顔をするな。」


俺は少し表情を柔らかくしてレイラに語り掛ける。

レイラは自分の感情が表情に出ていたことに気付いたようで、顔を赤くして俯く。


「む~。あたしは?」


イリアナが少し頬を膨らませている。

だが、俺はそれに首をかしげるしかない。


イリアナの表情からは特にネガティブな感情は見られなかったから特にフォローもいらなかったと思うのだが……

ここはスルーだ。


「よし、気を引き締めよう。これから俺達はコロニーを捜索する。仕掛けるつもりは無いが、敵の拠点にに近づくわけだから危険を伴う。いいな?」


2人ともすぐに真剣な表情に変わり、頷く。


「しかし、この足跡からどっちにコロニーがあるかなんてわかるんですか?」


レイラがゴブリンたちの足跡を見て疑問を口にする。

確かにぱっと見では分からないだろう。

だが、一つくらいはあるはずだ。


「……あった。」


俺が指さしたのは向きの違う足跡が重なっているものだ。


「行き帰りの足跡が重なっているものがあれば、どちらの足跡が後についたのかが分かる。」


「なるほど、確かに。」


「って事は、コロニーはあっちだね!!」


2人がその足跡を確認し、イリアナが一方向を指さす。

レイラもその方向に視線を向けている。


俺も自然とその方向を見やる。

いつもと変わらない森がそこにあるだけだが、やけに行く先が暗く見えた。


「いいか?今回はコロニーを確認するだけだ。……行こう。」


そして俺達は森の奥へと進んでいった。





「本当に動物が居ませんね。」


周囲を警戒しながらレイラがつぶやく。


「魔物がコロニーを形成すると、まず食糧問題が起こるからな。最初は近場の動物や他の魔物を餌にするが、コロニーの周りに動物が居なくなってくると次第に食糧調達のために遠征隊が組まれることになる。そうして順々にコロニーの周りから生物が消えていくんだ。」


言いながら俺は動物の気配が消えている範囲の広さからコロニーの規模を推測する。

結果は、かなり大型だろうという事だ。

生物の居ない、死んだような静けさの森の中を進むにつれ、いやな圧迫感が強くなるように感じる。


ちらりと横を見れば、レイラも真剣な表情に頬をひと筋の汗が伝っている。

彼女も同じような感覚を持っているのだろう。

だが、イリアナはと言えばいつも通りの表情だった。

さすがに元気よくという訳にはいかないが、それでもこの環境の中平常運転に近い精神状態で居れるというのは才能だろう。


「……オルカさん。」


レイラが一方向に視線を固定している。

すぐに俺とイリアナもそちらを見て、固まる。


あった。


森の中、そこには開けた空間が広がっており、その空間を目いっぱい使うように木製の簡素な建物が並んでいる。

そしてその建物の周りでたむろするゴブリンたち。

ちらほらホブゴブリンの姿も見える。


(これはかなり大きなコロニーだな。300以上は居そうだ。)


俺は2人に小声で話しかける。

2人は無言で頷く。

予想以上の数の魔物に恐怖を覚えているのかもしれない。


俺は【魔法鞄(マジックバック)】から魔道具を取り出す。

指針(コンパス)】と呼ばれる2対1組の魔道具で、常にお互いの位置を示し続けるという魔道具だ。

それを木陰に隠す様に置いておく。

これで一旦ここを離れても対となる【指針(コンパス)】を頼りにここへ戻ってこれる。


(さあ、目的は達した。退避するぞ。)


俺がそう言ったタイミングだった。


ゴブリンたちの一部がゲキャゲキャを不快な声を上げる。

一瞬、俺達が見つかったかと思ったが、ゴブリンたちがこちらを向いては居ないので違うようだ。

ゴブリンたちが視線を向ける先ではホブゴブリン率いる遠征隊が帰還してきていた。

食糧調達に出ていた部隊だろう。

そしてそのホブゴブリンの後ろ、ゴブリン達に引きずられているのは3人の人間だった。

男性が2人と女性が1人。


どこかでホブゴブリン達に見つかってしまったのだろう。

俺は予想外の展開に思考を回転させるのが遅れてしまった。


「う……」


女性が呻く声が聞こえた。

まだ生きている。


そう思った瞬間には、レイラが駆け(・・・・・・)出していた(・・・・・)

レイラさん暴走です。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非、評価・ブックマークをお願いいたします。

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