40.俺という至上の存在がいれば
side.トーラス
どうも最近パーティの雰囲気が良くない。
オルカの代わりにと予定していた魔術師は大したことがなかった。
能力向上の恩恵は大したものだったが効果時間が短く、能力低下は実践で使えたものではなかった。
回復魔術に至ってはかすり傷一つ治すのに時間をたっぷりとかけるレベル。
挙句パーティに残れるように配慮したのを蹴って去っていきやがった。
俺の優しさを踏みにじる奴らにはいずれ天罰が下りるだろう。
その後も新メンバーは募り続け、何人か実地試験を行ったのだがこれがまたよくなかった。
どいつもこいつもオルカの代わりの魔術師にも及ばぬ補助魔術に回復魔術。
何人かは魔術を行使するのにもいちいち詠唱をするレベル。
レティスの広範囲殲滅魔術のような高階位魔術を使用するのに詠唱が必要と言うならわかる。
だが、第一階位魔術を使用するのに詠唱が必要とか、訓練不足も良い所だ。
ともかく、俺達のパーティには補助魔術師枠が足りない状態が続いており、ここ1週間は迷宮の深層に挑めていない状態が続いている。
ギルドでは継続して募集を掛けてはいるが、個人でもスカウト活動をした方が良いのではないかと言う意見が出て今日に至る。
俺とアイラは南広場でオフの冒険者に接触しようというという事になった。
まぁスカウト活動なんざ面倒だし、適当にしてアイラとのデートだという心づもりだった。
広場についてアイラを探す。
俺もそうだが、赤髪は目立つ。
そう時間を掛けることなくアイラの姿を見つけるが、誰かと話しをしているようだ。
「アイラ!!こんな所に居たのか……?」
アイラに話しかけながらその話し相手を見ると、それはオルカだった。
こいつ、アイラに接触してパーティに戻れるように画策していたか?
「オルカ、アイラに何の用だ?パーティに戻れるように懇願でもしていたのか?」
俺がそう言うと、この男は見当違いだと言わんばかりに小さくため息をつく。
その動作にも気分が悪くなる。
「……偶然会っただけだ。それに俺は『紅蓮の剣』に戻りたいとは思っていない。今は『黎明の光』のメンバーだ。」
聞いたこともないパーティだ。
「そんなパーティ聞いたことないな。作り話か?」
「新興パーティだからな、今はこの2人と組んでやってる。」
どうせ嘘だろうと思って聞いてみれば2人の冒険者を見やりながらそんなことを言う。
つられて俺もその2人を見る。
上玉だ。
まだガキ臭さが残ってはいるものの2人とも目を引く可愛らしさがある。
気の強そうな青髪ショートと大人しそうなブロンドのミディアム。
特にブロンドの方は身体の発育も良い。
ヴァネッサには及ばずとも将来有望だな。
そんなことを考えているとオルカが一歩前へ出てくる。
生意気に騎士気取りか?
どうせ適当な嘘をついて誑し込んでいるんだろう?
このクズ魔術師が。
「……見た所新人冒険者か?大方Aランクと言う肩書を使って騙しているんだろう?君達、こいつに何か法外な要求を受けていたりしないか?何かあれば相談に乗るぞ?」
俺は2人をクズ魔術師から解放すべくそう言って手を差し伸べる。
だが、返事は思わぬところから帰って来た。
「オルカさんは私達のパーティのリーダーです。Aランクでも全くそれを奢る事のない人格者ですので心配は無用です。」
「そうだよ!!オルカさんの事を悪く言うのは許さないよ!!」
これは、もう完全に騙されているという事か?
もしかしたら精神操作されている可能性もある。
何せこいつは能力低下魔術専門の害悪魔術師だ。
可能性高い。
「だそうだ。お前の心配するようなことはないからどっか行ってくれ。」
勝ち誇ったかのように俺に手を向け、払う仕草をするオルカ。
こいつ、俺にそんな態度を取って、ただで済むともうなよ。
この場で切り殺してやろうか。
「ちょっと、トーラス。」
アイラに肩を掴まれ我に返る。
「オルカなんかに構ってられないでしょ。あたしたちにはやらなきゃいけないことがあるんだから。」
やらなきゃならない事?
……そうか、俺達は冒険者勧誘に来たんだった。
俺達はSランクにならなければならない。
こんなクズ魔術師にかき乱されている場合ではなかったな。
そう考えるとなんでこんな取るに足らない存在と話していたのか馬鹿らしくなってくる。
ここは大人な俺が見逃してやろう。
「そうだったな。俺達は『紅蓮の剣』に相応しいメンバーの勧誘に来ているんだった。こんな害悪魔術師に構っている暇はなかった。」
そう言って踵を返そうとすると、新人冒険者の2人が喰ってかかってきた。
「オルカさんはすごい人だよ!!昨日の模擬戦だって1人で『戦車騎士団』の3人を倒しちゃったんだから!!」
「そうです。今の発言を撤回してください。」
なんだ?
俺がオルカの事を害悪魔術師と言ったことに怒っているのか?
害悪魔術師は害悪魔術師だろう?
そうでなければクズ魔術師だ。
「トーラス。ギルドで噂になってた模擬戦の事じゃない?新人冒険者の2人が『戦車騎士団』相手に善戦したっていう……」
アイラが俺にそんなことを言ってくる。
そう言えばパーティメンバー補充の申請をしに行った時にそんな話を聞いたな。
有望な新人冒険者の話。
この2人がそうだというのか?
そして彼女らはオルカに騙されている。
ここで俺には素晴らしいアイデアが浮かぶ。
彼女らを解放し、パーティの強化を行う一石二鳥のアイデアだ。
「なるほど、君達が噂の新人冒険者か。……よし、君達を我が『紅蓮の剣』に招待しよう。」
「は?」
オルカが間抜けな声を上げている。
だが、このクズ魔術師は無視だ。
「勿論、君達が加入するならオルカの復帰も認めようじゃないか。この男は口ではこう言っていても『紅蓮の剣』に復帰したがっているからね。」
これが決め手になるだろう。
精神操作を受けている2人はオルカの為ならとパーティに所属することを望むはずだ。
こうして一旦『紅蓮の剣』で保護しておけばオルカも自由には振舞えまい。
そしてそこに俺という至上の存在がいれば自然と精神操作は解ける。
そして2人が俺のものになったタイミングでオルカを切ればいい。
我ながら完璧な作戦だ。
俺はバラ色の未来を想像し、口端を吊り上げた。
今回はトーラスさん回でした。
相変わらずヤバい思考回路ですね。
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