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37.2日も休養なんて!!

「ダメだ。」


『まぐまぐ亭』の一室。

俺が普段借りている部屋で、2人に対してはっきりと言う。


「どうしても?」


「どうしてもだ。」


納得いかない表情のイリアナ。

レイラももの言いたげな表情をしている。

だが、俺もここは引くわけにはいかない。


「いいか?今回俺は1週間の契約だと思っていたから毎日のようにスケジュールを組んで2人を鍛えてきた。だが、本当であればこれはやり過ぎだ。普通は休みを挟みながらスケジューリングするものなんだ。」


俺はもう一度説明する。

そう、今俺は2人に休みを宣告して反発を受けているのだ。


気持ちは分からないでもない。

今日模擬戦を行い、それぞれ悔しい思いをしたところだ。

早く強くなりたいという気持ちが生まれるのは自然なことだ。

だが、彼女たちは既に1週間みっちりと俺の指導の下訓練を続けている。

完全なオーバーワークだ。


「それにしても2日も休養なんて!!せめて1日にならないの?」


俺が設定した休みは2日。

一般的な冒険者であれば3日活動して1日休むくらいの活動をしている。

そして、商隊の護衛のような長期間の依頼や、数日がかりで行われる迷宮攻略のような活動の後には数日連続で休養期間を入れるのが定石だ。

今回はこのパターンだ。


「2人のモチベーションが今高い状態なのはわかるが、休みは重要だ。肉体的には回復術や回復薬でカバーできても、精神的な負荷は取り除きようがない。精神に支障をきたすと日常生活が困難になるぞ?将来的に幸せな家庭を築けなくなっても困るだろ?」


「それは困る!!分かった、ちゃんと休むよ!!」


お、おう。


手のひらを返したようにイリアナが納得し、俺は肩透かしを食らう。

何か琴線に触れたようだが、今はもう休むことに納得しているようだった。

レイラはまだ物言いたそうな顔をしているが……


「レイラも良いか?」


そう聞くと頷いてくれるので納得はいかなくても了承はしてくれているようだ。


「ですが、休みと言ってもいったい何をすればいいのか……オルカさんは休みの時何をされているんですか?」


レイラにそう聞かれて考える。

『紅蓮の剣』時代の自身の休日を思い出す。


「そうだな。朝一で軽く汗を流して、それから情報収集。これはギルドで出ている依頼の内容や情報誌の確認だな。それから武具・消耗品なんかの買い物に次の活動のスケジューリングとかだな。」


俺がそう言うとイリアナとレイラの視線がジトっとしたものに変わる。


「それ、休みじゃないじゃないですか。」


レイラがそう指摘してくる。

俺は反論しようとして気付く。


「確かに……」


今思えば俺はかなり『紅蓮の剣』で献身的に活動していたんだな。

……俺が居なくなってあいつらは上手くやっているのだろうか。

まぁ、俺が心配するようなことではないな。


「だがまぁそればかりではないさ。趣味に時間を使っても良いしな。2人は何か趣味みたいなものはあるのか?」


俺の問いに2人は顔を見合わせる。


「あたしは美味しい物を食べる事かな!!」


元気よくそう言うイリアナはイメージ通りだ。

思わず顔が綻ぶ。


「私は読書とお菓子作りです。」


レイラもほぼイメージ通りだ。


「オルカさんは?」


俺が頷いているとイリアナから質問が飛んでくる。


俺の趣味……か。

そう言われるとこれと言うものがないような気がする。

俺が言い淀んでいるのを見たイリアナが手を挙げる。


「オルカさん!!やりたいことがないならあたしと一緒に美味しいもの食べに行かない!?この間南広場を通った時に屋台から凄くいい匂いがしたの!!」


「美味しいものを……か。」


思えばパーティメンバーにこんな風にプライベートで誘われるようなことも久しぶりだな。


「いいな、それ。行ってみようか。」


俺がそう返すとイリアナは大げさにガッツポーズを繰り出す。

随分と喜んでくれているようだ。


「じゃあ、私も一緒に行く。」


その様子を見ていたレイラも同行を申し出る。

3人パーティなんだから2人集まってるのに1人別行動は嫌だろう。


「え?レイラも来るの?」


しかしイリアナにとってその申し出は予想外だったようだ。


「ん。抜け駆けはさせない(・・・・・・・・・)。」


続くレイラの言葉にイリアナの表情が困惑から驚愕に変わる。

驚き過ぎて口をパクパクさせている様は若干滑稽に映る。


「オルカさんも良いですよね?私が一緒に行っても?」


言葉を紡ぎだせないでいるイリアナから俺の方へ向き直り、同意を求めてくるレイラ。


「もちろん。食事も大人数で食べた方が美味しいしな。」


俺が返事をするとレイラはにっこりと微笑む。

対するイリアナはがっくりと肩を落としていた。


「……競争率が高すぎだよ……」


ぽつりとイリアナがつぶやいた言葉はよく聞き取れなかった。

まぁ独り言のようだし聞き直すようなものではないだろう。


「となれば明日は3人で行動しようか。昼前にここを出て、南広場へ。ついでに買い物もするか。」


俺がそう言うとさっきまでうなだれていたイリアナの顔が跳ね上がる。

右手を突き上げ、「おー!!」と叫んでいる。

レイラも満足そうに頷く。


こうして『黎明の光』最初の休みの予定が決まったのだった。

まったり展開スタートです。

ずっとまったりはしませんのでご安心ください。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非、評価・ブックマークをお願いいたします。

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