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32.私達の目的の為にここで倒れてもらいますよ!!

「正直言って驚いたぞ!!新人冒険者とは聞いていたが、まさか魔剣を行使するほどまで鍛えているとは!!」


グレゴリオが石畳から足を引き抜きながら俺に言う。


「俺は少し手助けしただけで、魔剣まで使えるようになったのは彼女の才能と努力の賜物だよ。」


俺は剣を構えてグレゴリオに答える。

彼も相当ダメージが入っているはずだが、そんな素振りは見せない。


これだから体力馬鹿の相手をするのは嫌なんだ。


俺は小さくため息をつく。


「行くぞ!!」


グレゴリオが俺に向かい飛び込んでくる。

そして、それと同時にバーンさんがレイラに向かい駆け出す。


「!?」


それまでヴァネッサさんの防御に徹していたバーンさんが攻めに転じたのだ。

イリアナが倒れ、数的優位を得たことで作戦を変えてきた。

グレゴリオが俺を押さえ、その間にバーンさんがレイラを仕留める。

おそらくこれは模擬戦が始まる前に向こうが立ててきた戦略だろう。

現状、俺達は向こうのプラン通りに事を運ばれているという事だ。


レイラは接近してくるバーンさんに矢を続けて放つが、その全てが【防護壁(プロテクション)】に阻まれる。

そして、それを見たレイラは弓を手放し両手でそれぞれダガーを抜く。


マズい。

こっちも戦闘経験の差が出ている。

確かにレイラはダガーを使わせてもかなりいい線行く戦闘能力があるが、如何せん棍とは相性が悪い。


「【筋力低下(パワーダウン)】【敏捷低下(アジリティダウン)】」


「!?」


加えてヴァネッサさんの能力低下(デバフ)魔術がレイラに飛ぶ。

バーンさんにバフがかかっていることも考えれば、同じ後衛職でもかなりの基礎能力差が出来てしまう。


俺はすぐさまレイラに【治癒(ヒール)】をかけようとするが、そこにグレゴリオが攻め立ててくる。


「そうはさせんぞ!!オルカを押さえるのが俺の役目だ!!」


振り下ろし。

シールドバッシュ。

薙ぎ払い。

回し蹴り。


俺は次々繰り出されるグレゴリオの全身全霊の攻撃を冷静に避け続ける。


「【治癒(ヒール)】!!」


そしてその合間にレイラに対し【治癒(ヒール)】を行使する。

これでとりあえずはいつもと同じ感覚で戦えるはずだ。


「まだ魔術を行使する余裕があるか!?なら、これならどうだ!!【絶叫鼓舞(ウォークライ)】!!」


戦技【絶叫鼓舞(ウォークライ)】。

雄たけびと共に自信の身体に魔力を循環させ、身体能力を向上させる技だ。

発動の為に叫ぶ必要があり、その叫びの大きさにより身体能力向上量が変わるため、一般の戦士職からは不人気な戦技だ。

だが、元々から叫び続けているような男であるグレゴリオはこの戦技を愛用しており、その効果は絶大だ。


「【おおおおおおおおおおお!!!!】」


グレゴリオの雄たけびと共にその体に魔力が循環する。

次の瞬間、グレゴリオは凄まじい勢いで大剣を振るってきた。

俺はそれを避けるのは無理と判断し、剣を当てて軌道をずらすことで回避する。

だが、続けて放たれたシールドバッシュは避けることも受け流すこともできずにまともに受けてしまう。


「かはっ」


2m程吹き飛ばされながらも転倒しないように着地し距離を取る。

完全無詠唱の【治癒(ヒール)】で自身のダメージを回復することも忘れない。

見ればやはりレイラは苦戦を強いられていた。


バーンさんは棍での攻撃を突きに限定し、レイラが一足飛びに踏み込める範囲の外から一方的に攻撃を仕掛けていた。

その攻撃を避け、往なすしかないレイラには避けきれなかった棍の被弾が増えていく。

一歩踏み込んでも一歩引かれ、二歩踏み込めば棍の薙ぎ払いで距離を空けさせられる。

変幻自在の棍の攻撃に対応できていない。


「申し訳ないですが、私達の目的の為にここで倒れてもらいますよ!!」


ダメージが蓄積し、動きの悪くなったレイラに対してもバーンさんは容赦なく棍を突き出す。


だが、打つ手が無くなってきているレイラの眼はまだ死んではいなかった。


棍の突きを体をねじるように躱し、その先端を左脇に挟む形で捕える。

そうしてできた一瞬の膠着。


レイラはその一瞬に賭けていた。

空いている右腕を振るい、ダガーを投擲する(・・・・)


だが、迫りくるダガーをバーンさんは難なく避ける。

能力向上(バフ)がかかっている上、相手の攻撃手段として投擲も意識に置いていた反応だ。


バーンさんは余裕をもってそのダガーを見送り、そして表情を変えた(・・・・・・)


「しまっ!!」


今なお直進を続けるダガーの先には、ヴァネッサさんが居た。

ヴァネッサさんはダガーを見て目を見開く。


そしてバーンさんがそれに気づいたタイミングでレイラは棍を離し、残ったダガーを突き出しバーンさん目掛けて疾駆する。


この一瞬、バーンさんはヴァネッサさんに迫るダガーと自身に迫るレイラの2つに対応しなければならなくなった。

自身か、ヴァネッサさんか、両方か。

意識を割かれなかった所に大きなダメージを与えられるであろうレイラのアイデアだった。


選択を迫られていたバーンさんは、しかしニヤリと笑った。


「!?」


バーンさんは次の瞬間、完全にレイラに向き直ると、全速で迫るレイラに強烈な棍の一撃を叩き込む。

元より突撃以外の選択肢を持っていなかったレイラはその一撃を避けることも出来ずに腹部に受けると、大きく吹き飛ぶ。

レイラはおそらく、バーンさんがヴァネッサさんを護る選択をするだろうと思っていたのだろう。

その動きは予想外と言う風に、全く攻撃に対応できていなかった。


続いて甲高い金属音を残して投擲していたダガーが石畳に落ちる。

ヴァネッサさんの前には【防護壁(プロテクション)】が展開されていた。


バーンさんがヴァネッサさんの元を離れる前にあらかじめ張っておいたものだろう。

最初から不意打ちの一撃は止められるよう準備されていたという訳だ。


地面を転がり、動きを止めたレイラはもう起き上がりはしなかった。

意識を失ったようだ。


「さあ、これで3対1です。本気のあなたを見せて下さい。」


バーンさんはこちらを向くとしっかりと棍を構える。

その少し前にはグレゴリオが、後ろにはヴァネッサさんが同じように武器を構えていた。

レイラさんが頑張る回でしたが、比較的あっさりやられてしまいましたかね?

彼女の成長はまだ先の話ですので、今は仕方ないという事にしましょう。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非、評価・ブックマークをお願いいたします。

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