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30.願わくば全力を出してもらえると嬉しいです

俺がイリアナとレイラの引率依頼を受けて7日目。

つまりは契約期間最後の日だ。

この日は午前中に軽く武具を使った戦闘訓練だけを行い、ギルドへ来ていた。


「あら、皆さんこんにちは。」


早速俺達を見つけたミリカさんが声を掛けてくれる。


「こんにちは。」

「こんにちは!!」

「こんにちは。」


俺達も挨拶を返す。

と、ここまでニコニコしていたミリカさんの表情が曇る。


「オルカさん、今日は模擬戦ですよね?言いにくいことなんですが、『戦車騎士団』は昨日オルティア大迷宮の40階層を踏破してAランク認定されました。」


「本当ですか?」


それは予想外だ。

確かに『戦車騎士団』はものすごい偏った編成でBランクまで登り詰めたパーティだ。

補助を担当する魔術師や攻撃魔術師が加わるだけでAランクに行ってもおかしくはないと思っていたが、まさかこれほど早くAランクになるとは思わなかった。

それほどグレゴリオ率いる重戦士団かあの魔術師夫婦のどちらかが優秀だったのだろう。

……あるいはその両方か。


「はい、つまり今日の模擬戦の相手はAランク冒険者3名という事になってしまいます。流石に……無茶ではないでしょうか。」


どうやらミリカさんは俺たちの事を心配して言ってくれているようだ。

いや、正確には俺の、か?

勝ち負けでペナルティを無しにすることはお互い了承済みだが、おそらく体裁を気にしてくれているのだろう。


Eランク2名を引き連れてAランクパーティに喧嘩を売った魔術師が予想通りの大敗。

しかもそれが1週間前にAランクパーティ『紅蓮の剣』を追い出された補助魔術師。


噂好きが尾ひれを付けて話したがる内容だ。


「心配要りませんよ。彼女たちの最後の仕上げでもありますから。」


そう言って俺はイリアナとレイラを見る。

2人ともいい顔で頷く。


「おう、来たなオルカ!!こっちだ!!」


そんな話をしているとギルドの奥から大きな声が響く。

声だけでも誰だかわかる。


「今行く!!」


俺はそうグレゴリオに返事しギルドの奥へと向けて歩みを進める。


迷宮都市オルティアの冒険者ギルドには2つの闘技場が併設されている。

それぞれ第1闘技場、第2闘技場と名前が付けられているが、どうやら今回は第1闘技場の方で模擬戦を行うらしい。


グレゴリオに続いて闘技場に入ると、予想以上に観客(ギャラリー)が入っていた。

闘技場自体は観戦自由なのだが、私闘を行うだけなのに、まるで興行試合のようだ。

そして闘技場の真ん中には両腕を組んで俺達を待ち構えている人物が居た。

ギルドマスターのベンさんだ。


ベンさんは闘技場に入った俺達を見てにやりと笑う。


「揃ったな。観客も随分入ったようだしさっさと始めるか。」


このギャラリーを集めたのはこの人だな……

目的は……俺が手抜きをしないようにと言う所か?

まぁ確かにイリアナとレイラの対人戦闘経験さえ積めれれば勝ち負けは気にしていなかったが……

ミリカさんの心配の理由も分かった。

この人数の観客じゃ噂話どころではないだろう。


俺はベンさんを睨む。

ベンさんはその視線を意に介する様子もない。


闘技場の対角になる位置に俺達『黎明の光』と『戦車騎士団』が位置を取る。

そしてお互いに魔道具を各々の武器に使用する。


この魔道具は【被覆(カバー)】の魔道具。

剣やナイフなどの刃を持つ武器に使用すると、その刃を潰したのと同じ効果を得られる。

闘技場ともなると様々な武具を扱う冒険者が利用するが、リーチも重量も違うその武具を木剣のような訓練用装備で補う事は出来ない。

そこでは開発されたのがこの魔道具というわけだ。

レイラは矢の一本一本にその魔道具を使っていく必要があるので少々大変だが。


「今回は急な模擬戦を受けていただきありがとうございます。……願わくば全力を出してもらえると嬉しいです。」


バーンさんが一歩前へ出てそう言う。

おそらく俺の狙いと言うか、目的も理解した上での発言だろう。


それに応えられるかは展開次第だが……

俺はその返事として曖昧な笑いを返す。


「両者準備は良いか?審判はオルティアギルドのベンが執り行う。では、始め!!」


ベンさんの合図で模擬戦が開始される。

開始の合図と同時に飛び出したのはグレゴリオとイリアナだ、そしてイリアナに俺が続く。


「ふはははは!!勝負だお嬢ちゃん!!」


叫ぶグレゴリオは全身鎧に1mに迫ろうかと言う大盾を前に突き出して迫ってくる。

右手には幅広の大剣があるが、そのままシールドチャージしてくるようだ。

イリアナとの体格差を活かしてくるつもりのようだ。


初手は予想通り。


「いっくよー!!【石壁(ストーンウォール)】!!」


「なっ!?」


グレゴリオは眼前に急に出現した石の壁に衝突する。

衝撃で石壁は粉々になったが、グレゴリオの動きが止まる。

これで一番厄介な重戦士の突進力を活かした攻撃を阻止できた。


「はぁああああ!!」


破壊された石壁の奥からイリアナがショートソードでグレゴリオに切りかかる。


「ふっ!!」


だが、グレゴリオも素早くそれに応戦する。

盾を構え直してショートソードを受け止めると、強烈な速度で幅広の剣を横薙ぎに振り抜いてくる。


「うわっ!!」


バックステップで間合いを外れたイリアナの眼前を大剣が通る。

2人の間に少し距離が空いた。


「まさか無詠唱魔術を使われるとは思わなかったぞ!!しかも第三階位!!相手にとって不足無し!!」


石壁(ストーンウォール)】が意表を突いたのは間違いないが、崩れそうにないのは厄介だな。

不敵に笑うグレゴリオに対し、俺も補助魔術の準備に入った。

グレゴリオさんとイリアナさんの衝突で模擬戦が幕を上げました。

まずはイリアナさんの成長をご覧ください。


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明日より1日1話更新とさせていただきます。

作者のモチベーションによってストック数が変わるので、ストック多くできてくればまた1日数話更新とするかもしれません。

作者のモチベ工場の為にも是非ブックマーク・評価をお願いいたします。

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