23.まだ効果時間の確認が出来ていない!!
今回より『紅蓮の剣』サイドの話になります。
それでは続きをどうぞ。
side.バーン
冒険者向け宿屋の『カナリア亭』。
私はヴァネッサと2人、この冒険者向け高級宿へと来ていた。
「ここはこの街の冒険者向け宿の中でも最も立地が良くて高級なんだそうだ。流石はAランクパーティだな。」
「……格上のパーティだし流石に少し緊張するわ。」
私達がこの宿に来た理由は『紅蓮の剣』というこの街で今最も勢いのある冒険者パーティへの加入面接を行こなうためだ。
元々私達は特定のパーティを持たず、旅しながら行く先の街で臨時パーティを組みながら生活を送っていた。
後衛職2人で、しかもそれが回復術師と補助魔術師ではまともに討伐依頼をこなすことも出来ない。
だが私達の職は不足しがちな職であり、どの街に行ってもある程度しっかり稼ぐことはできていた。
迷宮都市オルティア。
この街に着いた私達が、まず最初にギルドに行って実施したのはメンバー補充の申請を出しているパーティの調査だった。
そして、ちょうどそのタイミングで申請が出ていて私達に合致する内容だったのが『紅蓮の剣』だったという訳だ。
『カナリア亭』に入り、受付へ『紅蓮の剣』との面会で来たと告げると、すぐに部屋番号を教えてもらえた。
予め私たちが来ることを伝えていたのだろうが、こちらの名前も聞かずに部屋番号を教えてもらえたことに違和感を持つ。
私が不審者だったらまずいのではないだろうか?
高級宿という事でそんな輩など来ないのかもしれないが……
まぁまずは面接だ。
教えてもらった部屋の前まで来てドアをノックする。
「冒険者ギルドのパーティ補充申請の件で来ました。バーンと言います。」
私が名乗って少しした後、鍵が外れてドアが開かれる。
「よく来てくれたね。さ、入って。」
ドアを開けてくれてたのは赤髪の青年だった。
「失礼します。」
彼に促されて部屋の中に入る。
そこには既に他のメンバ-が思い思いに時間を過ごしていた。
人数を数えると4人。
どうやら全員ここに居るようだ。
そしてソファに座るよう促され、赤髪の彼は向かいの席に座る。
「では改めて。『紅蓮の剣』のリーダーのトーラスだ。よろしく。」
彼は名乗り、私達を値踏みするように見てきた。
面接なのだから仕方ないのかもしれないが、若干の不快感はある。
特にヴァネッサに対しては執拗に見ているような気もする。
彼女は非常に男受けする容姿の為、そう言った視線に晒されることも多く、敏感なのだ。
「回復術師のバーンです。彼女は妻のヴァネッサ。補助魔術師です。」
とりあえず自己紹介をする。
彼女をしっかりと妻として紹介することでしっかり予防線も張る。
彼もこれには驚いたようだ。
「へぇ、夫婦で冒険者をしているのか。驚いたよ。……っとそうだった。面接だったね。」
それから面接自体はつつがなく終了した。
主には出来る事と出来ない事を明確にして金銭的な契約の話などを詰めて無事面接は合格となった。
とはいってもまだ仮の状態で、一度迷宮に入って実地試験みたいなものも行うらしい。
まぁこれに関しては私達が出来る事に嘘をついている可能性もあるため理解できる。
『紅蓮の剣』で借りている部屋が2部屋あるという事で、今日はそこに泊まらせてもらい明日の朝に迷宮へ入ることになった。
私達は指定された部屋の1つに入り、荷を下ろす。
「……どうだった?」
私はヴァネッサに確認する。
「……最初は無遠慮に見られたことに不快感を持ったわ。でも、その後は普通だったわね。女性が2人いるパーティだしそんなに悪くないかも。」
私は頷く。
「実地試験まであるのには驚いたが、まぁ彼らの実力については間違いないのだろうから、こちら側が向こうの要求を満たせるかどうかだな。」
「ええ、今日は早めに寝てしまった方が良さそうね。」
「そうだな。」
そうして私達はそのまま簡単に夕食を取って就寝した。
翌朝、皆と合流して迷宮の中へ。
転移陣から21階層へと飛ぶ。
Aランクの『紅蓮の剣』もそうだが、私達もBランク資格を持っているのでもっと深くにも行けるが、今日は連携確認も兼ねているので弱めの階層を選んだとの事だった。
オルティア大迷宮には初めて潜るが、21階層は洞窟型になっているようだ。
「じゃあ早速だけど能力向上をかけてみてくれるかい?」
リーダーのトーラスがヴァネッサにそう言う。
『紅蓮の剣』の事情も昨日聞いたが、何でも能力向上の使えない補助魔術師が元々いたのだとか。
これより深層を探索するのに不適と言う話になり別れたそうだが……
ともかく彼らとしては能力向上の効果について確認したいのだろう。
「【敏捷上昇】」
ヴァネッサはトーラスと斥候のアイラにバフをかける。
彼らは自身の身が軽くなったのを感じたようだ。
そのまま少し走ったりと感覚を確かめる。
「凄いな!!これが能力向上の力か!!早速戦闘もしてみよう!!アイラ!!」
「おっけー!!」
言うや否や、アイラはダンジョンの奥へと駆けていく。
その行為に私とヴァネッサは驚く。
「ちょっと待ってくれ!!まだ効果時間の確認が出来ていない!!」
能力向上系の魔術はその人の魔術抵抗値により効果時間が減衰する。
戦闘中にバフが切れるのが最悪の状態で、急に感覚が変わるためタイミングが悪いと命取りになる。
なので初めての相手では能力向上の継続時間を確認してから戦闘に入るのが定石なのだ。
彼らはそんなことも知らないのか?
「あ?この階層の敵なんざ能力向上無しでも問題ないんだから大丈夫だろ?」
「違うんだ!!効果が切れた時の感覚の変化が危険なんだ!!」
「……もう遅い。来たぞ。」
重装騎士のガイアが短く言う。
見ればアイラが敵をおびき寄せて戻ってきていた。
私はその敵を見て目を剥く。
コボルドが……10匹近い!?
Dランクの魔物とは言え、数が多すぎる。
「あはは、こいつら遅すぎて話にならないわ!!これなら何匹に囲まれても平気ね!!」
どうやらアイラが能力向上の効果に浮かれて多く誘導してきたようだ。
この時、私はこのパーティに入ったのは間違いだったのではないかと言う事が頭によぎった。
この後彼らが如何に常識と違う所で生きて来たかが少しづつ明らかになって来ます。
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