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能力を認められなかった補助魔術師、Aランクパーティを追放されて新人冒険者の育成を始めました。  作者: 江越有司
第1章.『黎明の光』

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20.2人だけだったらこれでアウトだったな

目的の魔物はそう時間かからずに見つけることが出来た。


ヘルハウンドはDランクの魔物になる。

全長で1m程の大型犬位のサイズで鋭い牙と爪を持っているのが特徴だ。


ランダル平原は見通しが良いため索敵が楽と言うのがあるが、言い換えてしまえば向こうからも見つけやすいということでもある。


今回はこちらがヘルハウンドを認識したのと同時に向こうからも認識されてしまった。


ヘルハウンドはこちらへと駆けてくる。

その速度は人が駆ける速度の比ではない。


「来るぞ。危なくなったら介入するからまずは2人でやってみてくれ。」


「「はい!!」」


言うやイリアナが盾を構えて前へ出る。

レイラは片膝立ちの姿勢から弓を構える。

狙いを定めて一射。


放たれた矢は真っすぐヘルハウンドへ飛んでいくが、攻撃を察知したのか横っ飛びで躱される。


「早いっ!!」


そしてヘルハウンドはそのままイリアナ目掛けて飛びかかってきた。

イリアナはサイドステップで立ち位置をずらし、ヘルハウンドの攻撃射線上から外れる。

そしてすれ違いざまにショートソードで切りつけた。


その攻撃はヘルハウンドの胴に浅くない傷をつける。

同時に血しぶきが飛ぶ。

だが、その一撃は致命傷とはならなかったようだ。


飛びかかり攻撃を躱されたヘルハウンドは着地するや勢いそのままに今度はレイラへと突進していく。


「!?レイラ!!」「大丈夫!!」


イリアナとレイラの声が被る。

レイラは即座に弓を投げ捨て、腰からダガーを抜いて構えた。


ヘルハウンドは今度はレイラへ向けて飛びかかる。

それに合わせてレイラもイリアナと同じようにサイドステップで射線を外す。

そしてすれ違いざまにダガーをヘルハウンドの眼に叩きつけるように突き刺した。


「痛っ!?」


ショートソードとは違い、ダガーが届く距離に居るという事は相手の攻撃も届く距離に居るという事だ。

レイラがヘルハウンドに攻撃をするのと同時に、ヘルハウンドも空中でレイラ目掛けて爪を振るっていたのだ。


ヘルハウンドの爪はダガーを突き刺した腕を裂いた。

その傷も浅くはない。

ヘルハウンドはダガーの一撃が致命傷だったようで魔石を残して霧散するが、レイラもその痛みに顔をしかめてその場に座り込んでしまう。

その腕からは鮮血がしたたり落ちていた。


「レイラ!!止血しないと!!」


慌ててレイラに駆け寄るイリアナ。


俺は周囲に敵がいないかを確認し、それからレイラの元へ行く。


「【治癒(ヒール)】」


言うべきことはいくつかあるが、まずは回復魔術でレイラの傷を癒す。

レイラの腕にあった傷はまるで逆再生されるかのように閉じ、跡形もなく消え去る。

同時に痛みも無くなったようで、レイラの表情が緩む。


「2人だけだったらこれでアウトだったな。さっきの戦いの反省点を出して次に活かしていこう。」


「……はい。」「はーい。」


「まずはイリアナからだな。」


俺はイリアナに発言を促す。


「んー。今回の戦いでは敵に抜かれてしまったのが反省点かな。あたしの攻撃力は高くないから仕留めに行くんじゃなくてシールドチャージなんかを使って相手の体勢を崩すことを考えて行った方が良かったのかな?と思った。……ていうか自分で攻撃力高くないとか言うの凹む。」


肩を落としたイリアナを見て俺は苦笑する。


「まぁその点の解決策もちゃんとあるから安心しろ。それに、自分の強みと弱みをしっかり理解しているという事の方が重要だ。……イリアナの見解は概ね正しいと思う。今は2人で戦っているから尚更だが、前衛の一番重要な仕事はヘイトコントロールだ。一般的に後衛は近接戦闘能力に劣るからしっかり敵の注意を引き付けて後衛が自由に動けるように立ち回らないといけない。イリアナが言うように相手が飛んだところをシールドで叩き落とすような引き出しが増えればそれも出来るようになってくるだろう。」


次に俺はレイラを見る。

彼女は俺の視線を受けて頷く。


「私も仕留めに行かずにイリアナと2人で確実に倒す様に立ち回るべきだったと思います。ヘルハウンドの攻撃を避けることに専念して、イリアナとの合流を目指すという所でしょうか。」


「そうだな。まぁ反撃の一手が完全に悪手と言う訳じゃないが、相手が1匹ならより安全なのは数の優位を活かすことだ。無理に後衛職が魔物と近接戦闘をする必要はないからな。」


俺の言葉にレイラが頷く。

2人ともしっかりと戦いの中で反省点を見つけ出し、次に向けて考えることが出来ている。

これは強くなるには必須の能力だ。

このまま経験を積んでいけば2人とも1人前の冒険者になるのはそう遠いことではないだろう。


「はい!!聞きたいことが有ります!!」


イリアナが元気よく挙手する。

ここは養成所じゃないぞ?


「どうした?」


「さっきオルカさん、あたしの攻撃力不足を補う方法があるって言ったよね?それを教えてほしいです!!」


「う~ん。」


イリアナの要求に俺は悩む。

俺が提案できる方法は言わば必殺技だ。

人はそういう方法を覚えると思考が偏り、戦い方がワンパターンになってしまいがちだ。

本当はもう少し基本の戦闘技術を学ばせて、その上でオプションの1つとして覚えさせるというのが理想なのだが……


俺の引率契約期間は7日間。

今日が3日目なのだが、残りの期間で全てを教え込むのは難しい。

最低限2人でも戦える力を身に付けさせることに主眼を置けば、イリアナの攻撃力不足解消はかなり重要だ。

イリアナの性格的にも基礎戦闘をおろそかにしないようきちんと説明すれば従ってくれるようにも思う。


「分かった。」


そう言って俺は【魔法鞄(マジックバック)】から魔道具を取り出した。

実際、大型犬に襲われたら太刀打ちなんてできませんよね。

新人冒険者でも身体能力は我々より高そうです。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非評価・ブックマークをお願いいたします。

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