19.お前の仕業なんだな?
今日も朝から2人の戦闘訓練を行い、昼前から冒険者ギルドへと向かう。
気のせいか待ちゆく人々が少しざわついているように見える。
それに巡回している衛兵の数もいやに多い。
だが別に職務質問されるわけでもないので多いなと思うくらいの事だ。
ギルドに入ると依頼の張り付けてある掲示板へと直行する。
この時間は他の冒険者がほとんどいないので依頼は選び放題だ。
……売れ残った依頼ではあるが。
「今日はゴブリンではない相手に挑戦ですね。」
レイラが若干緊張した面持ちで聞いてくる。
「ああ、今回はこれだな。」
そう言って俺は依頼票を一枚剥ぎ取る。
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依頼種類:魔物の討伐
対象:獄犬3匹
場所:ランダル平原
報酬:銀貨4枚
特記:4匹以上討伐の場合、1匹に付き追加報酬銅貨5枚
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「ヘルハウンド……獣型の魔物ですね。」
「ああ、討伐ランクDの魔物だな。動きが素早く力も強い。弓矢なんかも当てにくいし、前衛を抜けて後衛を狙ってきたりもする。厄介な相手だが、基本群れることはないから獣型との戦いを学ぶには良いだろう。」
「うー緊張してきた!!」
2人は不安もあるようだが、反対意見は出なかった。
依頼を選ぶ俺の事を信用してくれているというのは考え過ぎかな?
俺達は依頼票を持って受付へ行く。
今日はミリカさんは居ないようなので、別の人に依頼受注をお願いした。
「オルカ。ちょっと話聞かせろ。」
受付で処理が終わるのを待っていると不意に後ろから声を掛けられる。
振り向くとそこにはギルドマスターが立っていた。
用件はまぁ分かる。
「分かりました。俺だけで良いですよね?」
その言葉にベンさんは一瞬眉間にしわを寄せるがすぐに察してくれた。
「ああ、お前だけでいい。嬢ちゃんたち、悪いが少し待っていてくれ。」
そう言ってベンさんはバックヤードへ消える。
俺もその後を付いて行き前回と同じ個室へと入った。
「で、お前の仕業なんだな?」
「さて、何のことを言われているのか心当たりがありませんね。」
「とぼけやがって。昨日の夜、この街の貴族サマが暗殺された。お前が捕縛した二コラ・トリエラの父親でギルドに文句を言いに来ていたトリエラ伯爵だ。」
「そのトリエラ伯爵とやらの暗殺を俺がしたと?証拠でもあるんですか?」
「はぁ、まったく。こんなとこばっかりアイツに似やがって……今回の件はその手口から暗殺者ギルドの刺客によるものと断定されている。そして、そのトリエラ伯爵が暗殺者ギルドに誰かの暗殺を依頼したという事も裏帳簿から判明している。」
暗殺者ギルド。
冒険者ギルドのような表立った組織ではなく、いわゆる裏組織と言うやつだ。
金さえ詰めば赤子でも殺す殺人専門の裏ギルドだ。
「貴族サマが裏ギルドと通じてるとかスキャンダルですね。」
「それもそうだが、暗殺者ギルドに依頼を出した伯爵がその暗殺者ギルドの刺客により殺害されてるんだぜ?恐らくだがこの件は迷宮入りするだろうな。まさか暗殺者ギルドの奴らの聴取が出来るわけでもないしな。」
「迷宮入りとなると、少し怖いですね。用心しないと。」
「他人事かよ。……だいたい、伯爵がこのタイミングで暗殺を依頼する対象なんざ限られてるだろ。直前に息子が牢にぶち込まれて威厳が低下してたんだ。その原因になった男……とかな。」
「それは逆恨みですけどね。ま、俺は知りませんよ。」
俺のその言葉には反応せずにベンさんは俺の眼をじっと見てくる。
俺は無言でその眼を見つめ返す。
しばし無言の時間が流れた後、ベンさんが根負けしたかのようにため息をつく。
「……そうか。時間取らせて悪かったな。もう行っていいぞ。」
「わかりました。失礼します。」
そう言って俺は部屋を出る。
そしてそのまま受付スペースへ移動した。
イリアナとレイラは打ち合わせスペースで俺の事を待っていてくれたようだ。
「悪い。待たせたな。」
「何かあったんですか?」
レイラが俺を真っすぐ見て質問してくる。
俺は下手に嘘はつかず、ある程度正直に話をすることにした。
「昨晩この街の貴族が何者かに暗殺されたらしい。それが俺達を襲ってきた新人冒険者の父親らしくてな。」
「え?二コラの父親ってこと!?」
「ああ、ベンさんも二コラと言っていたな。俺が恨まれる立場だったって事で話を聞かれただけだな。」
「まぁ、オルカさんが暗殺されるなら分かりますけど。こっちは手を出してこない限りは相手にする理由がありませんね。」
「そう言う事だ。そもそも昨晩は皆で装備品のメンテナンスしてたしな。……少し時間を食ってしまったし行こうか。」
イリアナとレイラが頷く。
目指すはランダル平原だ。
ランダル平原は実は相当広い。
オルティアの北門から出て見える範囲は全てランダル平原と言える。
そして、その平原は数十㎞離れた山岳地帯まで続いているのだ。
ところどころ岩場や木々のせいで見通しの悪い所はあるが、基本は遠くまで見渡せる開けた平原なので索敵は楽だ。
見渡せば何組か他の冒険者も居るようだ。
「さて、じゃあ早速目的の魔物を探そう。」
「はい!!」「はい。」
俺達はランダル平原に足を踏み入れた。
トリエラ伯爵さん顔を見せることなくリタイアです。
息子の方は後で物語に絡んでくるかも?
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