12.流石に2人にはまだ早い
冒険者ギルドでゴブリン討伐の依頼を受けた俺たちは2日続けてスフィカの森へと来ていた。
「よし、さっそくゴブリンを狩って行こう。魔物狩りをするときに注意しなければいけないことは何だ?」
「索敵をしっかりと行い不意打ちを回避することと、格上の魔物の痕跡を逃さないことです。」
レイラの回答に俺は頷く。
昨日夕飯時の講義をしっかりと聞いてくれていたようだ。
実際、初心冒険者が命を落とすパターンとしてはこの2つが最も多いとされている。
不意を突かれて態勢が整わないままやられてしまうケースと、予想外の強敵に遭遇して逃げ切れないケースだ。
スッとイリアナに視線を移すとサッと目を逸らされる。
……イリアナは聞いてなかったか忘れたかだな。
よし、後で説教だ。
「じゃあ今日は索敵の方法を一通りマスターしよう。そしてゴブリンは目標30匹だ。」
「はい。」「はい!!」
そして本日の魔物狩りが始まった。
「ゴブリンの足跡発見。3匹分だと思います。足跡の大きさから120cm程の小さめの個体と推測。」
「不自然に折れた枝を発見!!枝の折れ方から刃物ではなく鈍器系の武器を使ったものと思うよ!!」
「ゴブリン発見。小さい個体が3匹。武器はこん棒2とナイフ1。」
「こっちはまだ見つかってないから風下に回って奇襲だね。移動開始。」
「狙撃でナイフ持ちを狙うわ。失敗した場合は退却ね。」
「1匹減ったらあたしが2匹相手に引き気味に立ち回るからもう1匹狙撃で倒して、残り1匹になったらこっちで倒しちゃうね。」
「周囲の警戒も怠らないように。不測の事態が生じたら退却ね。」
「了解。」
レイラが矢を放ち、それがナイフ持ちの胴に当たる。
その狙撃の勢いでゴブリンは倒れて霧散する。
その隙に飛び出したイリアナがゴブリンの1匹に切りかかる。
強襲に混乱しているゴブリンも必死に反撃しようとするが、こん棒を振り上げた手をイリアナに切り落とされてしまう。
イリアナは腕を落としたゴブリンから離れると、もう1匹へと向かう。
しっかりヘイトを稼ぎながら、ゴブリン2匹をしっかりと視線に捉えれるように、かつ囲まれないように細かく位置取りを変えながら防御に徹する。
その間にレイラの2射目が腕の無くなったゴブリンに突き刺さる。
ゴブリンが霧散して残り1匹になったところでイリアナが前に出る。
ゴブリンのこん棒の一撃をラウンドシールドで受け流し、隙だらけになっている所にショートソードを突き立てる。
そして最後のゴブリンも霧散した。
「周囲警戒。敵影無し。」
「損耗確認!!あたしは消耗無し!!」
「私は矢を2本使用。1本回収。消耗1本。他消耗無し。」
俺はこの2人の魔物狩りを後方で見ていた。
……もう教えることなくね?
「オルカさん。問題ありましたでしょうか。」
ゴブリンの魔石を回収して戻ってきたレイラが採点を求めてくる。
イリアナも期待顔だ。
「ああ、満点だ。戦術はしっかり安全寄りに立てられているし、魔物を前にしての立ち回りも完璧だったよ。」
「ありがとうございます」「よっしゃ!!」
嬉しそうに微笑むレイラとガッツポーズを繰り出すイリアナは対照的だが、いいコンビだと思う。
「この調子で狩って行こう。気になる点があれば都度指摘するよ。」
「わかりました。」「りょーかい!!」
そう言って2人は次の魔物を探し移動を開始する。
俺もその2人の後を追って森の奥へと進む。
「あれ?」
イリアナが何かに気付き声を上げる。
「見たことない足跡だ。なんだろこれ?」
レイラと俺もその足跡を確認する。
「これは……オーガの足跡だ。」
鬼は中級冒険者の登竜門的存在の魔物で討伐難度はCランクに位置している。
見た目は筋骨隆々の巨漢の人型をしている。
皮膚は赤黒く頭部に角を有しているのも特徴的だ。
ゴブリンと同じように武器を持っていることが多い。
「これは流石に2人にはまだ早いな。撤退しよう。」
俺が2人にそう言った瞬間だった。
オオオオォォォォォオオオオオオ!!!!
森の中に雄たけびがこだまする。
俺達は瞬時に雄たけびが聞こえた方向へと視線を向ける。
そこにはこちらをしっかりと視線に捉えているオーガが立っていた。
マズい。
見つかった。
オーガはすぐさまこちらへと駆けてくる。
見た所無手だがそのせいで移動速度が速い。
「ふっ。」
即座に反応したイリアナがオーガ目掛けて矢を射る。
その矢はオーガの大腿に命中するが、少し刺さった程度ですぐに外れて地に落ちる。
オーガの突進の勢いは緩まらない。
「硬いっ。」
「2人は後退しろ。俺がやる。」
そう言って俺は前に出る。
もうオーガは目の前まで来ていた。
オーガが俺を目掛けて右拳を繰り出してくる。
俺はそれを左に躱し、すれ違いざまに右わき腹を切りつける。
鮮血が宙を舞う。
「はぁああああ!!」
すれ違った俺に再度攻撃を仕掛けようとこちらを振り向くオーガ。
その隙をつく形でイリアナがオーガに切りかかる。
だが、振るったショートソードはオーガの皮膚を浅く切ることしか出来なかった。
今度は逆にオーガが左腕を振るう。
イリアナが咄嗟にラウンドシールドを構えるが、その衝撃を受け流せずにまともに受けてしまった。
華奢な体が宙を舞い、地面を転がる。
「イリアナ!!」
俺はイリアナに呼びかけながらオーガへと切りかかる。
ヘイトを稼いでおかなければオーガの追撃が入ると危険だ。
「だい、じょうぶ!!」
見ればイリアナは立ち上がってラウンドシールドを構えていた。
なかなか根性もあるな。
俺は目の前のオーガに向き合う。
俺一人で相対する分には問題ない相手だが……
どうせなら授業に使わせてもらおう。
俺は手をかざすと魔術を発動した。
異世界ファンタジーものの登竜門的な魔物と言えばオーガですよね。
こう思っているのは私だけではないはずです。……たぶん。
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