表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/58

11.『戦車騎士団』

「せいっ!!はっ!!とりゃー!!」


俺の目の前ではイリアナが剣の素振りを行っている。

彼女の武器は今の所ショートソードなのだが、片手で振るうにはまだ少し重そうだ。


筋力のアップを目指すか軽量武器に持ち替えるか……

といってもすぐに代わりの武器など候補が思い浮かばない。


とりあえずは基礎の方の素振りを続けてもらい、筋力アップを目指すのが正着手だな。


そして俺はレイラへと向き合う。

彼女には木製のダガーを持たせている。

一方の俺はロングソードの木剣だ。

ダガーの場合は決まった型と言うものが存在しないので模擬戦が主となる。


「よし、行くぞ。」


俺は木剣を構えてレイラにすり寄る。

レイラはダガーを構えたまま動かない。


「ふっ!!」


俺は大きく一歩を踏み込み、水平切りを放つ。

レイラはその動きをきっちりと読み、バックステップで距離を取って躱す。

俺はさらに一歩踏み込み、今度は彼女の肩口を目掛けて突きを放つ。

しかし、ダガーを木剣の腹に当てられて軌道を逸らされる。

突きが空振った隙に彼女はすっと俺の懐に滑り込んでくる。

そしてダガーを俺の身体に突き立てんと振るう。


俺は反射的に突き出した木剣を手放すとそのダガーを持つ右手を掴み、後ろ手に捩じり上げる。


「痛っ!!」


「っと悪い。」


俺はレイラを開放する。


「ひょっとしてダガーでの立ち回りも習ったりしていたか?」


今の攻防は完全に俺の負けだった。

単調な攻めだったとはいえ、レイラの立ち回りが完璧すぎる。

相手の攻撃をいなし、躱して、隙をついて懐へ入り込む。

素人がいきなりできることではない。


「……家庭的な理由で幼少のころに少し習っていました。」


弓の時と同じような返事が返ってくる。

ここまで来ると家庭的な理由と言うのが気になって仕方ないが、深く聞くものでもないだろう。


「なるほどな。じゃあ後は実践訓練あるのみだな。続けていくぞ?」


「はい。お願いします。」


そして俺はもう一度木剣を構えレイラと対峙する。


この鍛錬は昼前まで続けられた。

素振りを終えたイリアナも含め3人で交代しつつだ。

最初はレイラの戦闘技術の高さが目立っていたが、イリアナの呑み込みも早い。

この調子ならすぐに初心者は卒業できるだろう。






宿での鍛錬を終えた俺たちは身支度を整えギルドへと来ていた。


「あら、皆さんこんにちは。」


ギルド内へ入ったところでミリカさんに声をかけられる。

本当に何時休んでいるのか不思議な人だ。


「オルカあああ!!待っていたぞおおお!!」


返事を返そうとする俺の出鼻をくじく声が響く。

声がした方を向くと、こちらに歩いてくる白銀のフルメイルの男たちが歩いてくる。


「うるさいのに捕まったな。」


おっと、心の声が口から出てしまった。


「ふはははは!!そう照れんでもいい!!『紅蓮の剣』を抜けたと聞いたぞ!!我々『戦車騎士団』はこの時を待っていたあああ!!!!さぁパーティ登録をしに行くぞおおお!!!!」


「もう少し声のボリュームを下げろ。うるさくて敵わん。」


俺は両手で耳を押さえながら苦情を言う。

横をチラ見するとレイラも耳を押さえている。

イリアナは平気らしい。

まぁイリアナも声は大きい方だし……そういうもんか?


「おっとこれは失礼。では改めて『戦車騎士団』に入ってくれ。俺達にはオルカの力が必要なんだ!!さぁ登録しに行くぞおおお!!!」


「お前の頭は鶏並か!?うるせぇってんだよ!!」


「っとスマン。ついにうちにも補助魔術師が来てくれるかと思うと嬉しくてな。」


「オルカさん……?」


レイラが不安げな顔でこちらを見てきている。

イリアナの表情にも不安が見える。


俺が『黎明の光』を抜けることを考えているんだろう。

だが心配はいらない。

仕事を途中で投げ出したりはしない。


「グレゴリオ。悪いが『戦車騎士団』には入れない。俺は彼女たちと既に『黎明の光』というパーティを組んでいてリーダーやってるんだ。」


「なんだと!!??」


俺の台詞を聞いたグレゴリオは明らかに狼狽し一歩後ずさる。

かと思えば膝から崩れ落ちる。


「なんということだぁぁああああ!!!!遅きに失したぁぁぁあああああ!!!!」


「うるせぇってんだよ!!」


まだおんおん悔やんでいるグレゴリオを放って置いて2人に彼を紹介しておく。


「……この暑苦しいのはグレゴリオ。Bランクパーティ『戦車騎士団』のリーダーだ。」


『戦車騎士団』はグレゴリオを含めて重装騎士3人と斥候1人という物理攻撃偏重パーティだ。

前衛の重装騎士3人は魔術耐性のある装具をそれぞれ装備しており、物理火力で敵を圧倒する脳筋戦法を得意としている。

魔術耐性を上げると敵の攻撃魔法の通りも悪くなるが、味方の能力向上(バフ)なんかの補助魔術や回復魔術もかかりが悪くなる。

そこで補助術師として俺みたいな能力低下術師(デバッファー)が求められているという訳だ。


「はじめましてグレゴリオさん。レイラと言います。」


「私はイリアナだよ!!」


2人が順に挨拶する。

それに対しグレゴリオは嗚咽を止めてスッと立つ。

そしてアーメットヘルムを取った。

グレーの髪を短く刈り上げ、凛とした表情のグレゴリをの素顔が現れる。


「『戦車騎士団』のグレゴリオだ!!知らなったとはいえ貴殿らのパーティメンバーを勧誘した非礼を詫びさせてほしい!!どうかこれからもよろしく頼む!!」


そう言ってグレゴリオは頭を下げた。


本当に良くも悪くも真っすぐなんだよな。

猪突猛進過ぎてよく周りが見えなくなっているが、それも含めてこのギルドじゃマスコット的な扱いだ。

悪い噂は聞かないし、実力も確か。

俺も付きまとわれてる張本人でなきゃこっちをニヤニヤ見ている冒険者と同じように遠巻きに見て楽しんでるんだろうがな……


「ではこれで失礼する!!オルカ!!その気になったらいつでも『戦車騎士団』に来てくれていいからな!!はーっはっはっは!!!!」


そう言ってグレゴリオはギルド奥の打ち合わせスペースへと去っていく。


「……嵐みたいな人ですね。」


「ああ、悪い奴じゃないんだが疲れるな……」


「非礼を~とか言いながら最後もちゃっかり勧誘してたね!!」


「ああ、あいつ馬鹿だから許してやってくれ。」


俺は戦闘をするのとは別の疲労感を感じながら依頼が張り出されている掲示板へと向かうのだった。

前話に名前だけ登場したグレゴリオさんの回です。

彼はモテます。マスコット的な性格ですが、裏表はなく顔はさわやかイケメンです。

これ、大事です。

この後の展開を見ても良いと思われましたら是非評価・ブックマークをお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ