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13話 家の改築と爆速レベルアップ

●主人公視点


 家の改築には、ポイントが要ります。


 そして今、俺の手持ちは百八十。


 あるようで、ない。


 部屋を少し広げるだけで、百以上かかるのだ。


「……どうやって増やすんですかね、これ」


 飯を食べ終え、俺は管理画面を開いていた。


 ガドは隣で槍の柄を拭いている。


 イトは入口の石壁へ上り、脚を縮めていた。


 食後の休憩らしい。


 俺も休みたい。


 けど、気になる項目を見つけてしまった。


【DP獲得について】


「……先に読めって話ですね」


 開く。


 説明は、思ったより短かった。


【ダンジョン内部で生命体を討伐すると、その強さに応じたDPを獲得できます】


【死体や素材をダンジョン核へ吸収させることでも、DPを獲得できます】


【召喚によって生み出された配下、および配下由来の素材は獲得対象外です】


「なるほど……」


 俺は顔を上げた。


「ガド。下に置いてきた蜘蛛、覚えてます?」


「あれを忘れるか」


「ですよね」


 俺たちを追い回した、大蜘蛛。


 牙と前脚の一部だけ切り取り、残りは三階層へ置いたままだ。


 大きすぎて運べなかった。


 けれど、ダンジョンの中なら。


「運ばずに、使えるかもしれません」


     ◇


 二階層へ下りる。


 イトには、後ろをついてきてもらった。


 細い糸がある場所では先に止まり、前脚で触れてくれる。


 ただ、全部任せるわけにはいかない。


 こいつだって、まだ小さい。


 壁の上に大きな蜘蛛が見えたときは、俺が前へ出た。


「ガド、後ろお願いします」


「ああ」


 相手が腹を向ける。


 糸が飛ぶ前に柱へ隠れ、吐いた直後に踏み込んだ。


 新しい短剣を、脚の付け根へ。


 刃を引く。


 相手の体が傾いたところへ、もう一本。


 倒れた後も、しばらく待つ。


【経験値を獲得しました】


【ダンジョン内討伐:12DPを獲得しました】


「……本当に増えた」


 保有DPは、百九十二。


 経験値とは別に、通知が出ている。


 俺は短剣を拭いてから、倒れた蜘蛛へ目を向けた。


 管理画面を開き、吸収する対象として選ぶ。


【素材吸収:糸吐き蜘蛛の死体】


【獲得予定DP:8】


【吸収しますか?】


「こっちも、八」


 討伐で十二。


 残った死体で八。


 両方もらえるらしい。


 ただし、吸収すれば素材は取れなくなる。


「……これは、残しましょう」


 俺は画面を閉じた。


 職人に渡せそうな脚もあるし、糸も欲しい。


 何でもポイントにすればいいわけではなさそうだ。


     ◇


 三階層の広間には、大蜘蛛がそのまま残っていた。


 動かないと分かっていても、近づくと少し身構える。


 昨日まで、あれだけ苦労した相手だ。


 ガドが切り取った場所を確かめる。


「まだ使える殻があるぞ」


「先に取りますか」


「ああ。吸わせたら、戻らんのだろ」


「戻らないですね」


 俺たちは、使うものを先に分けた。


 割れていない硬い殻。


 残っていた牙の根元。


 太く、きれいな糸。


 胴の奥には、濁った白い石もあった。


「これ、魔核ですかね」


 鑑定する。


【白糸の大蜘蛛の魔核】


 名前は出た。


 詳しい使い道までは、分からない。


 吸収対象にすると、こちらだけでもポイントが表示される。


 俺は少し迷い、袋へしまった。


「これは、職人さんに見てもらってからにします」


「それがいい」


 残った巨体を選ぶ。


【素材吸収:白糸の大蜘蛛の死体】


【素材欠損により、獲得DPが減少しています】


【獲得予定DP:240】


「……二百四十」


 大きい。


 今の手持ちより、多い。


 俺は残した素材をもう一度確かめ、決定した。


【吸収を実行します】


 床に、淡い光が広がった。


 大蜘蛛の輪郭が崩れる。


 脚の先から、細かい光へ。


 やがて、白い腹も消えた。


 残ったのは、傷のついた石の床だけだった。


【240DPを獲得しました】


【保有DP:432】


 ガドが、空いた場所を見ていた。


「……運ぶ手間はなくなったな」


「それ、かなり助かりますね」


 あの巨体を階段へ引っ張っていくことを考えただけで、腰が痛くなる。


     ◇


 一階層へ戻り、配信をつけ直した。


「追加で、少しだけ改築します」


〈おかえり〉

〈何か増えた?〉

〈ポイント四百超えてる〉


「下に置いていたボスの死体を使いました。必要な素材は、先に取ってあります」


 仕組みを簡単に話すと、コメントが流れた。


〈狩りが家の材料になるのか〉

〈売るか装備か改築かで悩むな〉

〈使わない部分にも価値あるのいいね〉


「ですね。これからは、置いて帰る前に考えます」


 まず、地図を開く。


 今の寝床は、入口脇の小部屋。


 その隣には、崩れた壁で狭くなった空間がある。


 そこを広げ、寝床と荷物置き場を分けたい。


「荷物の横で寝るのも、悪くないんですけど」


 袋を置いた場所を見る。


 殻。


 牙。


 糸。


 土のついた靴。


「……増えると、落ち着かないですね」


〈もう物置になりかけてる〉

〈部屋できたばっかりだぞ〉


 地形編集を選ぶ。


 崩れた石を取り除き、壁を少し奥へ。


 必要な広さに合わせ、指で線を動かした。


【地形編集:100DP】


 決定する前に、ガドを見る。


「このくらいで、どうです?」


「棚を置くなら、右を残せ」


 指された壁には、自然な出っ張りがある。


 確かに、板を渡せば使えそうだ。


 削る範囲を直す。


【地形編集:80DP】


「……二十、浮きました」


「削ってから気づくよりいい」


 そのとおりだ。


     ◇


 石が光へ変わり、空間が広がっていく。


 ほこりも、大きな音も出ない。


 ただ、目の前の壁が少しずつ遠くなる。


 俺は作業が終わるのを待ってから、中へ入った。


 両腕を広げる。


 当たらない。


 ガドが横に立っても、まだ歩ける。


「……広い」


〈ちゃんと部屋だ〉

〈倉庫できたな〉


 壁の出っ張りへ、持ち帰っていた板を渡す。


 一本では短かったので、二本を並べた。


 上に、軽い糸。


 下には、重い殻。


 古い短剣は、手前の取りやすい場所へ。


 置く場所を決めると、何があるのか分かりやすくなった。


 俺は空になった袋を持ち上げた。


「これで、また拾えます」


〈結局増える〉

〈倉庫が広がる理由ってそれだよな〉


     ◇


 次は、二階層への階段だ。


 下には、まだ野生の蜘蛛がいる。


 寝ている間に、一階へ上がってこられるのは困る。


 階段の手前を選び、扉を置く。


【木製扉:30DP】


 さらに、内側から掛ける横木。


【閂付きへ変更:10DP】


 合わせて四十。


 俺は新しくできた扉を閉め、横木を落とした。


 がたん、と音がする。


 引っ張る。


 開かない。


「……これで、少し安心ですね」


 ガドが扉の上を見た。


「隙間はふさげ。小さいのが通る」


「あ」


 上の端に、指が入るほどの空きがあった。


 そこを石で狭める。


【地形編集:10DP】


 イトが、横から顔を出した。


 俺はそちらを見る。


「お前は、ここを越えないでくださいね。下は、まだ大きいのがいます」


 イトは扉の前で止まり、脚を引いた。


     ◇


 最後に、明かりを一つ。


 新しい倉庫へ設置した。


【小型魔石灯:20DP】


 橙色の光が、並べた素材を照らす。


 俺は地図を開き、使う場所へ印をつけた。


 入口。


 寝床。


 倉庫。


 イトの巣。


 二階層への扉。


 さっきまでは、掃除しただけの穴だった。


 今は、どこで何をするか決まっている。


【保有DP:282】


「……まだ、残ってますね」


〈猪呼べるぞ〉

〈二匹いける〉


「呼べますけど、今日は残します」


 画面を閉じる。


 ポイントの増やし方は分かった。


 だからといって、毎回使い切る必要もない。


 次に直したくなる場所は、どうせ出てくる。


 俺は倉庫の棚へ手を置いた。


 板が、少し揺れる。


「……これ、補強したいですね」


〈早い〉

〈今言ったばっかりw〉


 ガドが棚を押さえ、俺へ手を差し出した。


「紐、取れ」


「はい」


 俺は笑いながら、集めてきた糸を引っ張り出した。



●主人公視点


 はい。棚を直していたら、狩りに行きたくなった修羅でーす。


 いや、飽きたわけではない。


 ちゃんと理由がある。


 家を広げるには、ポイント。


 装備を作るには、素材。


 そして、もっと強い魔物を倒すには――。


「レベルですね」


〈急に冒険者に戻った〉

〈最近ずっと家いじってたからな〉


 俺は二本の短剣を抜いた。


 黒みを帯びた牙の刃。


 研ぎ直してもらった猪の牙とは、握った感触から違う。


 しかも今は、Lv.28。


 ボスと戦う前から、六つ上がっている。


「今日は周りを回ります。住んでる場所の近くくらい、ちゃんと知っておきたいですし」


「なら、北西だな」


 ガドが言った。


 集落で仕上げてもらった槍を持っている。


 先端には、大蜘蛛の黒い鉤。


「森を抜けた先に、猪の掘り場がある。最近、数が増えてる」


「……何匹くらいです?」


「昨日までなら、行くなと言った」


 俺はガドを見る。


 向こうも、俺を見る。


「今なら、一匹ずつ引けば狩れる」


 なるほど。


 いいですね。


「じゃあ、そこへ行きましょう」


     ◇


 イトも連れていくことにした。


 ただ、先頭には出さない。


 俺たちの後ろで、待機。


 追ってきた相手の足を止める役だ。


「全部捕まえなくていいです。近くに来たやつだけ、お願いします」


 イトが前脚を動かす。


 袋には水と肉。


 帰りに素材を運ぶための革紐も入れた。


 古い猪の牙短剣は、解体用だ。


 準備を確かめ、俺たちは森へ入った。


     ◇


 最初に見つけたのは、蜘蛛だった。


 枝の下。


 白い腹を揺らしている。


「〈鑑定〉」


【糸吐き蜘蛛】


【Lv:21】


【HP:123/123】


 以前なら、足を止めて相談していた相手だ。


 今は、周りを見る。


 左の幹。


 頭上の枝。


 ほかに動くものはない。


「一匹。いきます」


 姿を見せる。


 蜘蛛が腹を曲げた。


 俺は横へ動いた。


 糸が通り過ぎる。


 その間に、距離を詰める。


 相手が前脚を上げたところへ、右の短剣を入れた。


 継ぎ目。


 刃が通る。


 脚が下がるより先に抜き、反対側へ。


 左で、腹の下を突いた。


 蜘蛛が床へ落ちる。


 俺は追いかけず、一歩離れた。


【経験値を獲得しました】


「……あれ」


〈早っ〉

〈もう終わり?〉


 短剣を見る。


 さっきまで、何度も避けて、少しずつ削っていた相手だ。


 今のは、二回。


 狙ったところへ刃が入り、そのまま倒せた。


「……強くなってますね」


「足を止めるな。音を聞いたのが来るぞ」


 ガドの声に、顔を上げる。


 葉が揺れていた。


 一匹。


 その奥に、もう一匹。


 俺は思わず、笑った。


「ちょうどいいです」


     ◇


 二匹目の糸をかわす。


 三匹目は、まだ枝の上。


 同時に相手をしないよう、木の裏へ下がった。


 手前の蜘蛛だけが、幹を回ってくる。


 脚が見えた。


 右で突く。


 体を引き、反撃を外す。


 背後で、糸の飛ぶ音。


 イトだ。


 枝から下りようとしていた一匹の脚へ、白い線が絡んだ。


「ガド、上お願いします!」


「ああ!」


 槍が伸びる。


 その間に、俺は目の前の一匹を仕留めた。


 向き直る。


 ガドの槍に止められた蜘蛛が、体をひねっていた。


 そこへ踏み込む。


 突いて、抜く。


【経験値を獲得しました】


【経験値を獲得しました】


【種族Lv:28→29【UP!】】


「お、上がった」


〈まだ出発したばっかりだぞ〉

〈今日早くない?〉


 早い。


 自分でも、そう思う。


 敵を見つけてから倒すまでが、短いのだ。


 無駄に走り回らない。


 刃を何度も当て直さない。


 だから、次に使うスタミナも残る。


「……これ、結構いけるかもしれません」


     ◇


 森を抜けると、地面が広く掘り返されていた。


 折れた草。


 転がる石。


 木の根がむき出しになっている。


 その真ん中に、灰色の背中。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


「……多くないですか」


「奥にもいる」


 いた。


 岩の向こうから、鼻先が出てきた。


 俺は近い個体から、順に鑑定した。


【岩背猪】


【Lv:26】


【HP:238/238】


【岩背猪】


【Lv:30】


【HP:286/286】


 同じ場所にいても、強さは違う。


 そして、俺と近いレベルだ。


 ただ、これを全部まとめて相手にする気はない。


 木が二本、狭く並んだ場所を見つける。


 俺なら通れる。


 猪は、少し通りづらそうだ。


「ここまで引きます」


 ガドが横へ回った。


 イトには、さらに後ろへ下がってもらう。


 俺は石を拾った。


 近い一匹の横へ投げる。


 かつん、と音がした。


 猪が顔を上げる。


 俺を見る。


「どうも」


 鼻息。


 突進。


 そうですよね。


     ◇


 木の間を抜ける。


 後ろで、幹が揺れた。


 振り返ると、猪が肩を引き、無理に体を通そうとしている。


 俺は、さらに一歩下がった。


 前へ出てきた頭。


 跳ね上がる牙。


 それをかわし、脇へ入る。


 右の短剣を、前脚の内側へ。


 手応え。


 深い。


 猪が鳴いた。


 短剣を抜き、左で鼻先をけん制する。


 頭が引かれた一瞬に、横へ抜けた。


〈動き速い〉

〈前より全然余裕あるな〉


 猪が向き直る。


 踏み直した脚が、少し沈んだ。


 以前なら、ここから何度も狙い直していた。


 今は、追いつける。


 傷めた脚へ体重が乗る、その瞬間。


 俺は踏み込み、腹の下へ刃を入れた。


 巨体が傾く。


「ガド!」


 槍が、反対側から突き込まれた。


 猪の肩が地面へ落ちる。


 俺は頭から離れ、もう一度。


【経験値を獲得しました】


 止まった。


 俺は短剣を下ろし、息を吐く。


「……倒せた」


 まだ、腕が動く。


 膝も笑っていない。


 最初の一匹を倒したときとは、全然違った。


「次、来るぞ」


 ガドが奥を指す。


 鳴き声を聞いたのか、別の猪がこちらを見ていた。


 俺は短剣を構え直した。


「はい。お願いします」


     ◇


 二匹目。


 正面をガドが押さえ、俺が横へ。


 三匹目。


 突進を引きつけ、木の根をまたいでかわす。


 背後へ抜けたところで、イトが糸を張る。


 細い糸だけで、巨体は止まらない。


 けれど、脚を持ち上げる動きが一つ増える。


 それで十分だった。


 踏み込む。


 右。


 抜いて、左。


 硬い背中には触れない。


 脚が崩れたら、腹へ回る。


【種族Lv:29→30【UP!】】


 表示が浮かぶ。


 俺は短く息を吐き、周りを見た。


 まだ、いる。


     ◇


 四匹目を倒したところで、休憩した。


 ガドが槍を地面へ立てかける。


 俺も木へ背中を預けた。


「……楽しいですね」


「水を飲んでからしゃべれ」


「はい」


 竹筒を傾ける。


 イトへも、持ってきた肉を出した。


 小さな前脚が、受け取るように動く。


〈狩りのペースすごい〉

〈武器更新の効果でかいな〉

〈イトもちゃんと仕事してる〉


「ですね。さっき、かなり助かりました」


 イトの状態を開く。


 こちらもレベルが上がっていた。


 戦いに参加した分は、ちゃんと経験値になっているらしい。


 俺は肉をもう一切れ置いた。


「一緒に強くなりましょう」


 イトは、まず肉を食べた。


 うん。


 飯が先ですね。


     ◇


 休憩の後、さらに北側へ回った。


 掘り場の奥には、岩の陰があった。


 その向こうから、鼻を鳴らす音。


 出てきた猪を見て、俺は足を止めた。


 大きい。


 背中の盛り上がりが厚く、牙の片方は先が欠けている。


「〈鑑定〉」


【岩背猪】


【Lv:36】


【HP:374/374】


「……三十六」


〈当たり個体〉

〈これは強そう〉


 ガドが、俺の横へ立った。


「やるか」


 周りを見る。


 ほかの猪は、離れている。


 逃げる道もある。


 スタミナは、戻した。


 俺は胸元の首飾りへ触れた。


「やります」


 猪が、地面を掻いた。


 俺は短剣を構えた。


「今度は、最初から使います」


 息を吸う。


「〈鬼力〉」


 胸から、熱が広がった。


 腕が張る。


 足の裏が、地面を強く捉える。


 慣れていないときのように、いきなり踏み出しはしない。


 小さく、足を置き直す。


 猪が走った。


 速い。


 でも、追える。


 俺は横へ動いた。


 牙が通る。


 巨体が追って曲がる、その内側へ。


 右の短剣を、前脚の付け根へ突き込んだ。


「っ!」


 腕へ重さが返る。


 それでも、刃は止まらない。


 抜く。


 後ろへ跳ばず、体に沿って横へ。


 猪の頭が追ってきた。


 俺は左を鼻先へ向けた。


 ひるんだ一瞬。


 ガドの槍が、傷めた脚へ入る。


 猪が暴れた。


 肩が、俺へぶつかる。


 俺は足を開いた。


「〈踏ん張り〉!」


 靴が土を削る。


 押される。


 けど、倒れない。


 俺は体を横へ逃がし、押してくる力を外した。


 目の前に、腹。


 右。


 左。


 続けて、突く。


 猪が向きを変えようとする。


 その脚へ、白い糸が絡んだ。


 切れる。


 一本では、止まらない。


 でも、猪の視線が一瞬下がった。


 俺は踏み込んだ。


 傷ついた前脚へ、もう一度。


 巨体が崩れる。


「そこ!」


 ガドの槍が、脇腹へ突き込まれた。


 俺は倒れた頭から離れ、腹の前へ回る。


 刃先を合わせる。


 両足で、地面を押す。


「――っ!」


 深く、入った。


 抜いて、離れる。


 猪が脚を動かす。


 その動きが、ゆっくり止まった。


【経験値を獲得しました】


【種族Lv:32→34【UP!】】


「……二つ」


〈二つ!?〉

〈もう三十四?〉

〈鬼力まだ残ってるぞ〉


 俺は自分の腕を見た。


 まだ熱い。


 今度は、効果が切れる前に倒せた。


「……よし」


 思わず、拳を握った。


     ◇


 そこから先も、狩った。


 ただし、見つけたものへ片っ端から飛びつくのはやめた。


 複数が集まっているなら、離れるのを待つ。


 疲れたら、休む。


 武器が汚れたら、拭く。


 遠くの一匹を追うより、決めた範囲を回った。


 森の蜘蛛。


 岩場の猪。


 村へ向かう道の脇に潜んでいた蜘蛛も、ガドと挟んで倒した。


 何度も使ううち、短剣を戻す位置が決まってくる。


 右で攻めた後、左が出る。


 相手が止まれば、無理に振らず待てる。


【スキル〈短剣術〉のLvが上昇しました】


【Lv.1→Lv.2【UP!】】


「おっ」


〈そっちも上がった!〉


「今日は、忙しいですね……!」


 表示を閉じ、次の一匹へ向き直った。


     ◇


 ダンジョンへ戻るころには、袋が重くなっていた。


 持ち帰れたのは、選んだ分だけだ。


 肉。


 皮。


 牙。


 それと、DPへ換えるための素材。


 入りきらなかった猪の死体は、解体して場所を覚えてある。


 一度に全部は、運べない。


 俺は入口脇へ荷物を下ろした。


 座る。


 さすがに、疲れた。


〈お疲れ〉

〈今日どこまで上がった?〉


「今、見ます」


 ステータスを開く。


 朝と比べる。


 俺は少し、黙った。


【種族Lv:28→38【UP!】】


最大HP:220→275【UP!】

最大MP:43→53【UP!】

最大スタミナ:220→270【UP!】

筋力:42→52【UP!】

耐久:36→46【UP!】

敏捷:40→50【UP!】

魔力:5

器用:10


「……十、上がりました」


〈爆速w〉

〈一日で十!?〉

〈小鬼、育つの早すぎる〉


 俺は、手を握って開いた。


 さっきまで運んでいた袋。


 持ち上げると、朝より軽い。


 疲れているのに、それでも分かった。


「……次、どこまで行けますかね」


 ガドが、俺の隣へ座る。


 槍を置き、長く息を吐いた。


「今日は、ここまでだ」


「分かってます。次の話です」


 ガドは、俺の腰の短剣を見た。


 刃は、まだ残っている。


 柄も緩んでいない。


「なら、今まで行かなかったところへ行ける」


 俺は森の向こうを見た。


 今日は、知っている魔物を狩った。


 次は、知らない相手。


 まだ召喚できない魔物。


 その素材で、作れるもの。


 考えると、もう少しだけ歩きたくなる。


 けれど、立ち上がる前に、足元で小さな音がした。


 イトだった。


 俺の靴へ前脚を置き、じっとしている。


「……お前も、疲れました?」


 俺は袋から、残しておいた肉を出した。


 次の冒険の前に、今日は全員、腹いっぱい食べよう。




【ステータス】


プレイヤー名:修羅

種族:小鬼〈こおに〉

種族Lv:38


最大HP:275

最大MP:53

最大スタミナ:270

筋力:52

耐久:46

敏捷:50

魔力:5

器用:10


獲得経験値:+10%【装備】


※最大HP:基礎値250+装備補正25=275。


【種族特性】


〈怪力の芽〉

体格より大きな武器を扱える。重さに応じてスタミナを消費する。


〈健啖〉

食事によるスタミナ回復量が多い。


【スキル】


〈打撃 Lv.1〉

棍棒や拳による攻撃を補助する。


〈踏ん張り Lv.1〉

足を止めて構えると、押し倒されにくくなる。


〈短剣術 Lv.2〉

短剣を扱う動作や刃の向きの調整を補助する。Lv.1より連続した攻撃や、攻撃後の構え直しが滑らかになる。


〈索敵 Lv.1〉

周囲の物音や動きから、敵の気配に気づきやすくなる。


〈鑑定 Lv.1〉

魔物の名前・レベル・現在HPと最大HPなど、対象の基本情報を確認できる。


【装備スキル】


〈鬼力 Lv.1〉

・消費MP:10

・効果時間:30秒

・筋力、耐久+50%

・効果終了後、60秒間は再使用不可


発動中:

筋力:52→78【UP!】

耐久:46→69【UP!】


【装備】


右手:白糸大蜘蛛の牙短剣

左手:白糸大蜘蛛の牙短剣

胴:岩背猪の革胴当て

腰:ぼろ布の腰巻き

足:小鬼の革靴

背中:岩背猪の革袋

首飾り:始祖鬼の首飾り


【始祖鬼の首飾り】


・最大HP+10%

・獲得経験値+10%

・第一段階:〈鬼力 Lv.1〉【解放済み】


≪未解放の封印効果≫

???


【所有ダンジョン】


名称:未命名

階層数:全三階層

所有者:修羅

保有DP:311


【配下】


糸吐き蜘蛛:7体〈イトを含む〉

岩背猪:2体


※配下の討伐経験値の一部が、修羅にも還元される。


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