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20話 道と蜂とポーション

●主人公視点


 はい。


 今日は、朝から入口を気にしている修羅でーす。


 理由は、商隊が来るから。


 しかも、今回から北回りだ。


 俺たちが整備を手伝った道を通って、荷物を運んでくる。


 地図の上では、ちゃんとつながっている。


 空の荷馬車も、少し荷を載せた車も通した。


 それでも、実際の便となると、何となく落ち着かなかった。


「……あの曲がり角、大丈夫ですかね」


〈何回目だそれw〉

〈昨日も確認してたぞ〉

〈自分で直した場所って気になるよな〉

〈御者さんが通してたんだから大丈夫だろ〉


「そうなんですけど。荷物が違えば、また変わるかなって」


 入口の外へ出る。


 北へ向かう道。


 森の間を、緩やかに曲がっている。


 曲がり角の先は、ここからでは見えない。


 俺は一度、背伸びをした。


 見えなかった。


 ……この体で背伸びしても見えないなら、どうしようもないな。


「まあ、連絡が来てからですね」


 そう言って、中へ戻った。


 今日の魔石の箱は、閉めてある。


 人も荷物も出入りする日に、わざわざ魔物を呼ぶ必要はない。


 入口の迎撃室と搬入側は分けてあるが、周辺に寄ってこられるだけでも、商隊は困るだろう。


 猪たちには、今日は普通の待機をお願いしておいた。


 俺は搬入口の台へ、荷物の一覧を広げる。


 預かっている集落の品物。


 商隊から受け取るもの。


 前に相談した、交換候補の素材。


 紙を見ていると、後ろから足音がした。


「修羅さん。こちらの分も、お願いします」


 リィナだった。


 手には、小さな木箱。


 中に、布で包まれた瓶が二本入っている。


「……ポーション?」


「はい。今回できたものを、相談のときに見てもらえればと思って」


 彼女は箱を台へ置くと、蓋を開いた。


 薄い赤色。


 前に作ったものより、少し澄んで見える。


 俺は、顔を寄せた。


「これ、昨日作ってたやつですか?」


「はい。ただ、まだ鑑定はお願いできていなくて」


 リィナは、瓶をそっと持ち上げる。


 期待しているのが、何となく分かった。


 でも、それと同じくらい、緊張もしている。


 俺は、うなずいた。


「じゃあ、今、見ましょうか」


     ◇


 瓶へ目を向ける。


 鑑定を使う。


 文字が、浮かんだ。


【粗製回復ポーション】


【品質:低】


【効果:服用時、HPを少量回復する】


 俺は、もう一度読んだ。


 名前は、同じ。


 効果の説明も、大きくは変わらない。


 でも。


「……上がってますね」


 リィナの指が止まった。


「本当ですか?」


「はい。前は最低でしたけど、今回は、低になってます」


 俺は表示を読み上げる。


 その瞬間、コメントが一気に流れた。


〈おお!〉

〈品質上がった!〉

〈リィナおめでとう!〉

〈最初の一本から見てたから嬉しいな〉


 リィナは、しばらく瓶を見つめていた。


 赤い液体が、少し揺れる。


 それから、息を吐いた。


「……よかった」


 小さな声だった。


 俺は、もう一本も見る。


 こちらも、同じ。


 品質、低。


 二本ともだ。


「こっちも、上がってます」


 伝えると、彼女の肩から、少し力が抜けた。


「途中の状態が、前よりそろっていたので。もしかしたら、と思っていたんです」


「何を変えたんですか?」


「まず、材料を分けるところを見直しました。大きさだけでなく、乾き方も、できるだけそろえてみて」


 説明しながら、リィナが記録を開く。


 前に教わったこと。


 自分で気づいたこと。


 次に試すこと。


 紙が、少しずつ増えていた。


「それと、途中で迷ったときに、慌てて次へ進めないようにしました」


「……なるほど」


 俺には、まだ全部は分からない。


 ただ、何となく作ったら、たまたまよくなった。


 そういう話ではないことは、分かった。


 リィナは、前の記録と今回の記録を並べる。


 瓶の横へ、作った日が書かれた札を置いた。


「同じように作れたつもりでも、毎回同じになるかは、まだ分かりません。もう少し続けてみたいです」


「いいですね。必要な材料、あとで一緒に確認しましょう」


 彼女がうなずく。


 その顔には、さっきまでの不安より、次を考えている感じがあった。


〈調合レベルも上がった?〉

〈品質が先に上がった感じか〉


 俺が尋ねると、リィナは首を振った。


「スキルは、まだ一です」


「じゃあ、作り方を工夫した成果ですね」


 そう言うと、少し照れたように笑った。


 俺も、嬉しかった。


 部屋を造って、道具を買った。


 それだけでは、よくならない。


 その先を、彼女がちゃんと進めている。


「最初の一本、残しておいてよかったですね」


「はい。比べるものがあると、分かりやすいです」


 俺は二本を、もう一度見た。


 まだ、店で買うような立派な品ではない。


 でも、最初より、よくなった。


 今日は、商隊が来る前から、いいことが一つあった。


     ◇


 荷物の確認をしていると、イトが入口のほうを向いた。


 人の姿だ。


 持っていた荷札を台へ置き、耳を澄ませるように止まる。


「くる」


 俺も、顔を上げた。


 少しして、聞こえた。


 車輪の音。


 蹄が、地面を踏む音。


 それから、人の声。


「……来ましたね」


〈きた!〉

〈北回り初便!〉

〈無事到着か〉


 外へ出る。


 森の曲がり角から、最初の馬が姿を現した。


 その後ろに、荷馬車。


 見慣れた商会の印。


 御者台の隣から、マルクが手を上げる。


 俺も、手を上げ返した。


「お疲れさまです!」


「こんにちは。お待たせしました」


 荷馬車が、ゆっくり止まる。


 続いて、もう一台。


 今回は、以前より荷を抑えていると聞いていた。


 それでも、ちゃんと荷物を積んだ車が、北から来た。


 俺は、道の先へ目を向ける。


 さっきまで見ていた、あの曲がり角。


 そこを通ってきたのだ。


 何となく、胸の辺りが軽くなった。


     ◇


 荷下ろしの前に、道の様子を聞いた。


 御者の人が、手綱を整えながら答えてくれる。


「距離はありますが、峡谷より気は楽でしたね」


「狭いところ、どうでした?」


「修羅さんが岩を動かしたところですか?」


「はい。あそこです」


「問題なく曲がれましたよ。余計に外へ寄せずに済みました」


 俺は、思わず笑った。


「……よかった」


〈そこ一番気にしてたからな〉

〈成果が出た〉

〈いい顔してる〉


「荷を積んでるときは、ちょっと違うかと思ってたので」


「見るところは変わりますね。ただ、前より余裕があるのは確かです」


 御者が、荷馬車の後ろへ目を向けた。


「一か所だけ、雨のあとが気になります。車輪が、少し寄ったところがありまして」


 俺は、すぐに紙を出した。


「どの辺りですか?」


 地図へ、指が置かれる。


 最後に印を残した場所に、近かった。


 やっぱり、そこか。


 ただ、今すぐ通れなくなるような状態ではないらしい。


 次に整えるとき、優先して見る。


 俺は、そう書き込んだ。


 マルクが、その横から言った。


「今日の記録は、道を見ている者にも渡します。修羅さんが、全部直しに行く必要はありませんよ」


「……分かってます」


 言いながら、少し笑った。


 今日、商隊が着いたばかりなのに、もう次に石を運ぶことを考えていた。


     ◇


 荷下ろしを始める。


 受け取るもの。


 預かるもの。


 出荷するもの。


 台の上で、順番に確かめた。


 俺が大きな箱を運ぶ。


 リィナが記録を読む。


 持ち主が、数を確かめる。


 イトは荷札を渡す。


 前回より、少しだけ流れがよかった。


 それでも、初めて来る人には、説明が要る。


「こちらは、集落から預かっている物です。俺の素材とは、別で」


「なるほど。では、この札が持ち主の印ですね」


 そう尋ねたのは、今回初めて見る商人だった。


 丸い耳を持った、小柄な獣人。


 荷台から下ろした箱を、丁寧に台へ置いている。


 マルクが紹介してくれた。


「こちらは、サネンさん。薬草や、調合に使う品を扱っています。今回は、こちらの様子も見たいとのことで」


「初めまして。修羅です」


「サネンです。お噂は、伺っております」


 差し出された手を握る。


 俺の手を見て、少し目が丸くなった。


 でも、そのあとすぐ、棚へ目が向く。


「……それにしても、本当にダンジョンの中へ荷物を預けられるんですね」


「はい。今は、この棚の分だけですけど」


「魔物は?」


「別の通路です。こちらへは、出ないようにしています」


 サネンさんが、入口と棚と、奥の管理扉を順番に見る。


 それから、小さくうなずいた。


「話で聞くのと、実際に見るのでは、違いますね」


〈初めて来た人の反応好き〉

〈普通はそうなる〉

〈家主だけ当たり前の顔〉


 俺は、少しだけ首を傾げた。


 ここへ荷物を置くようになって、まだ長くない。


 でも、もう俺には、いつもの棚に見えていた。


     ◇


 荷物が一段落すると、リィナが小さな木箱を持ってきた。


 朝、鑑定したポーションだ。


 サネンさんが薬草を扱うと聞いて、マルクへ先に、見てもらえるか尋ねていたらしい。


「まだ、売るためではないんです。ただ、扱い方について、お話を聞ければと」


 リィナが言う。


 サネンさんは、すぐに値段の話をしなかった。


「どなたに教わりました?」


「薬師のメルナさんです」


「あぁ。あの方ですか」


 知っているらしい。


 瓶を受け取る前に、作った日と、使った材料の記録を見せてほしいと言った。


 リィナが紙を開く。


 最初の一本の記録も、一緒だ。


 俺は横から、鑑定の結果を伝えた。


 最初は、品質が最低。


 今回は、低。


 どちらも、粗製回復ポーション。


 サネンさんは、記録と瓶を見比べていた。


「二本とも、同じ評価なんですね」


「はい。今朝、確認しました」


 俺が答えると、彼はうなずいた。


「では、次も同じように作れるか、見ておくとよいですね。売るとなれば、一度よいものができることと、続けて同じものを用意できることは、少し違いますので」


 リィナが、真剣な顔で聞いている。


「保存している間の変化も、ですよね」


「えぇ。そこは、教えてくださった薬師の方にも、確かめていただくと安心でしょう」


 俺は、瓶を見た。


 上がった。


 それで、すぐに商品。


 そういうわけではない。


 でも、何を確かめれば次へ進めるかは、見えてきている。


 リィナは、また紙へ書き足した。


〈ちゃんと商品になるまでの話だ〉

〈調合して終わりじゃないんだな〉

〈でも、次の目標が分かるのいい〉


 サネンさんは瓶を戻し、俺たちを見た。


「材料や道具の相談でしたら、私もできます。必要になったものがあれば、次の便までにお知らせください」


「ありがとうございます」


 リィナが、深く頭を下げた。


 そのあと、俺も下げる。


 来てもらえる人が、一人増えた。


 それだけで、家の中でできることが、また少し広がった気がした。


     ◇


 商隊の中には、エダさんたちの姿もあった。


 今日は、事前に相談していた養蜂の点検日でもある。


 北回りの便が決まったので、日程を合わせてもらっていたのだ。


「ずいぶん、人が増えたね」


 道具袋を下ろしたエダさんが、搬入口を見回した。


「今日は、初めて来る方もいるので」


「蜂の部屋まで、ぞろぞろ入れるんじゃないよ」


「そこは、大丈夫です」


 俺はすぐに答えた。


 作業する場所は、分けている。


 荷物を扱う人が、養蜂室へ入る必要はない。


 見習いさんは、入口に増えた案内札を見ていた。


「前より、分かりやすくなりましたね」


「北から来た人にも見えるように、一枚増やしたんです」


「確かに。道から見えました」


 それを聞いて、少し嬉しくなる。


 札一枚でも、ちゃんと役に立っていたらしい。


     ◇


 商隊の人たちが荷物の確認を続ける間に、俺は養蜂室の準備をした。


 魔石の箱は、もちろん閉じたまま。


 防護具をつける。


 道具を出す。


 必要な器も、決めた場所へ。


 リィナは、まだサネンさんと話している。


 イトには、今日は荷物側で手伝ってもらうことにした。


「終わったら、呼ぶからな」


「はちみつ?」


「採れるかは、見てから」


 イトが、真面目な顔でうなずいた。


 前より、その返事が早い。


 毎回、必ず採れるわけではない。


 少しずつ、分かってきたのかもしれない。


〈今日は採れるかな〉

〈前の収穫から、何日か経ってるもんな〉

〈先生の点検待ちだ〉


「ですね。俺が欲しい量じゃなくて、残せる量からです」


 口にしながら、扉を開けた。


     ◇


 養蜂室には、いつもの羽音があった。


 外へ出る蜂。


 戻ってくる蜂。


 巣箱の前を歩く蜂。


 女王とのつながりへ意識を向ける。


 落ち着いている。


 そこへ、普段より、少し強い活気のようなものがあった。


 俺は、すぐに採れるとは言わなかった。


 元気だからといって、余っているとは限らない。


「今日は、落ち着いてる感じはします。ここ何日か、戻ってくる蜂もよく見えてました」


 エダさんがうなずく。


「記録は?」


「こちらです」


 見習いさんへ渡す。


 天気。


 出入り。


 外の穴の状態。


 気になったこと。


 俺が入れなかった時間は、リィナが外から見てくれた分もある。


 それも、誰が見たか分けて書いている。


「続いてるね」


 エダさんが、紙へ目を落としたまま言った。


「はい。短い日もありますけど」


「短くても、見てない日のことを、見たように書かないほうがいい」


 俺は、うなずいた。


 分からない日は、分からない。


 そう残しておく。


 この辺りは、リィナの記録を見て、真似したところでもあった。


     ◇


 点検が始まる。


 俺は、横で見る。


 以前より、どこを見ているか分かるようになった。


 ただし、自分だけで全部判断できるわけではない。


 エダさんが、一つずつ確かめる。


 見習いさんが、道具を渡す。


 俺も、言われた場所を見る。


 蜂のいるところ。


 巣が使われているところ。


 前に見たときから、変わったところ。


 その途中だった。


 俺の胸の奥へ、いつもより、はっきりした感覚が届いた。


「……ん?」


 俺は動きを止めた。


 巣箱の中。


 右側へ目を向けたとき。


 何かを、守っている。


 これは、残す。


 そんな、強い感覚。


 俺は、指を出さずに視線だけで位置を確かめた。


 少し離れたところへ目を移す。


 今度は、同じではなかった。


 拒むような強さが、弱い。


 余裕。


 少し、手放せる。


 ……そんな感じ。


 俺は、眉を寄せた。


「エダさん」


「何だい」


「今、場所で……伝わり方が、違った気がします」


 彼女は、手を止めた。


 すぐに、どこを取ればいいとは言わない。


「どう違った?」


「そっちは、残す、みたいな。こっちは、それより……余ってる、に近いのかもしれません」


 自分で言いながら、慎重に言葉を選んだ。


 声が聞こえたわけではない。


 はっきりした文章でもない。


 ただ、前の「落ち着く」「嫌だ」より、細かい。


 見ている場所と、伝わってくるものが、つながる。


 その瞬間、表示が浮かんだ。


【スキルレベルが上がりました】


【〈意思疎通Lv.1〉→〈意思疎通Lv.2〉】


 俺は、息を止めた。


「……上がりました」


〈えっ〉

〈意思疎通?〉

〈二になった!〉

〈蜂の話、詳しく分かるようになったのか〉


 俺は表示を開いた。


【意思疎通Lv.2】


【交流のある動物・魔獣の感情や、単純な要求を感じ取りやすくなる】


【親しい相手とは、対象や状況に結びついた意思を伝え合いやすくなる】


 読み終えてから、巣箱を見る。


 女王が、そこにいる。


 俺が見ている場所。


 何をしようとしているか。


 その一部が、前より伝わっているのかもしれない。


     ◇


 エダさんは、俺の説明を最後まで聞いた。


 それから、俺が気になった場所を、実際に確かめる。


 すぐには答えない。


 別の場所も見る。


 俺は、黙って待った。


「……大きくは、外れてないね」


 ようやく、彼女が言った。


 俺は顔を上げる。


「本当ですか?」


「ただ、あんたが感じたものを、私が直接確かめられるわけじゃない。今日は、実際の巣の状態と合わせて見ていこう」


「はい」


 俺は、少し姿勢を正した。


 当たった。


 そう喜んで終わるのは、まだ早い。


 感じたものが、何を意味しているのか。


 そこを、確かめる必要がある。


 俺は巣箱から少し距離を取り、女王とのつながりへ意識を向けた。


 前に採ったときのこと。


 ほんの少し分けてもらったこと。


 巣を空にするつもりはないこと。


 うまく言葉にはならない。


 でも、今、何を考えているか。


 できるだけ、単純に伝えようとした。


「……今日も、少し分けてもらえるか?」


 声にも出す。


 返ってきたのは、量を示す数字ではなかった。


 小瓶一本。


 匙何杯。


 そんな、俺たちが使う単位ではない。


 ただ、残したいものと、分けられそうなもの。


 その違いが、さっきより分かった。


 俺は、ゆっくり息を吐いた。


「……こっちなら、少し。そんな感じがします」


〈量を数字で言ってくれるわけじゃないんだな〉

〈でも、残したいところが分かるのすごい〉

〈女王と相談してる〉

〈採蜜が交渉になった〉


「交渉というより、確認ですかね。俺だけが欲しがっても、駄目なので」


 エダさんが、小さくうなずいた。


「今日は、その感じを覚えておきな」


     ◇


 採蜜は、前回と同じく、エダさんの指導で進めた。


 いきなり、一人で全部。


 そうはしない。


 ただ、今日は俺も、前より多く手を動かした。


 持つ位置。


 道具の扱い。


 巣へ余計な力をかけないこと。


 横から声がかかるたび、一度止まって確かめる。


 器へ、蜜が落ちた。


 琥珀色。


 前より、少し濃く見える。


 俺は、思わず目を追った。


「……出ましたね」


〈おお〉

〈二回目の収穫!〉

〈今回もきれいだ〉


 とろりと、底へ広がる。


 少しずつ。


 その間も、女王とのつながりは残っていた。


 最初に感じた、余裕のようなもの。


 それが、ゆっくり変わる。


 急に怒りへ変わるわけではない。


 でも、手放せる感じが、弱くなる。


 俺は、手を止めた。


「……このくらい、ですかね」


 エダさんが、こちらを見る。


「どう感じた?」


「まだ取れるかどうかじゃなくて……残しておきたいほうに、寄ってきた感じがします」


 言ってから、器を見る。


 欲しいと思えば、もう少し欲しい。


 瓶へ入れたときに、見栄えがよくなるくらい。


 そんなことを考えてしまう。


 でも、それは俺の都合だ。


「今日は、止めたほうがいい気がします」


 エダさんが巣を確かめる。


 少しして、うなずいた。


「そうしよう。こちらで見ても、今日は十分だ」


 俺は、肩の力を抜いた。


 道具を戻す。


 片づける。


 巣を確かめて、閉じる。


 そのあとで、もう一度、女王の様子を感じ取った。


 少しざわついている。


 でも、強い不安のようなものではない。


 俺は、小さく頭を下げた。


「ありがとう。今日は、ここまでにする」


     ◇


 部屋を出てから、ようやく大きく息を吐いた。


 防護具を外す。


 手袋も外す。


 掌が、少し汗ばんでいた。


「……結構、緊張しますね」


〈いい採蜜だった〉

〈自分で止められたのよかった〉

〈蜜が欲しい家主と、残したい女王の意思疎通〉

〈便利だけど考えることも増えるな〉


「ですねぇ。ただ、止めるときに気づけるのは、ありがたいです」


 エダさんが、道具を拭きながら言う。


「これからも、採る前の確認は省かないことだ。余っているように感じても、そのあと何日も天気が悪くなることだってある」


 俺は、うなずいた。


 女王から、今の感覚は受け取れる。


 でも、未来の天気まで分かるわけではない。


 スキルが上がったからといって、ほかの確認が不要にはならない。


「採っていい量の、目安が増えた感じですね」


「そう考えておきな」


 見習いさんが、記録をまとめる。


「今日の感覚と、実際に残した状態も、一緒に記録しておきましょう」


「はい。お願いします」


 俺も、忘れないうちに書いておこうと思った。


 分けられる。


 残したい。


 その違いは、まだ言葉にしづらい。


 でも、今までより、確かに近くなった気がした。


     ◇


 食堂へ戻ると、ちょうどマルクたちも休憩に入るところだった。


 荷物の確認は、リィナと商会の人たちで一段落していたらしい。


 俺は、先に礼を言った。


「任せてすみません。助かりました」


「大丈夫です。記録はこちらへまとめてあります」


 リィナが紙を示す。


 受け取った数。


 出す数。


 まだ相談中のもの。


 ちゃんと分かれていた。


 そのあと、彼女の目が、俺の手元へ移る。


 小さな瓶。


 今回、分けてもらった蜂蜜だ。


「……採れたんですね」


「はい。前より、少しあります」


 量は、増えた。


 だからといって、並べて売れるほどではない。


 でも、前回の、瓶の底に少しだけ。


 あの状態とは、違っていた。


 イトが椅子から下りてくる。


 机の端へ立つ。


 瓶を見る。


「うち、の?」


「あぁ。うちの」


 返すと、イトは大きくうなずいた。


 その顔を見て、俺も笑ってしまう。


 もう、分かっている。


 これは、あの部屋の蜂たちが集めてくれたものだ。


     ◇


 蜂蜜を鑑定する。


【琥珀蜜蜂の蜂蜜】


【品質:並】


【用途:食材】


 品質の表示は、前回と同じだった。


 ただ、色も香りも、少し違う。


 リィナが日付の札を用意する。


 俺は、前に採ったものと分けて置いた。


 混ぜない。


 どちらが、いつのものか分かるように。


 サネンさんが、少し離れたところから見ていた。


「こちらで、蜂蜜も?」


「はい。まだ、売るほど採れてはいないんですけど」


「なるほど……」


 彼は、瓶を興味深そうに見る。


 マルクが隣から、穏やかに言った。


「今は、群れの状態を見ながら、試していらっしゃるところです。お取引は、その先ですね」


「えぇ。急かすつもりはありません。ただ、こちらへ来る理由が、また一つ増えそうだと思いまして」


 俺は、瓶へ目を落とす。


 薬草。


 ポーション。


 蜂蜜。


 最初は、俺たちが使えたらいい。


 そういうものだった。


 それを目当てに、来たいと思う人がいる。


 ちょっと、不思議だった。


〈商品候補が増えていく〉

〈サネンさん、次も来そう〉

〈家の入口が忙しくなるな〉


「……今の棚で、入る分からですね」


 自分へ言い聞かせるように答えた。


     ◇


 今日は、少しだけ味見をした。


 俺たちだけではない。


 来てくれた人にも、香りを確かめてもらう。


 ただ、全員へたっぷり塗ったパンを出す量はない。


 小さく切ったパン。


 薄く、少しずつ。


 リィナと一緒に用意した。


「今回は、こんな感じです」


 器を渡す。


 マルクが礼を言い、一口食べる。


 すぐに何かを言わず、少しだけ考えていた。


「……前にいただいたものとも、香りが違いますね」


「はい。エダさんも、その時期や花で変わるって」


「この軽い香りなら、食べ物へ合わせやすそうです」


 俺は、つい顔を上げた。


「肉にも?」


 マルクが、笑った。


「えぇ。修羅さんなら、そちらを考えられると思っていました」


〈読まれてるw〉

〈食材の相談になると早い〉

〈今日も肉へ行くのか〉


「いや、前に塗って焼いたの、うまかったので」


 イトは、自分のパンを食べ終えたところだった。


 瓶を見る。


 俺を見る。


 今日は、欲しいとは言わなかった。


 ただ、目が言っている。


 分かる。


 これは、スキルがなくても分かる。


「残りは、また今度な」


 俺が言うと、イトは少し考えてから、うなずいた。


「また、こんど」


 マルクが、その様子を見て笑っていた。


     ◇


 休憩のあと、マルクと今後の荷物について話した。


 今日持ってきてもらったものの中には、交換用素材の候補もあった。


 少量だけ。


 状態と、扱いやすさを確かめるためだ。


 使い道のなくなった、魔物の殻の欠片。


 加工で出た、骨の端。


 何でも入っているわけではない。


 事前に、受け取れるものを相談してある。


 俺は中身を確認した。


「これなら、保管もできそうですね」


「次に必要になったとき、同じ状態のものが用意できるか、こちらでも見ておきます」


 マルクが言う。


 今日は、蜂蜜と大量に交換する日ではない。


 向こうも、何を運べばいいか知りたい。


 俺も、何がどれくらい役立つか見たい。


 そのための、少量の取引だ。


 俺は、リィナの記録へ目を向けた。


 蜂蜜の量も、同じだ。


 今日、前より多く採れた。


 だから、次も同じ量を約束する。


 そうはしない。


「しばらく、採れた分を記録していきます。そのうえで、交換に回せる量を相談したいです」


「はい。それがよろしいかと」


 マルクがうなずく。


「ご自宅で使う分も、忘れずに」


 俺は、少し笑った。


「そこは、忘れません」


 イトも、なぜか隣でうなずいていた。


〈食べる分の主張が強い〉

〈大事な取り分だ〉

〈商談に参加するイト〉


 でも、こうして話していると、少しずつ現実味が出てくる。


 うちから出すもの。


 外から持ってきてもらうもの。


 その間を、荷馬車が行き来する。


 北回りの道が通れるようになったことも、その助けになるだろう。


     ◇


 出荷する集落の品物も、順番に確認した。


 持ち主が来る。


 数を合わせる。


 条件を確かめる。


 決まったものを、荷台へ運ぶ。


 俺は、重い箱を担当した。


 蜂蜜の瓶を持つときより、気は楽だ。


 ただし、雑に扱っていいわけではない。


「これは、下でいいですか?」


「えぇ。そちらへお願いします」


 マルクの指示を聞き、置く。


 商会の人が、固定する。


 次の箱。


 繰り返す。


 集落の職人が持ってきた荷物には、鎧毛水牛の皮を加工している途中の話も添えられていた。


 雨除けに使うものは、まだ作業中。


 傷のあるところと、使えるところを分けているそうだ。


「完成したら、こっちでも見せてください」


 俺が言うと、職人は短くうなずいた。


「持ってくる」


 それも、楽しみだった。


 狩ってきたものが、荷物を守る道具になる。


 その道具を載せた荷馬車が、新しい道を通る。


 何となく、全部がつながってきた。


     ◇


 出発前に、今日の記録を確認した。


 北回りの道。


 気になった箇所。


 荷物の受け取り。


 出荷。


 リィナが相談した材料。


 エダさんたちの、次の点検の話。


 紙が、机の上へ並ぶ。


 俺は、少しだけ笑った。


「……今日は、話すこと多かったですね」


 マルクも笑う。


「こちらへ来る用事が、増えましたからね」


 最初は、何を運んでもらったんだろう。


 食材。


 道具。


 そんなものだった気がする。


 今は、こちらから出す品もある。


 人にも来てもらう。


 集落の荷物も、まとめる。


 棚一つから始めた話が、少しずつ変わっていた。


 サネンさんが、帰り支度をしながら言った。


「次に伺うとき、薬草の状態も、また聞かせてください。調合用の器も、扱いやすいものがあれば候補をお持ちします」


 リィナが頭を下げる。


「ありがとうございます。今あるもので、困ったところをまとめておきます」


 その返事を聞いて、俺は少し安心した。


 いきなり全部、新しいものに替えるわけではない。


 使ってから、考える。


 どうやら、それは家の中でも定着してきたらしい。


     ◇


 商隊が出発する。


 帰りも、北回りだ。


 御者が、馬の首を軽く撫でる。


 荷馬車が動く。


 車輪が、地面を踏む。


 今までとは、違う方向へ進んでいった。


 俺は、道の曲がり角まで見送った。


 マルクが、最後に手を上げる。


 俺も返す。


「お気をつけて!」


 森の向こうへ、荷馬車が消える。


 音が、少しずつ遠くなる。


 入口が、静かになった。


〈無事出発〉

〈北回り、ちゃんと使えたな〉

〈今日は来た人多かった〉

〈リィナのポーションも、蜂蜜も進んだ〉


「ですね。随分、いろいろありました」


 振り返る。


 空いた棚。


 片づける器。


 使い終えた荷札。


 俺は袖をまくった。


「じゃあ、ここから片づけです」


〈最後までが仕事〉

〈頑張れ家主〉


 分かってますよ。


 来てもらって、終わりではない。


 次にも使えるように、戻しておく。


 俺たちは、手分けして動き始めた。


     ◇


 片づけが終わったころ、リィナが木箱を抱えて戻ってきた。


 ポーションの瓶。


 今日、見てもらった二本だ。


 机へ置き、もう一度、記録と並べる。


「……よかったですね。二本とも、上がっていて」


 俺が言うと、彼女がうなずいた。


「はい。でも、次も同じように作れるか、試してみたいです」


「材料、注文する分はまとまりました?」


「はい。足りなくなるものだけ、お願いしました」


 リィナは、少し迷ってから続けた。


「売れるようになるまでは、まだ、確認することが多そうです」


「ですね」


 俺は、素直にうなずいた。


 そこで、すぐ売れるから大丈夫とは言えない。


 でも、今日、確かに出来は上がった。


 それは、なくならない。


「次にメルナさんへ見てもらうとき、説明できますね。どこを変えて、どうなったか」


 リィナは、二本の瓶を見る。


 それから、少し笑った。


「……はい。そうですね」


 俺は、最初の一本がある作業台へ目を向けた。


 品質、最低。


 あれを作った日があって。


 今日、低になった。


 次は、どうなるだろう。


 本人と同じくらい、俺も気になり始めていた。


     ◇


 夕方、養蜂室の外側を見に行った。


 今日は、もう中へは入らない。


 点検と採蜜で、十分に人が入った。


 少し離れた場所から、蜂の出入り口を見る。


 一匹、戻ってきた。


 穴へ入る。


 別の一匹が、出ていく。


 葉も、枝も、引っかかっていない。


 俺は岩のそばへ腰を下ろし、女王とのつながりへ意識を向けた。


 〈意思疎通Lv.2〉。


 表示は、二になっている。


 でも、外から巣の中身が全部見えるようになったわけではない。


 今、何もかも尋ねるつもりもなかった。


 落ち着いているか。


 それを、少しだけ確かめる。


 午前中にあったざわつきは、弱くなっていた。


「……今日は、ありがとうな」


 小さく言う。


 分けてもらった蜜。


 その重さを、思い出す。


 前より採れたから、もっと採れるか。


 そういう考え方だけで進めていたら、俺は欲張っていたかもしれない。


 今日は、止めどころを感じられた。


 そこへ、エダさんの目もあった。


 どちらも、ありがたかった。


〈二になったら、蜂と世間話できるかと思った〉

〈まだ感覚なんだな〉


「そうですね。言葉が聞こえるわけではないです。どっちを残したいかとか、今はこれくらいとか。そういうのが、前より分かる感じで」


〈十分すごい〉

〈女王と相談して採るの、いいな〉

〈蜂蜜を欲張れなくなるスキル〉


 俺は、笑った。


「……その効果は、あるかもしれません」


     ◇


 イトが、後ろから来た。


 人の姿で、俺の隣へ座る。


 蜂の出入り口を見る。


 それから、俺の顔。


「はち、いい?」


「あぁ。今は、落ち着いてるみたいだ」


 イトがうなずく。


「みつ、もらった」


「そうだな」


「……おれい」


 俺は、少しだけ驚いた。


 イトは、穴のほうへ顔を向ける。


 すぐ近くまでは行かない。


 ここから。


「ありがとう」


 小さな声だった。


 蜂が、それを聞き取ったかは分からない。


 女王へ、どんなふうに伝わったかも。


 でも、俺は少し嬉しくなった。


 イトが、またこちらを向く。


「つたわる?」


 俺は、少し考えた。


 分からないことを、分かったとは言いたくなかった。


 でも。


「……俺からも、伝えてみる」


 女王とのつながりを意識する。


 脅かすためではない。


 何かを持っていくためでもない。


 今日、分けてもらって、うれしかった。


 その感覚を、できるだけ単純に。


 返ってきたものは、やっぱり文章ではなかった。


 ただ、強い警戒はない。


 巣へ戻り、落ち着いている。


 そんな穏やかさがあった。


「少なくとも、嫌がってはなさそうだ」


 俺が言うと、イトは満足そうにうなずいた。


 それでよかったらしい。


     ◇


 食堂へ戻ると、今日の蜂蜜に札がついていた。


 前回のものと、並んでいる。


 少し色が違う。


 量も、違う。


 日付も、別だ。


 俺は、その前へ、今日の記録を置いた。


 採れた量。


 残したもの。


 エダさんに見てもらったこと。


 そして、スキルが上がったときに感じたこと。


 なるべく、忘れないうちに。


 リィナは、その横で、ポーションの記録をまとめていた。


 机の上には、違う内容の紙が二つ。


 でも、やっていることは似ている。


 前と比べる。


 変わったところを書く。


 次に確かめることを、残しておく。


「……今日は、二人とも進みましたね」


 俺が言うと、リィナが顔を上げた。


 瓶を見る。


 蜂蜜を見る。


 それから、うなずく。


「はい」


〈いい一日だった〉

〈地味に見えて、ちゃんと変わってる〉

〈ポーションの品質も、スキルも上がった〉

〈交易拠点も進んだな〉


 俺は、入口のほうを見る。


 棚には、また新しい荷物がある。


 次の便まで預かるもの。


 俺たちが使うもの。


 集落へ運ぶもの。


 来るたび、少しずつ中身が変わる。


 その向こうへ、新しい道がつながっている。


 随分と、忙しい家になってきた。


     ◇


 配信を終える前に、今日の分を簡単に振り返った。


「商隊は、北回りで無事に来られました。気になる場所は、次に確認してもらいます」


 紙を一枚、指す。


「リィナのポーションは、品質が最低から低へ。二本ともです。ただ、まだ売るためのものではなくて、作り方と保存の確認を続けます」


 リィナが、隣でうなずく。


「それから、俺の〈意思疎通〉が二になりました。蜂が残しておきたいものとか、分けてもらえそうな感じが、前より少し分かるようになってます」


〈おめでとう〉

〈便利な成長だな〉

〈初級から一歩進んだ感じ〉


「ただ、何でも分かるわけではないので。これからも、教わりながらですね」


 俺は、蜂蜜の瓶へ目を向けた。


 今日は、前より多く採れた。


 でも、それだけではなかった。


 採っていいか。


 どこで止めるか。


 相手のことを、少し考えやすくなった。


 それが、一番大きいかもしれない。


「じゃあ、今日はこの辺で。見てくれて、ありがとうございました」


〈おつ修羅〉

〈リィナもお疲れ!〉

〈蜂たちにもよろしく〉

〈イト、味見できてよかったな〉

〈次の配信も楽しみにしてる〉


 俺は手を上げた。


 イトも、隣で同じように。


 リィナは、少し頭を下げる。


 配信を終了した。


     ◇


 食堂が、静かになった。


 俺は椅子へ座り直し、肩を回す。


 今日は、斧を振っていない。


 それでも、結構やることがあった。


 荷物。


 道の報告。


 調合の相談。


 採蜜。


 片づけ。


 気づけば、時間が過ぎていた。


「……飯、どうしましょうか」


 俺が言うと、リィナが厨房を見る。


「商隊で、豆と乾いた野菜が届いています。肉と一緒に煮られますよ」


「いいですねぇ」


 俺は立ち上がった。


 鍋を出す。


 厨房用のもの。


 調合用とは、ちゃんと別だ。


 イトは机の上を片づけている。


 俺が蜂蜜の瓶を棚へ戻そうとすると、その視線が、ついてきた。


 瓶。


 俺。


 もう一度、瓶。


「……今日は、味見しましたよね?」


 イトはうなずいた。


 でも、まだ見ている。


 俺は少し考える。


 残りの量。


 保存する分。


 次に味を比べる分。


 それから、今日の俺たちの分。


 さっき、蜂とやったことに、少し似ていた。


「じゃあ、パンに少しだけ。みんなで分けるか」


 イトの顔が、ぱっと明るくなる。


 リィナが笑った。


「では、残す分を先に分けておきましょう」


「……はい。それがいいですね」


 俺は、小さな器を出した。


 全部、使わない。


 先に残す。


 そのうえで、楽しむ。


 今日、蜂に教えてもらったことを、家の中でも使うことになった。


 俺は匙を持ち、瓶を少し傾ける。


 琥珀色の蜜が、ゆっくり落ちた。


 台所の明かりを通して、柔らかく光る。


「……うん。今日は、これくらいですね」


 言って、手を止めた。


 イトは器の中を見て、それからうなずいた。


 リィナは、切ったパンを机へ並べる。


 俺も席へ戻った。


 道が増えて。


 荷物が来て。


 できるものが、少しよくなる。


 明日も、また世話をする。


 それを続けた先で、この家がどうなるのか。


 まだ、全部は分からない。


 でも、今日の夕飯は、ちょっと楽しみだった。

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