7.魔王たちの会談
ビーストがペレニスとロワール城に転移すると二人の男が待っていた。一人は大柄で強持ての面をしていて、もう一人は普通の若い男だった。
「どちらも魔王を名乗っています」
ペレニスがビーストに言った。
「あれが魔王とは意外だな」
ビーストも雅則とヒュンケルを見て拍子抜けした。
「なるほど、帝王は人族ではなかったか」
若い男(雅則)がビーストを見て言った。ビーストは髑髏の顔のままやってきた。
「初にお目にかかる。私はマルケドーラ帝国の帝王、ビースト・ティヌール・バジル。ビーストと呼んでくれてかまわない。見てのとおりアンデッドだ」
ビーストは雅則とヒュンケルに挨拶した。すると
「こちらも自己紹介しよう。私がここロワール城の主、魔王ヒュンケル。そして傍にいるのが魔王ハーロックだ」
大柄のほうが挨拶した。
「見た目は普通の人族に見える。だが二人の力は配下から聞いている。数千、数万の兵軍を全滅するくらいの極大魔法を使えるらしいな」
ビーストが、そう言うと
「対面したいと聞いたが、応接間で話そうか。客には飲み物くらい出さないとな」
とヒュンケルに言われた。
「いや、私はアンデッド。飲み食いはしないので気遣いは無用」
「わかった。しかし立って話すのも何だから部屋を替えよう」
ビーストとペレニスは応接間に案内された。
「で、対面の目的は?」
ヒュンケルに聞かれ
「魔王という者に会ってみたかった。興味がある」
とビーストはこたえた。
「なるほど。俺もアンデッドには興味がある」
とハーロック(雅則)に言われた。
ビーストはペレニスに
「ペレニスは戻って待っているように」
とマルケドーラに戻そうとした。
「しかし・・」
「心配ない。彼らと話をするだけだ。戻っていなさい」
ペレニスはビーストを心配したが、抗うことはせず
「わかりました」
と転移して戻っていった。
「さて、邪魔をする者はいなくなった。いろいろ聞きたいことがあるが、教えてもらえないだろうか」
ビーストはヒュンケルとハーロックに言うと
「その前に、なぜマルケドーラ帝国は、いや、お前は他国を制圧し規模を広げている」
とハーロックに言われた。
「それは・・世界征服が夢だからだ」
ビーストははっきり言った。
「世界征服?・・その自分の夢を実現するために他国を犠牲にしているのか」
「世界征服、いや天下を取るのは男のロマンだ」
昔から、日本だけでなく、世界の武将は天下をとることを夢見てきた。守は、そう習ってきた。
「男のロマンって、お前はアンデッドだろう」
「・・実は、もとは人族なんだ」
「え?」
「この世界のではない。異世界から転移してきたんだ」
そう言うとヒュンケルとハーロックは驚いたように顔を見合わせた。そして
「お前も転移者だったのか」
と言われた。
「ということは、二人も?・・」
雅則とヒュンケルにうなずかれて、ビーストは安堵した気持ちになり
「転移者は他にも居たんだ」
と肩の力を抜いた。顔は髑髏だから表情はない。
が
「いくら異世界から来た者だからって、世界征服とか天下を取るとか、この世界の生き物を犠牲にする行為は許さないぞ」
とハーロックに言われた。
「はじめはその気はなかった。聞いてくれるか。私は鈴木守という営業マンだった。就職口がみつからなかったので、たまたま営業マンになれただけだが、営業成績は上がらず、そのうち会社も倒産。新しい就職口もみつからず、引きこもりになってしまった。そんなとき、この世界に引き込まれ、気づくと人間ではなくアンデッドになっていた」
ビーストは元の世界での自分のことや、転移してきてからのことをヒュンケルとハーロックに話した。
「俺が目を覚ますと、この異世界に転移していて、数百年前に降臨したビーストとして蘇ったらしい。そして先ほどのペレニスたちが、ビーストの守護者として俺が目覚めるのを待っていたようだ。俺はビーストとの役割を守護者たちに聞かされ、ビーストとしか生きられないことを悟った。アンデッドだから生きてはいない存在ではあるが。そして思わず『この世界をもっと知りたい。世界征服もいいかも・・』と欲が出てきて、それを聞いたイヴァンに『実現しましょう』と促されて今に至っている」
とビーストは身の上をヒュンケルとハーロックに話した。
「そのために、何人の人族や生き物を殺めてきた」
「イヴァンやペレニスたちにほだされているうちに止めるわけにはいかなくなった」
「彼らは人族でも魔族でもない、悪魔だ。お前は利用されただけだ」
「そんなふうに考えたくない。みんな私に尽くしてくれている」
「目を覚ませ。自分が何をしているか」
「では、なぜ二人は魔王なんだ」
ビーストが逆に聞いた。すると
「そういうことにしているだけだ。ただの人間だよ。ただ俺は、この世界で、この世界の生き物たちが共存して生きていくのがいいと思っている。そして、それを実現させている」
とハーロックがこたえた。
「どうしてそう思う?」
「俺も元の世界ではインドア派で、子供の頃はいじめられっ子だった。この世界に転移してきたものたまたまだった。信じられない力も備わった。そしてここは異世界。最初は何でもやってやれ、と思った。しかし、この世界に馴染んでいるうちに、考え方が定まっていった。この世界は人族や魔族、そのほか多種多様な生き物がいる。俺はそれらが共存していくほうがいいと思うようになった。人族だけが優先される世界ではなく、みんなが共存出来る、していく世界であるべきだと」
ハーロックの話を聞いたビーストは
「きみたちの生き方がうらやましい。が、俺はアンデッドとしてこの世界にいる」
とハーロックたちとは違うと思った。
「人族も魔族もアンデッドも関係ない。みんな仲良く出来ればな」
そう言われて
「・・会えてよかった」
ビーストは転移してマルケドーラ帝国の宮殿に戻った。
だが、では、これからどうしていけばいいのか。
ビーストは悩んだ。




