6.ドミミクの最後
ドミミクが
「ゾンビ軍でスラーレン法国に攻め入る許可をいただけませんか。最近は人族にやらせて少々退屈していますので」
とビーストに願い出た。
「わかった。ではスラーレン法国はドミミクに任せる」
スラーレン法国にドミミクがゾンビ軍団を率いて迫っていった。
スラーレンの宮殿では女王のプロティナが貴族たちに責められていた。
「女王が軍を解体したから、マルケドーラ帝国に抵抗する戦力はありません」
「じゃあ、あなたがたで法国を守ってくれますか?」
「それは・・」
「私は平和的解決を望みます」
ロワール城に戻った雅則とヒュンケルは、スラーレン法国の危機を知って宮殿に転移した。帝国の軍が外壁に迫っていた。
「あれは人族には見えない。まるでゾンビだ」
とヒュンケルが迫ってくる軍を見て言った。
「元の世界でゾンビを扱ったゲームをしたことがある。その光景のように見える」
「ヒュンケルもゲームをしていたのか。俺の友だちもゲーム好きのようだからあれこれ聞かされたことがあった」
「ゲームなら負けてもやり直しが効くが、この世界では現実だ」
「宮殿に近づく前に倒しておくか」
雅則は天を仰ぐと
「召喚!流星雨」
を降らせた。
空から流星が落ちてきて、迫ってくるゾンビの群れを倒していった。
「たちまち全滅させたな」
そこに
「俺のゾンビに何をしてくれている!」
と、どこからか声がした。
ゾンビ軍団を殲滅されたドミミクがスラーレン宮殿に転移してきた。
「人族には見えないが、どちらさん?」
雅則に言われて
「俺はマルケドーラ帝国の帝王の守護者の一人、ゾンビ(動死体)のドミミク。ゾンビを操る者だ」
とドミミクは名乗った。
「向かってきたゾンビは殲滅した。他にもいるのか」
雅則に言われて
「ゾンビは作れば何体でも増やせる。今まで潰してきた国の人族をゾンビに変えてきた」
とドミミクはこたえた。
「それは迷惑な話だ。今度はお前が潰される番だ」
「俺はアンデッド同様、寿命がない。俺を殺すことは出来ない」
「なら破壊するまでだ。サイコショットボール」
ドミミクは雅則にエネルギー弾を放たれた。
ドミミクは傷を受けても死ぬことはない。生きていないのだから。
「無駄だと言っているだろう」
と雅則に言い返したが、体をバラバラに破壊された。
「寿命だけでなく、肉体も無くしてやった」
こなごなになったドミミクは再び生き返ることはなかった。
◇
ゾンビ軍団とともに、ドミミクも命を落としたことをペレニスとイヴァンも確認した。
「ビースト様。やはり上位魔術師がスラーレン側にいるようです」
ペレニスがビーストに言った。
「何万もの軍勢を全滅させる魔法か。素晴らしい。あの上位魔術師を臣下にしたい」
「どのような者か調べてからにしたほうがいいと思います」
イヴァンがビーストに忠告した。
「いつも何者も恐れないイヴァンにしては慎重じゃない?」
ペレニスがイヴァンに皮肉めいて言った。
「いや、自分たちは優れたレベルと力を持っているとは自負しているが、世界は広い。どのような力のある者がいるか、それをあなどってはならない」
ビーストの言葉にペレニスは頭を低くした。
「やはり一気に攻めるのではなく、先に挨拶をすべきだろう」
「帝王が自ら出向くことはありません。私が確認してきます」
イヴァンがビーストを制した。
「イヴァンなら任せられる。では頼むぞ」
「はい。ペレニス、私を案内してくれないか」
ペレニスとイヴァンがスラーレン法国の宮殿に向かった。
◇
女王のプロティナは玉座に座っていた。
イヴァンと玉座の間に空間転移したペレニスは
「戦を好まないあなたが、上位魔術師を使って我がゾンビ軍団を全滅させるとは、私も甘く見ていました」
とプロティナに言った。
「あれは私が命じたことではありません。それにいきなり進攻してきたのはそちらでしょう」
「そうだったわね。では、誰がゾンビ軍団を全滅させてくれたのかしら」
すると
「それは俺たちだ」
とヒュンケルがもう一人の男(雅則)と現れた。
「魔王ヒュンケル。あなたが絡んでいたのね」
「スラーレン法国が潰されれば、ロワール城もただでは済まないだろう」
イヴァンが
「我々はマルケドーラ帝国の帝王の遣いの者である。控えろ!」
と声を上げると、近くに居る者たちは上から押し込まれるように膝間づいた。イヴァンの精神魔法だ。 しかし雅則とヒュンケルは立っていた。
「私の魔法が効かない?」
イヴァンが驚いた顔をした。
「何か魔法を使ったのか?効き目はないけど」
男(雅則)がイヴァンに言った。
「やはり上位魔術師。私の魔法を無効にするとは」
「おまえたち2人は人族ではないな」
「私はブラックデビル(黒悪魔)のイヴァン。そしてペールデビル(白悪魔)のペレニスだ」
「こっちも自己紹介するようかな。魔王ヒュンケルと魔王ハーロックだ」
「2人とも魔王なのか」
「スラーレン法国はおまえたちの好きにはさせない。近づくな」
「魔王の力がどのくらいか見せてもらおう。くらえ悪魔の炎」
イヴァンが雅則とヒュンケルに炎を浴びせた。だが・・。
炎が消えた後、雅則もヒュンケルも毅然と立っていた。
「ヒュンケルもレベルが高そうだな」
「レベルは調べたことがない」
雅則とヒュンケルはイヴァンを無視して会話をはじめた。
「レベル100の炎を防御するとは、これが魔王なのか」
「レベル100や200の炎では俺たちを焼くことは出来ない」
「ではこれではどうだ、デビルフリーズ」
イヴァンから放たれた氷が雅則とヒュンケルを覆ったが、その氷の波動が跳ね返り、イヴァンが氷付けになった。雅則のマジックリフェクト(魔法反射)が働いた。
「イヴァン!」
ペレニスは驚いて声をあげた。
「彼を転移して連れて帰れ。そして二度とスラーレンに近づくな」
雅則が言うとペレニスはイヴァンを連れて転移して戻っていった。
◇
マルケドーラ宮殿に戻ったペレニスはイヴァンにかかった魔法を解いて動けるようにした。
「イヴァンをしのぐ力を持ったものが居たのか」
ビーストがペレニスに聞いた。
「はい。魔王が2人いました。レベルも相当高そうでした」
「魔王というものが人族や魔族とどう違うのか分かりかねますが、私もあなどっていました」
魔法が解けたイヴァンがビーストに言った。
「このまま進軍しても荷の前になる可能性もある。私が直接魔王と対面してみようと思う」
ビーストが言うと
「ビースト様は誰にも負けないとは思いますが、万が一ということもあります」
とペレニスが押しとどめた。
「そのときはそのときだ。ペレニス、魔王にその旨伝えてほしい」
「承知しました」
雅則とヒュンケルがロワール城に戻ったことを知ったペレニスは、ロワール城に転移し魔王を名乗るヒュンケルとハーロックに
「ビースト帝王が魔王と対面したいそうなのでそれを知らせに・・」
と言った。
「ではここで待つと伝えろ」
それを聞いてペレニスは転移してマルケドーラ宮殿に戻ると
「二人の魔王はローワル城で待っているとのことです」
とビーストに伝えた。
「では会いに行ってくるか。ペレニス、転移してくれ」
ビーストはペレニスにロワール城に転移させた。




