3.カシール村の魔王
マルケドーラ帝国は近隣の国を落としては半径数百キロほどの大国になっていった。
ほとんどはスレイン男爵とアルベル将軍が率いる人族の軍隊が行うようになった。兵軍の数だけでも数万人は居る。
そして成果はペレニス経由でビーストに報告される。ビーストである守は、報告内容にはあまり興味を示さなかった。だがペレニスはもとより、守護者たちに、それを知られるのはまずいと考え
「今回の成果もいいようだな」
と褒めていた。
守よりよく目を通しているのがペレニスだった。内容を把握していないと、ビーストに何か質問されて、答えらないことがあるとまずいと思っているからだ。
「イヴァン、気になる報告書を見つけたんだけど、カシール村に人族とオーグが居るってなに?」
ある報告書に目を通したペレニスがイヴァンに聞いた。
「そんな細かいところまでは気にしないけどね。たしかカシール村は、かつてロワール国が開墾した村じゃなかったかな。城は今は廃墟になっているようだが」
ペレニスはスレイン男爵を呼んだ。
「カシール村について詳しく聞かせて」
「カシール村は農作物やアズパイアなど食料調達には適したところです。ところが、そこには人族以外にオーグも住んでいて、食料を渡すのを拒んでいるんです」
「人族とオーグが仲良くしているの?」
「普通は考えられません。共存はありえないことです。で、調べたところ廃墟になったロワール城に魔王なるものが住みつき、カシール村も管理しているようなのです」
「魔王?」
「人族かも知れません。ほとんど城から出ないようなので」
「ふうん・・食料はあなたたち人族には大事なもののひとつね。でもいちいちこんなことで私たちが出向いていたらきりが無いわ。自分たちで何とかしなさい」
「わかりました」
スレインはアルベルを呼んで
「カシール村は自分たちで何とかしろと言われた。人数を増やしてでもカシール村から食料を奪ってこい」
「はい」
アルベルは2000人の兵軍を率いてカシール村に向かった。
以前にカシール村に近づいたときは、オーグが十数体出てきて、アルベルたち兵軍の前に立ちふさがった。
だが、今回はオーグは出て来ない。
「俺たちの数に恐れ入ったか?」
オーグの代りに何者かが一人で歩いてくる。
「ひとり?・・まさか・・」
アルベルは兵軍を停止させ、一人で前に出て行った。そして
「一人で出てくるとは、まさかお前がこの一帯を治めることになった魔王などと言わないだろうな」
と言った。すると男は
「その魔王とは違うが、魔王には変わりない」
とこたえた。
「なんだと?」
「マルケドーラ帝国の軍隊が村に何用だ」
「村で実った穀物や果物を貰いに来た」
「マルケドーラ帝国は野党の集まりか」
「野党呼ばわりするとは心外」
「カシール村はマルケドーラ帝国の領地か」
「これからそうするつもりだ」
「だったら帰ってもらおうか」
「今日はオーグが居るから2000の軍を引き連れてきた。おめおめと帰れるか」
「ここから先は行かせない」
「これだけの軍に一人で出張ってきたんだ。ただの人族じゃないことは信じてやろう。死にたくなければ、そこをあけろ」
「死ぬのはおまえらだ」
「かまわん。槍で突け!」
何人かの兵が槍を向けながら男に向かっていった。だが男は
「フィンガーマグナム」
槍で向かった兵たちが継ぎ次に倒れていった。
「攻撃魔法か。我々も攻撃魔法が出来る。魔法を浴びせろ!」
男に向かって一斉に魔法攻撃が繰り出された。
「これでひとたまりも・・あ・・え?・・」
男は防御魔法で防いでいた。そして
「それで終わりか」
と言った。
「嘘だろう。本当に魔王なのか?」
「面倒なのは嫌いだから。召喚流星雨!」
男が声をあげると、上空に黒い雲が現れ、そこから大きな火の玉が落ちてきた。そして軍を殲滅していった。
「ばかな。なんだこの魔法は」
アルベルは一目散に逃げ帰った。そしてスレイン男爵に報告した。
「2000の兵が全滅した?!」
「空から大きな火の玉が落ちてきて、あっと言う間でした」
スレインは信じられなかったが、ペレニスに報告した。
「2000もの人族を短時間で殲滅する魔法?やはり魔王は存在するのかしら」
ペレニスは自分なりに調べてビーストに報告した。
「山を越えたところに人族がロワール国を築き、そこにスラーレン一族という人族が入ってきて占領し、近くの大地にスラーレン法国なる国を築きました。その後、ロワール城は廃墟になったはずですが、確かに誰かが住んでいるようなのです。そしてカシール村では人族とオーグが共存しているようです。まずはロワール城の詮索を・・」
だがビーストである守は
「いや、待て。・・2000もの人族を殲滅する魔法を使えるのだろう?もっとすごい魔法も使えるかも知れない。・・彼のほうから迫ってこないなら、様子を見てみよう」
と制止した。
「わかりました」




