第九話 ステラの意外な才能
ここから戦場までは三百メートルは優に超えているだろうか。
スコープから覗く戦場は実に悲惨だった。
改めて、戦争なんてよくないと思う。まあ、これは人対魔物だけど。
「どこを狙えばいいの?」
「そうだね~。あそこ、魔物がたくさん集まってる場所なんてどうかな?」
言われた場所を探す。
確かに、一か所だけ集中的に魔物が集まっている。
「まあ、最初から狙って打てるもんじゃないから。弾はたくさんあるし、兵士たちにバレないようにゆっくりやろうや」
準備の時に説明は受けたので、使い方と打ち方は分かっている。
言われたことは一回で理解するのが、工業高校に入学したときに自分で決めたことだ。
「ふうー。いけ!」
狙いを定めて、一発。
懐かしい発射音と共に、弾が打ち出される。
ややあって、どでかい爆発が巻き起こった。
「想像よりも強くない?」
てっきり、小さい爆発かなと思っていたら、ロケットランチャーくらいの大爆発に少しびびってしまった。
「へえ、一発で狙った地点に当てれるなんてステラは意外と狙撃の才能があるかもね」
「意外とはなんだ意外とは」
そんな会話をしつつまた狙いを定める。
次はどこにしようか。
ドガ――ン!!!
爆発と共に、城門に群がっていた魔物が吹き飛んだ。
「何事だ?」
カリウムは予想外の爆発に眉間に眉を寄せる。
「どんな魔術だ?まさかなにかの超級魔術か?」
城壁の上から爆発があった場所を覗くとぽっかり大きな穴が地面に空いていた。
そして、次々と爆発が巻き起こる。
全て魔物に向かって撃たれていることから敵ではないだろうと推測した。
「全軍好機である!残っている魔物を蹴散らせ!」
私が大声で号令をかけると、兵士と協力してくれた探索者たちが一斉に飛び出していく。
「なんとかなるだろうか」
そう思った時だった。
私の顔すれすれを何かが通過したような気がした。
「な⁉」
何事かと後ろを振り返ったとき、巨大な爆発が起こり、大型の飛行系の魔物が街に落ちていくのが見えた。
飛んできた方向に私は心当たりがあった。
「まさか、ステラ?いいやそんなわけがない!技能系魔術一つしかスキルを持っていないあいつに何ができる」
すぐにその可能性はないだろうと考え、また向き直った。
「気が向いたら、落ちぶれた顔でも見に行ってみるとしようかの」
「よく撃てたねえ。あの距離を」
シエンは私の狙撃の技術に驚いていた。
「まあ、繊細な操作は慣れてますので」
少しどや顔で答えると、シエンは自分の体でまた頭を叩いてきた。
「すぐに調子に乗るんじゃない。ほら、帰るよ。用は終わった」
私は少し名残惜しく感じながらも、シエンの転移魔術でソリトゥスに戻った。
「ぷはぁ!ちかれたー」
戻るなりベッドに体を埋める。
「そう言えばお前ここにきてから風呂に入ったのか?」
「あー、入って、ないね」
ここに来てから十日。
忘れていたがお風呂に一回も入っていない。
女の子としてあるまじき失態である。
「でも、水もないし」
「水が出る場所なら知ってるが?」
シエンは逆に知らなかったのか?と言いながら家の裏にある井戸まで私を案内した。
「これは知ってるよ。いつも飲み水に使ってるもん」
「ここの水使えばいいじゃん」
「…その発想はなかった」
貴重な飲み水だからと、飲むこと以外に考えていなかった。
でも、一つ問題がある。
「入れる物は?」
「いや作れよ。あんたの魔術は生産技術だろーが」
至極当然のことを言われハッとしていた。
今まで、生き抜くことばかり考えていたせいで自分の身の周りのことを全く考えていなかった。
髪も自分で触って分かるレベルで、ぼさぼさである。
私は、捨て子か。
自分に自分でツッコミを入れながら、風呂に入れることにワクワクして、おいてあった鉄を使ってドラム缶をつくることにした。
「五右衛門風呂だけどいいか。どうせ周り誰も居ないでしょ」
頑丈で安定した石の上にドラム缶を置いてもらう。
まったく、シエンの浮遊魔術は便利である。
あとは、
「頑張って水を入れるだけ」
幸いにもここの井戸はほぼ満タンまで水が入っていたので水は入れやすかった。
八分目まで水を入れて、拾ってきた木をくべていく。
「火打石どこだっけ」
机の上に投げられていた火打石を持ってきて火をつける。
水がちょうどいい温度になるまで暇なので、街を探索してみることにした。
「何かあるかなあ」
鉱山に行くときは見えなかったが、東側に大きな屋敷があった。
大方、ここの領主が住んでいたのだろう。
「家を一回全部壊した方がいいかな」
直すよりも、壊した方が新しい自分の都市を作りやすいだろうなあ、と頭で妄想しながら歩いていくと、
「鉱石屋」と書かれた一軒の店を見つけた。
「ほえー、こんなところあったんだ」
ボロボロの扉を押し倒し、中に入る。
中にはいろいろな鉱石が少し置いてあった。
魔物から逃げた時に忘れたのだろう。
「ありがたくちょうだいしていこう」
手持ちの袋に入るだけ入れていた時、奥に扉を見つけた。
「何かあるかな」
好奇心から扉を開けると、そこは倉庫ぽかった。
奥にご丁寧にツルハシが置いてある。
なぜかこれだけきれいなままで、他の道具よりも丁寧に置かれていた。
「何か特別な物かな?」
良さげだったので、これだけもらっていくことにした。
とことこ家に戻ると、シエンが暇そうに火を眺めていた。
「お、帰ったか。多分ちょうどいいくらいだと思うぞ。ん?それは…」
シエンがツルハシに気が付いた。
「これ?鉱石屋ってところにあったから貰ってきた」
「それ、あたしと同じ神級魔術道具だぞ?」
「へ?」
そんなに高価なものだったのか。
だけど、ツルハシに神級とかあるのか?
というか
「神級って?」
私がそう聞くと、シエンは説明を始めた。
「あたしのような魔術道具にはすべて級が存在する。下から下級、中級、上級、超級、神級、創級、蒼穹。あたしとそのツルハシあとは、聖界リンスもそうだな」
驚いた、そんなレアな物がここに3つもあるんだ。
「さ、風呂に入りなよ。周りはあたしが見ておくから」
ドラム缶の底に合うように作ったすのこを沈める。
そして、服を脱いで暇な時に作った物干し竿につるしておく。
「やっぱり、八歳だからいろいろ小さいねえ」
「う、うるさい!セクハラだ!」
シエンが私の体を見て物足りなさそうに言ってきたので怒っておいた。
わたしだっていつかは、ルベルさんみたいなきれいな人になるもん。
ぷんすこになりながら体を冷水で流し、軽く洗ってから梯子を伝って五右衛門風呂に入る。
周りには木の土台を作ってるのでいつでもすぐに上がれる。
「はああ、ご~く~ら~く~」
溶けてしまいそうなくらい気持ちがいい。
これで、明日からも頑張れそうだ。
今回の話はいかがでしたか?
面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。
今後ともよろしくお願いします。




