第十話 人がやってきた
次の日の朝、朝ごはんを食べた私はプラチナムインゴットをどうしようか考えていた。
「ねえ、いいものない?」
「そうだなあ」
シエンが珍しく考え込んでいる。いつもならすぐに答えが返ってくるのに。
「あ、いいのがあるぞ。その名も魔回の指輪だ!」
なんだそれ。
分かっていないのが顔に出ていたらしくシエンは本を開いて説明を始めた。
「魔回の指輪 着用者の魔力を継続的に回復してくれる指輪。魔物石とプラチナムインゴットがあればお前のスキルで作ることが出来るぜ」
魔物石は弱い魔物を狩った時の分があるので問題ない。
「じゃあ、作ってみようかな」
「けど、気を付けろよ?レア物だし作るのに多分魔力量の8割ぐらい持ってかれるぞ」
はーい、と適当に返事をしておいて、指輪作りをすることにした。
「生産技術 基礎魔術道具の生成 魔回の指輪」
体から魔力が抜けていくのを感じる。
出来上がった頃には、魔力がごっそり減っていた。
「疲れた。でも、できた!」
早速指輪をつけてプロフィールを見てみる。
すると、すごい勢いで魔法容力量が回復していった。
「これは……想像以上に凄い」
想像以上の効果に感動し、涙が出そうである。
やっぱり自分でものを作ることほど面白いものはない。
愉悦に浸っているとシエンが話しかけてきた。
「おい、何者かが近づいてきているぞ。この前の探索者じゃなさそうだ」
え?この前頼んだやつで来てくれたのだろうか。
どちらにせよ、会いに行かなくてはならない。一応領主だし。はずかしいけど。
念のためシエンに貰ったライフルを背負い、入口へと向かう。
この銃、なんと軽量化もされているらしい。
便利なことこの上ない。
一体誰が来たのだろう、といろんなことを考えながら入口の方まで歩いていくと、なんと100人くらいの人が群がっていた。
行商人か何かと思ったが、服装に違和感を覚える。
「なんか、みんなボロボロじゃない?」
敵の罠かもしれないと、警戒しながら話を聞きに行くことにした。
「あ、あのー。この都市に何用でしょうか」
恐る恐る近づき、そう尋ねると集団の一人がびっくりして腰を抜かしてしまった。
「お、お前どこから出てきた!さ、さては貴様、幽霊の魔物か!」
初対面の人に幽霊と言われ、落ち込んでいると杖をついた七十代くらいのおじいさんが民衆の間をぬって出てきて挨拶をしてくれた。
「わしらはここから四日ほどの位置にあるアルバ村の者です。ここにはかつての鉱山都市ソリトゥスがあったと思うのですが…」
不思議に思い後ろを向いてみるがなんともない。廃れた私の街があるだけだ。
「え、えっと、ここにありますよ?ソリトゥス」
「ですが、あなたの後ろには何も無いではありませぬか」
全く持って意味が分からなかった。
現に街はあるのだから。この人たちは幻でも見ているのだろうか。
「おそらく、あの短剣のせいだ。今、短剣の効果をいじってきたからもうすぐ効果が出るはずだ」
いつの間にかシエンが後ろにいてこっそり教えてくれた。
そして、集団から驚きの声が上がる。
どうやら、効果が切れたのだろう。
改めて、聞いてみる。
「こ、この都市にどのような御用でしょうか」
そう聞くが、ほぼ全員口を空けて止まっていた。
「あ、ああ、私たちはここに引っ越したいのじゃよ。もはやあの村に住むことは出来んくなってしもう
た。だからこうやって村の衆と荷物と家畜をすべて連れてきたのじゃ」
よくよく周りを見ると、前世で見たような牛のような生き物や、重そうな荷物がたくさんあった。
「ところで…君は誰じゃ?」
いや、一番最初に聞くべきことでしょうが。
とまあ、そんなことは置いておいて、とりあえず村長っぽい人を私の家に案内して他の人には外で待機し
てもらうことにした。
言うとき、めっちゃ恥ずかしかったけど。
人に命令するのなんて実に八年ぶりだった。
「わ、わたしの名前はステラ。い、いちおうこの都市のりょうしゅでしゅ、あ、です」
かみかみになりながら自己紹介をすると、村長は不思議そうに私のことを眺めていた。
「君が領主?爵位もないのに?」
「だ、だって、とばされたんですもん」
うつむきながらそう言うと、村長は何かを察したのかこれ以上詮索はしなかった。
「それで、この街に住まわせてくれんじゃろうか」
「い、いですけど。手伝ってもらう、こと、たくさん、ありますよ?」
久しぶりに人と話すのでとぎれとぎれにはなってしまったが意味は伝わったようだ。
「私たちのような者にできることがあれば。何なりと」
案外すんなり了承してくれたおかげで、頭が爆発しないですんだ。
こうして、私の街に領民が百人増えた。
嬉しいばかりだが、やることが山のように増えてしまったのは言わないでおこう。
今回の話はいかがでしたか?
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今後ともよろしくお願いします。




