第八話 戦場へ行こう
場所は変わり、インベリウス侯爵領都市カーナイトスにて
「まだ、救援はこんのか!」
昨夜のロッド・モンドと魔災により、夜が明けても魔物に襲撃されているこの領ではもはやほぼ全員が極限状態だった。
「どんなに急いでも王都には、二週間かかります!」
「ぐぬぬ…」
自ら戦場に立っていたカリウムは、ボロボロとなった都市の壁を見て、もはや後がないと悟った。
「市民は避難させたのか!」
「はい!あらかじめ作っておいた避難豪に避難させております」
「ならば…」
カリウムはもう一度戦場へと目を向ける。
まだ、三万から四万くらいはいそうであった。
「やるしかないか」
カリウムは覚悟を決め両手に魔力を込めていく。
「城壁の外にいる兵士を全員避難させろ。巻き添えを食らうぞ」
「はっ」
兵士の非難が完了したのを見て、カリウムは魔術を発動した。
「炎魔術 炎壁!」
数十メートルにも及ぶ炎を壁が魔物を包み込んでいく。
その炎と煙ははるか遠方でもかすかに見えるほどに。
「あとは任せた。儂は魔力回復のために少し休む。クロムとラドン、ラナトリアにもいざとなったら戦場に出るように連絡しておけ」
兵士は命令を遂行するために、城壁を降りていった。
「ちい、あの忌々しいステラがいなくなってからずっとこうだ。やはり殺してなかったことにしておけばよかった」
ふらふらしながら、カリウムは城壁から戦場を眺めていた。
「おーい、起きろー」
なにかに叩かれながら私は目を覚ました。
外を見ると、少し日が傾いてるように感じられる。
「いてててて、あれ、わたしなんで倒れてたんだっけ」
「魔力の使い過ぎだよ。まあ、慣れてくるとあんましこんなことはないんだけど」
プロフィールを見てみると、寝ていたおかげか魔力が半分くらいまで回復しいていた。
「とりあえず、今日あの機械生成の魔術を使うのはやめときな」
それよりも、とシエンは興味津々で私が作っていたバネを持ってきた。
「これ、何に使うんだ?」
「マットっていうこのベッドに敷くものを作ろうとね」
幸いにもシーツになりそうなものは周りの家からとってきている。
「あとはこれをっと」
私は、作ったバネを次々と布の上に置いていく。
そして、マットレスに必要なものを並べ、魔術を唱える。
「生産技術 道具錬成 寝具」
ぱあっと光り、前世でよく見たマットレスが出来上がった。
その様子を見ていたシエンはため息をついている。
これをベッドに置き、少しぼろいシーツをかけたら、
「かんせーい!」
「おー、できたか。どれどれ」
なぜか、製作者の私より先に本のシエンがベッドに飛び込んだ。
「うお⁉これめっちゃふかふかやん!」
まあ、昨日まで、半分木だったからね。
私も、シエンと同じようにベッドに飛び込んでいく。
「ふわあ、ふっかふかだあ」
前世の最上級ホテルの様にはいかないが、それでもいいものが出来た。
「ああ、そういえばステラ。外を、カーナイトスの方を見てみな」
なんで?と思いながら、言われるがままに外に出て見てみると、カーナイトスの方から煙が上がっている気がした。
「え?」
「おそらく、まだ戦闘が続いているんだろうな」
シエンが同じように外を眺めて言う。
助けにいきたい。母の所へ行きたい。
けど、
「私は追放された身。今さらあの街に戻るなんて……それに、私ろくに戦えないし」
中身は十七歳と言えど、力と体は八歳。
まだ、ろくに戦えるような体ではなかった。
あと二年。もう二年あれば変わっていたかもしれない。
「助けに行きたそうだね」
シエンが私の表情を察したようだ。
「助けに行きたい。でも、無理なんだ。私は戦えない」
「だが、スライムや猪相手には戦っていたじゃないか」
「でも……」
すると、シエンは自分の体で私の頭をぶっ叩いた。
「いったーい。何なの急に」
「あんたはこの廃墟となった都市を再興するって決めたんだろ?なら、その障害となりうる魔物は倒しておくべきだ」
「でも……わたしに」
「でもじゃねえ!!」
びくっと体が震えた。初めてだ。こんなにも必死なシエンは。
そして、この一言は前にも言われた気がした。
良くない口癖かもしれない。
「お前は自分を過小評価しすぎだ。前世でもそうだったから、それを引きずってるんじゃないのか?」
うっ、心に刺さる。
確かにそうだ。前世ではずっと自分を下げていた。
親には姉以下だといわれ、学校でも誰も相手しない。ちょっと自分を上に見せればすぐに罵詈雑言が飛んでくる。
「だったら、どうやって戦うの」
私が絞り出した、最後の質問だった。
「これをやろう」
シエンは自らの本を開け、長い鉄の筒を出した。
しかし、私はその鉄の筒に見覚えがあった。
「スナイパー、ライフル……」
昔、父が撃っていたのを一度だけ見たことがある。
「これはな、もちろん普通の狙撃銃としても使えるが、もう一つ固有能力がある」
それは?と聞くと、シエンは声高らかに答えた。
「着弾と同時に弾を爆発させることが出来るんだよ」
私は絶句した。
そんな銃、見たこともない。
ここが前世で言う異世界だから、できることなのだろうか。
「どうする?行くならこれをやる。最大限サポートもする。だが、無理をしてまで行く必要はない」
考えた。高校受験の時のテスト並みに考えた。
でも、どれだけ考えても結論は一つだった。
「行きます」
「よっしゃ、そう来なくちゃな!」
すると、シエンは魔力を込め始めた。
「ちょっと、準備は⁉」
「あたしが持ってるから大丈夫。お前さんはその銃で魔物とその周囲を吹き飛ばすだけだ!あたしの指示通りにな」
そして、シエンは魔術を発動した。
「例外魔術 転移魔術」
景色が一瞬にして変わり、眼前には戦場が広がっていた。
私がいる場所は少し小高い崖のような場所である。
狙うには最適。だが、八歳児が来るような場所ではない。
「さあ、準備しろ」
そういわれ二脚を立てているとき、ふと思ったことがあった。
「これ、反動は?」
そう、この八歳の私の体では、下手すれば反動で私の肩が吹き飛ぶ。
「大丈夫!無反動だから!」
どこまでも、常識外だなあと思いながら、準備を進める。
(ステラも変わったな。前まではスライム一匹にも怯え、人と話すのが苦手な少女だったのに)
シエンはその姿を眺めながら、面白い主を見つけられた、とないはずの口角が上がっていた。
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今後ともよろしくお願いします。




