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第七話 ロッド・モンドと魔災

嫌な予感がした私は猫車を全力で押し、家に戻った。


「すごく嫌な予感がする。急がないと!」


家に戻り、鉱石をすべて家に入れ、一階建ての私の家の仮の窓を全て閉め、火をつける。


「一体どういうこと……」


この世界に転生して初めての現象で、私は何も分からなかった。


「あれは、ロット・モンド。月が赤くひかり、すべての魔物が活性化する夜だよ」


「うわ!本が喋った!」


調べようとしたら本がいきなり喋りだしたことに私は驚いて、椅子から転げ落ちてしまった。


「失礼な。本だって喋るわ」


「で、でも今まで喋ってなかった…」


「あんたがあたしに心を通わせていたからじゃない?」


何が何だか分からず呆然としていると、辺りが騒がしくなり始めた。


「あんた、短剣持ってるかい?」


いきなり聞かれ、私はいつもの木の短剣を出して見せた。


「違う違う。母に貰った方だよ」


「え?」


奥に置いてあった箱から母の短剣を出し、本に見せた。


「これ?」


「そうそう。それにあんたの血を一滴流してみな」


その一言に私は顔を引きつらせる。


「え、こ、こわいよ」


本はため息を付きながら私のところまでふわふわと寄ってくるとどこからか針を出してきた。


「ほい。これなら痛くないから」


言われるがままに指の先をぷすっと刺し、短剣に血を一滴流してみた。

すると、短剣が光り始める。


「な、なに?何をしたの?」


「まあまあ見てなって」


光はどんどん強くなっていき、ついに目が開けられないほどになった。


「よし、できたぞ」


目を開けてみると、短剣が宙に浮いていた。


「何が起きたの?」


「この短剣「聖界リンス」の固有能力。聖結界を発動したのさ」


短剣は煌煌と輝いており、蝋燭もいらなそうだった。


「さて、改めて初めまして。あたしは「全てを記す書」だよ」


「うん。それは見たらわかる」


私が分からないのはなぜ本が喋れるのか、ということである。

そして、聞きたいことが山のようにあった。


「ま、まず。ロッド・モンドが起きたけど外は、ここは大丈夫なの?」


「ん?ああ大丈夫だよ。この聖界リンスが結界を張ってくれてるから」


とりあえず魔物に襲われる心配が無くなったので、次の質問をすることにした。


「なんで、喋れるの?」


「喋るというか、念術っていう魔術だな。人は使えない。あたしみたいな希少な魔導書とか、一級品の剣とかが自我を持った時に使えるようになるんだよ」


「答えになってない」


思わず、怒り気味で言ってしまった。


「すまんすまん。なんでかっていうと、あんたがあたしを大事にしてくれてるからだよ」


「はい?」


よく分からなかった。物は大事にするべきだと、前世の高校でもさんざん言われたことである。

工具、道具、機械は大事に丁寧に扱えと。


「普通じゃないの?」


「普通じゃないよ。誰がいつも使い終わった後に丁寧に拭いたりしてくれるんだよ」


この本が言っていることが少しは分かる気がした。

たしかに、あそこまで丁寧にする人なんて中々いないだろう。


「それとだなあ、お願いがあるんだけど」


本にいきなりそんなことを言われてびっくりしてしまう。


「な、なに?」


「名前、つけてくれ」


正直、びっくりした。

確かに、これから一緒に過ごすなら名前は必須だ。


「何がいいかなあ」


 前世で覚えてるアニメのキャラの名前をそのまま使っても良かったが、それだと自分で考えた気がしな

い。


「あ、オムニシエンスのシエンはどう?」


「シエンか、いいね!あたしは今からシエンだ!ところで、オムニシエンスってなんや?」


「オムニシエンスっていうのは、私が知っている言葉で、全知とか全能って意味だったような気がするか

ら、つけた」


「なるほどねぇ」


嬉しそうに本が飛び回っていると、地響きがした。

前世で言う、震度五ぐらいの大きさである。

つい癖で、机の下に潜り込んでしまった。


「なにが起きたの?」


「ステラ、最悪の事態だ。ロッド・モンドの日に魔災が起きやがった」


「魔災?」


また、聞いたことのない言葉に私は首を傾げる。


「魔物が迷宮や森からあふれ出し、町や村を襲う現象の事さ。これとロッド・モンドが同時に起きるなんて数百年に一度だけどな」


まるで、いままで見てきたような言い草である。

まあ、「全てを記す書」だから、知っていてもおかしくないか。


「ど、どうする?」


ソリトゥスはすでに廃れているので関係ないが、ここから二日の距離の所には私の故郷である都市カーナイトスがある。


「カーナイトスには、お前の父や騎士団もいるんだろう?大丈夫じゃないか?」


どうだろう、と心の中で思いながら宙に浮かぶ短剣を眺める。


「私にできることはない?」


聞くと、シエンがきっぱり答えた。


「ない」


「だよね……」


分かってはいた。

家から出ることもできず、かといって寝る気にもなれないので掘った鉱石の抽出をすることにした。


「ほんっと何でもできるよね。この魔術」


「まあ、恐らくそこに書いてあるのは手に入れたスキルで、今使っている魔術はその魔術の固有能力みたいなもんだろうね」


シエンは見たことも聞いたこともないよ、こんな魔術。と言いながら、私が鉄やら銅やら鉛やらを抽出しているのを眺めていた。


「ふう、終わったー」


三十分ぐらいだろうで、プラチナムを除く鉱石の抽出が終わった。

机にはきれいな鉄と銅のインゴットと鉛の塊がある。

すると、


【生産技術のレベルが上がりました。レベル3→レベル4。技能系魔術 生産技術の内容が確認できるようになりました】


「どゆこと」


不思議に思い、プロフィールを見る。


――――――――――――――――――――

ステラ・インベリウス・レグルム 8歳 女 人族

レベル15 魔法容力量 710/710

称号 インベリウス侯爵家の元三女 全てを知る者

適性魔術 生産技術 レベル4

工具及び道具の生成、錬成、修復 (レベル2)

基礎魔術道具の生成

――――――――――――――――――――


「何も変わっていないような…」


試しに生産技術の文字を押してみると、新たに文字が浮かび上がってきた。



――――――――――――――――――――

生産技術

基本として、鉱石、その他材料の抽出、変形などを行うことが出来る。

使用魔力量が十分の一になる。

レベルを上げることで自身の想像を形にすることが出来る。

生産技術のレベルは、自身のレベル、魔術使用回数で上がる

――――――――――――――――――――


「なるほどぉ」


今まで、書いてないことが出来る理由が分かった。


「そんで、プラチナムどうすんの?」


シエンが、唯一抽出されていない鉱石のままの青白いプラチナム鉱石を眺めて言う。


「プラチナムインゴットにして保管しておこうかな」


私は抽出をして、きれいなインゴットを作り箱にしまった。


「さて、寝ようかな」


外では魔物が暴れカーナイトスには魔物が進軍している中、私は寝れるのかなと思いながら床についた。


「さて、あたしも寝ようか」


本だから寝る必要はないが、とシエンは思いながら机の上に身を置いた。




「うー、肩痛い」


起きて外に出てみると、昨日と全く景色が変わっていなかった。

あの短剣のおかげでこっちには魔物が来なかったのだと私は胸をなでおろした。


「さて、今日はマットを作ろうか」


シエンはまだ返事がないので、先に銅合金をつくることにした。

起こさないように、インゴットを全て外に出し作業を始める。


「たしか2~20%くらいだっけ。銅90グラムに鉛10グラムでいいかな」


この比率で銅合金をたくさん作り、そこからバネへと錬成していく。

全部作り終わるころにはすでに日が高くなっていた。


「ふう、終わった~」


体が尋常じゃないほど気だるい。


「プロフィール」


――――――――――――――――――――

ステラ・インベリウス・レグルム 8歳 女 人族

レベル15 魔法容力量 23/710

称号 インベリウス侯爵家の元三女 全てを知る者

適性魔術 生産技術 レベル4

工具及び道具の生成、錬成、修復 (レベル2)

基礎魔術道具の生成

――――――――――――――――――――


気づけば魔法容力量が限界まで減っていた。


「がんばったねえ」


いつの間にかシエンが後ろにいた。


「いつからいたの?」


「さっき」


すると、脳内に声が響いた。

【生産技術のレベルが上がりました。新たなスキルを取得しました】


「やっと、機械生成のスキルを覚えたようだね」


本だから表情はないが、明らかににやけているような気がした。


「どういうこと?」


「あんたの「前世」の技術が使えるってことだよ」


「な、なんでそれを」


「私は「全てを記す書」だぞ?知ってて当然さ」


私は慌ててくぎを刺した。


「い、言わないでよ。誰にも」


「分かってるさ」


そういえば、今気づいた。私、始めて話す人とまともに喋れたことないのに。

なぜか、シエンとだと普通に話せる。


「あ、人じゃないからか」


そうか、と手を打ち気持ちを切り替えた。

さっき言っていた通りであれば、前世の技術ということは…


「生産技術 きかいせい」


魔術を唱えようとした時、強烈な激しい痛みが頭を襲う。


「あ、ああ」


その場にうずくまるようにして私は気を失ってしまった。


「あーあ、まあ初めてだし仕方ないよね」


シエンはステラを浮かせてそのまま家のベッドに運んだ。



今回の話はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。

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