第五話 生産技術の凄さ
「ふわあ~」
良い目覚めとは言えないが、周りが何ともなっていないので、何とか夜を過ごすことはできたらしい。
「魔物のお肉って食べられるのかな」
腹ごしらえをしながら、本を見ていると面白いページがあった。
魔物の調理方法
魔物の中には食べられるものがあり、きちんと処理することで家畜の何倍もおいしくなる。
昨日作った短剣を片手に私は近くの森に入った。もちろん、今日の食料を確保するためである。森は廃墟とはまた違った雰囲気がある。あちこちで獣の鳴き声がし、時折ガサガサと音がする。進んでいくと、少し開けた場所に猪のような魔物が寝ているのを見つけた。
「今日のご飯はあいつかな」
そっーと近づいていくが、地面に落ちていた木の枝をふんでしまった。(あ、やっちゃったあー)まずいかな、と思い猪の方を見るが、まったく気づいていない。
「え?意外と鈍感?」
そのまま近づき、背中を一突き
「グモオォーーー!!!」
雄叫びを上げ、暴れまわるがもう一本の短剣でとどめを刺した。するとまた脳内に声が響いた。
【レベルが上がりました。レベル10→レベル11。新しいスキルを獲得しました】
「お、またレベルが上がった」
そして、倒れている猪を見て思った。
「ふう、どうやって持って帰ろ」
昨日と同じような疑問を口にしながら、本と同じように処理をしていく。
「へえ、こいつの名前ってドーンボアっていうんだ」
ドーンボア
夜行性で目が効く。
基本的に昼は寝ており、鈍感である。
攻撃方法は突進攻撃
下処理をしながら、本を眺めていると、森全体に大きすぎる雄叫びが響き渡った。
「な、なに?」
いつもならここで逃げ出すだろうけど、今回限りはそんなことも言っていられなかった。
「一応確認、確認だけね」
そろりそろりと近づいてく。声の方まで近づいていくと、段々と木々がなぎ倒され地面に穴が開いていることに気が付いた。そして目の前に広がっていたのは、探索者と思われる人たちと、夢にまで見た黄色いドラゴンだった。
「ど、ドラゴンだあ」
私は目を輝かせ、ドラゴンを見つめる。すると、その真横を何かが通り過ぎていった。
「へ?」
後ろを向くと、さっきまでドラゴンと戦っていた、赤髪の女性が近くの木に突撃していた。
「だ、だい、じょうぶ?」
私はドラゴンそっちのけでその女性に駆け寄り、安否確認をする。
「だ、だいじょうぶだ、それよりも君のような子供がここに居てはいけない。早く逃げるんだ」
こんな危機的状況で人の心配ができる余裕に感心しながら、女性の装備を見る。
どれもボロボロで、剣に関しては真っ二つに折れていた。
「ウィリデ、ニゲル!この子を連れて街へ行け!応援を呼んでくるんだ!」
緑髪の男と黒髪の女性が駆け寄ってくる。
その後ろから青い髪の男もやってきた。
「だが、ルベルはどうするんだ?」
緑髪の男が、ルベルと呼ばれた女性に問う。
「私は、ここに残ってこいつを食い止める」
ドラゴンは私たちを見失っているようで、周囲を探し回っていた。
「その装備では死んでしまうぞ!」
「ああ、カエルラの言うとおりだ。せめて、剣が無事ならな」
カエルラと言われた男の一言に緑髪の男も同調するように言う。
「け、けん。あれば、かてる?」
こんなところで人見知りが爆発して、かみかみで途切れ途切れになってしまったが通じたようだ。
「ん?ああ」
ルベラが折れた剣を悔しそうに眺めている。
それを見た私は、新しいスキルが使えるかもしれないと思った。
「どうした?」
ルベラが、私が剣を眺めているのに気づき、話しかけてきた。
「どうする?時間はもうないぞ」
カエルラは焦ったように言う。
確かに、いかに木の裏に隠れているとはいえ見つかるのは時間の問題である。
「せ、せいさんぎじゅつ こわれたものをなおせ 修復」
私が折れた剣に魔力を込めると、にょきにょきと剣の刀身が復活した。
「「「は⁉」」」
ルベラを除く三人は驚きに驚いている。
「ど、どうやった!」
黒髪の女性が私の両肩を掴んで聞いてくる。
「今はそんなのどうでもいい!剣が治ったのなら、あいつを倒せるぞ!全員、準備をしろ!」
ルベルのいきなりの一言にも、三人は迷わず返事をした。
「「「了解!」」」
4人の行動は実に素早かった。
緑髪の男性がドラゴンの注意を引きつけ、黒髪の女性が魔術で攻撃、カエルラと呼ばれた男性がルベルを魔術で強化して、とどめを刺す。
アニメでよく見るような、きれいな立ち回りだった。
「風魔術 風弾!」
魔術によってひるんだ一瞬のすきに、ルベルが一撃を叩き込む。
「これで終わりだあ!」
その時、ドラゴンの羽根が体を覆う様にしてきた。
「ちい、面倒な」
そのまま、振り下ろした時だった。
スパッ
「へ?」
ドラゴンの羽根ごと首が切れた。
その一部始終を遠巻きに見ていた私は、
「え?修復にも効果あるんだあ」
凄すぎる戦いを目にして、半分感情が抜けていた。
呆気なく討伐が終わり四人が、尻もちをついていた私のところへやってくる。
「さっきはありがとな。私の名前はルベル。探索者パーティー赤の星のリーダーをやってる獣人族だ。よろしくな。そこの青髪のがカエルラ、こいつも獣人族。緑髪のがウィリデ、黒髪のがニゲルだ」
三人とも軽く礼をしてくれる。
「わ、わたしは、ステラでしゅ」
あ、噛んでしまった。
その姿を見て、ルベルが笑いをこらえている。
「くっくっ。すまん、ついな」
噛んでしまったことよりも、私はドラゴンの死骸の方が気になっていた。
「どうした?ドラゴンが気になるのか?」
こくこく、と首を縦に振るとルベルは私の手をそっと握って近くまで連れて行ってくれた。
「ほら、これがドラゴンの頭だ」
近くで見るそれは死んでいると分かっていても怖かった。
「これがドラゴンの肉だよ」
ニゲルが切り落としたドラゴンのお肉を取って見せてくれた。
「あ」
忘れていた。ドーンボアのお肉を放置したままである。
すぐに倒した場所へと向かう。
その姿を後ろから不思議そうに眺めていたが今はそれどころではなかった。
「はあ、はあ。そ、そんなあ」
そこには、お肉のかけらもなく骨だけが残っていた。大方、他の魔物に食べられたのであろう。
私は膝から崩れ落ちてしまった。後ろからついてきていたルベルさんがドラゴンの頭をひこずりながら私に聞いてきた。
「どうしたんだ?」
「お、おにくが、きょうのごはんが…」
泣きそうだった。せっかく取った魔物を他の奴らに取られるなんて。
まあ、自分が悪いんだろうけど。
すると、さっきまでドラゴンの解体をしていたニゲルが私の横に何かを葉で包んだものをくれた。
「こ、これは?」
涙目でそう聞くと、ニゲルが私の頭を撫でながら答えてくれる。
「きみの分だよ。私たちのせいでお肉がなくなったようなものだからね。あげるよ」
「い、いいの?でも、これはお姉ちゃんたちの分じゃ……」
タダより高い物はない、前世でよく覚えている言葉の一つだ。
いかに人見知りで、他人の善意を無下にできないといっても、これだけは頑張って断らないといけない。
「いいんよ。どうせ全部持って帰れるとは思えないしな」
さっきまで休憩していたはずのウィリデさんがそんな言葉をかけてくれる。
「で、でも…」
「でもじゃない。もらえるもんは貰っときなよ。後で役に立つかもしれないだろ」
これ以上いってもダメな気がしたので、諦めることにした。
そして、厚かましいと分かっていても、一つ頼みごとをしてみることにした。
「え、えっと、その、一つ、お、お願いがあるんですけど…」
「ん?なんだい?」
いきなりそんな言ってもルベル達は何も言わず聞こうとしてくれる。
「ちょっと、ついてきて、くれますか?」
「ああ、あれの解体が終わったらね」
4人は手際よく部位を分けていく。
見ている感じとても手慣れていそうだった。
ものの10分程度で解体が終わり、木陰で座っていた私のところまで来た。
(あれ、素材を持ってない。バックには入らなさそうだしなあ)
何を考えているのか顔に出ていたのか、カエルラさんが笑いながら、
「どうした?素材はどこへ、って顔をしてるな。素材ならここだよ」
腰に下げていた、ポーチを叩きながら説明してくれる。
「これは、魔術鞄。中が亜空間になっていて見た目以上にものを入れれるんだよ」
こんなのあったら便利だなあ、と思いながらルベルさんたちをソリトゥスにある私の家?に案内する。
近づけば近づくほど、みんなの顔が険しくなっていく。
「なあ、どこに連れていくつもりなんだ?」
警戒心がつよそうなニゲルさんがしびれを切らして聞いてきた。
「そ、ソリトゥスにある私の家、です」
「はい?今なんて?」
「ええっと、ソリトゥスにある私の家です」
その言葉を聞いた四人は、目を点にしている。そして、ルベルさんが最初に口を開いた。
「お、お前あんな所に住んでるのか?」
「家を、おいだされたので」
別に領主になれと言われたわけでもない、逃げようと思えばいつでも逃げれる。
でも、私はそれが嫌だった。
どうせならこの魔術を使って前世のような安全な街を作ってみようと思ったのだ。
そんなことを話していると、ソリトゥスの入り口に着いた。
私はそのまま、昨日木を運んだ家にルベルさん達を案内する。
「それで、手伝ってほしいことって?」
カエルラは私の家(仮)を見て、大体予想がついているようだった。
「いえを直すのを手伝ってほしい、です」
「これを使って?」
ルベルは家の裏に置いてあった木を見ながら私に言ってきた。
「はい。私が木を加工するので、なおしてほしいです」
「まあ、たしかに、ね」
ルベルさんは私を見て何かいいたそうにしながら木を持ってきた。
「こ、これからのびるはず、です!」
ちょっと怒り気味で返すと、ルベルさんは笑いながら
「分かってるよ」
と言って、木を私の目の前に置いた。
「さ、加工とやらをしてくれ、私たちが直すから」
私は少ない魔力を切らさないように頑張って木を板材に加工していった。
なぜか、工具でもないのに木が加工できてしまう。
そんなことを疑問に思いながら、家を修復すること三十分。
「で、できたー!」
さっきまでのボロ屋とは打って変わって穴もなくつぎはぎだらけだけどちゃんとした家になった。
途中、ニゲルさんがお水をくれたりしてくれたおかげで、特段疲れることもなかった。
「ありがとう、ございました。これで、なんとか暮らしていけると思います」
私は、家直しを手伝ってくれたルベルさん隊に深々と頭を下げる。
その姿を見て、ルベルさん達は何を思うだろう。
同情、哀れみ?それとも、八歳児の事なんてなんとも思わないだろうか。
そんなことを思い、顔を上げた時、何かに体が包まれた。
「え⁉ちょっ」
思わず、振り払おうとするが八歳の力でできるわけがなかった。
「寂しくなったらいつでもいいなよ。私たちはいつでも歓迎してあげる。例え、足手まといになろうともね」
顔を上げるとそこには、優しい表情をしたルベルさんの顔があった。
「は、い…」
泣いてはいけない、泣いては…。
そうだと思っていても、涙が出そうになる。
必死にこらえ、そして笑顔で答えた。
「また、来てください!次はもっといい街にして見せます!」
「ははっ、期待してるよ」
ルベルさんの抱擁は母のように暖かかった。
ルベルさん達が去るとき、選別をいくつか貰った。
少し傷ついているからという理由でドラゴンの爪を、寒くなったときにという理由でポンチョのようなものを、そしてきれいな石を貰った。
そして、わたしからもひとつお願いをした。
「私のこと子供だと思ってるのかな。まあ実際子供だけどさ」
前世で見たような夕日を眺めながら、夕飯の支度をすることにした。
今回の話はいかがでしたか?
面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。
今後ともよろしくお願いします。




