第二十三話 存在進化したゴライ
あれからルベルさんはカーナイトス戻っていった。
まあ2,3日したら戻ってきたんだけど。
そして、私がこの街に来てから一カ月がたつくらいまで、私達は畑を作ったり街を少しずつ発展させていった。
ある日のこと。いつものように作業をしているとニゲルが部屋に入ってきた。
「どうしたの?」
「少し、困ったことがおきまして……」
申し訳なさそうに言い、外に出るように促してくる。
何だろうと思い、外に出て見ると……
「え?」
なんと、魔物のはずのゴライが都市の入り口の方で倒れているではないか。
まあここからだと、微かにしか見えなけどね。
「ステラ様。早くこちらへ!」
小屋の前で待っていたダイドに連れられ足早に都市の入り口まで向かう。
すでに人だかりができており、ステラとニゲルはその間を縫うようにしてゴライの所へ行く。
「一体どうしたの?」
ゴライに剣を向けているルベルに剣を下ろすよう促し、そう聞くとルベルはゴライの方を向きながらも説明してくれた。。
「気づけばここにこの魔物が倒れていまして……」
そう言われ、ゴライの方を向く。
薄緑色の体で髪の毛はない。
全身傷だらけでボロボロだった。
普通ならいつもと同じようにこいつを倒すだろう。
だけどみんなこの魔物を倒そうとしない。
「ねえ、倒さないってことは何か事情があるの?」
すると、シエンがひょっこりルベルの肩から出てきた。
「そいつはゴライの上位種、ゴライア。人族並みの知能を有する種族だ」
シエンからちらっと聞いたことがあるような気がする。
魔物の中には「存在進化」をして上位種に進化する者がいると。
そして、そうした魔物は例外なく人族並みの知能を有すると。
「と、とりあえずどこかで寝かせましょ」
ルベルさんとアモニアに手伝ってもらい、私の家の空き部屋のベッドに運んだ。
そしてイベルさんを呼び、傷を回復してもらう。
しばらくすると、ゴライアが目を覚ました。
「ん……ここは……ってあなた達何者ですか⁉」
まあ、正しい反応ではある。
私だってこんな状況だったら同じことを言うだろう。
「まあまあ落ち着けって、とりあえずあんたの名前を教えてくれ。ゴライアの種族なら固有名ぐらいもってるだろ?」
ルベルさんが怖い顔をして詰め寄っていく。
やっぱり元は魔物だから警戒しているのだろうか。
「お、俺の名前はラード。ゴライア族の一人だ」
「で、ラードは何故ここに?」
アモニアが私の前に立ちルベルと同じように怖い顔をしている。
それを見たラードは言いにくそうにしながら答えた。
「俺たちが住んでいた村を人族の盗賊に襲われたんだ。俺は何とか逃げてきたけど……ほかの奴らが捕まっちまって」
なるほど、ここに来たのは私たちに助けてほしいからか。
しかし不思議なものである。ここに私達が住んでいるのを知っている人なんていないと思っていたのに。
「ねえ……」
「ちょっと待ってください」
私が聞こうとしたらアモニアにさえぎられてしまった。
「なぜあなたはここを知っているのですか?」
アモニアが、私が言おうとしたことを代わりに行ってくれた。
「俺らが住んでいた村に、ここに人がいると書いてあったから」
うん?この人たちどっかの人族が住んでいた村に住んでいたのか?
とすれば盗賊が襲ってくるのも納得がいく。
「その村とは?」
ルベルさんが聞くとラードは持っていた地図を出して見せた。
「ここ。この場所にあった村です。もうすでに廃村になっていたので住んでも構わないかな、と思って」
その指をさされている場所にすこし心当たりがあった。
この街の東側にあり、間には森。
おそらく、ダイドさんが元々住んでいた村ではないだろうか。
まだほんとかはわかんないけど。
「それで、私達にどうしろと?」
ルベルが分かりきった質問をする。
「村を、エルバドの一族を救ってください!」
ラードは地に頭をこすりつけそう嘆願した。
まあ、予想はしていたけど。
とりあえずラードさんには家で療養してもらい、私達はダイドさんの家で会議をすることにした。
集めたのは、私、シエン、アモニア、ウェイトス、フェレス、ルベル、ダイドの七人。最初に口を開いたのはフェレスだった。
「して、どうするのじゃ?」
なぜか私の方を見てそう聞いてくる。
絶対私に聞くことじゃないでしょ。
「なんで私に聞くの?」
フェレスは何かおかしいことを言ったかの、と言い周りを見渡す。
だがみんな首を横に振っていた。だれか、私の味方はいないのか。
「え?どうするの?いくの?」
そう聞くと、シエンがすぐに反論した。
「いや、行く意味あるか?あたしたちに得なんてないぞ?」
みんな考え込んでいるので答えが出ない。
どうしたものかと思っていると、私の家にいたはずのラードが入ってきた。
「おや、傷はもういいのか?」
ルベルにそう聞かれたラードは静かに頷き、そしてあいてる席へゆっくりと座る。
その姿を見ていたシエンはにやりと笑った。
「そうだ!」
「うわっ!なに⁉」
いきなりシエンが大声を出したことにびっくりしてしまった。
「なあ、やっぱり助けに行かねえか?」
ラードを見てなにか思いついたのだろうか。
「は?お前さっき行かないって自分で言ったろ」
ルベルそう言われるが、いい考えがある、とラードの方を見てにやりと笑った。
「なあラードや。助けてほしいなら今から言う条件をのめ」
いきなりいわれたことにびっくりしつつもしかたなくラードは頷いた。
「一つ、お前たちを助けたら見返りとして何か貴重な物をよこすこと。二つ、あの村を捨てること」
「な⁉」
二つ目の条件を聞いた瞬間、ラードはいきなり立ち上がり声を荒げて言った。
「それでは我々はどこに住めというのだ!」
そう怒鳴るがダイドさんに抑えられていたおかげで何とか取っ組み合いのけんかにはならずに済んだ。
「まあまあ落ち着けって。まだ最後の条件を言ってないだろ?」
「最後の条件?」
珍しくウェイトスが首を傾げている。
はて、他にどんなことを要求するつもりなのだろうか。
「三つ、あたしたちの村の住民となること」
それを聞いた者はもれなく言葉を失った。
もちろん一番驚いているのはラードである。
「それはどういう……」
「は?言葉の通りだが」
全員言葉の意味が分からず困惑していると、シエンはため息を付きながら説明を始めた。
「いいか?この街には人が足りない。そしてエルバドの一族は村を襲われた。そして壊れた村を直すぐらいならどこかに移り住んだ方が早い」
そこまで言うと、みんな意味を理解したようだ。
私なりの考えでは、ラードさんは一族の人を助けられて、私たちは町の人が増える。
つまり、winwinというやつである。
「で、では助けてくれるのですか?」
ラードがそう聞くと、ルベルとアモニアは笑顔で答えた。
「ああ、任せておけ」
私に意見を求めて見たり、私の意思に関係なく行くことが決まったり、まったくどうなってんだ。
まあ、まだみんなにはただの八歳ってことになってるからいいんだけどね。
そんなこんなで救出に行くことが決まり、ダイドとラードは人員を集めるために出ていった。
「さて、作戦だが……」
五人しかいないこの部屋で作戦会議が始まった。私はただの見学である。意外と作戦とか考えるの好きなんだけどね。
だが、あーでもないこーでもないと会議が進まない。
シエンもルベルさんもいるのに何でだろう。そう思い地図を覗き込んでみる。
村こそ簡素な塀しかないが周りを森に囲まれその中には魔物がうじゃうじゃいる。
かといって正面から行こうにも遮蔽物がほとんどなく弓を撃たれ放題。
どうやら天然の要塞みたいになっているらしい。
だけど私の魔術が使える気がした。
「生産技術 地形生成」で壁を作れば遮蔽にできるのでは?
そう思い頭の中で思考を巡らしていく。
機械でものを作るときに書く設計図のように一個ずつ戦略を組み立てていく。
「おーい、ステラ大丈夫か?」
「はっ⁉」
集中しすぎて周りの声が聞こえていなかったようだ。
危ない危ない。
「だ、大丈夫だよ。ちょっと考え事をしてただけ」
仮領主とは言えど八歳の言うことなど誰も聞かないだろうと思っていると
「ステラ様、なにか策があるのですか?」
アモニアから聞かれないと思っていた質問が飛んできた。
「え、なんでわかったの?」
「地図を見ているステラ様の表情を見て」
正直びっくりした。
アモニアが私と出会って一カ月もたっていないのに表情を見るだけで何を考えているのかわかるのだから。
「言ってもいいの?」
「何をおっしゃるのですか。あなたは皆が認めるこの街の領主なのですよ?」
そう言われつい嬉しくなってしまった、
なら、期待に応えよう。
「まずね……」
私が出した案をもとにみんなで修正を加えていく。
元Sランクパーティーのリーダーと全知全能?のシエンもいることで順調に進んでいった。
「じゃあ出発は二日後の朝。メンバーはあたしとステラとアモニアとルベル、それと猫人族の兵士達二十人。ウェイトスはここの守りをしてくれ」
「承知しました」
シエンのまとめにウェイトスも快く賛同し会議は終わった。
さて、出発までにすることと言えば
「銃弾の補充だね」
プロ―フライフルの銃弾には鉛と鉄を使うらしい。
家の在庫があまりないので鉱山の詰所に取りに行くことにした。
「ウェイアさん、鉄と鉛ってある?」
鉱山の詰所と鉱物資源の管理をしてもらっているウェイアさんに聞いてみる。
裏から出てきたウェイアさんは身長こそアモニアと変わらないがショートヘアに瑠璃色の目でとても綺麗だった。
これでまだ独身らしい。
そして、その細い腕からは考えられないほど力があるとかないとか。
「はいはーい、ってステラ様じゃない!ちょっと待ってね」
私を見た途端また奥へと戻っていった。
裏においてあるのかな。
そんなことを考えながら待っているとウェイアさんが大切そうにしながら一つの箱を持ってきた。
「いやーちょうどよかったです。これを渡そうと思いまして」
そう言い箱を開ける。そしてその中に入っていたのは、
「ア、アレキサンドライト!」
「え、この鉱石の名前を知ってるの?」
間違いない。この光り方、この形、この硬度。
前世で家に飾ってあった、あのアレキサンドライトである。
そしてこの世界でのアレキサンドライトは滅茶苦茶強い魔術道具を作る道具になる。
「こ、これをくれるんですか⁉」
八歳に目を輝かせて言われると、さすがのウェイアも断れなかった。
「ま、まあ領主様だからね。あ、あと鉄と鉛だっけ?」
ウェイアは奥にいた作業員に声をかけ、鉄と鉛を持ってくるように言う。
そしてしっかりと閉めた箱を私に渡してきた。
「大事に使いなよ~。あと鉄と鉛は家に届けさせるから。家で待ってて」
「は~い」
どうやら家に届けてくれるそうなので帰ることにした。
それにしてもまさかこんな早い段階でアレキサンドライトが手に入るとは。
しかも、この重さは五十グラムはある。前世では1カラットもあればみんなが喉から手が出るほど欲しがるというのに。それが今私の手元にある。こんなにうれしいことはない。
うっきうきで家に帰ると机の上で作業をしていたシエンに変な目で見られた。
「どしたお前」
顔がにやけている私を見て少し顔を引きつらせ、そう聞くシエンにアレキサンドライトを見せつける。
「ねえねえ見てよこれ!アレキサンドライトだよ!」
「そうかーアレキサンドライトかー……ってアレキサンドライト⁉」
流石のシエンもアレキサンドライトには驚いていたようだ。
アレキサンドライトを机の上に置き、使い道を二人で考える。
「守りは……って攻反石があるか。攻撃つってもお前近接戦闘無理だしなあ」
いろいろ考えた結果、新しいマジックアイテムを作ることにした。
「お前ドラゴンの爪持ってるだろ?あれとこのアレキサンドライトを使って「ルクス・イルミナ」を作ってみようぜ。魔力かなりもってかれるけど」
そのるくす・いるみな?とかいうやつはよく分からなかったけど、言われた通りに作ってみることにした。
「生産技術 魔術道具生成 ルクス・イルミナ!」
意識を強く保たないと飛びそうなぐらい魔力が持っていかれる。
三分ほどして、ルクス・イルミナが出来上がった。
ペンダントのような形をしており縁にはドラゴンの爪が使われ中央にはアレキサンドライトが煌煌と輝いている。
「かんせい?」
「ああ、出来たぞ」
試しに着けてみる。
「おお、中々似合ってるぞ!」
そう言われると作った身としては嬉しい。
後は弾の準備をするだけだ。
そんなこんなで二日はあっという間に過ぎた。
「さて、お前ら準備できてるか?」
ルベルの問にみんな力強く答えた。
さあ、私も頑張らなくては。
今回の話はいかがでしたか?
面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。
今後ともよろしくお願いします。




