第十九話 決意
「アモニア……」
「はい」
ステラは静かにアモニアに手招きをした。
それに従うようにアモニアもステラに近づいていく。
そしてアモニアがステラの前まで来ると、ステラはそのままアモニアを精一杯抱きしめた。
「ずっと、一緒にいてくれる?」
今まで見たこともない年相応の上目遣いで見られたアモニアは、はい、としか答えられなかった。
「私は、あなたに一生ついていきます」
アモニアはステラの目を見て、しっかりと、揺ぎ無い声で答えた。
「それとね、お腹すいた」
ステラは無邪気に笑い、そう答えた。
その一言に、思わずアモニアも顔を緩ませる。
「そうですね。では、御体に良いものをお持ちいたします」
アモニアはそのまま部屋を出て台所へ歩いていった。
「では、妾も手伝ってこようかの。シエンは一緒におってやれ。その方がステラも安心するじゃろう」
そう言って、フェレスも出ていってしまった。
「シエン……ありがとね」
「な、なんだよ急に」
横になっていたステラの顔の前でちょこんと座っていたシエンにステラはそう言った。
「私は知ってる。あなたが私が苦しんでいるとき、ずっと寝る間も惜しんで看病をしてくれたことを」
そのまま、ステラはシエンを自分の腕の方へ寄せる。
「べ、別に礼を言われるようなことしてねーし」
ふんっ、とシエンはそっぽを向いたがそれでもステラは微笑を浮かべていた。
気づけば、シエンはステラの腕の中でうずくまって寝息を立てていた。
「すーすー」
ステラはその様子をずっとうれしそうに眺めていた。
「それで、約束の件じゃが」
台所で作業をしていたアモニアはフェレスにそう告げられ我に返った。
「そうでしたね。土地でしたらこの街に住んでくださるとありがたいです。ですが、もう一つの方は……」
すこし、渋っているようだった。
それもそのはず。口では何とでもいえるが、いざ実際にとなると怖気づいてしまう。
「何を勘違いしておる。お主から寿命を貰う気は最初からなかったぞ?」
「へ?」
フェレスに衝撃の事実を告げられ、アモニアは困惑していた。
「そもそも、我らに人の寿命を取る能力も魔術もない。そのぐらい分かっておって答えたものだと思っておったが……妾の思い違いだったようだな」
フェレスは懐から一束の薬草を出し、アモニアに渡した。
「これを使え。そうすればあやつの体力もちいとは回復するじゃろうて」
「なぜ、見ず知らずの私たちにそこまでしてくれるのですか?」
アモニアはフェレスになんとなく聞いてみた。
「そうじゃのう。お前はともかくほかの奴らは初めて会う。だが、あのステラの姿を見ているとな、助けたくなるんじゃよ」
フェレスは野菜を切りながら、そう語ってくれる。
「じゃがそんなことはどうでもよい。妾達はこれからステラの街の民となるのじゃから。領主を助けるのは、民の仕事じゃろう?」
「確かに、そうですね」
ふたりはその後も、会話を続けながらステラのためのご飯を作っていた。
「ステラ様、お食事の用意が出来ましたが……」
アモニアがステラを呼ぼうと部屋に入ると、ステラに静かに!と怒られてしまった。
「シエンが寝てるから、静かにね」
よろよろになりながらステラはベッドからおりリビングへとアモニアに支えられながら歩いてった。
それから三日後、ステラの体は順調に回復しついに一人で歩けるようになった。
「アモニア。村の人とフェレスさん達を集めてくれる?」
「承知しました」
この街には百人の村人とフェレスさん達猫人族が十五人、そしてウェイトス、アモニア、シエン、私の百十八人の人たちがいる。
その人たちに、伝えなければならない。
私の決意を。
「集めてまいりました」
街の中央部にある噴水広場の前に全員が集まったのを確認し、私は一段高いところへ立った。
「み、みなさん、この度はご迷惑をおかけしてすいませんでした」
まず一番に頭を下げて謝った。
言い訳など無駄である。
「そして、みなさんい伝えておきたいことがあります」
いつになく真剣な表情のステラに集まった人たちも真剣に耳を傾けている。
「ここに誓います!私はこの周囲の森を含む街を、鉱山都市ソリトゥスを世界で一番すごい都市にしてみせると!」
私の宣言に、村人たちも応えてくれた。
「俺たちも手伝う!!」
「領主様だけに苦労はさせねぇ!!!」
「み、みんな……」
思わず、涙が出そうになる。
けど、まだもう一つやることがある。
「それと、この街に人が増えます。種族は猫人族。人数は四百名程です」
さらにどよめきが走る。
「なので、皆様にお願いがあります。私の家づくりに協力してください!」
再び頭を下げ、お願いをする。
すると、バルドが一歩前に出てきて胸を張って答えた。
「何を言っているんですか!私達一同はいつでもあなたの役に立つ用意はできてます!」
力強く答えると、周りからも声が上がる。
私は嬉しかった。
前世ではこんなに尊敬されることも、頼りにされることもなかった。
だったら、私も期待にこたえなければならない。
「ありがとう、ございます。みんなで最高の都市を作りましょう!」
「「「「「「おおーー!!!」」」」」」
その日からわたしは少しずつ魔術を使い、家の骨組みを立てていった。
里にいる猫人族がやってくるのは一週間後。それまでになるべく完成させなければならない。
「別に急がんでもよいぞ?残りが到着したらそ奴らにも手伝わせるからの」
いいのかなあ、と思いつつ基礎だけ作っておくことにした。
夜、お風呂に入った後、部屋で何気なく自分のプロフィールを見た時の事。
「プロフィール」
――――――――――――――――――――
ステラ・インベリウス・レグルム 8歳 女 人族
レベル15
魔法容力量 2000/2000
称号 インベリウス侯爵家の元三女 全てを知る者 鉱山都市ソリトゥスの領主 神竜を従えし者 過去を乗り越えし者
適性魔術 生産技術 レベル5
工具及び道具の生成、錬成、修復 (レベル2)
機械生成
基礎魔術道具の生成
――――――――――――――――――――
気づけばレベルが上がっていないのに魔力量が増えていた。
「なんで?」
よく分からないのでシエンに聞こうとリビングに行くと、シエンが机の上で寝っ転がっていた。
「シエン~。私の魔力量が増えた理由を教えて~」
「どゆこと?」
シエンにプロフィールを見せ、事情を説明すると意外な返答が帰ってきた。
「あー、これは称号のおかげだな」
「称号?」
するとシエンは置いてあった本に座り込み、説明を始めた。
「称号ってのは単なる肩書きじゃない。中には手に入れることで能力を手に入れることが出来るものもある。例えば、お前の「過去を乗り越えし者」とかな」
「それってどんなの?」
大体察しはついているが一応聞いてみる。
「魔力量が増える」
やっぱり、レベルが上がっていないのに魔力量がそういうことだったのか。
「にしてもこの街の領主になって街を作るんなら、もっとレベルを上げないとね」
シエンは私のプロフィール画面を見て言う。
でも、私は戦闘が出来ない。
勝ててドーンボアである。
「はは……気が向いたらね。ほら今、私体全快してないし……」
言い訳をして逃げようとしたが回り込まれてしまった。
「明日の朝行こうぜ。アモニアも連れて行けば安心だろ?」
逃げられないと思い、早々に頷いてそのままベッドに入った。
次の日
仕方なくシエンに貰ったプロ―フライフルを背負い、畑にいたアモニアの所まで歩いていく。
「あ、アモニア~」
畑に立っていたアモニアに手を振りながら近づいていくと、少し不思議なにおいがした。
一度だけ匂ったことがあるような、土と糞が混じったようなにおいである。
流石に鼻をつまんでしまう。
「すいませんねぇ。肥料が出来たんで撒いていたんですよ」
農作業をしていた人が申し訳なさそうに説明してくれる。
ああ、肥料か。そう納得しつつアモニアを待っていると、後ろから声をかけられた。
「何をしておるのじゃ?こんなところで」
振り向いてみればラフな服を着たフェレスが首を傾げて立っていた。
「アモニア待ってる」
「なるほどのお」
噂をすればアモニアがこっちにやってきた。
「どうされたのですかステラ様」
「シエンが調査も兼ねて鉱山に私のレベルをあげに行かないか、だって」
するとアモニアは何も言わずに剣を引っ張り出した。
どうやら、ついてきてくれるようだ。
その時を見計らっていたかのようにシエンもやってきた。
「お、準備できたか。じゃあ行くか」
私達は村から歩いて鉱山の方へと向かった。
入り口は村の中にあることもあり、村から立候補してくれた人たちが門番をしてくれている。
いつの間にか、詰所のようなものまでできていて、掘ってきた鉱石を保管する場所までできている。
「なんか、知らない間に発展しているね」
「あんたにばっか負担をかけられないからな。ダイドが主導して進めてくれているよ」
私の代わりに進めてくれるみんなに感謝しながら、鉱山に入っていく。
もう入り口付近は人の手によって管理されており魔物は一切いなかった。
「魔物いないからレベル上げできないね」
そんな愚痴を言いつつ進んでいくと目の前に壁が現れた。
「あれ、行き止まり?」
この鉱山もここまでかあ。
もう何もないと思い引き返そうとしたらシエンに止められた。
「何帰ろうとしているんだ?この鉱山はまだまだ深いぞ?」
「いや、進む場所ないでしょ」
シエンは幻覚でも見ているのかと思いそのまま帰ろうとしたけど、次はアモニアに止められた。
「ステラ様。あちらをご覧ください」
そう言われて振り返ってみると、さっきまではなかったはずの小さな祠がそこにあった。
「さあいきましょう。失われた鉱山 第一層へ」
今回の話はいかがでしたか?
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今後ともよろしくお願いします。




