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第十五話 鉱山都市ソリトゥスの危機

「一体何が……」


アモニアは何が何だか分からず、家のリビング(仮)で困惑していた。


「あたしも分からない。だけど、あの足の傷があいつの良くない何かを開いちまったことは確かだ」


「そんな……私のせいで」


アモニアは自分の言葉に責任を感じているようだ。

その気持ちはあたしにもよくわかるような気がした。


「だけど、あいつの体調は絶対に健全じゃない。アモニア、村人を集めてくれ」


「ひぐっ。はい、分かりました」


泣きそうになりながら、アモニアは村の中央部に走っていく。


「何かあったのか?」


入れ替わるように入ってきたのはウェイトスだった。


「ウェイトス……お前、ステラに何をした?」


シエンの突拍子もない質問にウェイトスも困惑している。


「何を、とは?」


「お前、ステラに何か魔術をかけなかったか?」


「いえ、正式な主人であるステラ様に許可も取らず魔術などかけるわけがないだろう。それにお前も居るのだ。かけたところですぐにばれる」


「そうか、それならいいんだ……」


なぜだ、なぜこんなにも胸が締め付けられるんだ。

あたしは、ステラにとっての知識を分ける本でしかないはず。

なのに、どうして。

答えが出てこない。「全てを記す書」なのにこの胸の締め付けの理由が分からない。


「シエン様。村人を集めてまいりました」


「ああ、すまない」


気持ちを切り替えなくては。

今はステラのために出来ることを精一杯しないと。


「如何(いかが)されましたか?シエン殿」


いきなりの招集に、ダイドが不思議そうに聞いてくる。


「しばらく、ステラが動けそうにない。だから、あたしが一旦指揮をとることにする」


「な⁉」


全員、声を上げて驚いた。

そりゃそうだ。領主が動けないってことはそういうことだから。


「とりあえず、畑組と家畜の世話係組はそのままの仕事を続行。女性たちはその補助を頼む。残りのひとたちだが、すこしお願いがあるからあとで残っておいてくれ」


村人たちは、それそれぞの仕事に戻っていきこの場にはさっきの村人たちだけが残っている。


「お前たちに頼みたいことがある。アモニアと一緒に鉱山に行ってくれないか?」


村の男衆から不満の声が上がる。

まあ、予想はしていたが。


「頼む!これはお前たちにしか頼めない。護衛ならドラゴンと互角に戦ったアモニアがしてくれる。だから……」


いつになく必死なシエンを見た村人たちはどうしようかと悩み、相談し始めた。


「おれはやるぜ」


そう言って出てきたのは、最初にステラに幽霊の魔物と言っていた男、名は確か……


「カイズだ。ステラ様のために俺も働く!」


「お、俺も」


「俺もやるぞ!」


一人が名乗り出ると次々と出てきた。

これなら、行けるかもしれない。


「アモニア。こいつらと一緒に、鉄、銅、あれば金とプラチナムを取って来てくれ。時間はいつでも構わない。頼めるか?」


「シエン様の御頼みとあらば。ステラ様のために全力を尽くしましょう」


みんな、やる気だ。頼んだぞ。



みんなが各持ち場に戻り、私はそーっとステラの部屋に入った。寝つけてはいるようだが、とても苦しそうだった。ずっと、心臓のあたりを抑えている。

だけど、私にはこの原因が分からなかった。

どうすれば治せる?どうすれば……考えても答えが出てこなかった。

すると、ウェイトスから念術が来た。

なんだ、この忙しいときに


「どうした、あたしは今忙しいんだ。くだらんようなら切るぞ」


「客だ。それも面倒な奴だ」


なんなんだもう。次から次へと問題が沸いて出てくる。

急いで入り口までいくと、とても豪勢な馬車が一台。荷馬車が三台。騎士らしき人達が五十名ほどいた。

どっかの貴族が来たのだろうか。

ダイドが対応してくれてはいるが長くは持たないだろう。

来る途中でアモニアを呼んでおいたのですぐに来るはず。

と、話をすれば。


「シエン様、いきましょう」


二人で馬車の方へ歩いていくと、ダイドがそれに気づいたらしくこっちに向かって手を振ってくる。


「お前たちは何者だ?」


アモニアが騎士の一人に聞くと、偉そうに答えてきた。


「インベリウス侯爵領の領主、カリウム公爵様の御前であるぞ!なんだその無礼な物言いは!」


これは面倒なのが来た。よりによってステラの父である。


「よいよい、どうせこの辺鄙な街の民のことだ。礼儀作法など知らんだろう」


馬車から杖をつきながら大男が下りてきた。

こいつが、カリウムか。

確かに強そうだ。


「ここにステラとかいうガキがいるはずだが?」


「はて?そのような子はこの街にはおりませぬが?」


「たわけを。この街にいるのは分かっているんだ。しかし、それにしても……」


カリウムは入り口から街の中を眺めている。

分かっている。何もないといいたいのだろう。

そしてカリウムは、いきなりアモニアに詰め寄った。


「さっさと吐け。ステラはどこだ!」


まずい、今のステラにあいつを会わせると確実に殺される。それだけは、それだけは何としてでも止めないといけない。しかし、それなら疑問が出てくる。


「なぜ、いまなんだ……」


どうすればいい。


「どう、か、した、の……?」


「え?」


振り向くと、ウェイトスにお姫様だっこをされていた、ステラがいた。


「な、なんで、なんで出てきた!」


「あなた方が騒がしいからですよ。まだ、この子は落ち着いていないのですから静かにしてください」


ウェイトスがそう告げると、騎士たちが笑い始めた。


「ステラ!」


カリウムのその大声にステラびっくと震えている。

ウェイトスに必死にしがみついてた。

怖いのだろう。


「貴様!ラナトリアをどこへやった!」


「し、しらない、よ……」


「うるさい!貴様がどこかへ連れて行ったのだろう!さっさといわんか!この役立たずが!」


そう言いながら、カリウムは驚きの行動に出た。


「な、なにをする!」


止めようとするダイドを突き飛ばし、カリウムはステラの服を引っ張り、そのまま地面に体を叩きつけた。


「ふぐっ。い、たい……」


「体が弱っているステラになんてことをしやがる」


でも、私は姿を出せない。

出してしまえば、それこそこの街を滅ぼされかねない。


「ふーむ。これでも吐かんか。おい!」


一人の騎士が出てきて、カリウムに一本の剣を渡した。


「まさか!」


「足の一本でも切れば、素直に白状するかの?」


その惨状を騎士たちは全く止めなかった。ばかだった。あの時、助けに行こうなんて提案したあたしがバカだった。


「そーら!」


剣を振り下ろし、ステラの足に届きそうな時、鋭い衝突音がした。


「なに?」


ぶつかっていたのは足ではなく、剣。


「貴様、誰に向けて剣を抜いているのか分かっているのか!侯爵様だぞ!」


憤慨する騎士に、アモニアは冷たい声で言う。


「お前らこそ、誰に向けて剣を振るっているのか分かっているのか?」


その不気味な笑みはメイドとは到底思えなかった。恐ろしい、見るだけで身震いしてしまう。


「もう我慢の限界です。我らが領主にここまで手をあげるとは。命が惜しくないようですね?」


そういい、カリウムたちに剣を向ける。

まずい、このまま戦闘になれば本当にこの街を滅ぼされる。


「おい、アモニア。どうする気だ?」


小声でささやくが聞こえていなさそうであった。

すると、この前聞いたような雄叫びが町中に響き渡った。そして、ウェイトスが姿を変えていく。


「人の子らよ。お前たちが誰に向けて喧嘩を売っているのか、教えてやろうか?」


流石のカリウムも、ドラゴンには後ずさりをする。そして、騎士がカリウムを守るように前に出てきた。

だが、その騎士たちも僅かに震えている。


「ちい、退却だ!ドラゴン相手では分が悪い!」


そのまま、そそくさと逃げる準備をし、町から去っていった。

去り際に何か言い残していたような気がするが、気にしてもしょうがない。


「ふう、これで大丈夫かな……って!ステラ!おいステラ!」


そばに駆け寄り、声をかけるが返事がない。

さっきの叩きつけられた時の衝撃がまだ残っているのだろう。

呼吸も浅く、体から汗が出ている。

確実にまずい。


「ステラ、様……」


声のする方を向くと、イベルが悲しそうに立っていた。

そのまま、ふらふらとこちらに歩いてくる。


「おい!大丈夫か!」


あたしの心配する声も聞こえていなそうだ。

そしてステラの前まで来ると、その場で膝をつき祈りを捧げ始めた。


「支援系回復魔術 開花の法」


彼女が、静かにそう唱えるといきなり辺り一面に花が咲き乱れた。


「何?なんなのこの魔術」


このあたしでさえ知りえない魔術。

これが、卓越した想像力がもたらす幻想なのだろうか。


「私の魔術で、この御方の外面的な傷は治すことが出来ます。ですが……」


傷を治し終えたイベルは、難しい顔をしてあたしたちに聞いてくる。


「あなた方に失礼を承知で聞きます」


「なんだい?」


「誰か、猫人族がどこにいるのか、知りませんでしょうか」


今さら、何を言われようとも失礼になどならない。そう思っていたのだが、飛んできたのは予想外の質問だった。


「なぜ、猫人族の居場所を知りたいのだ?」


人の姿に戻っていたウェイトスがあたしの代わりに聞いている。


「古来より、猫人族は人の心に寄り添い人の心の闇を取り払ってくれると。私はそう聞きました。彼らならこの御方の心の闇を取り除いてくれるかもしれない」


「うーむ。それはそうなのだが……」


イベルの提案にウェイトスは苦い顔をする。こいつなら猫人族の場所も知っているだろうに。なぜ、言わないんだ。


「おい!居場所を知っているんだろ?教えてくれよ!」


耐えきれず、あたしはウェイトスに怒鳴るように言ってしまった。

しかし、ウェイトスは逆上することなく冷静に話を続ける。


「彼らが人族を受け入れてくれるとは限りません。かれらは恐らく人族を恨んでいるでしょう」


「な、それは初耳だぞ」


「そんなことよりも、とりあえずステラ様をベッドに寝かせましょう。続きはそれからでも遅くないはずです」


ウェイトスの正論にしぶしぶ了承し、あたしたちは家へと戻った。


今回の話はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。


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