第十四話 思い出したくなかったこと
「おーい!草が草むしりしてるぞ!」
「本当だ。おもしれー」
「ほら、草には草がお似合いだよ!」
男子が、草が入った袋を私にぶちまけてくる。
中学二年生の頃、私は壮絶ないじめにあっていた。
主犯である浅野海斗を含む五人がずっと私のことをいじめてきていた。
無視、暴言は日常茶飯事。草の入った袋をぶちまけられたり、物を隠されることもあった。
そして、もっとも酷かったのは。
「あ?舐めた口きいてんじゃねぇよ!」
中学二年生の冬。誰も居ない教室で、耐えきれなくなった私が五人にもういじめるのをやめてほしいと言った時のこと。
「おい海月、甲賀崎、香枝凪。こいつを抑えてろ」
「あいよ」
「ったく、めんどくせーなあ」
「分かったわよ。全く……」
じりじりと、三人が近づいてくる。
「な、なに。こないで!」
三人に一人が勝てるわけもなく、そのまま捕まってしまった。
そして、浅野が何かを懐から出し隣の女子に渡す。
「桜、ほら」
桜と呼ばれた子に手渡されたのは一本のナイフ。
「こ、こんなことをしたら、あなた達後戻りできないよ!」
必死に止めるように言うが、本人たちはやめる気がなかった。
しかし、ナイフを握る桜の手は震えている。
「どうした!さっさとやっちまえよ。ふとももを一発切るだけだろうが」
「む、無理。私にはできない……」
すると、浅野が桜の耳元で何かを囁いた。
桜の顔がみるみる青くなっていく。
そして、ゆっくりと私の方へ歩いてきた。
かなり息が浅い。
一体何を言われたのだろう。
「ご、ごめん!」
そこから助けられるまでの記憶は曖昧である。
だが、誰も居ない教室でただ一人、太ももから流れる血を抑えていたのは覚えている。
空の色が淡い橙色に染まり始めた頃、私の意識はだんだんと遠くなっていた。
その時、扉が勢いよく開かれ数名の先生と私のクラスの生徒が入ってきた。
「おい!しっかりしろ!」
そう声をかけてくれるのは私の担任である、竹崎先生。
みんな必死の形相だった。
そこから、誰かが呼んだであろう救急隊の人たちがやって来て、私は一命を取り留めた。
だが、足には大きな傷跡が残っていた。
家族には、なぜかこっぴどく怒られたのを覚えている。
私はその日のことを必死に忘れようと、記憶の奥底に封印することにした。
先生に話題に出さないようにしてもらった。
当の本人及び警察はとても不服そうだったけど。
ああ、そうだ。この傷は、この記憶は。
「頭が、痛い」
「おい!だいじょーぶか⁉」
シエンが心配そうにのぞき込んでくる。お風呂なんて入れる状況じゃない。
アモニアに寝間着を取ってきてもらい、それに着替えた。
頭が痛い。悪寒が走る。転生してもなお、あの記憶は消すことが出来なかった。
私はそのままふらふらと家に入り、ベッドに横になった。
寒気がすると思ったら、心臓が締め付けられるように痛くなってくる。
息も浅くなってきたような気がする。
一体、私がどうなってしまうのだろうか。
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今後ともよろしくお願いします。




