第18話(修正版):爆誕・帝都高校の悪役令嬢(15歳) 〜乙女ゲームのヒロインvs現実主義の天才少女〜
「葛貫真理子……! あなたね、この私……白鳥花音ちゃんの運命のルートを邪魔する『悪役令嬢』はーーーっ!!」
桜吹雪が舞い散る、超名門・私立帝都高等学校のメインストリート。
伝統を感じさせる赤煉瓦の校舎とゴシック様式の時計塔を背景に、一人の少女が私を指差し、甲高い声で叫んだ。
ピンク色の髪をツインテールにし、制服のスカートを妙に短く改造した新入生。
彼女の名は、白鳥花音ちゃん(15歳)。
学級名簿によれば、彼女は一般入試の底辺スレスレで合格してきたという噂の生徒だ。
私は、手に持っていた革製のスクールバッグ(※一条グループ特注の防弾・機能性仕様)を抱え直し、静かに深呼吸をした。
私、葛貫真理子、15歳。高校1年生。
前世でブラック企業の過労死社員(32歳)だった私は、今世では葛貫智恵子(39歳)という呑気な母の「過剰すぎる大風呂敷」が現実をバグらせ続けた結果、天才子役、天才鑑定士、地上げ屋、そしてハリウッド超大作の主演兼監督という、わけの分からない肩書きをコンプリートする羽目になっていた。
小学校卒業時、数千億円の資産を引っ提げて念願の「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」を達成しようとした私だったが、ハリウッドでの大成功と母のバグにより、中学生時代は世界中の映画関係者や文化人から教えを乞われる超ハードな「芸能・文化界の重鎮」として忙殺された。
(……ふぅ。だけど、ようやく地獄の中学時代が終わったわ。私はこの春、偏差値78を誇る日本最高峰の超進学校『私立帝都高校』に見事合格! 派手な表舞台から一時撤退し、静かな『普通の高校生活』を送るために、勉強一筋のガリ勉校を選んだのよ!)
そう、帝都高校は東大合格者数日本一を誇る、質実剛健な進学校。
恋愛だの芸能界だのといった浮ついた雰囲気とは無縁の「学問の聖地」——のはずだった。
なのに、目の前に立ちふさがるのは、どう見ても『学問』とは無関係な少女である。
「悪役令嬢……? 申し訳ありませんが、白鳥さん。ここは日本国東京都にある私立帝都高等学校ですわ。『令嬢』なる身分制度は現代日本には存在しませんし、私は単なる高校1年生の葛貫真理子です」
私は、15歳の知性と可憐さを兼ね備えた完璧なお辞儀を披露した。
「しらじらしいわね!!」
花音ちゃんはキーキーと金切り声を上げた。
「ここは乙女ゲーム『聖ロイヤル・アカデミー 〜乙女の恋は魔法の香りと共に〜』の世界なのよ! そして私は転生ヒロインの『カノン』! 私は知ってるんだから! この学校には4人のイケメン攻略対象がいる! 生徒会長、天才スポーツマン、厳格な教師、そして謎のイケメン転校生……! あなたはその全員を裏から操り、私を学校から追放しようとするラスボス悪役令嬢『マリー』なんでしょ!!」
「「「…………」」」
校門の周りにいた帝都高校の生徒たち(模試の偏差値75以上のガリ勉たち)が、一斉に引きつった顔で花音ちゃんを見た。
『おい……あの新入生、受験勉強のストレスで頭がおかしくなったのか?』
『乙女ゲーム? 追放? ここは東大合格者数を競う進学校だぞ……』
『それより、あの葛貫真理子さんになんて口を利いてるんだあいつは……! 映画界の生きる伝説だぞ……!』
周囲の冷ややかな視線(ヒソヒソ話)にも気づかず、花音ちゃんはドヤ顔で人差し指を突き立てた。
「ふふん! どんなにシラを切っても無駄よ! 私には前世の知識があるんだから! 私がこの帝都高校で4人の攻略対象とフラグを立てて、あなたを断罪して見せるんだからーーーっ!」
(……やれやれ。世の中には『前世の記憶』を都合のいい乙女ゲームファンタジーと思い込んじゃったイタい子が本当に存在するのね……。前世で過労死して、今世で現実の重圧を背負わされている私からすれば、おめでたい頭の構造が羨ましいくらいだわ)
私がやれやれと首を振っていた、その時だった。
「あらぁ〜! マコちゃ〜ん! 高校の入学式、おめでとう〜〜〜っ!」
(ゲェッ……!?!?!??!)
私の背筋に、冷や汗が吹き出した!
赤煉瓦の校門の陰から、着物姿で缶チューハイを片手に持った母・智恵子がガハハと大爆笑しながら現れたのだ!
1. 母・智恵子、現実の心理と確率を捻じ曲げる
「お、お母さん……!? なんで高校の校門にいるの!? 保護者の参列は体育館のはずでしょう!?」
「やだぁ〜マコちゃんたら! カメラマンさんに頼まれて校門の前で写真撮ろうと思って〜! あら、そのツインテールのちゃん、なに? ゲームのお話〜?」
(止めろ! 止めるのよ私! この女に余計な会話をさせてはならない!!)
「お母さん! 黙って! 向こうでPTAの受付が始まっているわ! 早く行って!!」
私が全速力で智恵子の口を塞ごうと飛び出したが、時すでに遅し!
智恵子はウインクすると、いつものように現実の法則を根本から破壊する「最大級の大風呂敷」をぶち上げたのだ!
「やだぁ〜ツインテールちゃん! うちのマコちゃんを『悪役令嬢』だなんて言わないでちょうだい〜! うちのマコちゃんねぇ! 『人間の心理行動パターン、確率統計、全心理フラグ、そして学園内のすべての人間関係と現実の未来分岐を100%見抜いてコントロールする、真の心理統括者』なのよ〜〜〜っ!」
(一気に『マスター・プロファイラー』まで盛るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)
私は叫び声を上げながら、帝都高校の綺麗な芝生の上に突っ伏した。
プロファイラー!? 確率統計!? 人間関係の完全コントロール!?
過剰! スケールが人間心理の極限になっちゃってるじゃん!! なんでイタい女子高生からの言いがかりから「超人的心理プロファイラー」にまで飛躍するんだよ!!
ズキュゥゥゥゥン!!
頭蓋骨の奥で、膨大な心理学データと人間行動データが旋風を巻き起こした!
行動心理学、微表情読解、認知科学、確率統計学、帝都高校全生徒の模試データと人間関係ネットワーク、相手の発話からコンプレックスを即座に割り出すプロファイリング技術——現実世界における『完璧な人間分析・行動予測能力』が、怒涛の勢いで私の15歳の脳みそにダイレクトインストールされていく!
(あぁぁぁぁぁぁぁ!? 脳みそに『世界最高の心理学者とFBIプロファイラーのチーム』が殴り込んできたー!?)
2. 覚醒せし「神の観察眼(15歳)」と、見えざる現実
「……真理子ちゃん……?」
ツインテールの白鳥花音ちゃんが、一瞬だけ身震いした。
頭痛が治まった私の「目」。
それは、ただの15歳の高校生の瞳ではなかった。相手の表情の筋収縮、視線の泳ぎ、発声の周波数から、その人物の「思考の全て」を解析する極限のプロファイリング眼である。
私の視界の中で、帝都高校の校庭、校舎、そして全生徒の上に、半透明の【現実的ステータス&心理データ】がリアルタイムの数値となって可視化されていた!
【白鳥花音】→ 妄想依存度:98%/自己評価と現実の乖離:極大/東大合格確率:0.001%/『学園での追放ルート』成立確率:0%(ただし『補習地獄ルート』確率99%)
【帝都高校の生徒全員】→ 思考の95%以上が『駿台全国模試』と『期末テストの範囲』
(……見える。見えすぎるわ……! この学校に『乙女ゲームの攻略対象』なんて一人も存在しない! ここにいるのは『東大・国公立医学部を目指して必死に勉強しているリアルな生徒たち』だけよ!)
私は静かに立ち上がると、制服の乱れを整え、冷徹なプロファイラーの威厳を漂わせて花音ちゃんを見つめた。
「白鳥花音さん」
「な、なによ……! その妙に鋭い眼光は……! 私はヒロインなのよ! あなたなんかに屈しないわ!」
「あなたが仰る『4人の攻略対象』……あちらの方々のことですかしら?」
私がすっと指を差したのは、校門から歩いてきた4人の男子生徒・教師だった。
「あっ! 生徒会長の神宮寺先輩! それに陸上部エースの黒崎くん! 学年主任の先生! 転校生のレオくん!!」
花音ちゃんが歓喜の声を上げる。
だが、私が冷徹な口調で、彼らの「現実のプロフィール」を淡々と読み上げた。
「生徒会長の神宮寺先輩……彼の頭の中にあるのは『今年度の東大理三合格ライン』と『効率的な赤本の解き方』だけです。女子から声をかけられると『勉強時間が削られる』とストレスを感じる傾向がありますわ」
「えっ……?」
「陸上部の黒崎くん……彼はスポーツマンではなく、物理オリンピックの日本代表候補です。走るのも『脚の筋力と摩擦抵抗の実験』のため。脳内は完全に物理の公式で埋まっています」
「は……?」
「学年主任の先生は、ローン残高と教育指導の書類作成で手いっぱいの既婚者。そして転校生のレオくん……彼は一条グループの警備部門から派遣された、私を護衛するための実務スタッフですわ」
「な、なによそれぇぇぇぇ! 全然乙女ゲームのイケメンたちじゃないじゃないのぉぉぉ!」
花音ちゃんが顔を蒼白にする。
「白鳥さん。あなたが『校舎の角で食パンを咥えて走り、生徒会長とぶつかる』というイベントを実行した場合の現実的帰結を教えて差し上げましょうか?」
「え……?」
「激突により生徒会長の眼鏡が破損。校則違反および器物破損により、即座に生徒会室へ連行。反省文30枚の上、保護者面談。内申点に響き、1学期から補習対象……これが現実ですのよ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!???(現実的すぎて怖すぎるーーーーー!?)」
花音ちゃんが頭を抱えて悲鳴を上げた!
3. 帝都高校の真の支配者と、現実主義の壁
「何事だ、校門前で騒がしい」
校舎から、重厚な雰囲気を纏った二人の少女が歩み出てきた。
一人は、長い黒髪をなびかせ、鳳仙学園から一貫して私の「第一の友人」として共に進学してきた、一条グループの令嬢・一条華乃ちゃん(15歳)。
そしてもう一人は、子役時代からの永遠のライバルであり、今や若手実力派女優として名を馳せる神楽坂美羽ちゃん(16歳)だった。
「真理子様! 入学式早々、妙な不審者に絡まれていらっしゃいますの?」
華乃ちゃんが、冷ややかな視線で花音ちゃんを射抜く。
「真理子ちゃん、大丈夫? この子……さっきから『乙女ゲーム』とか意味不明な単語を叫んでいたけれど、現実の演技の基礎から鍛え直してあげましょうか?」
美羽ちゃんが、圧巻の「女優の威圧感」を放ちながら微笑む。
「あ……あぁ……っ……!?」
花音ちゃんは後ずさった。
悪役令嬢どころではない。
目の前にいるのは——
葛貫真理子:ハリウッドを制した天才であり超人的プロファイラー(15歳)
一条華乃:日本経済に絶大な影響力を持つ巨大財閥の令嬢(15歳)
神楽坂美羽:弱冠16歳で数々の映画賞を総なめにした実力派女優(16歳)
「何よこの学校……何なのよこの現実主義のかたまりみたいな空間はぁぁぁぁぁぁ! 乙女ゲームの甘い展開なんてどこにもないじゃないのぉぉぉぉぉ!」
花音ちゃんは涙目になりながら、自分のツインテールをむしり取らんばかりに叫んだ。
私は、そんな花音ちゃんの前に優しく歩み寄ると、彼女の肩にぽんと手を置いた。
「白鳥さん。誰かが作ったゲームの『ヒロイン』になろうとする必要なんてありませんわ」
「え……?」
「甘い妄想に逃げるのではなく、現実の自分と向き合い、努力して成長することこそが一番素晴らしいことです。……さあ、一緒に教室へ行って、まずは最初の実力テストの勉強を始めましょう?」
「嫌だぁぁぁぁぁぁ! 高校生になってまで現実と向き合いたくないよぉぉぉぉぉ!」
花音ちゃんは泣き叫びながら、校門の向こうへと走って逃げて行ったのだった。
【ネットの反応(帝都高校の裏掲示板)】
『新入生のツインテール、葛貫真理子さんに完璧に論破されて泣いて逃げて草』
『乙女ゲーム妄想を圧倒的現実で粉砕する真理子様マジ容赦ない』
『真理子様の分析力、マジで裁判の鑑識レベルだろこれ』
『今年も帝都高校の東大合格者数、過去最高更新確定だな』
4. エピローグ:高校生活の始まりと、新たなビジネスの予感
入学式が終わった後の、1年A組の教室。
窓際の席に座った私は、新しく配られた分厚い『チャート式数学III・C』の参考書を開いていた。
(ふぅ……。白鳥さんの妄想も打ち砕いたし、これでようやく私の念願だった『静かな高校生生活』が始まるわ。放課後は華乃ちゃんや美羽ちゃんとカフェで宿題をして、テスト前は図書館で勉強する……これぞ私が夢見ていた青春よ!)
私は可憐に微笑み、ホットの缶紅茶を一口飲んだ。
……だが、私のそんなささやかな平穏は、教室の扉がバコンッ! と派手に開いたことで、わずか数分で崩れ去ることになる。
「マコちゃ〜〜〜〜ん! 大変よ〜〜〜〜っ!」
(げぇっ……!! お母さん……!? 今度は何なのよ! もう入学式は終わったでしょう!?)
智恵子が息を切らしながら、教室に飛び込んできた。その手には、高級そうなビジネスバッグと大量の書類が握られていた!
「お母さん! ここは教室よ! 静かにしなさい!」
「やだぁ〜マコちゃん! さっきね、世界のトップIT企業とテレビ局の社長さんたちが校門前に大行列を作ってるのよ〜〜〜っ!」
(……はい?)
智恵子は缶チューハイをキュッと煽ると、またしても現実世界を大きく揺るがす「過剰すぎる大風呂敷」をぶち上げたのだ!
「『マコちゃんのプロファイリング能力とプロデュース力で、衰退しかけた世界中のエンタメ業界と映像ビジネスを完全再建してほしい』んですって〜〜〜っ!」
(ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁ!!!!!)
私は教室の机ごとひっくり返った。
世界中のIT企業とテレビ局の再建!? 映像ビジネスのプロデュース!?
私、これから東大を目指して数学の勉強を始めようとしていたただの女子高生なんですけどーーーーー!!
ズキュゥゥゥゥン!!
脳内と全身に、現代の経営戦略、メディアマーケティング、グローバル企業買収、そして「エンタメ業界の全ビジネスモデル最適化」の知識が、怒涛の勢いでダイレクトインストールされていく!
(あぁぁぁぁぁぁぁ!? 脳みそに『世界最高の経営コンサルタントとメディア王』がダイレクトインストールされたー!?)
「マコちゃ〜ん! 放課後は部活じゃなくて、海外企業との買収交渉よ〜!」
「オギャァァァァァァ(普通の高校生活をやらせろー!!)」
超進学校・帝都高校に入学し、乙女ゲーム脳の少女を現実主義で粉砕して「普通の高校生活」をスタートさせたはずの葛貫真理子。
しかし、彼女の「平穏な青春(FIRE)」への道のりは、母の止まらない大風呂敷によって、今や世界中の経済とメディアを巻き込む『女子高生経営・プロデュース無双』へと突入していくのであった——。




