第17話:月日は流れて小6 〜ハリウッド襲来と、映画界の歴史を塗り替える天才子役〜
「マリコ・クズヌキ!! 頼む、我がスタジオの興行収入(何千億円)を、君のその“瞳”で救ってくれーーーーーっ!!」
ロサンゼルス、ビバリーヒルズの超高級ホテルの最上階スイートルーム。
アカデミー賞を何度も受賞しているハリウッドの巨匠、スティーヴン・スパークバーグ監督が、汗を滝のように流しながら、ソファーに座る私に向かってドゲザ(土下座)を決めていた。
「顔をお上げください、スパークバーグ監督。私、葛貫真理子はただの小学生……いや、一人の『表現者』に過ぎませんわ。条件さえ合えば、オファーをお受けする準備はできております」
私は優雅にアールグレイの紅茶を口に含み、可憐に微笑んだ。
あれから、数年の年月が流れた。
私、葛貫真理子、12歳(小学6年生)。
前世でブラック企業の過労死社員(32歳)だった私は、今や日本の芸能界、不動産業界、さらには世界の美術品修復界(※ロンドン大英博物館でのミイラ復元事件より)で「神童」を超えた「神の化身」として恐れられる存在となっていた。
小学6年生になった私の容姿は、子役時代の愛くるしさを残しつつも、どこか神秘的な美しさを漂わせる美少女へと成長していた。
身長も少し伸び、鳳仙学園初等部の最高学年として、児童会長を務める日々……のはずだったのだが。
(……ふふふ。前世の社畜時代からは想像もつかないわね。地上げで得た数百億円の不動産アセット、美術品の配当金、そしてこれまでの出演料……。私の総資産は今や【1200億円】を突破! いつでも完全にFIRE(早期リタイア)して、一生遊んで暮らせる準備は整っているわ!)
そう、私の「早期退職・FIRE計画」は完璧な領域に達していた。
小学校卒業と同時に芸能界を引退し、中学生からは静かな海外高級リゾート地でニート生活を満喫する——それが私の完璧な「ロードマップ」だった。
……だが、世界が、この怪物子役を放っておくはずがなかったのだ。
「スパークバーグ監督。今回、私にオファーされたのは、総製作費500億円の超大作SF映画『ギャラクシー・エンペラー・レジェンド』のヒロイン(銀河帝国を統べる幼き女帝役)……ということで間違いありませんかしら?」
「その通りだ、マリコ! だが……撮影は難航を極めている! 主演のハリウッドトップスターがアクションシーンで失踪し、さらにVFX(合成技術)の予算が跳ね上がり、スタジオは破産寸前なんだ! 君の『圧倒的な演技力』で、この映画に奇跡を起こしてほしい!!」
ハリウッドの巨匠が、12歳の小学生にすがりついて泣いている。
(ふむ……ハリウッド映画のヒロインギャラは、破格の『2000万ドル(約30億円)』+世界興行収入の歩合配当……。これを受け取れば、私のFIRE資金は完全に『神の領域』へ到達するわね! よし、これが私の『芸能生活の有終の美(引退作品)』にしてあげるわ!)
「お引き受けいたしますわ、監督。私の『最後の演技』……とくとご覧あれ」
私が可憐に決意を固めた、その時だった。
スイートルームのバルコニーから、サングラスをかけ、シャンパンを片手を持った母——葛貫智恵子(38歳)が、ガハハと大爆笑しながら入ってきたのだ!
1. 母・智恵子、ハリウッドの地で大風呂敷を広げる
「やだぁ〜スパークバーグちゃん! マコちゃんのハリウッド進出、おめでとう〜〜〜っ!」
(あ……ヤバい……!!)
私の中の最高警戒リスクセンサーが、過去最大の警報を叩き鳴らした!
「お母さん! 黙って! 今は世界規模の契約交渉中なの! 余計な口を開かないで、あっちでハンバーガーでも食べてて!!」
「やだぁ〜マコちゃんたら照れちゃって〜! スパークバーグちゃん、知ってる〜? うちのマコちゃんねぇ〜!」
智恵子はウインクすると、ハリウッドの巨匠に向かって、世界の理を銀河規模で破壊する「最大級の大ホラ(バグ)」をぶち上げたのだ!
「うちのマコちゃんねぇ! 『CGもスタントも一切不要! 銀河系の全言語を完璧に操り、自力で空を飛び、手からプラズマ光線を放ち、フィルムの全フレームを光速で監督・編集する、ハリウッド史上最強の完全無欠SF映画監督兼メソドリアリズム(超演技)女優』なのよ〜〜〜っ!」
(ハリウッド規模で盛るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)
私は叫び声を上げながら、ビバリーヒルズのフカフカのカーペットに突っ伏した。
CG不要!? 自力で空飛ぶ!? 手からプラズマ!? 光速で映画編集!?
過剰! スケールが銀河規模になっちゃってるじゃん!! なんでハリウッド進出から「リアル銀河兵器兼監督」にまで飛躍するんだよ!!
ズキュゥゥゥゥン!!
頭蓋骨の奥で、時空と宇宙の法則がねじ切れるような凄まじい次元歪みが生じた!
英語・フランス語・中国語・さらに映画用の架空宇宙言語(エイリアン語)の完全マスター、ハリウッド100年の映画撮影・撮影監督(DP)の全技術、超極限のスタント・ワイヤーアクション物理計算、映像編集ソフト(Premiere, DaVinci)の光速操作、そして「生体プラズマ光線と重力制御(!)」——銀河と映画界が蓄積してきたすべての特撮とCGを超越する『超能力兼映画監督スキル』が、怒涛の勢いで私の12歳の脳みそと身体にダイレクトインストールされていく!
(あぁぁぁぁぁぁぁ!? 脳みそと身体に『スタンリー・キューブリックとスター・ウォーズ本体』が同時に殴り込んできたー!?)
2. スタジオ騒然 〜CGを超越する生身の演技〜
ロサンゼルス近郊の超巨大映画撮影スタジオ(メガ・スタジオ)。
現場には、数千人のハリウッドスタッフ、最新鋭のグリーンバック、そして全米から集まった超一流のアクションスタントチームが待機していた。
「オーマイゴッド……あんな幼いアジアン・ガールが、本当にこの500億の超大作のヒロインなのか……?」
「どうせCGでゴリ押しするんだろ。スタント吹替の準備をしておけ」
現場の外国人スタッフたちが、半信半疑の眼差しを私に向ける。
だが、撮影が始まった瞬間——彼らの常識は音を立てて崩れ去った。
「カチンコ!! 『ギャラクシー・エンペラー』シーン42、アクション!!」
ズガァァァァァン!!
撮影現場にセットされた宇宙船の爆破ギミック。
スタッフ全員がワイヤー引きの準備をしていたその時、12歳の私はワイヤーも安全マットも無しで、空中3回転ひねりを決めながら10メートルの高所から軽々と着地した!
「「「ホ、ホワイト・ホワッッ!!??(ワイヤー無しで飛びやがった!?)」」」
さらに、脚本に書かれたエイリアン(宇宙人)との交渉シーン。
私はグリーンバックに向かって、流暢すぎる『完全架空の宇宙言語』を、圧倒的な感情表現と威厳を込めて語り始めた!
『《我は銀河の意思なり。ひざまずけ、星々を統べる者たちよ》』
その声の発声、空気の振動、そして目力——!!
現場にいたハリウッド俳優たちが、あまりの「圧」と「演技の密度」に圧倒され、演技ではなく本気で恐怖してその場にひざまずいてしまった!
「オーマイゴッド……!! 彼女の周りの空間が重力歪みを起こしている……!? CGじゃない! 彼女自身が発光しているんだ!!」
監督のスパークバーグが、モニターの前で震え上がった。
私の体から漏れ出す「生体エネルギー(バグ)」により、グリーンバックの合成処理すら不要なほど、カメラ越しに本物の「銀河のオーラ」が映り込んでいたのだ!
【全米のエンタメニュース(速報)】
『ハリウッド超大作の現場で日本の12歳子役が覚醒』
『CGスタッフ全員が廃業を覚悟「彼女の存在自体がVFXだ」』
『スパークバーグ監督が現場で「神よ……」と祈りを捧げる』
3. ライバル・神楽坂美羽、渡米してハリウッド現場へ
その頃。撮影スタジオの隅で、つばの広い帽子を深々とかぶった少女が、拳を強く握りしめていた。
小学校6年生になり、日本で「トップ若手女優」として大ブレイクを果たしていた神楽坂美羽ちゃん(13歳)だ。
彼女は真理子ちゃんのハリウッド進出を聞きつけ、自分のハリウッド映画オーディションの予定を前倒しして、極秘でロサンゼルスへ飛んできていた。
(真理子ちゃん……! あなたがどれほど凄い天才でも、ハリウッドは甘くないわ! 言語の壁、体格の壁、そしてハリウッドの過酷なアクション……いくらあなたでも、ここでは打ちのめされるはず——)
美羽ちゃんがそう思っていた矢先。
ババババババババッ!!
カメラの前に立った私が、NGを出しまくるアクションスタントの外国人男性を押し退け、監督の席に座り直した。
「監督様。カメラワークのカット割りが遅すぎますわ。第2フレームのズームを0.3秒早め、照明のルクス度を12%下げてください。編集のタイムラインは私の脳内で完璧に繋がっておりますので、私が直接PCを操作いたしますわ」
私が爆速でキーボードを打つと、スタジオの大型モニターに、【すでに完成品(アカデミー賞最優秀編集賞レベル)となった完璧な映像】が10秒で出力された!
「「「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!???(監督より監督してるーーーーー!?)」」」
スタントマンも、カメラマンも、監督すらも、12歳の私の指示に従って「イエス、マム(はい、ボス)!」と敬礼している。
物陰で見つめていた美羽ちゃんは、あまりの光景に膝から崩れ落ちた。
(嘘……嘘でしょ……!? 演技力だけじゃない……! ハリウッドの超大型スタジオの全権(ディレクターズ・カット権)を、12歳で完全に掌握している……!?)
美羽ちゃんは自分の胸を抱きしめ、天を仰いだ。
(美羽……あなたは何と戦おうとしていたの……? あの子は……あの子はもう「女優」なんてカテゴリーに収まる存在じゃない……! あのはハリウッドを……地球のエンターテインメントそのものを支配する『絶対女王』なのよーーー!!)
美羽ちゃんの中で、真理子ちゃんへのライバル心は完全に「信仰心」へと昇華されたのだった。
4. 全米公開:興行収入歴史的塗り替えと、全米大狂乱
数か月後。映画『ギャラクシー・エンペラー・レジェンド』が全米3000館で世界同時公開された。
結果は——人類史上の映画興行収入記録の完全更新だった。
【公開初日興行収入】:3億5000万ドル(全世界1位)
【全米批評家サイト(Rotten Tomatoes)】:満足度100%(奇跡の満点)
【タイム誌】:表紙に真理子ちゃん。「世界で最も影響力のある100人」第1位。
全米の映画館では、スクリーンの真理子ちゃん(銀河女帝)が手からプラズマ光線を放ち、流暢な宇宙語で演説するシーンで、観客全員が立ち上がり「マリーコ! マリーコ!」とスタンディングオベーションを捧げる事態が発生!
【全米のSNSの反応】
『CGかと思ったら生身のアクションだったと聞いて全米が泣いた』
『マリコ・クズヌキは実在する神なのか?』
『アカデミー主演女優賞と監督賞を同時に12歳にあげろ』
『ハリウッドは今日からマリコ・クズヌキの所有物になった』
5. 小学校卒業と、約束の「FIRE宣言」
ロサンゼルスからの帰国後。
季節は巡り、3月。桜が舞い散る鳳仙学園初等部の校庭。
私は袴姿で、卒業証書を手にしていた。
式を終えた校庭には、新聞記者やTVカメラ、そして同級生の華乃ちゃんや美羽ちゃんが集まっていた。
(……ふぅ。これで、長かった私の『子役人生』も終わりよ。ハリウッド映画の配当金(数百億円)が加わり、私の総資産は【2000億円】を突破した……。今日、この場所で、私は夢にまで見た『芸能界引退&FIRE宣言』をするのよ!)
私はカメラの前に立ち、マイクを握りしめた。
「報道陣の皆様、そしてファンの皆様。本日、私、葛貫真理子は小学校を卒業いたします。それに伴い……私は本日をもって、すべての芸能活動を引退し——」
「「「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
突如、校庭の空からバリバリバリ! と凄まじい爆音が響き渡った!
見上げると、上空にヘリコプターが3機停空し、そこから黒スーツを着た男たちがロープで降下してきたのだ!
胸には『国際連合(UN)』と『世界経済フォーラム』のエンブレム!
「マドモアゼル・マリコ! 引退など許されません!」
(え……!? 国連!? なんで国連が小学校の卒業式に来るのよ!?)
「アナタがハリウッドで発揮した超人的な『銀河交渉能力』と『世界動員力』……! 今、地球は気候変動と国際紛争の未曽有の危機に瀕しております! 各国の首脳陣が『マリコ・クズヌキに国連事務総長として世界をまとめてほしい』と要請してきているのです!!」
(えぇぇぇぇぇぇぇ!? 国連事務総長!? 私、これから中学校に入学して静かにニート生活(FIRE)を送る予定なんですけどーーーーー!!)
私が叫び声を上げようとした、その瞬間。
校門から、着物姿でお酒を飲んでいる母・智恵子がガハハと大笑いしながら駆け寄ってきた!
「やだぁ〜国連の偉い人〜! うちのマコちゃんを世界平和のリーダーに指名してくれるの〜? お目が高いわぁ〜!」
(お母さん……お願いだから……卒業式くらい静かに終わらせて……!!)
「うちのマコちゃんねぇ! 『全宇宙の平和を統べる、時空超越型の地球大統領(銀河連邦議長)』なのよ〜〜〜っ!」
(一気に銀河連邦議長まで盛るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)
私は叫びながら卒業証書を放り投げ、校庭の砂利の上にズッコけた。
地球大統領!? 銀河連邦議長!?
私、前世では平社員で、今世では12歳の小学生なんですけどーーーーー!!
ズキュゥゥゥゥン!!
頭蓋骨の奥で、時空と次元が完全に崩壊する凄まじい衝撃が生じた!
地球上の全言語のテレパシー会話、外交・国際法政治学の極限データ、世界経済の最適分配アルゴリズム、そして「全宇宙の平和を維持する絶対的なカリスマオーラ(バグ)」が、怒涛の勢いで私の12歳の脳みそにダイレクトインストールされていく!
(あぁぁぁぁぁぁぁ!? 脳みそに『地球と銀河系の全指導者の頭脳』が殴り込んできたー!?)
「マコちゃ〜ん! 中学生になったら世界平和と銀河の平和を守るわよ〜!」
「オギャァァァァァァ(12歳に地球と銀河背負わせるなー!!)」
小学校を卒業し、2000億円の資産をもって完全なるFIRE(早期リタイア)を達成するはずだった葛貫真理子。
しかし、彼女の「静かで穏やかな第二の人生」への道のりは、母の止まらない大風呂敷によって、今度は『新・中学生の地球&銀河平和無双編』へと巻き込まれていくのであった——。
(完……? いいえ、真理子の社畜スピリットとバグとの戦いは、中学校でも続く!)




